NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

今回の学習

第8回

同位体

  • 化学基礎監修:立教新座高等学校教諭 渡部 智博
学習ポイント学習ポイント

同位体

同位体とは?
  • イチゴが1個
  • イチゴが2個
  • 大福の同位体

ケンとローザがイチゴ大福を食べようとしています。
2人がそれぞれ選んだ大福を切ってみると、ケンの大福にはイチゴが2個、ローザのものには1個しか入っていません。
ローザがケンに文句を言っているところへ、フラメル所長がやってきました。


所長 「ん?イチゴが1個の大福と、イチゴが2個の大福……。それは大福の “同位体” だな!」

ローザ 「同位体?」

所長 「そう、水素原子、酸素原子、炭素原子。ほとんどの原子には、同位体があるんだ。」

ローザ 「原子の同位体?何、それ?」

  • 同位体とは
  • 水素の同位体

同位体について水素原子を例に見ていきます。
   
普通、水素原子は陽子1個の原子核と電子1個からできています。
質量数は「1」です。

しかし、水素には陽子1個と中性子1個からできた原子核を持つものや、陽子1個と中性子2個からできた原子核を持つものもわずかに存在します。
この場合、質量数は それぞれ「2」「3」となります。

このように中性子の個数によって質量数が異なる原子を、互いに同位体(=アイソトープ)といいます。


ケン 「なるほど。イチゴの数が異なる大福は、互いに “同位体” だね。」

ローザ 「だから、どうしたっていうのよ。」

所長 「まあ、まあ、ローザ。イチゴの個数は少なくても、大福、おいしかっただろう。」

ローザ 「もちろん……おいしかった。」

所長 「そう。イチゴの数が異なっても、大福の味は変わらない。同じように、中性子の数が異なっても、同位体の化学的性質は、ほとんど変わらないんだ。」


水素には、3種類の同位体があります。
原子核が陽子1個だけでできているものを「軽水素」といいます。
また、陽子1個と中性子1個でできているものを「重水素」、陽子1個と中性子2個のものを「三重水素」といいます。


それぞれの自然界での存在比は、軽水素が99.9885%です。
また、重水素は0.0115%で、三重水素は極微量です。
このように、自然界では ほとんどが軽水素で、重水素や三重水素はほとんど存在しません。

  • 普通の水と氷
  • 重水と重水でできた氷

重水素を実際に見てみます。
所長が用意したのは、普通の水と、それを凍らせた氷。(左画面)
そして重水と重水を凍らせた氷です。(右画面)

  • 水の分子
  • 軽水素でできた水分子
  • 重水素でできた水分子

普通の水の分子=HOを構成する水素は、質量数が1の軽水素です。

この軽水素が質量数2の重水素に置き換わった水を、重水といいます。
用意した もう一方は、この重水と、重水から作った氷だったのです。

  • 同じ水同士ならどちらも氷は浮く
  • 重水の氷は普通の水に沈む

これらの氷を水に浮かべると、どのようになるか確かめてみると、

・普通の氷を普通の水に入れると、氷は浮く
・重水の氷を重水に入れると、氷は浮く
・重水の氷を普通の水に入ると、氷は沈む

という結果になりました。

重水は質量数2の重水素からできていることから、普通の水より重く、重水の氷を普通の水に入れると沈んでしまいます。

  • 重水を100mL量り取る
  • 質量は109g

では、重水素がどのくらい重いのかを確かめてみます。

100mLのメスシリンダーを はかりに乗せ、0gに合わせます。
メスシリンダーを一度 はかりからおろし、重水を入れます。
100mLの目盛りちょうどになるまで、慎重に注ぎます。

