Eテレ 毎週 木曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2020年度の新作です。
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第16回 共生
「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!
これまで、赤ちゃん・高齢者・性的マイノリティの人たちのことなどを取り上げてきましたが、地域にはほかにも障がいのある人や外国の人など、いろいろな人が暮らしています。
そこで、今回は「地域と生きる〜みんなが共に生きる社会とは?〜」というテーマです。
現役高校生の、絢音さん(高1)、ジュリアンさん(高2)と一緒に、誰もが暮らしやすい社会とはどんな社会なのか、考えていきます。
3つのポイントは、「共に生きるってどういうこと?」「ボランティア活動」「地域社会の課題とは?」です。
地域社会の一員として自分にできることはないか、探していきましょう!
まずはこちらのデータに注目!
りゅうちぇる 「厚生労働省の推計では、体や心に障がいのある人は日本全国に936万人(人口の約7.4%)います。学校のクラスで考えると、40人の中に3人ぐらいいる割合なんだって。」
ジュリアン 「そういうふうに言われると、(障がいのある人の割合は)多いなって思いました。」
絢音 「周りに(障害のある人が)そんなにいないと思っていたので…1クラスに3人というのが結構びっくりしました。」
りゅうちぇる 「そうだよね。日本では小さい頃から、障がいのある人は、施設や、同じ学校でも特別支援学級に分けられている場合が多いから、交流する機会がすごく少ないんだよね。」
地域の中で障がいのある人たちと「共に生きている」姿を見てみましょう。
神奈川県横浜市の団地の一角に、“カフェベーカリー ぷかぷか”という人気のパン屋さんがあります。
この店は知的障がいのある人の経済的自立を支える福祉作業所です。
地域の人たちは親しみをこめて、彼らを“ぷかぷかさん”と呼んでいます。
40人ほどの“ぷかぷかさん”が、ここで働いています。
シャイでぶっきらぼうだけど心優しいユースケさん(38歳)は、毎日 誰に言われるわけでもなく、黙々と花壇の手入れをします。
ユースケさんは、顔なじみのお客さんを見かけて嬉しくて飛び出してきました。
個性豊かなぷかぷかさんたちによるあたたかいおもてなしが、お客さんの心をつかみリピーターを増やしています。
(お客さん) 「ちゃんと『ありがとうございます』って(ぷかぷかさんに)言われるから、うれしいなって思って。だからよく買う。おいしいし。」
(お客さん) 「ちょっとした“アミューズメントパーク”みたいなところがあって、ぷかぷかさん自身が 優しくて おもしろくて、ワクワクしているうちに、おいしいものが買えたり、食べられたりして。」
フタミンさん(21歳)は想像力がとっても豊か!
この店を経営する、NPO法人「ぷかぷか」理事長 高崎 明さん(71歳)に、何かを持ってきました。
高崎さん 「なんだこれ?」
フタミンさん 「明日からのキャンプ。」
高崎さん 「キャンプに行くの?明日から?」
フタミンさん 「うん。えーと、みんなで。」
高崎さん 「そう。決まったの?」
フタミンさん 「うん。」
本当はキャンプの予定なんて、ないのですが…
高崎さん 「明日から!?お店はどうするの?」
フタミンさん 「お店はなくなる。」
高崎さん 「なくなる(笑)!?お店、休みにするの?誰か他の人に任せて?」
フタミンさん 「う、うん…お店は消えちゃうのよ。ふわふわふわーって。」
高崎さんにお話を伺いました。
高崎さん 「(障がいのある人たちと)毎日付き合っていると、できないことを超える魅力(がある)。その人のそばにいると心があったかくなるとか、ほっとするというのか。その人たちのそばにずっと一緒にいたいというか。」
お店のパンは毎日完売!国産小麦と天然酵母を使い、20時間かけてじっくり発酵させたこだわりの味で勝負しています。
(職歴30年のパン職人)長尾治美さん 「ほかにないようなもので、お客さんがおいしいと思って買ってくれるようなものを作りたいなと思って。簡単にパッとできちゃうものじゃなくて。(ぷかぷかさんは)急がない人たちなので、じっくり待てる人たちと一緒に作ると、一緒に手間をかけて作れるという部分があるんですよね。」
“ぷかぷかさん”たち自身も、この店で働くことにやりがいを感じているようです。
区役所での出張販売でも、次々とパンが売れていきます。
大盛況の中、脇のソファで居眠りしているのは、“ぷかぷかさん”のひとり、 セノーさん(28歳)です。薬の副作用もあり、どこでも寝てしまいます。
しかし販売が終わると、セノーさんには大事な仕事が待っています。
郵便局での売り上げの入金を任されているのです。
たとえ時間がかかっても、郵便局の人たちは作業を最後まで見守ります。
セノーさんの飾らない人柄に、みんなすっかり引き込まれこの時間を待ちわびています。
(郵便局員) 「楽しいです。(ぷかぷかさんが)いらっしゃると明るくなりますね。」
高崎さんと“ぷかぷかさん”たちが一番大切にしているのは、「みんなで一緒に いい一日を作ること」だといいます。
