NHK高校講座

科学と人間生活

Eテレ 隔週 金曜日 午前10:20〜10:40
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第6回 生物

遺伝子とは… 〜 iPS 細胞ってなに?〜

  • 監修:東京都立国分寺高等学校教諭 市石 博
学習ポイント学習ポイント

遺伝子とは… 〜 iPS 細胞ってなに?〜

  • 木村多江さん
  • 中村嘉惟人さん

木村多江さんと中村嘉惟人さんがお届けする、科学と人間生活。
第6回目のテーマは、「遺伝子とは…〜iPS細胞ってなに?〜」。

  • DNA

「遺伝」というのは、血液型とか目の色とか、親の特徴が子どもや孫にあらわれることですよね。
用意したのは、遺伝子の本体「DNA」です。
左から、野菜のブロッコリー、そして鶏肉、そしてヒトのDNAです。

数学が苦手なカイトくん。

カイト 「俺が数学できないの、お母さんの遺伝じゃないかなって。」

タエ 「遺伝のせいかどうか、白黒はっきりつけましょう。」

  • スライドガラス
  • 染色液

  • カバーガラス
  • ろ紙

タエ 「綿棒で口の中の頬をこすって。」

この綿棒をスライドガラスにつけ、染色液をたらします。
カバーガラスをのせて、余分な染色液を、ろ紙で取り除きます。

  • 細胞と核

タエ 「顕微鏡で見てみて。それが、あなたの『細胞』よ。その赤くて丸いのが『核』。その核の中に、あなたの遺伝情報、DNAが入っているの。」

核・染色体・DNA
  • 核の大きさはおよそ0.006ミリ
  • ヒトの染色体の数は46本

地球上のあらゆる生きものの体は、細胞でできています。

細胞の中には核があります。
大きさは、およそ0.006ミリ。
核の中には染色体があります。
その数は、生物ごとに異なります。
ヒトの染色体の数は46本。
この染色体の中に遺伝情報を伝える「DNA」があるのです。

DNAの抽出
  • ブロッコリー
  • 鶏肉
  • ヒト

タエ 「抽出したDNAよ。ブロッコリー、鶏肉、そして、ヒト。」

カイト 「このモヤモヤしてるのがDNAなの?これ、どうやって取り出したの?」

  • 表面を切り落とす
  • すりつぶす

  • 白いモヤモヤがブロッコリーのDNA

タエ 「このブロッコリーからDNAを抽出していきますよ。まず、表面を切り落とします。
今度は、それをすりつぶします。このとき、よくすりつぶすことで、DNAが出やすくなるんですよ。
今度は、DNAを取り出す抽出液を作りましょう。材料は、水:200 mL、塩:10グラム、食器用洗剤:1 mL。身の回りにあるとても簡単なものでできるんですよ。
では、抽出液を加えていきましょう!
先ほどのすりつぶしたブロッコリーに、DNA抽出液を加えます。そして、ゆっくりとかき混ぜます。かき混ぜたら固形物を取り除きます。最後に、冷やしたエタノールを静かに30 mL加えます。」

カイト 「エタノールというのはアルコールのことですか?」

タエ 「そうですよ。」

加えてから10分後…。

カイト 「なんだか白いモヤモヤしたものが見えてますね!」

タエ 「それが、ブロッコリーのDNAなんです。」

  • レバーを押しつぶす
  • 鶏のDNA

タエ 「DNAは鶏のレバーからも抽出できるんですよ。鶏のレバーの場合なんですが、手で押しつぶしてから抽出液を加えるのがポイントなんです。

抽出液を加えて、80℃のお湯につけます。

カイト 「あたためて、反応を進めるんですね。」

そして、10分後…。

カイト 「やっぱり白いモヤモヤですね。」

  • 50℃のお湯に10分ほどつける
  • ヒトのDNA

タエ 「DNAはヒトでも簡単に抽出することができるんですよ。」

口の中の細胞が入った水。
それを試験管に移して、DNA抽出液を加えます。
そして、50℃のお湯に10分ほどつけてあたためます。
あたためたら、冷やしたエタノールを加えます。

カイト 「やはり白いモヤモヤが出ていますね!」

タエ 「これがヒトのDNAなんです。」

このDNAによって遺伝情報が引き継がれていきます。

  • DNAのX線写真
  • DNAの模型

  • 4つの塩基が結合してできている
  • ワトソンとクリック

タエ 「これはね、DNAのX線写真。今から70年くらい前に、ロザリンド・フランクリンという科学者が撮影したの。この写真をヒントにDNAの構造が分かったのよ。
二重らせん構造になっているのが特徴なの。ATGCっていう4つの塩基という物質が結合してできているの。この4つの塩基の組み合わせが、遺伝情報のもとになっているのよ。
DNAのX線写真を手掛かりにDNAの構造を明らかにしたのが、ワトソンとクリック。この2人はね、ノーベル賞を受賞したの。
DNAが二重らせん構造だってことがわかって、その後いろんなことがわかるようになったの。例えばDNAの長さは1.8メートル。これが、ひとつの細胞にひとつずつあるってことなのよ。」

