Eテレ 毎週 木曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2020年度の新作です。
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第28回 食生活
「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!
今回も「食」について、現役高校生の、太哉さん(高3)、心さん(高3)と一緒に考えます。
りゅうちぇる 「心とからだの健康のために、食べることがどれだけ大切なのか、そして料理を作る楽しさなどについて学んできたんだけど…、朝ごはん、とるようになったかな?太哉くん!?」
大哉 「はい!僕は毎日(朝ごはんをとる)とはいかないんですけど、時間がある日はゴロゴロしないで(朝ごはんを)食べるようにしています。」
りゅうちぇる 「えらい!脳のエネルギー源を補うためにも、朝ごはんはしっかりとることが大切だったよね。心ちゃんは、どう!?」
心 「私も朝ごはん食べないと1日、生きていけないので、時間がなくても必ず何かをとるようにしています。」
りゅうちぇる 「えらい!僕もそう。やっぱり朝、食べないとビシッとしないよね。」
心 「はい、頭が回らないですね。」
りゅうちぇる 「そうだよね。ということで、今回も“食べもの”に関するテーマなんだけど、ちょっと重い内容なんですよね。」
今回のテーマは、「食べることに潜む危険 〜安全な食生活とは〜」。
りゅうちぇる 「ふだん僕たちは、いろいろな食べものを口にしていますよね!?何気なく食べているものに、危険が潜んでいる場合があるんです。そうしたリスクを予防するための対策について、一緒に考えていきましょう!」
安全な食生活について考える、3つのポイントは「食中毒を予防する」「食品の衛生と安全」「食品添加物」。
私たちは食事のとき、一体どんなことに注意すればよいのでしょうか!?
りゅうちぇる 「食べることに潜む危険といえば、まずは『食中毒』ですよね。」
食中毒とは、飲食物を介して体の中に入った「細菌」などに引き起こされる「健康障害」のことです。
りゅうちぇる 「食中毒は、じめじめした梅雨や暑い夏の時期に起こるイメージがあるけど、実は 食中毒は冬にも多く発生します!つまり、一年を通して食中毒への注意は必要なんですね。」
私たちがふだん食べている肉や魚。
こうした食材は、たとえ新鮮でも「細菌」や「ウイルス」などが付着している可能性が高く、食中毒を起こす危険性があります。
「サルモネラ属菌」は、生肉、特に鶏肉や卵から検出されます。
動物の消化管内に生息する「カンピロバクター」は、らせん状にねじれた体を持つ、感染力が強い細菌です。
魚介類などに付着する「腸炎ビブリオ」は、海水温度が15度以上になると活発に活動する細菌です。
こうした食べものの中で増殖する細菌が、「細菌性食中毒」の原因です。
心 「日常に食べている魚やお肉に、(肉眼では)見えてないけど、見ようと思えば見える細菌がいっぱいいると思うと、ちょっと怖いですよね。」
りゅうちぇる 「そうだよね。しっかり意識して(注意して)食べないといけないよね。」
食中毒には「細菌性食中毒」のほかにも、いろいろな種類があります。
「ウイルス性食中毒」
キノコやフグなど、「自然毒による食中毒」
「化学物質による食中毒」
「アレルギー性食中毒」もあります。
りゅうちぇる 「食中毒は、飲食店での食事が原因と思われがちなんだけど、毎日、食べている家の食事でも発生しているんです。どうやって予防したらいいのかというと〜、食中毒予防の三原則、菌やウイルスを 増やさない・つけない・やっつけるです。」
まずは、食中毒を予防する三原則のひとつめ、「菌を増やさない」
買い物でも注意が必要です。
生鮮食料品は購入したらすぐに持ち帰りましょう。
外で長い間食品を放置すると、温度が上がって菌が増殖してしまう恐れがあります。
家で食品を選ぶときも、冷蔵庫の扉を開けっぱなしにするのはやめましょう。
冷蔵庫の扉を開けていると、中の温度が上がります。
それが、菌の増殖するリスクにつながる場合もあります。
続いて、「菌をつけない」
木村先生 「野菜とお肉でまな板と包丁を使い分けてください。(まな板と包丁の)使い分けができない場合は、野菜を先に切ることがいいんですが、もしお肉のあとに野菜を切る場合は、(肉に付着した菌が移らないように)しっかり、まな板を洗ってから使ってください。」
最後は、「菌をやっつける」
お肉を焼くときは、十分に加熱し中までしっかり火を通すこと。これで菌をやっつけます!
