NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:20〜10:40
※この番組は、前年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第38回

身近な酸化還元反応

  • 監修・講師:立教新座中学校・高等学校教諭 渡部智博
学習ポイント学習ポイント

身近な酸化還元反応

  • 一次電池・二次電池・燃料電池

「化学基礎」では、自分たちの身の回りの物質や現象などに興味を持って、鈴木福さんと一緒に考察していきましょう!

福 「前回は電池について学びました(化学基礎「電池と電気分解」の回)。電池にはいろいろな種類があって、完全に放電してしまったら使えなくなる一次電池、充電することで繰り返し使える二次電池、そして水素・Hを送り込むと電気を生み出す燃料電池がありましたね。これらの電池はみんな、酸化還元反応で生じた電子・eの移動を電気エネルギーとして取り出していました。
その他、酸化還元反応で生じたエネルギーを私たちはどんなふうに利用しているのか? いまやスマートフォンに欠かせない、あの電池の話も出てきますよ!」

酸化還元反応と日常生活
  • 鉛蓄電池
  • リチウムイオン電池

福 「これ、この間教えてもらった自動車のバッテリーだよね? (持ち上げてみると)けっこう重たい。」

美樹 「そうでしょ。世界初の二次電池である『鉛蓄電池』は、1859年に(フランスのガストン・プランテによって)発明されて以来、ずっと自動車のバッテリーに使われ続けてきたんだ。」

福 「鉛蓄電池がそんなに長く二次電池として使われてきたのは、どうしてなの?」

美樹 「しくみが簡単で、材料の鉛・Pbが安いことかな。」

福 「じゃあ、充電できる二次電池は、みんな鉛・Pbを使っているのかな?」

美樹 「他の金属を使った二次電池もあるよ。化学者たちが鉛蓄電池のあともさまざまな二次電池を発明したんだ。極め付けは、リチウムイオン電池!」

福 「聞いたことある。軽くて小さくて、しかも高性能な電池なんでしょ。でも、小さいのに高性能なのはなぜだろう?」

リチウムイオン電池のしくみ
  • リチウムイオンのしくみ

リチウムイオン電池が小型で高性能なのはなぜなのか? まず、しくみを見てみよう。
負極には、リチウムイオン・Liを含んだ、炭素・C。
正極には、リチウムイオン・Liを含んだ、金属酸化物。
その間は電解液で満たされ、イオンが通過できるセパレーターで仕切られている。
リチウムはイオンの状態で電極にある。

  • 酸化反応により電子が放出
  • 還元反応により電子を受け取る

電池が充電されている状態から放電すると、負極にあるリチウムイオン・Liは正極へと移動する。
このとき、負極では酸化反応により電子・eが放出され、正極では還元反応により電子・eを受け取る。
酸化還元反応は、電極の中で起こるんだ。

  • 充電のときはリチウムイオンが負極へ移動
  • リチウムイオンが行き来する

逆に、充電のときには、リチウムイオン・Liは正極から負極へ移動し、電子・eも同様に負極へと移動する。
リチウムイオン・Liが電解液を行き来することで、放電と充電を繰り返すことができるんだ。

  • イオン化傾向
  • 元素の周期表

では、なぜリチウムイオン電池は小型でも高性能なのか?
まず、リチウム・Liはイオン化傾向が大きい。
そして、炭素・Cに含まれたリチウムイオン・Liは、金属酸化物に含まれるリチウムイオン・Liより電子・eを手放しやすく、電池にはうってつけの材料だ。

しかも、リチウム・Liは、周期表を見ると金属の単体としては最も軽い。

こうした利点を活かし、正極と負極の材料にさらに工夫を加えるなどして、小型で軽くても高性能な二次電池が誕生したというわけなんだ。

福 「なるほど。リチウム・Liを使っているから、小さくても高い性能を持っているんだね。」

美樹 「そのリチウム・Liなんだけど、反応しやすい性質が災いして、電池の材料にするには危険なものだったんだ。でも、大勢の化学者が努力を重ねて、安全な電池が開発されて今にいたっているんだ。その結果…」

  • リチウムイオン電池が使われた製品
  • IT機器の発達に欠かせない

福 「ひょっとしてこれ、みんなリチウムイオン電池が使われているの!? コードレスで使える製品にも、使い捨ての一次電池の代わりに使われているんだね。」

美樹 「そうだよ。そして何よりも小さくて軽いという利点は、インターネット社会を支えるIT機器の発達にも欠かせないものになっている、というわけ。」

福 「スマホが使えているのも、リチウムイオン電池のおかげだもんね。」

美樹 「電池の進歩を考えると、酸化還元反応ってけっこうすごいでしょ!」

福 「うん。最初はちょっととっつきにくかったけど、僕たちのくらしともいろいろ関係するんだと思ったら、少し身近に感じられるようになったかな。」

鉄を酸化させる
  • 渡部先生
  • シュウ酸鉄(U)水和物

(化学基礎・監修講師)渡部先生 「酸化還元反応ひとつをとっても、私たちの生活がいかに化学で支えられているかが、わかってもらえたんじゃないかな。大事なことは酸化還元反応が起きるときには、必ずエネルギーの変化も起こる。私たちはそれを利用しているんだ。化学カイロを覚えているよね。これは鉄の粉がさびる時に出す熱エネルギーを利用しているんだった。でも条件を少し変えてやると、鉄の粉から瞬間的に大きなエネルギーを取り出せるんだ。」

