NHK高校講座

家庭総合

Eテレ 毎週 木曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、2020年度の新作です。

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今回の学習

第10回 子ども

どう防ぐ?児童虐待 〜子どもの権利を尊重する〜

  • ゲスト:大正大学心理学部教授 玉井 邦夫
    監修:大阪府立天王寺高等学校教諭 谷 昌之
学習ポイント学習ポイント

どう防ぐ?児童虐待 〜子どもの権利を尊重する〜

今回のテーマは 「どう防ぐ?児童虐待 〜子どもの権利を尊重する〜」
  • 英
  • 虐待死した子どもの数

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回のテーマは、「どう防ぐ?児童虐待 〜子どもの権利を尊重する〜」です。
現役高校生の英さん(高1)と一緒に考えていきましょう!

りゅうちぇる 「『虐待』って言葉だけで、本当に胸が苦しくなる。ニュースで見るたびに、胸が苦しくなって、きついって思う、悲しい事件もいっぱいありますよね。実は、びっくりするような数字があります。」

2003年から2017年までの15年間で、1306人もの子どもが、虐待で亡くなっています。

英 「虐待で亡くなっている子がそんなにいるんですね。なんかびっくりしすぎて…」

  • 虐待の相談件数の推移
  • スタジオの様子

もうひとつ、注目してほしいデータがあります。
全国の児童相談所に寄せられた虐待の相談件数の推移です。
年々増加し、2018年度には約16万件。過去最多を記録しました。

子どもへの虐待を少しでも減らしていくために何ができるのか考えていく、3つのポイントは、「児童虐待と子どもの権利条約」「なぜ児童虐待はなくならないのか?」「相談窓口と支援体制」です。
子どもの権利を尊重し、尊い命を守るにはどうしたらよいのか、話していきましょう。

児童虐待と子どもの権利条約
  • 身体的虐待
  • 性的虐待

児童虐待は、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」によって、4つに分類されています。

殴る・蹴るなどの体罰で、身体に傷を負わせたり、命にまで危険が及ぶ、「身体的虐待」
児童にわいせつな行為をしたり、させたりする、「性的虐待」

  • ネグレクト
  • 心理的虐待

適切な食事を与えなかったり、長い時間放置したり、家に閉じ込めるといった育児放棄、「ネグレクト」
暴言や拒絶的な対応などによって、子どもの心を深く傷つける、「心理的虐待」

  • 児童虐待相談対応の内訳

児童虐待の相談で半分以上を占めるのが、外からは見えにくい、心理的虐待です。
年々増加し、深刻化しています。

  • スウェーデン法改正時からの取り組み
  • スウェーデン体罰に対する意識と実態

児童虐待の問題は、いま世界でも非常に関心が高く、子どもたちを虐待から守るための、さまざまな取り組みが各国で行われています。

なかでも先進的に取り組んでいるのが、スウェーデンです。
1979年、今から40年ほど前、スウェーデンは世界で初めて、親の体罰を法律で禁止しました。
そして、体罰に頼らない子育て法を載せた小冊子を、子どものいる全世帯に配布。
さらに、国が牛乳パックにも体罰禁止のメッセージを印刷するなど、さまざまな手段で社会全体に、親による体罰の禁止を広く訴えていきました。
その結果、スウェーデンでは体罰をする親が、かつては95%だったのが、いまでは2%にまで減ったのです。

  • 高橋さん
  • 子どもの権利条約

ヨーロッパの家族政策に詳しい、大阪大学大学院言語文化研究科 教授 高橋美恵子さんにお話を伺いました。

煖エ先生 「(スウェーデンは)この40年間、絶え間なく、親教育だったり、親へのサポートだったり、親だけに『こうやっちゃいけません、あれやっちゃいけません』というふうに強制するのではなくて、(日本も)社会全体が考え方を変えていくことを、もっと考えていかなきゃいけないのではないかなと思います。」