揚げ物などの場合、表面だけが高温になっても、中身は生のままといったケースがあります。
中が生の状態だと、たとえ加熱しても菌が残っている可能性があります。
特に「冷凍食品」は要注意。
ちゃんと中まで火が通っているか、チェックしましょう!
また、食中毒が起きやすい季節には、野菜もできるだけ加熱処理をしておくと、より安全です。
木村先生 「料理ができあがったら、すぐに盛り付け すぐ食べる。(菌が繁殖する可能性があるため)できあがった料理を長いこと放置しないように心がけてください。」
ここで、ちょっと注目!
お弁当づくりなどで、まだご飯が熱いうちにフタをするのは絶対にNGです。
ご飯が熱いと、高温多湿となり水滴がフタにつきます。
細菌性食中毒の原因の「黄色ブドウ球菌」が増殖するのです。
太哉 「細菌を増やさないためには、(買い物のあと)外に長時間いないとか、当たり前のことを意識することが大事なんだなって思いました。」
りゅうちぇる 「(いま見てきたケースはどれも)結構やってしまいがちなところもあるんだけど、気をつけたいよね。食中毒予防の三原則を見てきたんだけど、食中毒を予防する上でほかにも忘れちゃいけない、大切なことってなんでしょうか!?」
太哉・心 『手洗い!』
りゅうちぇる 「正解!まずは『手洗い』が、食中毒を予防するために大切な対策になるんです。」
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策でも、せっけんによる手洗いの大切さが呼びかけられています。
実は、食中毒の場合も「手洗い」は大事な予防対策のひとつです。
1996年、全国で患者数が6500人を超える、大規模な食中毒事件が発生しました。
原因は、細菌「O-157(腸管出血性大腸菌)」。
さまざまな食品や食材から検出される「O-157」は、食べることだけでなく、人から人へ、人の手を介して感染し食中毒を引き起こします。
一般的に食中毒は10万個以上の細菌が原因で発症します。
でも、「O-157」は(感染力が強いので)菌がそれほど多くなくても発症するのです。
冬場に多く発生するのが、「ノロウイルス」による食中毒。
「ノロウイルス」も感染力が強いため、手洗いによる食中毒予防が効果的です。
心 「当たり前のように手洗いはしているんですけど、ウイルスは小さすぎて目に見えないので…、気をつけないといけないなと思いながらも、(ウイルス)付いてるの?って思っちゃいますね。洗っているから…」
りゅうちぇる 「(ウイルスが)付いているっていう意識で生活してたぐらいが…、」
心 「…ちょうどいいかもしれないですね。」
りゅうちぇる 「いいかもしれないよね。それでは、二人がちゃんと手洗いができているかどうか、(手洗いチェッカーを使って)チェックしてみましょう!」
ここで、「手洗い」チェック!!
まずは(チェックするための)ローションをしっかりと手に塗ります。
そしてふだん通りに手を洗います。
心さんと太哉さんは「手洗い」はちゃんとできているかな!?
りゅうちぇる 「それでは、箱の中に手をかざしてみてください!洗い残しがあるとローションがライトに反応して光って見えるんだけど、どうかな?」
心 「あっ!ヤバいです!ヤバい!結構、洗いましたよ!」
りゅうちぇる 「本当?ちゃんと手を洗った?」
心 「えっ!?」
実は二人とも、せっけんを使わずに手を洗いました。
しかし、それでは手に付着した細菌やウイルスなどを取り除くことはできません。
では、「正しい手洗いの方法」を確認しましょう!
