Eテレ 毎週 金曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。
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第33回 衣生活
「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!
番組では、服の素材や服作りのポイント、いざというとき役立つお裁縫など、いろいろ学んできましたが、今回のキーワードは「洗濯」です。
現役高校生の、ジュリアンさん(高2)、心さん(高3)、と一緒に話していきましょう。
りゅうちぇる 「高校生の2人は、洗濯でなにか失敗したこととかあるかな!?」
ジュリアン 「僕は、色ものと白いものを分けないで洗濯して、家族からめっちゃ怒られました…。」
りゅうちぇる 「あるある、だよね!」
心 「あるある!あと、ポケットにティッシュとかメモ帳とか入れているの忘れて(洗濯して、紙が)ボロボロになって…、お母さんが『あっ〜!』っていいながら(紙くずを)取ってるってことがあります。」
りゅうちぇる 「わかるー!!」
今回のテーマは、「洗濯名人になろう! 〜洗濯のメカニズム〜」。
りゅうちぇる 「服の汚れを落とす洗剤の働きや、こんな汚れまで落とせちゃうんだっていう、驚きの洗濯のノウハウなんかも紹介しますよ!」
3つのポイントは、「洗濯で失敗しないポイント」「なぜ洗剤を使うと汚れが落ちる?」「衣服を長持ちさせる手入れ方法」です。
気合いを入れてレッスンして、絶対失敗しない“洗濯名人”をめざしましょう!
どうしたら色落ちなどの失敗をせず、服の洗濯ができるようになるのでしょうか。
まずは、失敗例からみていきましょう。
「色移り」「型崩れ」「縮み」、「ティッシュペーパーと一緒に洗濯」してしまった服には細かな紙くずがたくさんこびりついています。
りゅうちぇる「こういった洗濯での失敗をしないために、まずは洗濯の基本からしっかり確認していきましょう!」
洗濯アドバイザーの中村 祐一さん、人呼んで“洗濯王子”に、洗濯のポイントを教わりましょう!
中村さん 「洗濯物は『仕分け』をすることが大切です!」
まずは服についている「洗濯表示(取り扱い表示)」を見て、仕分けをします。
特に、赤〇で囲んである“家庭洗濯”のマークは、最初に必ずチェックしましょう。
「家庭洗濯」は、大きく分けて
・家庭の洗濯機で洗えるもの(洗濯OK)
・手洗い
・家庭で洗うことのできないもの(洗濯NG)
という3種類の表示があります。
洗濯機で洗える衣類は、「色物」と「白物」の2つに仕分けます。
そして、色移りを防ぐため、別々に洗う。
これが洗濯の第一歩!
続いて「洗剤選び」。
家庭の洗濯で使う洗濯用洗剤には
・弱アルカリ性の粉末洗剤
・弱アルカリ性の液体洗剤
・中性の液体洗剤
という3種類があります。
汚れを落とす力が一番強いのは、弱アルカリ性の粉末洗剤
次に汚れを落とす力が強いのは、弱アルカリ性の液体洗剤
中性の液体洗剤は、汚れを落とす力はあまり強くない分、衣類に与える影響は小さくなります。
衣類の素材の種類や汚れの程度によって洗剤を使いわけましょう。
ここで、洗濯機で洗う前のワンポイント。
汚れのひどいものは、「下処理」をするのがおすすめ!
中村さん 「こういったえりの部分など、黒ずんだ汚れがある場合は、洗濯用の液体洗剤でいいので、汚れの部分に、直接 塗っていきます。」
洗剤をやさしく塗って、しっかりなじませます。
ぬるま湯で汚れの部分をすすいだら、下処理はOKです。
しょうゆやソースなど食べこぼしの染みを落とすときは、食器用洗剤を使うのもおすすめ!
下処理が済んだら、洗濯物を洗濯機に入れていきます。
洗濯機に入れる洗濯物の量の目安は、洗濯機の7〜8分目です。
中村さん 「これより多すぎると、洗剤が行き渡らなかったり、すすぎがしにくくなったりするので、7〜8分目をしっかり守りましょう!」
次は水。洗濯物の量によって使う水の量を決めます。
全自動だったら、洗濯機が(水の量を)判断してくれます。
洗剤はラベルに書いてある表示を確認し、水の量に対して適量の洗剤を入れましょう!
あとは、洗濯機にお任せで大丈夫!
最後は、洗濯物を干すときのポイントです。
・風がよく通るようにする
・形を整えて干すこと
ズボンはポケットのある内側を表にして、ハンガーを二つ使って干しましょう。
シャツを干すときは型崩れ予防のため、肩に厚みのあるタイプのハンガーがおすすめ!
中村さん 「肩の部分をしっかりあわせて、ボタンを一番上だけ留めて、えりは立てた状態のほうが乾きは早いです。」
ちなみに、室内に干すときは扇風機を使って空気の流れを作ると、乾きが早くなります。
中村さん 「基本に忠実にやれば、誰でもきれいに(洗濯)できます。(服を)買ったときの状態をいつまでも保てるように、みなさんも洗濯してみてください!」
ジュリアン 「洗濯をするときに、服の表示をチェックすることがとっても大事だなと思いました。」
りゅうちぇる 「うん。ほんとだね。」
洗濯表示は、2016年から、41種類ものより細かい表示に変更されました。
ここで改めて、洗濯表示をチェックしてみましょう!