“たたかない子育て”を目指すスウェーデンの取り組みは、児童虐待に対する新たな動きを生み出します。
体罰禁止から10年後の1989年、国際社会の声が高まり、「子どもの権利条約」が国連で採択されました。
子どもが「生きる権利」「育つ権利」「保護される権利」「意見を表明する権利」などが明記された子どもの権利条約は、“世界中の子どもたちを守りたい”という強い思いがこめられているのです。

りゅうちぇる 「子どもの権利条約によって、児童虐待をなんとかして減らそう、防止していこうという取り組みも、より活発になっていったんだって。」

英 「でも、子どもが亡くなってしまったり、悲しい事件が起きている現状があって、なんで子どもの権利条約があるのに虐待がなくならないんだろうなって思います。」

なぜ児童虐待はなくならないのか?
  • 子どものしつけに体罰は必要か
  • 子どもをたたいたことがあるか

続いて。日本の子育てのなかで、「体罰」がどのようにとらえられてきたのか、考えます。
まずは、こちらのアンケート結果に注目してみましょう。

「子どものしつけに体罰は必要だと思いますか?」
・不要…63%
・時と場合によっては必要…37%
・必要…0%

「子どもをたたいたことはありますか?」
・ある…71%
・ない…29%

1歳以上の子どもを持つ親のうち、71%が「子どもをたたいたことがある」と答えています。多くの親は「体罰は不要だ」と思っているはずなのに…。

  • 児童福祉法
  • 18歳未満の子供を対象

1947年、「児童福祉法」が制定されました。
18歳未満のすべての子どもを対象とし、健全な育成と福祉を保障したのです。
しかし、体罰に関する具体的な規定はありませんでした。
そのため日本では、“しつけ”という名を借りた“体罰”が、長い間容認され、深刻な虐待死事件も起こりました。

  • 改正 児童虐待防止法可決
  • 改正 児童虐待防止法

こうした状況をなんとかしたいと、2019年6月、日本でもようやく子どもへの体罰を禁止する法律の改正が可決されました(改正 児童虐待防止法)。
スウェーデンから遅れること40年、2020年日本は世界で59番目に「子どものしつけに際して、体罰を加えてはならない」と法律で明記したのです。

りゅうちぇる 「体罰を禁止する法律は、2020年の4月、ようやく施行されました。」

英 「スウェーデンからどんどん世界は変わっていったとは思うけど、40年は長すぎるというか、遅すぎるなっていうふうに感じました。」

りゅうちぇる 「『何かが起きないと気づけないのか!?』って、思っちゃいますよね。」

  • 玉井先生
  • 体罰に頼らないしつけのポイント

ここからは、子どもの心理や虐待の問題にも詳しい、大正大学 心理社会学部臨床心理学科教授 玉井邦夫先生と一緒に考えていきます。

りゅうちぇる 「日本での児童虐待への取り組みは、世界と比べてどうしてこんなに遅れているんでしょうか?」

玉井先生 「体罰に関しては、長いこと、日本では『子どもは親のもの』という考え方がすごく強く残っていたので、結果的には子どもを育てるときに『親が力づくでやるのは当然』という考え方が、いまだに強いということだと思います。」

りゅうちぇる 「しつけとはいっても、体罰が子どもに与える影響は本当に大きいですよね。」

玉井先生 体罰というのは、基本的にしつけにはならないですね。俗にいう心の傷を与えますし、体罰が教えるのは『どうやって逃げるか、ごまかすか』だけであって、『どういうふうに頑張ろうか』という気持ちにはさせないので。」

りゅうちぇる 「体罰に頼らないしつけをする、ポイントってありますか?」

玉井先生 「まずひとつは、子どもに対して要求する中身が、ちゃんと子どもの能力に見合ってるかということですよね。できもしないことを要求したってできるはずもない。当たり前のことなんですけど。
もうひとつ大事なのは、きのうはほめたのにきょうは叱るとか、そういう気分次第のかかわりではなく、(子どもに向き合う姿勢を)いつも一貫させることがすごく大事だと思います。」