右の写真の黄色い粉末は、シュウ酸鉄(U)二水和物・Fe(C)・2HO、鉄・Feを含んだ化合物だ。

  • 細かい粒に変化
  • 粉末から火花が出た

試験管に少量とり、ガスバーナーで加熱する。
全体が黒くなるまで熱を加え続けると、鉄・Feを含む細かい粒に変化する。
その粒を空中に落としてみると…、空気に触れた瞬間、発火した。
鉄・Feの粒も非常に細かくなると、酸素・Oに触れるやいなや、自然に燃えるんだね。

渡部先生 「鉄・Feを細かくすれば急激に酸化される。化学カイロは、ほどよく酸化が起こるように粒の大きさを調整している。酸化還元反応を巧みに利用したものは身近にたくさんあるんだよ。」

金属の製錬
  • 製錬
  • クジャク石

福 「化学カイロのいい感じのあたたかさにも、つくった人の試行錯誤があったんだね。」

美樹 「まだまだ、酸化還元反応は人のくらしに役立っているんだよ。ここまではエネルギーを得ることを見てきたけど、今度は鉱石から金属を取り出す『製錬』を見ていくよ!」

福 「製錬って何?」

美樹 「これ(右の写真)はクジャク石といって、銅・Cuを含んだ鉱石なんだ。金属は、自然の状態ではなかなか単体で存在しない。こうした自然にある鉱石から金属を取り出す過程を『製錬』というんだ。」

福 「この石の中に、本当に銅・Cuがあるの?」

美樹 「もちろん。酸化還元反応を利用することで、取り出すことができるんだ。実験を見てみよう。」

  • クジャク石・活性炭
  • るつぼに入れる

クジャク石から銅・Cuを取り出すには、活性炭を使う。
まず、るつぼに活性炭を入れ、そこに砕いたクジャク石を置く。
さらに、上から活性炭をかぶせて、るつぼをマッフルの中に入れる。るつぼだけで加熱するよりも高温にするためだ。

  • ガスバーナーで温める
  • 表面が赤くなった

そして、ガスバーナーで緩やかに全体をあたため、その後火を強くして1時間ほど加熱する。
るつぼの中はどうなっているだろう。
冷ましてから開けてみると、クジャク石の表面が赤く変化している。
これは、クジャク石に含まれる銅の酸化物が活性炭によって還元され、銅・Cuになったということなんだ。

  • 実験前・実験後

酸化還元反応を利用すると、こんなこともできるんだね。

福 「なるほど。クジャク石には銅・Cuが含まれているというわけか。」

  • スクロース
  • 酸化銅2

美樹 「いまの実験はクジャク石だったけど、銅の酸化物から銅・Cuを取り出すならこんなものでもできるんだよ。スクロース・C122211、お砂糖だね。」

福 「砂糖で金属が取り出せるの?」

美樹 「実験を見てみようか。用意した化合物は、酸化銅(U)・CuO。」

福 「色は黒いよね。」

  • 加熱
  • 試験管の底が赤くなった

美樹 「酸化銅(U)・CuOとスクロース・C122211をしっかりと混ぜ合わせるんだ。混ぜたものを試験管にとって、ガスバーナーで加熱すると…」

福 「湯気が出てきた。」

美樹 「反応が進んでいるんだよ。…加熱をやめて観察してみよう。」

福 「試験管の底が赤くなっている。」

美樹 「銅・Cuができたんだ。」

福 「どうしてスクロース・C122211で銅・Cuができたの?」

美樹 「スクロース・C122211は、活性炭と同じように炭素・Cを含んでいるから、還元剤の働きをしたってわけ。」

福 「なるほど。」

美樹 「実際の銅・Cuの製錬には鉱石を加熱したりして還元することが必要なんだ。でもさらに純度の高い銅・Cuを取り出すためには不充分なんだよ。
では、Q:さらに純度の高い銅・Cuを取り出すには、何をするでしょう?

福 「えっ、どうするんだろう? ヒントちょうだい。」

美樹 「物質を分解するときに加えるエネルギーは、熱のほかに何があったかな? ビリビリビリ…」

福 「電気?」

美樹 「正解! 電気分解で金属の純度を高めるんだ。こうした過程を『電解精錬』というんだ。」

  • 電解製錬工場
  • 粗銅

銅・Cuの電解精錬工場を訪ねてみた。
右の写真は、粗銅。鉱石を高温で加熱し、還元して得られた銅だ。純度は約99%。
電解精錬では、これを電気分解にかけて、鉄・Feや亜鉛・Znなどの不純物をさらに取り除いていくんだ。