洗濯表示には、家庭洗濯・漂白・乾燥・アイロン・クリーニングについてのポイントが世界共通の記号で表されています。
りゅうちぇる 「洗濯の基本をおさえて、かなしい失敗をしないためにも、洗濯表示のチェック、欠かさずやっていきましょうね!」
服の汚れを落とすために、洗剤がどんな働きをするのか?
この疑問に答えてくれるのは、番組の監修を担当する、大阪府立天王寺高等学校 教諭 谷昌之先生です。
谷先生 「汚れは、衣服の外側からやってくる ほこり・食品・化粧品とかの汚れと、皮脂や汗など 服の内側から発生する汚れがあるんですね。特に皮脂や食べものなどの油汚れは水だけでは落ちないので、”洗剤”を使って洗濯をします。その洗剤の中でも重要な働きをするのが『界面活性剤』(水にも油にもなじむ性質を持っている洗剤の主成分)なんです。」
ここからは、谷先生による“「界面活性剤」スペシャル実験コーナー”スタートです!
【浸透作用の実験】
谷先生 「ビーカーに入った『水』があります。そこに毛糸でつくったリボンを入れてみます。どうでしょう…なかなか水が浸透していない様子がわかってもらえますかね?」
りゅうちぇる 「(毛糸に水が浸透)しないですね。」
心 「(毛糸が)浮いてる!」
谷先生 「(もう一方の)ビーカーには『洗剤液』が入っています。同じように毛糸でつくったリボンを入れてみましょう。見ていてくださいね。」
〜約1分後〜
りゅうちぇる 「あらららら〜あー」
谷先生 「沈みましたね。これが『浸透作用』で、洗剤に含まれている『界面活性剤』には布に水を浸透させる作用があるんです。」
【乳化作用の実験】
「洗剤液」と「ごま油」を混ぜて振ってみると…白く濁りました。
「界面活性剤」には油汚れを水になじませる「乳化作用」という働きがあります。
ちなみに、「水」と「ごま油」を混ぜて振ると…「ごま油」は上、「水」は下、と分離してしまい、混ざりません。
【分散作用の実験】
「洗剤液」に、炭の粉「すす」を入れます。
すぐに「すす」は細かな粒子になり、全体に散らばっていきます。
固体の粒子を細かく散らす働きが「分散作用」です。
一方、「水」に「すす」を混ぜても、固まりの状態で(「すす」は)残り、混ざりません。
「洗剤液」の場合は「界面活性剤」の働きで、「すす」が分散されるのです。
洗剤やせっけんは、水にも油にもなじみやすい性質を持つ「界面活性剤」による3つの作用が総合的に働いて、汚れを落とすのです。
【再付着防止作用の実験】
さらに、「界面活性剤」の実験を続けます。
「水」と「すす」が入ったビーカーに布を浸して取り出すと、汚れが付いてしまいました。
一方、「洗剤液」と「すす」が混ざっているビーカーに布を浸して取り出しても、汚れは付きません。
これが「再付着防止作用」。
「界面活性剤」には、一度落とした汚れが再び服に付くのを防ぐ働きもあるのです。
ジュリアン 「界面活性剤の働きを初めて知ったし、その働きのおかげで服の汚れが落ちるんだなと思いました。」
りゅうちぇる 「そうだよね。洗剤の力を知ったよね。」
谷先生 「そもそも 洗濯をするということは、布に付いた汚れを繊維から引き離して水に移すことなんです。」
りゅうちぇる 「なるほど。汚れがどこに消えてるんだろう?みたいな感覚もあったけど、しっかり水に汚れを移している、というのが(洗剤の)働きとしてあるんですね。」
谷先生 「そうなんです。それが洗濯なんです。」
りゅうちぇる 「ここまでは家での洗濯の基本について見てきたんだけど、家で洗濯できないもの、例えばスーツとか制服などはクリーニング屋さんにお願いするよね。どんなふうに洗濯されているのか知ってるかな?」
心 「クリーニングといえば、『ドライクリーニング』!?」
りゅうちぇる 「正解です!そのドライクリーニングがどんなふうに行われているのか、カメラが直撃しました!」
早速、家庭で洗濯できない“制服”をドライクリーニングで洗ってもらいましょう!
まずは、「検品」作業。
ポケットにものが入っていないか、穴やほつれ、染みなどがないか調べます。
検品が終わったら、洗浄機に入れ「洗浄」します。
洗うときに使うのは、石油系の成分などが含まれる「有機溶剤」という液体です。
ドライクリーニングで汚れが落ちる秘密は、この有機溶剤にあります。
ここで、「水」と「有機溶剤」の性質の違いを比較するスペシャル実験!