・最初に、流水で手をぬらす
・殺菌作用のあるせっけんをつけ、手のひらをよくこする
・手の甲をのばすようにこする
・指先と爪の間を念入りにこする
・指の間を洗う
・親指と手のひらをねじり洗いする
・手首も忘れずに洗う
・せっけんで洗い終わった後は水で十分に流す
蛇口を閉めるときは、要注意!
素手で蛇口を閉めると、また手に菌が付着する可能性があります。
・ペーパータオルなどを持った手で蛇口を閉める
・最後に、手に残った水分はタオルなどでよく拭き取って乾かすことが大切です。
太哉 「改めて、正しい洗い方を意識しました。自分はぜんぜん手首が洗えてなくて、使わないからいいやみたいな、そういう感覚でやってたんですけど、(ローションが残っているのを)見て汚かったから、(正しい洗い方で手洗いを)やろうと思います。」
りゅうちぇる 「そうだよね、忘れがちだもんね。食中毒にかかった経験がないと、予防を怠ってしまいがちなんだけど、食中毒は家の食事でも起きるので、予防のためにも食品の扱い方に注意して、手洗いをきちんとしましょうね!」
りゅうちぇる 「僕たちがふだん口にしている食べものって、どうやって衛生と安全が保たれていると思う?太哉くん。」
太哉 「ちゃんと衛生管理された食品工場とかで食品を作っているから、マスクとか完全防備されていて安全な気がします。」
りゅうちぇる 「そうだよね。日本で食品をつくっている工場というと、清潔で安全ってイメージがあるよね。」
心 「でも、問題のある食品を自主回収するっていうニュースも、最近よく聞くんですけど…。」
りゅうちぇる 「実はいま、食の安全管理を徹底するために、日本国内の食品事業者などでは『HACCP(ハサップ)』という衛生管理方式が導入されているんです。」
事業者が衛生管理方式「HACCP」の認定を受けるには、
食材の受け入れや保管、調理の段階での加熱や冷却、そして・最終的な盛り付けや包装など、すべての工程で食品事故を未然に防ぐとともに、特に重要な工程については、継続的な監視と記録を行う必要があります。
群馬県の工場のケースでみていきましょう!
企業の社員食堂の食事や学校給食などを製造するこちらの工場は、2019年10月、群馬県初の「HACCP高度認定」を受けました。
工場で働く従業員の衛生管理も徹底しています。毎日、手荒れ・傷・爪をチェック。
また、(従業員)本人だけでなく、家族の健康状態もあわせて確認します。
作業の前には、必ず正しい方法で手洗いも行います。
さらに、髪の毛やほこりなどがついていないか、従業員同士でお互いに確認しあいます。
工場内は盛り付けを行う「清潔区域」、調理を行う「準清潔区域」、食材の下処理を行う「汚染区域」の3つに区分けされています。
区分けされた場所の往来を制限することで、工場内に汚染源があった場合でも二次汚染につながらないよう注意しています。
また、工場内には21台のカメラが設置されています。ルールがしっかり守られているか監視しているのです。
給食センター理事長 横山さん 「新型コロナ(ウイルス)もそうですけど、基本は手から食中毒が移りますので、HACCPに基づいたマニュアルをきちんとつくって、それをきちんと実行していくというところが、一番大切だなと思います。」
このHACCPという管理方式は、もともと アメリカのNASAで考案された、宇宙食を製造するための食品製造管理方式です。
HACCPによる衛生管理は、国内すべての食品事業者に対して、2021年6月までに原則として完全義務化が求められています。
そして、これらの取り組みは、SDGsの目標にもつながっているのです。
SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任:持続可能な消費と生産のパターンを確保する」
りゅうちぇる 「食品事業者は“つくる責任”として食品事故を未然に防ぐために、適切に食品を管理すること、そして 消費者は“つかう責任”として食中毒にならないように、購入した食品の管理や調理をしなければならないんです。食品の衛生と安全を守るために、僕たち“つかう側”も気をつけなくちゃダメなんだよね!」
