NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:20〜10:40
※この番組は、前年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第16回

物質の性質を学ぶ(2) 〜有機化合物〜

  • 監修・講師:東洋大学准教授 露久保 美夏
学習ポイント学習ポイント

物質の性質を学ぶ(2) 〜有機化合物〜

  • はやぶさ2
  • 多彩な有機ワールド

「化学基礎」では、自分たちの身の回りの物質や現象などに興味を持って、鈴木福さんと一緒に考察していきましょう!

福 「今回のテーマは、『有機化合物』有機化合物とは、炭素を骨格とした化合物のことですが、もともとは生物に関係があるもの、ということでしたよね(化学基礎「物質の性質を学ぶ(1) 〜無機物質〜」の回)。
その有機化合物が、いま特に注目されているのは、宇宙探査の分野。地球外生命体を発見する手がかりになるんですって。『はやぶさ2』の目的のひとつも、小惑星から有機化合物を持ち帰ることでした。
もちろん僕たちの身の回りにも、有機化合物はたくさんあります。今日は、多彩な有機ワールドをのぞいてみましょう!」

有機化合物
  • 三大栄養素
  • 有機化合物

福 「いただきまーす。」

美樹 「福くん、有機たっぷりのいいメニューだね。」

福 「ユウキ? どういうこと?」

美樹 「“三大栄養素”って、知っているよね?」

福 「うん、もちろん! ご飯やジャガイモに多く含まれている、炭水化物でしょ。肉や魚に含まれている、タンパク質。それから、脂質はサラダオイルとか、ゴマもそう(脂質)だよね。」

美樹 「お見事! それらは全部『有機化合物』なんだ。さらに、野菜の食物繊維はセルロース、おしょうゆやミソ、お酢、それから福くんにはちょっと早いけど、お酒も『有機化合物』。」

福 「タンパク質や脂質ってことは、僕たち人間も、有機化合物でできているってこと?」

美樹 「もちろん! 食べ物だけではなくて、私たちが着ている服(の素材)も、やはり『有機化合物』。さらに、住宅だって…?」

福 「…伝統的な日本家屋は木造だし、畳とかじゅうたんとかフローリングの床なんかも(有機化合物)?」

美樹 「その通り!つまり、私たちの衣食住は、有機化合物あってこそのものなんだ。」

福 「なんか、いろいろあり過ぎてよくわかんなくなってきた。そもそも有機化合物って、どんなものなんだっけ?」

美樹 「現在は、炭素原子を骨格、つまり中心として、水素や酸素や窒素(ちっそ)などが共有結合した化合物を、有機化合物と呼んでいるんだ。」

福 「なんで炭素なの?」

美樹 「それは、これ(炭素の原子模型)を見て、考えてみよう!」

  • 炭素原子
  • 不対電子が4つ

福 「炭素原子? この棒は「不対電子」、共有結合で他の原子と握手する『手』になる部分だよね。 そうか!炭素は不対電子が4つあるから、いろいろな原子といろいろな結合ができるっていうことかな?」

福くん、いいところに気がついたね。どう炭素が結合しているのか、がポイント!
炭素が中心となる、いくつかの有機化合物の分子の形を見てみよう。

  • 炭素原子
  • メタン

もっとも簡単な構造をしているのは、炭素原子の4つの『手』に、水素原子が単結合で結びついた、「メタン・CHだ。
燃料用のガスとして、都市ガスなどに使用されている。

  • 炭素の結合
  • 水素原子と炭素原子

炭素原子が2つになると、単結合、二重結合、三重結合と、いろいろな結びつき方ができるよね。
それぞれ、余った『手』に水素原子が結びついた有機化合物が、「エタン・C」、「エチレン・C」、「アセチレン・Cだ。
エチレンは、植物ホルモンのひとつで、果実の成熟に関係している。

  • 青いバナナ
  • 6日後

たとえば、バナナ。まだ青くて固い状態で輸入されたものを「室(むろ)」と呼ばれる倉庫に入れてエチレンガスを噴射すると、次第に熟して黄色く色づいていく。

メタンやエチレンなど、炭素と水素のみからできている「炭化水素」は、有機化合物の代表格なんだ。

福 「炭素と水素だけなのに、いろいろな有機化合物ができるんだね。」

美樹 「さらに、炭素原子や水素原子の数が増えたり、酸素や窒素(ちっそ)など、ほかの原子が加わったりして、有機化合物の世界はとっても多彩になっているんだ。その数、およそ1億種類、以上!」

