NHK高校講座

家庭総合

Eテレ 毎週 木曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2020年度の新作です。

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今回の学習

第13回 高齢者

高齢者を支える

  • ゲスト:国立病院機構東京医療センター総合内科医長 本田 美和子
    監修:兵庫教育大学教授 永田 智子
学習ポイント学習ポイント

高齢者を支える

今回のテーマは 「高齢者との共生」
  • 英
  • ジュリアン

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回も「高齢者」に関することについて、現役高校生の英さん(高1)、ジュリアンさん(高2)と一緒に考えていきましょう。


りゅうちぇる 「高校生の2人は、高齢者とどんな関わりがあるのかな?」

英 「私はおじいちゃんとリモートで、家族みんなでやりとりすることが最近すごい多いですね。」

ジュリアン 「僕はこの前、道に迷っている高齢者に話かけて道を教えてあげたら、お礼にハグされて、ちょっとビックリしました!」

りゅうちぇる 「えっ!でも、なんてハッピーな(体験)!?」


今回のテーマは「高齢者を支える」です。
高齢者を支えていくために、私たちはどんな関わりをしていけばいいのか、一緒に考えていきましょう!
3つのポイントは「高齢者の心身の特徴」「高齢者の介護・介助のコツ」「認知症って?」です。
高齢者を支援するときに必要な心構えについても、学んでいきましょう!

高齢者の心身の特徴
日常生活に影響がある高齢者の割合

上のグラフは、身体機能の低下などが原因で「日常生活を送るのに影響がある」と回答した高齢者の割合を示したものです。

りゅうちぇる 「この調査結果をみて、英ちゃんはどう思う?」

英 「年齢が上がるごとに、どんどん不自由に感じることが多くなっているのは、すごいドキドキしちゃう。(いつかは)自分も年を重ねるから。」

りゅうちぇる 「自分たちも年をとっていくわけだからね。85歳以上の方なんて、ほぼ半分(が日常生活を送るのに影響がある)という感じだもんね。」

日常生活にも影響が出てくるような変化、年齢とともに少しずつ身体機能が低下していことを、「老化」といいます。

  • 高齢者疑似体験セット
  • 白内障体験ゴーグル

老化によって、体はどう変化するのでしょうか?
「高齢者疑似体験セット」を装着することで、体の機能が低下した高齢者の状態を実感することができます。
老人性白内障を体感できるゴーグルをつけてみると、視界が全体的にかすんでしまい、白くぼんやりとしか見えません。

  • サポーターをつけて体験
  • 適切な介助が必要

続いて、膝や足首などにサポーターと重りをつけ、関節の曲がりにくさ、動きにくさを体験します。

老化による身体的変化には、大きな個人差があります。
高齢者の自立を支えていくためには、それぞれの状況に応じた適切な介助が必要なのです。



英 「白内障に見えるゴーグル、わたしも小学校のときに体験したことがあって、全然見える世界が違って『怖い』と思ったのを覚えている。本当に(老人性白内障の人は)こういう世界(視界がぼんやりした状態)で生きている人がいるから、気を使わなきゃって感じました。」

りゅうちぇる 「そうだよね。それを知ると知らないとでは、街中で高齢者の方を見かけた時にどう対応するか、話かけようか、ということも変わってくるもんね。ジュリアンくんはどう思った?」

ジュリアン 「やっぱり、ひとりひとりの老化の状況って絶対違うから、その人にあった対応が必要だなと僕は思います。」

りゅうちぇる「確かに。(老化には)個人差があるっていうことも知った上で、勉強していくっていうことは大切なのかもね。」

高齢者の介護・介助のコツ
  • 本田先生
  • ユマニチュード

実際に高齢者の方をサポートするには、どのようにすればいいのでしょうか。
ここからは高齢者のケアが専門の医師、国立病院機構 東京医療センター 総合内科医長 本田 美和子先生と一緒に考えていきます。

本田先生 「高齢の方にどう接したらいいのかというのは、若い方はなかなか難しいかもしれないんですけれども、コツはひとつだけで、『あなたのことを大事に思っています』ということを、相手にわかるように伝えるということなんです。


高齢者を介護する方法のひとつが「ユマニチュード」です。
フランスで広まったケアの技法で、「人間らしさを取り戻す」という意味があります。
ユマニチュードには4つの柱があります。