太哉・心 「はい!」
りゅうちぇる 「日本で販売される食品は『食品表示法』の規定に基づいて、原材料名・消費期限・賞味期限・製造者・販売者などの表示が義務づけられているんだけど、『食品添加物』についても表示義務があるんです。」
太哉 「賞味期限とかは見るんですけど、食品添加物はあんまり(表示を)見ないですし、よくわからないです。」
りゅうちぇる 「そうだよね。」
食品添加物には、甘味料・着色料・保存料・酸化防止剤・防かび材・漂白剤 などがあります。
心 「食品添加物自体は、あまりいいイメージではない…という訳でもないんですけど…、
やっぱり“無添加”と“食品添加物”を比べちゃうと、“無添加物”を選んだ方がいいのかな?とはなってしまいますね。」
りゅうちぇる 「そうだよね。やっぱり食品添加物ってどうなんだろう?、みたいなところがあるよね。」
りゅうちぇる 「このふたつのハムは、どちらもふだんスーパーなどで売られている商品です。二人なら、どっちを選ぶかな?」
心 「ピンクが濃い方ですね。」
太哉 「ピンクの方。」
りゅうちぇる 「そうだよね。色味が鮮やかで、おいしそうな感じがするのかな?」
太哉 「おいしそう。」
この色合いのよいほうのハムは、味をよくしたり、色や香りをつけたり、菌やカビを防いで長持ちさせるための「食品添加物」が使われています。
ここからは、食中毒予防の方法についても教えてもらった、番組の監修を担当する、東京都立駒場高等学校 教諭、木村裕美先生と一緒に考えていきましょう。
木村先生 「味・色、保存性など、私たち消費者が求めるニーズに応えるためにも食品添加物は大事なものになっています。食品添加物は怖いというイメージを、漠然と持っていると思うんだけど、とにかく自分で(食品添加物の)正しい知識を調べて、身につけてほしいと思います。」
りゅうちぇる 「悪いイメージにとらわれがちだけど、食品添加物が入っている必要性をしっかり知って、自分自身で食品を選んでいくっていうことが必要なんですね。」
りゅうちぇる 「でも、食品添加物はとりすぎない方が健康にはいいんじゃないかなって思うんですけど、それはどうなんですか?」
木村先生 「食品添加物を認可するときは、専門機関で数年かけてしっかり検証しています。また動物実験などのデータから無毒性量(食品添加物を与え続けても、動物に有害な影響が見られない最大の投与量)が算出されており、無毒性量の100分の1の値の摂取許容量が定められています。1日あたりの摂取許容量より、もっと少ない量が食品添加物の使用基準になっています。とにかく大切なことは、一度に大量に摂取しないということです。」
りゅうちぇる 「食品添加物も、なんでも、とりすぎはよくないんですね。」
木村先生 「そうですね。」
りゅうちぇる 「今回は食品に潜む危険性について学んできたけど、二人はどう思ったかな?心ちゃん。」
心 「これからは食中毒予防のためにも、自分ができることもあるし、しっかり食品を選んでいくことも大事だなって思いました。」
りゅうちぇる 「本当だね。太哉くんは?」
太哉 「めんどくさがらずに、しっかり正しい手洗いをして、食中毒予防していくのが大切だなって思いました。」
木村先生 「今回は安全な食生活について学んできたのですが、輸入食品の残留農薬や遺伝子組み換え食品など、私たちの食生活の周りにはたくさんの課題があります。感度よくアンテナを張って、(食生活に関する)情報を得てほしいと思います。」
りゅうちぇる 「食べることで危険な目にあいたくないからこそ、食中毒を予防すること、管理方法や調理方法も気をつけていくこと。どんな食品を食べるのか、自分自身の判断も大事なんだなって改めて思いました。」
それでは次回もお楽しみに!
1:食中毒を予防する
食中毒予防には、正しい方法での手洗いが大切です!
2:食品の衛生と安全
「HACCP(ハサップ)」という衛生管理方式が導入され、食品の衛生と安全が守られています。
3:食品添加物
「食品添加物」の正確な知識を身につけましょう。
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