高崎さん 「ここは パンがおいしいだけじゃなく、来るとほっとできるような場所。それを作っているのが彼ら(“ぷかぷかさん“たち)の魅力というか、ありのままの彼らなんですよ。社会に合わせて自分を押し殺した彼らではなく、ありのままの自分を発揮したときに魅力を感じられる。普通の人だって自分を押し殺して生きている(ことが多い)。(“ぷかぷかさん”と接していると、)自由な自分を思い出すというか。『これが大事だよね』っていうことに気がつく。」
絢音 「すごく楽しそうで、自由で、うらやましいなと思った。そういう(障がいのある)人たちと関わっていくことで、私自身も人生にもっと価値が出る、価値のある人生になるんじゃないかなと思いました。」
りゅうちぇる 「そうだよね。僕もその通りだと思っていて、実は僕の実家の近くも障がいを持っている方がやっているタコライス屋さんがあるんですよ。味もおいしいから人気のお店で、お店がきっかけで話してみたら楽しくて、自分の人生も価値があるものになるという発見にもなるから、こういうお店(があると、)すごくいいんですよ。」
このお店のような、障がいのある人の経済的自立を支える福祉作業所は、全国に1万か所以上あります。
運営は、お店の売り上げと国や自治体などからの公的支援で成り立っています。
りゅうちぇる「みんなの家の近所にも、こんな素敵なお店がないか、ぜひ探して行ってみてほしいなと思います。」
りゅうちぇる 「みなさんは『ノーマライゼーション』という言葉、知っていますか?」
ジュリアン 「僕は初めて聞きました。」
絢音 「私は名前(だけ)は聞いたこと、ありました。」
りゅうちぇる 「ノーマライゼーションというのは、誰もが安心して普通、「ノーマル」に暮らせる社会の実現をめざす考え方や取り組みのことです。1950年代以降、世界中に広まった社会福祉の基本的理念です。」
絢音 「まさに『ノーマライゼーション』の理念にぴったりのパン屋さんだったんですね!」
りゅうちぇる 「そうなんですよ!でも実際には『(仕事が)できない』とか『生産性がない』という理由で、障がいのある人は就職先が見つからなかったり、職場から解雇されたりすることがまだまだたくさんあるんですよね。
だからこそ、国は企業に対して、一定の割合で障がい者の雇用を義務付けているんだけれども、それが達成できている企業は半分以下にとどまっているんだよね。」
りゅうちぇる 「共に生きる社会を実現する第一歩は、まず知り合うこと。地域にはどんな人たちが住んでいるか、お互いに知り合わないと何も始まりませんよね!?そのきっかけになるのが、ボランティア活動です。今度は、外国の人と共に生きる社会をめざす、ボランティアの取り組みを見てみましょう。」
これから紹介するのは、「家庭総合」を学ぶときぜひ知っておいてほしい「SDGs」の17の目標の中の、目標10「人や国の不平等をなくそう」の解決にもつながるボランティアです。
日本には約2千人のトルコ出身のクルド人がいるといいます。
その多くが暮らすのは、埼玉県南部。新年を祝うお祭りで、地元の人との交流を図っています。
「国を持たない最大の民族」といわれるクルド人は、主にトルコやイラク・シリアなどに暮らしていますが、紛争などで各国から逃れる人も少なくなく、日本にもやってくるようになりました。
埼玉県川口市の公民館では毎週土曜日、クルド人のための日本語教室が開かれています。
クルド人は100円を支払って、教室に参加します。この参加費は場所代にあてられます。
そして、教える人は全員ボランティア!
この教室を開いたボランティアの小室 敬子さんは、勤めていた会社を辞め、半年間、専門学校に通って日本語を教えるスキルを身につけました。
いまは、定時制高校で日本語を教えている小室さん。
一方で、ボランティア活動も熱心に行っています。
小室さん 「(クルド人に日本語を教えるボランティアは)ただ本当に好きだからやっている、それだけですね。私も友達になれたと思っているし、クルドのお母さんたちも私のことを友達だと思ってくださるし。」
時には、数学など学校の宿題をサポートすることもあります。
小室さんは、中学生や高校生からの要望をうけて、平日の夜にも教室を開くことにしました。
子どもたちの成長を見守る中で、小室さんは大きな課題に気づきます。
日本で生まれ育ち、地元の学校に通っていても、日本語の学習が不十分なため授業についていけないクルドの子どもたちが多くいたのです。
小室さん 「言葉の力が足りないと、いい仕事を探すこともできないし、いい給料をもらうこともできないし、なんとか日本語の力をあげていって、彼ら(クルドの子どもたち)があとから振り返ってよかったなと思える人生を、『日本語を少しでも頑張ってよかったな』と思える人生になってほしいなと思っています。」
6年前、10歳の時に来日した、ロジンさん(16歳)。
日本語教室では、小室さんから、言葉だけではなく、日本での生活習慣なども教わってきました。
勉強のかいがあって、ロジンさんはこの春、定時制高校の2年生に進級しました。
ロジンさん 「私は(日本に)来た時、まったく日本語がわからなくて、すごい大変だったんですよ。小室さんにメチャメチャ感謝かな。(これからも)日本に住みたいし、安全だし戦争とかもないし、だから自分もいっぱい努力して頑張っていきたい。」