・相手を見る場合、正面から、そして近くから見る。長く見る。
・話すときには、できるだけゆっくりと、抑揚をつけるように。
・相手に触れるときは、できるだけ広く、ゆっくり触れる。絶対につかまない。
・できるだけ立って、いつまでも自分らしく、元気でいてもらうことをめざします。

本田先生 「高齢の方ができること、まだできることを『残存能力』ということがあるんですけど、残存って言葉、個人的にあまり好きじゃなくて。(高齢者に)いまできることをやってもらう、というように考えてもらいたいなと思います。お手伝いをする側は、その人ができることを最大限にやってもらうためには、どういうお手伝いをすればいいのか、ということを考えてもらえたらなと思います。」


ここで、高齢者の立ち上がりの介助をするポイントをスペシャルレッスン!
ユマニチュードを意識して、ジュリアンくんが挑戦します。

  • 立ち上がりの解除に挑戦
  • 正面から見る

ジュリアン 「お手伝いに来ました。」
まずは、正面から見る。

ジュリアン 「失礼します。」
続いて、膝を90度に曲げる。そのとき、足は下から支えて、つかまない。

  • 手を前に差し出す
  • 楽に立ち上がれた

ジュリアン 「じゃ!(手を持ってください)」
手を前に差し出すと、相手も自然に手が出て、上半身が傾きます。重心が前に移ると、立ちあがりやすくなります。

りゅうちぇる 「めっちゃいい!」

ジュリアン 「自分もこれ楽です。」

りゅうちぇる 「僕もこのやり方で全然、力を使ってないし、お互いホントに楽で、めちゃくちゃいいですよね。」

本田先生 「そうでしょ!ぜひ、試してみてください。」

認知症って?
  • 2025年の認知症の予想
  • 脳の細胞が壊れる病気

2025年には65歳以上の高齢者が、およそ5人に1人「認知症」になると見込まれています。

りゅうちぇる 「認知症も、老化によるものなんですか?」

本田先生 「認知症は誰にでも起こりうる可能性のあるもので、年をとるにつれてより多くの方が認知症になる、ということがよく知られています。」

りゅうちぇる 「認知症というとまず最初に思い浮かぶのは“物忘れ”だと思うんですけど?」

本田先生 「そうですね。認知症というのは分かりやすく説明すると、頭の中には脳があり、脳の中にはたくさんの細胞があって、その細胞がどんどん壊れてしまうことで起きる病気です。

認知症の症状イラスト

本田先生 「(上の図の)真ん中に『中核症状』というのがあります。これが脳の細胞が壊れることによって起こる症状、『ものを覚えられなくなる』などが典型的な症状ですよね。
それに伴って、私たちはいろんなことが不安になるんです。みなさんも思い出せないと、いろんなことが不安になりますよね。」


りゅうちぇる 「そうですよね。」

本田先生 「そうなると、さまざまな症状が(中核症状の)まわりにありますが、不安になったり、ひどいことを言ったり、歩き回ったりするような症状を、『認知症の行動心理症状』といいます。
ですから、認知症は中核症状と、そのまわりにある行動心理症状によって起きると、まずは考えてみてください。」

  • 笑いかける英
  • おばあちゃんごめんねと思うジュリアン

英 「私のおばあちゃんがいま91歳で、だいぶ動きも危なっかしくなってきたりとか、ずっと同じことを、『あたし、ここにいていいのかしら?』とか『あたし、どうしたらいいの?』とかいうことを、1日に何回も何回も言っていますね。」

りゅうちぇる 「そうなんだ。そこで英ちゃんは、声かけとか、何かしていることとかはあるの?」

英 「私のお母さんとか、つまりおばあちゃんの子どもたちは、もうだいぶ慣れてきちゃって『大丈夫だから、大丈夫だから』と言ってるんですけど。そう言っているときに、私が目の前に行ってニコッって笑いかけると、急におばあちゃんの顔になって『フフッ』って笑うんですよ。急におばあちゃんになってくれちゃうから、不思議だなって思ってるんですけど。」

りゅうちぇる 「言葉でいったりとか、『大丈夫だよ』と説得するよりも、笑顔を見せてあげるって、なんかステキだなって思いました。ジュリアンくんは?」

ジュリアン 「僕のおばあちゃんは、認知症とうつ病の症状があって、数分前に言ったことを何度も言って、『今、何分だっけ?』『何月何日?』を1分の間に5回くらい聞いてきちゃうんです。最初の3回くらいはやさしく答えるんですけど、いっぱいになってくると少しずつ怒ってきちゃうというか、疲れて怒っちゃうときがあるので。そういうときは、『ごめんね』ということがあります。」