  • 水槽
  • 硫酸銅2水溶液

さきほどの粗銅の板は、ステンレスの板と交互に並べて、水槽に入れられる。
そこに、硫酸銅(U)・CuSO水溶液を注ぎこみ、水槽いっぱいに満たす。

  • 電解製錬のしくみ
  • 陰極で銅になる

銅・Cuの電解精錬のしくみを図にすると、この通り。
陽極の粗銅板と陰極のステンレス板に電圧をかける。
するとまず、陽極で銅・Cuが電子・eを失い、銅(U)イオン・Cu2+となって水溶液中に溶けだす。
そして、その銅(U)イオン・Cu2+は陰極で電子・eを受け取り、銅・Cuになる。
この時、鉄・Feなどの他の物質が粗銅から溶け出しても、陰極では銅・Cuだけが析出する
しくみなんだ。

  • 電気分解が終わった粗銅版
  • 電気分解後のステンレス版

電気分解が終わった後の粗銅板を見てみよう。電気分解をする前に比べて、薄くなっているね。含まれていた銅・Cuなどが溶け出したからなんだ。
電気分解後の、ステンレス板の方はどうだろう。表面の色が変わっているね。これが、銅・Cuが析出した状態だ。

こうして取り出された銅・Cuは、粗銅よりもさらに純度がアップし、99.99%となっている。
同じ“せいれん”でも、精密の“精”の字を使う電解精錬。すごい技術なんだね。

福 「銅・Cuをつくるために電気が使われているなんて知らなかった。」

  • ボーキサイト

美樹 「電気を使って鉱石から金属をつくるといえば、ボーキサイト(アルミニウム・Alの原料になる鉱石)もそうだよ。」

福 「これがアルミの原料なの? イメージとかけ離れているけど。」

美樹 「アルミニウム・Alをつくるには大量の電気を使って電気分解する必要があるんだ。工場での生産が本格的に始まったのは、電気がエネルギーとして普及し始めた19世紀末のことなんだよ。」

福 「アルミでできたものって回りにいっぱいあるけど、電気分解でつくられるなんて知らなかったよ。」

美樹 「製錬というのは人類の知恵の結晶。純度の高い金属を、いかに効率よく取り出すか、その知恵や経験から化学が進歩してきたってわけ。」

福 「金属をつくり出したり、電池をつくったり、作り方を考えた人ってすごいなぁ。」

吉野彰さんに聞く化学の役割
  • 吉野さん
  • リチウムイオン電池第1号

そんな化学者の一人が、吉野彰さん。2019年にノーベル化学賞を受賞したことは記憶に新しいよね。
受賞理由は「リチウムイオン電池の開発」。
吉野さんは、未来社会を切りひらくリチウムイオン電池の実用化を進めるうえで、電極になる素材の発見など、大きな貢献をしたんだ。

「化学基礎」を学ぶ福くんやみんなへの、メッセージを聞いてみたよ。

吉野さん 「ケミストリー(化学)のことは『ばけがく』と読むと、小学校の先生に教えられたっていうのがひとつですよね。確かに、化学は化ける学問、やってみないとわからない。誰も気がついてないような発見が自分でできる可能性がある。それが化学の面白さのひとつだと思いますね。」

  • 太陽光電池の施設
  • 化学が切り札

リチウムイオン電池は、再生可能エネルギーの推進にも大きな可能性を秘めている。
天候に左右されやすい太陽光や風力発電だが、蓄電池としてその電力を蓄えることで電力の安定供給につなげることができるからだ。

吉野さん 「地球環境問題の解決、あるいはカーボンニュートラルを実現しようとしたとき、化学が切り札だと思いますよ。特に必要とされているのは、いわゆる古典的なケミストリー。これをもう一度見直して、地球環境問題の解決につなげていく、そういう流れなんですね。」

吉野さんの言う「古典的なケミストリー」とは、「水・HOを電気分解して水素・Hを得る」というような、伝統的に知られている化学の知識のこと。
まさに福くんが学んできた「化学基礎」の中に、未来の課題を解決するカギがあるというわけだね。

福 「カーボンニュートラルとか環境問題には化学が切り札って言っていたし、温故知新じゃないけど、これから地球環境を良くしていくとか、新しい発明をしていくって中でも化学基礎っていうのがすごく大事なんだなと、よくわかった。」

美樹 「まさに、化学基礎で学んだことが、これからも活かされていくってことだよね。」


それでは、次回もお楽しみに!

【第38回 身近な酸化還元反応】3ポイント まとめ
  • 第38回ポイント1
  • 第38回ポイント2
  • 第38回ポイント3

1:酸化還元反応と日常生活
酸化還元反応によって電力を生み出す電池。
二次電池の「リチウムイオン電池」が、IT機器など身近な製品に幅広く使われている。

2:鉄を酸化させる
鉄・Feも細かくすれば、急激に酸化されて熱を発する。
こうした酸化還元反応をたくみに利用することで、私たちは熱エネルギーや電気エネルギーを取り出して生かしている。

3:金属の製錬
金属の化合物から単体の金属を取り出すことを、金属の「製錬」という。
より純度の高い金属を得るためには、「電気分解」が利用され、銅・Cuやアルミニウム・Alなどが製造されている。

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