りゅうちぇる 「大人がしっかり考えていかなければならないことですよね。」

相談窓口と支援体制
  • 祐子さん
  • 児童相談所に保護

子育てに悩んで、子どもについ手をあげてしまった、あるお母さんのお話を見てみましょう。

子どもが好きで、ずっとお母さんになることが夢だった、祐子さん(仮名・36歳)。
結婚し、杏奈ちゃん(仮名・小1)と、俊くん(仮名・1歳)の、2人の子どもを授かりました。
しかし、長女の杏奈ちゃんは、児童相談所に保護されています。
祐子さんが、何度も杏奈ちゃんに手をあげてしまったことが原因でした。

  • 祐子さんの日記1
  • 祐子さんの日記2

近くに頼れる人が誰もいないなか、ずっとひとりで子育てをしてきた祐子さん。
当時の気持ちを日記に記していました。
「がんばって がんばって もうムリで しんどいのに 周りは助けてくれず それどころか私にもっともっと頑張れという。もう、疲れた。」
「夫も味方ではあるが 私の気持ちにしっかり寄り添ってはくれない。私はひとりぼっちだ。」

ある日、夫の健一さん(仮名・41歳)は、祐子さんから電話を受けました。
「すぐに帰ってきて」と助けを求められましたが、職場を離れることができませんでした。
2時間後、祐子さんは杏奈ちゃんに手をあげてしまい、自ら児童相談所に電話をしたのです。

  • 家事を手伝う健一さん
  • 顔が見たい

仕事が忙しかった健一さんは、育児は祐子さん任せでしたが、実際に子育てをするようになって、次第になぜ追い詰められるのか理解するようになりました。

健一さん 「『これはしんどいな』と(思った)。たぶんみなさんそうだと思うんですけど、睡眠不足だとか仕事で疲れているとか、いろんな状況がある中、カッとなるというんですかね。いつもだったら『はいはい』と流せることを、流せなくなるんですよね。それに僕が気づけなかったというか、嫁さんにずっと丸投げしてたんで…。」

子育ての大変さを知った健一さんは、妻の負担を軽くしようと、家事や育児をするようになりました。
夫婦で子育てをするようになって、心の余裕が生まれた祐子さんのいまの気持ちは…
「杏奈に会って、いままで悪いお母さんだったことを謝りたい。あの子の望むことはかなえたい。とにかく一目でいいから顔が見たい。」

夫婦はいま、児童相談所やカウンセリングの力を借りて、手探りでなんとか前に進もうとしています。
杏奈ちゃんが安心できる家をつくるために。

玉井先生 虐待に追い詰められていく親は、ほぼ間違いなく、何らかの孤立を感じているはずなんです。また、自分が『子育てがつらい』とか『苦しい』ということを相談したとしても、『あんたの力がない』とか『あんたが甘えているんだ』というふうに言われるんじゃないかという不安がすごく強くて、自分の弱みをなかなかさらけ出せないつらさもあると思います。」

  • 189番
  • 通告は義務

ここで突然ですが、みなさんは全国共通ダイヤル、いちはやく「189番」って知っていますか?
110番や119番と同じように、無料です。
電話は最寄りの児童相談所につながり、虐待の相談ができます。

玉井先生 「189番は、自分の虐待に苦しんでいる保護者の方とか、虐待されている子どもだけではなくて、その親子を取り巻いている周りの人たちであれば、誰もが使うことができる、連絡してほしいダイヤルなんですね。」

りゅうちぇる 「周りの人が連絡するっていうのは、どういう場合なんですか?」

玉井先生 「一応、法律の上では、『虐待と思われるような状況に接したら、それを通告しなければいけない』、誰にとっても義務だと言われているんです。」

  • 英の意見
  • りゅうちぇるの意見

玉井先生 「ただ、りゅうちぇるさん、英さんは、虐待かもしれないっていう出来事を、もしも見つけた時に、すぐに児童相談所に連絡ができますか?」

英 「人の人生がかかっているから、慎重にはならなきゃいけないと思うけど、助けたいなっていう思いが強いので通告します。」

りゅうちぇる 「僕もやっぱり、あとから自分自身も後悔したくないし、救える心・救える命があるのであれば、通告したいっていうふうに思うんだけど。果たしてそれが、いい結果を生むのかっていうのが心配で、なかなか行動に移せないっていうのもありますね。」