まずは「水」の中にティッシュペーパーを入れ、強く振ると…繊維がバラバラになりました。
ティッシュの繊維の間に水が入り込んで、バラバラになったのです。
続いて、「有機溶剤」にティッシュペーパーを入れて振ってみます。
「有機溶剤」では繊維はバラバラになりません。
それだけ繊維に与える影響が小さいのです。
そして、「有機溶剤」は油汚れには絶大な力を発揮します。
例えば、ファンデーションの汚れの場合、「水」で洗っても汚れはほとんど落ちていません。
一方、「有機溶剤」で洗ってみると、ファンデーションの汚れをかなり落とすことができていました!
衣服の汚れの大半は皮脂などの油汚れです。
ドライクリーニングは「有機溶剤」で洗浄することで、繊維を傷つけることなく油汚れを落としていくのです。
洗浄したあとは「仕上げ」。
アイロンがけなどを行います。
最後にほつれや破損がないか「最終検査」したら、ドライクリーニング完了です。
心 「汚れも落として繊維にも優しい有機溶剤ってすごいなって思いました。」
りゅうちぇる 「ねー!そんなのあるんだって、ぼくも(知らなかった)。感動したよね!」
りゅうちぇる 「僕は古着が大好きなんだけど、前に着ていた人が大切に手入れしていたからこそ、次の人もその服を着られるっていう、まさに手入れのたまもの!なんですよね。
このセーターをみてほしいんだけど、実はここに虫食いがあるんです。お気に入りのセーターを着ようと思ったのに穴があいていたら、ショックだよね。谷先生、どうしたら虫食いの被害を防ぐことができるんですか?」
谷先生 「衣服についた汚れは、虫にとって格好のエサになるんです。なので、衣服に汚れが付いていると、虫が寄ってきやすくなる。ですので、一回でも着たり 汚したりした服は、きちんと洗って手入れをして、そのあと、しまうように心がけてほしいなと思うんです。」
りゅうちぇる 「はい。」
谷先生 「季節ものとか長期間に渡って保存するものは、防虫剤や乾燥剤などを入れると、虫食いやカビなどから衣服を守ることができて効果的かなと思います。」
りゅうちぇる 「なるほど。ではここで、衣服を管理しているプロはどんなふうに気をつけているのか、毛皮のクリーニングのお仕事に、カメラが直撃しました!」
毛皮のコートは、どんなふうに洗濯するのでしょうか。
毛皮クリーニングのプロ、市川 清文さんの作業に密着します!
毛皮の種類などを確認したあと、洗浄機に入れます。
毛皮の洗浄には、特製パウダーを使います。
洗剤をしみこませてあるこのパウダーに、毛皮の汚れを落とす秘密があります。
パウダーの主な材料は、2種類の粉末です。
とうもろこしの芯とくるみの殻をそれぞれ乾燥させたあと、砕いて細かい粒にしたものです。
毛皮を洗浄するとき、表面がザラザラしている「くるみ」の粉末は毛の上の方の汚れを吸着し、表面が粗くない「とうもろこし」の粉末は毛の下の方の汚れを吸着します。
洗浄時間は15分ほど。
洗浄が終わると、たくさんの穴から毛皮の汚れを吸い取ったパウダーを回収します。
さらに、風で念入りに吹き飛ばしたら、毛皮の洗濯 完了です!
この会社では、シーズンオフの毛皮を保管室で預かる「保管サービス」も行っています。
虫の被害にあわないよう、保管する温度は15度〜18度に保ちます。
さらに、カビの発生をおさえるため、湿度は65%以下になるよう設定しています。
市川さん 「温度湿度を管理していても、必ず通気性のいいところで風通しをするのが重要になります。『管理をしているので問題はない』と思わず、風通しのいいときに 1カ月に1回とか、10分でも15分でも乾燥すると、衣類を(虫食いやカビなどから)防ぐことができると思います。」
心 「保管するのに適切な温度とか湿度があるってこともわかったし、風通しも大事なんだなっていうことがわかりました。」
りゅうちぇる 「きょうは服の洗濯で失敗しないためのコツについて学んできたんだけど、谷先生いかがでしたか?」
谷先生 「なぜ洗濯がきれいに汚れが落ちるのか、ふだんなかなか目を向けることってなかったりしますよね?」
りゅうちぇる 「そうですよね。」
谷先生 「でも、毎日の営みの中で洗濯ってたくさんやっていきますので、そういう生活の科学なども興味を持ってくれるとうれしいなって思うのと、洗濯って汚れを水に移すってお話をしましたけれども、洗濯した水は 最後は排水として流れていくことになりますよね。そういう意味では、洗濯と環境っていうのは大きくつながっているかなと思うので…いろいろなことを気にしながら(洗濯して)、服を大切に使っていってほしいなと思います。」
ジュリアン・心 「はい。がんばります!!」
それでは次回もお楽しみに!
1:洗濯で失敗しないポイント
洗濯の前に必ず、服の「洗濯表示」をチェックしましょう!
2:なぜ洗剤を使うと汚れが落ちる?
洗剤の主成分である「界面活性剤」、浸透作用や乳化作用などの働きで、服の汚れが落ちます。
3:衣服を長持ちさせる手入れ方法
衣類の長期保管では、温度や湿度、さらに風通しにも気をつけましょう!
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