りゅうちぇる 「そっかあ。やっぱり、同じようなことを繰り返して言うことも、よくあるものなんですよね?」

本田先生 「そうですね、典型的な症状ですよね。おばあさまにとっては、聞いたことを覚えてないんです。だから、初めての質問なんですよ。初めてのことを聞いているんだけども、『何度も言ったでしょ』と怒られる。となると、不安な気持ちがどんどん高まりますよね。
時間が本当に知りたいんじゃない可能性もある。なんとなく落ち着かないから、『何時だろう?』とか聞きたくなったりするんですよね。そういうときの解決法は、さっき英さんが素晴らしいことを言ったんですけど、正面にまわってニッコリ笑ったら、おばあさますごく喜ばれたんですよね?不安が消えちゃったんです。」


りゅうちぇる 「は〜〜(そういうことか!)」

  • 不安を取り除くのは笑顔
  • 喜ぶ英

本田先生 「だから、同じことを何度も聞かれるときには『ああ、何か心配ごとがあるんだな』(と思う)。はっきりした(心配)ことじゃなくて、漠然とした不安が、おばあさま(おじいさま)の周りにあるんだと思って、それを取り除きにいけばいいんですよ。そして、(不安を)取り除くのは『笑顔』なんですよ。

りゅうちぇる 「英ちゃん、すごい!」

英 「なんか、うれしい気持ちになった!」

りゅうちぇる 「(おばあちゃんが)ニコッて笑ってくれた、それが答えですもんね!」

本田先生 「『おばあちゃんのこと大好きよ』というのを、おばあさまがわかるように表現できたということで、すばらしいと思います。」

  • 藤田さん
  • 昭市さんと絢子さん

実際に認知症の高齢者を介護している様子を紹介します。
横浜市に住む、藤田 郁子さんは、6年前に認知症と診断されたご両親の介護をしています。
介護を始めてしばらくは、大きなトラブルはありませんでした。

でもある日、藤田さんが少しの時間外出していたとき、問題が起こります。
母の絢子さん(82歳)がお茶を飲むためお湯を沸かそうとしたのか、コンロの火と沸騰して空になったヤカンがそのまま放置されていたのです。
ヤカンの取っ手は熱で溶けてしまいました。

  • 視覚にうったえる注意喚起1
  • 視覚にうったえる注意喚起2

そこで藤田さんは対策として電気ポットを購入。
「お湯をわかすときは電気ポットを使うように」と、大きな張り紙をしました。
「火を使わない」と禁止するのではなく、お湯を沸かすときの別の方法を提示したのです。

また、父の昭市さん(86歳)は、家中のコンセントを抜いてしまうことがありました。
そこで藤田さんは、ひとつひとつのコンセントの近くにも張り紙をしました。

認知症の初期の段階では、張り紙など視覚にうったえる注意喚起が効果的な場合もあります。

  • 散歩する藤田さんと絢子さん
  • 家の様子

藤田さんは介護を続けるなかで、両親のできることを積極的に見つけ出そうと心がけました。
そして、家事などもできるだけ両親に手伝ってもらうことにしたのです。
例えば、洗濯。両親に頼むと、洗い物を入れて洗濯機をまわすところまではできるのですが、途中で洗濯をしていたことを忘れてしまいます。
そこで、洗濯物を干す作業だけ両親に頼むことにしました。

藤田さん 「では、すいませんが、ちょっと2階に行って洗濯物を干してきてもらえませんか?」

絢子さん 「私が干す?」

藤田さん 「うん。おじいちゃんもちょっと手伝ってもらえる?」

  • 洗濯物を干す絢子さんと昭市さん
  • 外を眺める藤田さん親子

(絢子さんが洗濯物を渡し、昭一さんが干していく)