  • 児童相談員
  • 児童相談職員

実際に児童相談所に通告すると、どのような対応をしてくれるのでしょうか。
ある児童相談所の事例を見ていきましょう。

静岡県にある児童相談所に、虐待の情報が寄せられました。
「子どもが頻繁に親から暴力を振るわれ、顔にばんそうこうを貼って登校している」という通告です。

児童相談所職員 「いま、ご本人はどこにいますか?学校にいる…。」

通告から48時間以内に子どもの安全を確認することが望ましいため、早速、会議が開かれました。
過去にも虐待で対応したことがある子どもでした。
すぐに子どもの状態を確認する必要があると判断し、職員は学校へと向かい、その場で子どもを保護することを決めました。

一方、親を児童相談所に呼び出し、事情を聴きます
なぜ暴力を振るったのか問いただすと、親は「しつけだ」と訴えました。

児童相談所職員 「これは虐待行為、『いまの法律では虐待行為に当たります』ということを説明をして、『あ、そうなんですか』ということで、親御さんは(虐待していたと)ご理解いただけました。」

  • 通告内容をもとに情報収集
  • 通告は親子を助けるもの

児童相談所では通告内容をもとに、情報を収集し、あらためて虐待かどうか判断します。
また、通告や相談をした人のプライバシーや内容に関する秘密は守られます。

玉井先生 通告をためらってしまう方の気持ちの中で一番大きいのは、『自分のやってることが、親に対する育児のダメ出しになるんじゃないか』という不安なんですね。『自分にそんなことを偉そうに言う権利があるのか』とか、『これやったらかえって子どもが痛めつけられるんじゃないか』という不安なんです。
ただ、通告っていうのは子どもを守るということじゃなくて、『親子を助けるためのものだ』と無理にでも思っていただかないと、なかなか増えていかないと思います。


りゅうちぇる 「通告することによって、子どもが助かることもあるし、親自身も虐待に気づくきっかけにもなるかもしれないよね。だからためらわずに、気になることがあれば、通告することが大事なんですね。」

  • 英の感想
  • りゅうちぇるの感想

今回は、「児童虐待」について考えてきましたが、みなさんはどのように感じたでしょうか。

英 「周りの人間に何かを伝えるとか、助けを求められる環境とか、逆に周りの人間がいろんな人を見て気づける環境っていうのは、本当に大事なんだなっていうふうに感じました。」

玉井先生 「そうですね。高校生ぐらいになってくると、そろそろ『自分が親になったら』というイメージが持てるようになってくると思うんですよね。
その時に、『自分は本当に、子どもを何があってもかわいいと思えるか』とか、そう思えるんだとしたら、『両親が自分にどんな言葉をかけてくれたからなのか』というのを考えてもらうのも、児童虐待の問題に積極的に取り組んでいくという意味では、すごく大事かもしれません。」


りゅうちぇる 「子どもを虐待から守るためには、子どもだけじゃなくて親のSOSに対応できるような、そして親のSOSに気づけるような、周りのみんながサポートできるような社会に変えていくことが必要だなと思いました。


それでは次回もお楽しみに!

【第10回 「どう防ぐ?児童虐待 〜子どもの権利を尊重する〜」】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第10回 ポイント1
  • 家庭総合 第10回 ポイント2
  • 家庭総合 第10回 ポイント3

1:児童虐待と子どもの権利条約
世界中で、児童虐待防止に向けた取り組みが積極的に行われています。

2:なぜ児童虐待はなくならないのか?
15年間に虐待死した子どもの数は1306人。1人でも多くの、尊い命を救いましょう。

3:相談窓口と支援体制
虐待の疑いがある場合、私たちは通告する義務を負っています。

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