カイト 「人間は37兆個の細胞でできてるって聞いたことがあるけど、全部つないだらどれぐらい長いんだろう。」

タエ 「なんとなくDNAのこと、わかってきた?」

カイト 「でも、どうやってDNAが遺伝情報を伝えているんだろう?」

DNAからRNAへ
  • ユスリカの幼虫
  • だ腺

DNAは遺伝情報をどのようにして伝えているのでしょうか。
ユスリカの幼虫で観察してみましょう。

頭の部分を引っ張り、中身を引き出します。
透明なゼリー状のものが現れました。
「だ腺(だ液腺)」です。
染色液を垂らして、カバーガラスをかけます。
そして、ろ紙をかぶせて押します。

  • ユスリカ幼虫の染色体
  • パフ

これが、ユスリカの幼虫の染色体です。
この膨らんでいるところが、遺伝子が活発に働いているところ「パフ」です。
パフでは、どのようにして、遺伝情報が伝えられているのでしょうか。

  • 4つの塩基が結合
  • RNA

まず、DNAの二重らせんがほどけて1本になります。
1本になったDNAの塩基ひとつひとつに、A、U、G、Cという4つの塩基が結合します。
ここで、遺伝情報が伝えられます。

遺伝情報を受け取った1本の鎖を「RNA」といいます。
このRNAの塩基3つごとに、アミノ酸という物質が結合します。
アミノ酸どうしが結合して、私たちの体をつくるタンパク質が作られるのです。
そしてこのアミノ酸の並ぶ順番や種類によって、目の色や髪の性質などが決まります。
DNAの遺伝情報がRNAに伝えられ、RNAから私たちの体がつくられています。

こうした遺伝情報の伝達は、体中にある全ての細胞の中で行われているのです。

カイト 「脳とか心臓とかって、全部遺伝情報が伝えられてできてるってこと?」

タエ 「そうそう。血液型とか髪の毛のくせとか、そういうのも遺伝情報なの。」

  • 遺伝要因と環境要因

タエ 「目の色とか、髪の毛の形っていうのは遺伝子が決めるの。でも、アレルギーとか、がんとかは、遺伝も環境も関係しているの。遺伝だけじゃないの。」

カイト 「俺が数学できないのは?」

タエ 「残念ながら、遺伝とは、ほとんど関係がないといわれているの。本人の努力次第ってことかな。」

カイト 「スポーツとか音楽とかの才能は?」

タエ 「確かに親子でスポーツ選手、親子で音楽家、芸術家っていうのあるよね。でもそれって、小さいときからそういう環境にいたからっていうことも、あるんじゃないかな。才能と遺伝子の関係って、よく分かってないんだって。
ところで、カイトはiPS細胞って知ってる?」

iPS細胞とは?
  • 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
  • 山中伸弥さん

京都にある、iPS細胞の研究所です。
ここの所長を務めるのが、山中伸弥さんです。
2012年、iPS細胞を作り出す技術の開発でノーベル賞を受賞しました。
iPS細胞とは、どのようなものなのでしょうか?

  • iPS細胞
  • 4つの遺伝子の組み合わせ

山中さん 「これが数百個のiPS細胞。ひとつひとつは本当に小さいので、点々になってるのが1個の細胞。」

皮膚や血液の細胞から、筋肉や内蔵など、さまざまな組織や臓器をつくり出すことができます。
そのため、臓器の複製や再生医療での活用が期待されています。


「iPS細胞をつくりたい」という山中さんの原動力は、医師だったのにもかかわらず、父親の病気を治してあげられなかったこと、
そして、治療方法の見つからない、がんや脊髄損傷の患者との出会いでした。

山中さんは、ひとつの細胞に4つの遺伝子を加えてiPS細胞をつくり出すことに成功しました。
ヒトは2万種類もの遺伝子を持っています。
山中さんは、その中からこの4つの遺伝子の組み合わせを見つけだしたのです。
仲間たちと実験を何度も繰り返し、患者を救いたいという思いから20年でiPS細胞が完成。

  • iPS細胞からつくった心筋細胞
  • 心筋シート

これは、iPS細胞からつくられた心筋細胞です。
規則的に動いていることがわかります。
そして心筋細胞を3000万個以上集めてつくられた心筋シートです。
この心筋シートが、これまで治療が難しかった心臓病の治療にいかされようとしています。
心不全などで動きの弱くなった患者の心臓。
そこにiPS細胞からつくられた心筋シートを移植することで、心臓の機能を回復させようという画期的な試みです。

「患者を救いたい」という山中さんの思いからつくり出されたiPS細胞。
それが、難病に苦しむ人々の命を救おうとしています。

タエ 「Vision&Work Hard(ビジョン&ワークハード)。これ、山中先生の座右の銘なんだって。目標をもって一生懸命研究する。
みなさんはどうでしたか?ぜひ、DNA抽出の実験、試してみてくださいね。遺伝子の研究はこれからますます進んでいくと思います。もしかしたら、その担い手は、あなたかもしれませんね。」

それでは、次回もお楽しみに!

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