福 「でも、活性炭は無機物質だったよね。活性炭って炭素でしょ?」

美樹 「そうだね。炭素の単体や二酸化炭素など、炭素原子が入っているんだけど、無機物質に分類されるものもある。何事にも例外はあるもんなんだ。」

高分子化合物とは?
  • エチレン分子
  • 単結合に

美樹 「これはエチレンの分子模型なんだけど、エチレンに化学的な処理をすると、炭素原子を次々とつなげていくことができるんだ。」

福 「化学的な処理? 水素原子をほかの原子に変えるとか?」

美樹 「注目すべきは、炭素原子どうしの結合なんだけど…」

福 「・・・! 炭素原子どうしは、二重結合じゃなくても結びつくよね。」

美樹 「そう! 化学的な処理をして、(炭素の)二重結合を単結合にするんだ。」

福 「炭素原子どうしは、単結合でも結びつくことができる。すると、『手』がひとつずつ余る。」

美樹 「だから、同じものがあると…?」

  • どんどんつながる
  • ポリエチレン

福 「…どんどん、つながっていくってことか!」

エチレン分子が原料となって、炭素原子が次々と連なってできるのが「ポリエチレン」だ。
“ポリ”とは、“たくさんの”という意味。
エチレンがたくさんつながっているから、「ポリエチレン」ってことだね。
ポリエチレンのように、原子が数千個もつながってできた巨大な分子を「高分子化合物」と呼ぶ

  • ポリマー
  • 天然の高分子化合物

原料となる小さな分子を「単量体(モノマー)」という。
この単量体が、繰り返し共有結合でつながる反応を「重合」
そして、できあがった高分子化合物を、「重合体(ポリマー)」というんだ。

福 「“ポリ”って言葉がつくもの、けっこう身の回りにあるよね。ポリ袋、ポリタンク、ポリバケツ・・・。これって、全部、プラスチックだよね。つまり、高分子化合物はプラスチックってこと?

美樹 「そういうわけではないんだ。炭水化物やタンパク質、セルロースなど、天然の高分子化合物もたくさんある。人類はそれらをお手本に、石油などを原料にしてさまざまな人工の高分子化合物、プラスチックを生み出してきたんだ。たとえば、繊維。」

福 「合成繊維!?」

ナイロンをつくる!
  • 実験道具
  • ナイロン

合成繊維のひとつ、ナイロンをつくってみよう。
用意するのは、ヘキサメチレンジアミン・C16を、水酸化ナトリウム水溶液・
NaOHに混ぜ合わせた溶液と、アジピン酸ジクロリド・CClのヘキサン溶液・C14
ヘキサメチレンジアミンと水酸化ナトリウム水溶液の入ったビーカーに、アジピン酸ジクロリドのヘキサン溶液を静かに加えていくと、溶液の境界面に白っぽい膜ができる。
これが、ナイロンだ。


  • 高分子化合物が生成
  • 絹に構造が似ている

ピンセットでつまみ上げると、境界面で次々といくつもの高分子化合物が生成する
それらがより集まって、ナイロンの糸になる。
ナイロンは、天然の絹 の構造を研究して作られた、世界初の合成繊維。
結合している物質は違うけど、結合部分の構造が(絹の主成分の構造と)とてもよく似ている
んだ。

福 「ナイロンの合成実験、おもしろい! くるくる巻き取っていくと、いつまでもナイロンができるんだね。」

  • 熱可塑性樹脂
  • ペットボトル

美樹 「そうだね。こうしたナイロンのような合成繊維を含めて、プラスチックは大きく分けて『熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)』『熱硬化性樹脂(ねつこうかせいじゅし)』に分類することができるんだ。
熱可塑性樹脂は、加熱すると軟らかくなって、冷えると再び固まる性質があるんだ。たとえるなら、チョコレート。加工しやすくリサイクルも比較的簡単なので、身近な製品にたくさん使われているんだ。代表的な例が、これ(ペットボトル)!」

福 「ペットボトルも熱可塑性樹脂なんだ。」

  • 樹脂の糸
  • ペット樹脂の糸

ペットボトルの「ペット」は、(P)ポリ(E)エチレン(T)テレフタラートというプラスチックの略称なんだ。
ペットボトルの切れ端をガスバーナーで加熱すると、ぐにゃぐにゃになってきた。これは、熱可塑性樹脂の特徴。
十分にやわらかくなったところで左右に引っ張ると、ペット樹脂の糸ができた。


この性質を利用して、ちょっとおもしろい実験をしてみよう。
用意したのは、下の方にぐるりと小さな穴をたくさん開けたボトル缶。
ペットボトルの切れ端を(缶に)入れて、缶を十分に加熱する。
この缶を、高速で回転させると、細かいペット樹脂の糸がたくさんできた。

福 「なんだか、綿菓子をつくるみたいでおもしろい実験だったね。」

美樹 「うん。ペットボトルは、リサイクルされて再びボトルになったり、シャツやフリース(の材料の繊維)になったりしている。」

福 「熱可塑性樹脂はチョコレートみたいだってことはよくわかったんだけど、もうひとつの熱硬化性樹脂っていうのは、どういうものなの?