小室さんが日本語教室を立ち上げて4年、口コミで活動が広がり、さまざまな年代のボランティアが集まるようになりました。
(ボランティア) 「卒業論文を書いている関係で、移民・難民の方について調べていて、それをあたっていたら、ここにたどりついたという感じです。」
(ボランティア) 「今まで勤めていた仕事を年齢でやめたんですよね。それで自分の身近で役立つことをやりたいと思っていたので、うってつけだった。」
この街で一緒に生きていくために。
小室さんは、ここでボランティアを経験した人や、ここで育った子どもたちに、将来、日本人とクルド人のかけはしになってほしいと願っています。
ジュリアン 「僕も5歳の時に日本に来て、まったく日本語がしゃべれなかったんですよ。(なので)クルド人の苦労は僕もわかります。怖いんですよね、何て言われているかわからないし、何て言えばいいのかがわからないから…。(僕が日本に来たばかりのころに)日本語を教えてくれる人たちが周りにいたら、たぶん今の自分も変わっていると思います!」
りゅうちぇる 「本当だね。ジュリアンくんは、フランス語も今は得意なの?」
ジュリアン 「今もお父さんと話す時は、フランス語かスペイン語で話しています。」
りゅうちぇる 「そうなんだ。そうしたら、ジュリアンくん自身も、日本に来た人たちにボランティアで、日本語も話せるから教えられるね!ジュリアンくんもやってみたら?」
ジュリアン 「そっか!できます。頑張ってみます!」
ここからは、クルド人に日本語を教えるボランティア活動を行っている、日本語教室主宰 の小室 敬子さん(61歳)と一緒に考えていきます。
りゅうちぇる 「ボランティア活動を続けていると、地域の課題が見えてくるものでしょうか?」
小室さん 「そうですね。例えば“給料”という単語がクルド人のおうちの中で出てこなければ(わかる人がいなければ)、働いてお金をもらうことは知っているけど、“給料”という単語を聞いても何のことかわからなかったりします。そういう(クルドの)子どもたちは、国語だけではなく数学の問題の意味を知ることも大変だし、社会や理科も…、勉強するのがとても大変な状況になっていきます。」
日本の学校に在籍し、日本語の指導が必要な児童や生徒の数は、2016年の調査で4万3千人余りいます。
2006年〜2016年の10年の間で、1.7倍に増加しています。
外国の子どもたちの日本語教育の問題は、全国的な課題でもあるのです。
りゅうちぇる 「(外国の人たちは)日本は安全だし、安心できるし、日本が好きという理由で、(日本に)来てくれているわけじゃないですか。それは僕たちも嬉しいし、助けてあげたい、支えてあげたい、守ってあげたいなって思うんですけれども。」
小室さん 「そうですね。(クルド人の場合、)日本で生まれた子どもたちは、トルコのことは何も知らないので、日本が“ふるさと”として育っていきますから、自分が育った国を好きだなと思いながら大人になってほしいし、小さいお子さんから小学生〜大人になって働いて・・・結婚するまで、私たちボランティアは見届けていきたいなと思っています。」
りゅうちぇる 「小室さんのボランティア活動に感謝されている方もいっぱいいると思うんですけど、もっともっと大きくなって、そういう方がみんなと平等に夢を追いかけられるようになるといいですよね。」
小室さん 「そうですね。外国人だからといって排除されるのではなくて、夢はみんな、それぞれ持っていますから、その夢を実現するために努力を惜しまない、周りの人もサポートを惜しまないという世界になれば、戦争もあまり起こらないと思うし、日本も気持ちが豊かな国になっていけると思うので、それをとても望んでいます。」
りゅうちぇる 「小室さんにとって、ボランティア活動とはどういうものですか?」
小室さん 「朝起きて私がエネルギーをもらうものというか、私がいま生きているために必要なもので、私がみんな(クルドの人たち)からもらう気持ちや愛を糧にしながら生きていく、私の原動力になっていると思います。」
絢音 「ボランティアって、自分自身も得るものがあると思うんですね。自分自身が得られる(ものもある)し、結果的に相手も嬉しいって感謝してもらえるのって、すごいいいものだなって思った。」
りゅうちぇる 「ボランティアって、無償で 何ももらわなくていいけどやる、みたいなイメージがどこかにあるけど、そんなことじゃないんだよね。ちゃんと返ってきて。
そして、いつか自分が困った時に誰かに助けてもらえる、誰かが困っている時に自分も助けられる、そういうことが当たり前のことが循環していくようになったらいいよね。」
それでは次回もお楽しみに!
1:共に生きるってどういうこと?
だれもが安心して普通に暮らせる社会をめざすのが「ノーマライゼーション」です。
2:ボランティア活動
ボランティア活動を通して新たな人間関係を築くことで、自分自身も豊かになります。
3:地域社会の課題とは?
地域社会の課題を解決するため、今、自分にできることを考えてみましょう!
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