絢子さん 「はい、渡すから。そこへピンチで止めて…」

昭市さん 「ここらへん?」

絢子さん 「みっともない!パンツの前にこれ(タオル)干して(パンツを隠して)!いいじゃない、つるしちゃえば終わるんだから。」

昭市さん 「うるさいなぁ、まったく〜」

“認知症と診断されても、まだできることはある”。そうして誰かの役に立つことが自信へとつながるのです。

  • 英の感想
  • ジュリアンの感想

英 「すごいほほえましかったですけど、ヤカンのことは命にかかわるというか、そのままだったらどうなっていたのだろうと思う。やっぱり身の回りに支えてくれる人がいるというのも、すごい大切だなって思った。生きているからこそ、仲むつまじい様子が見られるから、ホントに大切だなと思いました。」

りゅうちぇる 「そうだね。ジュリアンくんはどう思った?」

ジュリアン 「僕のおばあちゃんもよくコンセントを抜いちゃうんですけど、紙を貼っておくんじゃなくて、『取らないで』と口で言っていたんですよ。でも僕が家にいないときに、絶対抜いちゃうから、自分も紙に書いて貼っておこうと思って、今日からやります!」

  • 視点を変えることが大事
  • 手続き記憶・感情記憶

りゅうちぇる 「すごくいいヒントがたくさんあったよね。『洗濯まではできるけども、洗濯したことを忘れちゃって、干すことができない』というのは、よく考えたら『干すことはできる、忘れてしまっているだけ』なので、(高齢者が)できることは、しっかり自分たちも見つけ、お願いしてみる。おばあちゃん・おじいちゃんたちも、お願いしたことがきっかけで生まれる会話や、生き生きしている様子がすごく伝わってきた。だから、視点を変えるということが介護する側も、とっても大事なのかなって思いました。」

本田先生 “できることはやってもらう”というのがとても重要で、特に記憶がうまくとどまることができなくなっても、例えば手を動かすことの記憶(「手続き記憶」)とか、楽しかったことの記憶(「感情記憶」)とかは、わたしたちが学校で勉強して覚えたものの記憶よりも、うんと残るんです。だから、絢子さんもお洗濯を干すのは、ちゃんと覚えてらっしゃったでしょ。なので、何かをやってもらうというのは、とってもいいと思いますね。」

  • 徘徊
  • 認知症の行方不明者の推移

りゅうちぇる 「続いて、認知症の症状のひとつ『徘徊』。自分が今どこを歩いているのか
分からなくなってしまったりするんですよね。」

認知症が原因で行方不明になったという警察への届け出は年々増加していて、2018年には約1万7千人の届け出がありました。
徘徊は高齢者本人にとっても、介護をしている人にとっても深刻な問題です。

本田先生 『徘徊』という言葉は私たちから見たところで、ご本人には何かしらの理由があるんです。そこもまた、不安が原因になることが多いので、不安を取り除く工夫が必要ですし、それから、お家に帰れるようにできるだけ工夫をするというのも重要です。例えば名札や、家族の電話番号を持っててもらうとか、GPSが付いている携帯電話とか、靴もあるんですよ。そういうものも準備して、それを履いてもらうようにするとか、いろいろ試してみてください。」

  • 英
  • ジュリアン

りゅうちぇる 「今回は『高齢者を支える』ことについて学んできたんだけど、2人はこれからどんな支えをしていきたいなって思ったかな!?」

英 「介護や介助と聞くと、ちょっとネガティブなイメージを持っちゃう部分があったんですけど、不安を抱えているひとりの人間だって思って、前で『大丈夫』と安心させてあげるっていうのが、大事なんだなって思った。自分は実際に手伝ったことはあまりなかったんですけど、実践して支えていきたいなって感じました。」

ジュリアン 「僕、前に、道に迷っている高齢者の人に話しかけたんですけど、これからも自分が分かる範囲だったらちゃんと前から話しかけて、『どこ行きたいんですか?』と優しく言って、もしも言っても分からなさそうだったら自分もついていくみたいな、そういうことをしてあげたいなと思いました。」


それでは次回もお楽しみに!

【第13回 「高齢者との共生」】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第13回 ポイント1
  • 家庭総合 第13回 ポイント2
  • 家庭総合 第13回 ポイント3

1:高齢者の心身の特徴
身体機能が低下する「老化」が原因で、高齢者の日常生活にも影響が出ます。
自分にはどんなサポートができるか考えましょう!

2:高齢者の介護・介助のコツ
高齢者を優しく介護する「ユマニチュード」。
相手を大切に思っている気持ちを届けましょう!

3:認知症って?
「認知症」はだれにでも起こりうる可能性があります。
街なかで困っている様子の高齢者を見かけたら声をかけてみましょう!

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