  • 熱硬化性樹脂
  • 硬い

美樹 「熱硬化性樹脂は、一度 成型したら、加熱しても冷やしても形は変わらないんだ。硬い、熱に強い、電気絶縁性に優れているなどの特徴があるので、食器や電気製品などによく使われているんだ。」

福 「なるほどね。でも、形が変わらないってことは、リサイクルしにくいってことなんじゃない? リサイクルされずにそのまま廃棄されちゃったら、環境汚染につながっちゃうよ。」

プラスチックとSDGs
  • 露久保先生
  • SDGsの目標12

(化学基礎・監修講師) 露久保先生 「確かに、廃棄されたプラスチックによる環境汚染が、世界的な問題になっていますよね。熱可塑性樹脂は、自然の中で分解される、生分解性プラスチックなどが開発されています。そして、熱硬化性樹脂についても、再利用するための研究が、世界中で行われているんです。
国連が定めた持続可能な開発目標 SDGsには、『つくる責任つかう責任』という項目があるのを知っていますか?
つくる側がリサイクル技術の研究開発を行うことはとても重要ですが、つかう側の私たちもリサイクルの意識を高めていく必要がありますよね。
リサイクルに限らず、新しい機能を持った様々なプラスチックが開発され、実用化されています。その中には、たとえば水に不純物として含まれているイオンを取り除くことができる『イオン交換樹脂』というものがあるんです。」

新しい機能を持ったプラスチック
  • スーパーカミオカンデ
  • 超純水

こちらは、岐阜県飛騨市にある「スーパーカミオカンデ」。宇宙から降り注いでくる小さな粒子「ニュートリノ」を観測するための施設だ。
ニュートリノを検出するために、巨大なタンクに5万トンもの超純水が入っている。
この水の純度を保つのに、イオン交換樹脂が使われているんだ。

  • 自然のイオン交換
  • 人工のイオン交換

「イオン交換」とは、砂や土が持つ水の浄化作用のひとつ。
その機能を持たせて、純水をつくるフィルターとして使われるのがイオン交換樹脂だ。
ただし、スーパーカミオカンデの場合、ことはそう簡単ではなかった。

  • 関谷さん
  • イオン交換樹脂

水チームリーダー 関谷さん 「こちらが、新しく作りました、ガドリニウムの循環純化装置になります。」

ニュートリノを検出する感度を上げるためには、水に「ガドリニウム・64Gd」を溶かし込む必要がある。

関谷さん 「これまでのイオン交換樹脂ですと、ガドリニウム自身もとってしまいますので、ガドリニウムは残してそれ以外の不純物をとるもの(イオン交換樹脂)になります。」

5年の歳月をかけて開発した新しいイオン交換樹脂が、宇宙の謎を解き明かす大きな役割を担っているんだ。

福 「新しい機能を持ったプラスチックが、宇宙の謎解きに役立っているなんて、夢が広がるな。ところで、きょうはどんな実験をするの?」

  • 水をそそぐ
  • ジェル状に

美樹 「(実験に使うのは)これ(白い粉)!これも、新しい機能を持ったプラスチックなんだ。」

福 「この白い粉が?」

美樹 「まずは、スプーンで2杯、(白い粉を)ビーカーの中に入れてみて。そうしたら、そのビーカーに水を注いでみて。」

福 「全部、入れていいの? じゃ、いくよ。(ビーカーの水を入れる)
あっ、固まってきてる! (ビーカーを)逆さにしてもこぼれない!
これって、もしかして紙オムツとかに入っているもの!?」

美樹 「そう!『高吸水性樹脂』といって、自分の数百倍もの重さの水を吸収して、ゲル状に固めちゃうんだ。紙オムツ以外にも、いろいろな分野での利用が進んでいる。」

福 「すごいね。ほかにも新しい機能を持ったプラスチック、見てみたい。」

美樹 「実は、もうずっと見えているはずなんだけどなぁ…」

福 「えっどこ?」

美樹 「ここ、ここ!」 (手を強調して見せる美樹さん)

福 「ネイル? それが新しい機能を持ったプラスチックなの?」

  • 感光性樹脂
  • ネバネバ
  • 固まる

新しい機能を持ったプラスチックを紹介するため、美樹さんが訪ねたのは、ネイルサロン。
爪に塗っているのは、ジェルネイル。紫外線を当てると固まる「感光性樹脂」のひとつなんだ。

どんな風に固まるのか、ちょっと実験。
(ジェルネイルを)容器から出したときはネバネバしているんだけど、専用の紫外線ライトの光を30秒ほど当てると、固まっちゃうんだ。
爪に塗るときは、薄く何層にも塗り重ねて仕上げていく。
感光性樹脂はネイルのほか、金属の精密加工などにも幅広く利用されているんだ。

  • ネイル
  • 福

美紀 「この(ネイルの)デザイン、ステキでしょ?」

福 「これもしかして、CとかHとか…元素記号!?」

美紀 「その通り! 炭素1つと水素4つでメタン! からの〜、炭素2つと水素4つで、エチレン!!」


それでは、次回もおたのしみに!

【第16回 物質の性質を学ぶ(2)〜有機化合物〜】3ポイント まとめ
  • 第15回ポイント1
  • 第15回ポイント2
  • 第15回ポイント3

1:有機化合物
有機化合物とは、炭素原子を骨格とする化合物。

2:高分子化合物とは?
なかには、単量体が重合してできた、巨大な「高分子化合物」もある。

3:新しく機能を持ったプラスチック
人工の高分子化合物・プラスチックは、いま、新しい機能を持ったものが次々と開発・実用化されている。

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