このときの質量は109gでした。

普通の水は100mLで100gのため、重水は普通の水より1割ほど重いことになります。

放射性同位体
  • イチゴ3つは不安定
  • 放射性同位体

所長 「では、イチゴ大福に戻ろう。ここにイチゴが3個入った大福を用意した。」

ケン 「ちょっと無理があるんじゃないですか。」

所長 「そう。無理がある。つまり不安定だ。同位体も同じだ。先ほどの三重水素だが、その原子核は1個の陽子と2個の中性子でできていたな。」

ローザ 「あ、イチゴ3個入りの大福と同じだ!」

所長 「そう。だから無理がある。不安定だ。つまり、三重水素の原子核は不安定で、放射線を出して別の原子核に変わろうとするんだ。」


このように放射線を出して、別の原子核に変わろうとする同位体を「放射性同位体」といいます。

  • 炭素14は放射性同位体

炭素にも放射性同位体があります。
炭素の同位体には12C、13C、14Cがあります。
質量数は、それぞれ12、13、14です。
自然界での存在比は、12Cがほぼ99%を占め、13C、14Cはわずかです。

このうち、14Cは「放射性同位体」と呼ばれる不安定な原子で、放射線を出して別の原子核に変化しようとします。


ケン 「放射性同位体が、放射線を出して別の原子核になるって、どういうこと?」

所長 「では、我が研究所の特別研究員、渡部先生をお呼びしよう。」

  • 渡部 智博 先生(立教新座中学校・高等学校 教諭)
  • <sup>14</sup>Cは窒素に変化

ここで、放射性同位体の変化について、渡部 智博 先生(立教新座中学校・高等学校 教諭)に詳しく解説していただきました。

渡部先生 「たとえば炭素の放射性同位体である14Cは、陽子を6個、中性子を8個持っているので、質量数は6と8の合計14です。この14Cの原子核は不安定で、放射線を出して陽子7個、中性子7個の原子核に変化します。」

ケン 「陽子や中性子の個数が変わるんですね。」

渡部先生 「陽子の個数が変わるということは、原子番号が変わるということですから……。」

ケン 「炭素でない原子になるということですか?」

渡部先生 「そうです。陽子の個数が7個。つまり原子番号7は窒素です。放射性同位体14Cは放射線を出して、窒素に変化するんです。」

所長 「原子も不変ではないんだ。」

役立つ同位体
  • <sup>14</sup>Cは年代測定に利用される

渡部先生 「実は、放射性同位体は、とても役に立っているんです。たとえば、放射性同位体の14Cは年代測定に利用されているんです。この焦げた木片(上写真)ですが、この木に含まれている14Cを調べることによって、この木が倒れた年代は、およそ2000年前だということが分かるんです。」

  • <sup>14</sup>Cの自然界での存在比はほぼ一定
  • 植物が死ぬと14Cの割合は減少

14Cで年代が分かる仕組みを見てみます。
放射性同位体14Cの自然界での存在比はほぼ一定です。
そのため、大気中の二酸化炭素には一定の割合で14Cが含まれています。

また、その二酸化炭素を常に体内に取り込んでいる植物にも、一定の割合で14Cが含まれています。

しかし植物が死ぬと、大気から二酸化炭素を取り入れることができなくなります。
すると、植物内の14Cは、次第に窒素に変化し、14Cの割合は徐々に減少していきます。

  • 半減期

植物だけでなく、それを食べて生きている動物についても同じことが言えます。

生物が死んだ後の、体内に含まれていた14Cが減っていく速さには決まりがあります。
上の図は、生物が死んだときの14Cの量を1として、どのように14Cが減っていくかを表したグラフです。

14Cは、5730年で2分の1、つまり半分になります。
この放射性同位体が半分に減る時間を「半減期」といい、14Cの場合、半減期は5730年です。
そのため1万1460年後には、半分のさらに半分、つまり4分の1になります。

このように死んだ生物の14Cの割合を調べれば、その生物がいつ死んだかが分かります。

  • ナウマン象の歯の化石
  • 元の船の碇の部品

左写真は、愛媛県で発見されたナウマン象の歯の化石です。
14Cの割合からこの化石の年代を調べると、43000〜44000年前のものであることがわかりました。

右写真は長崎県 鷹島(たかしま)の海底から引き上げられた竹と石です。
この竹に含まれる14Cの年代測定の結果などを総合すると、鎌倉時代に元が来襲した際の船の碇の部品であることが確認されました。


渡部先生 「実は放射性同位体は、年代測定だけでなく “どこにいるかの目印” としても、よく使われているんです。」

ローザ 「どこにいるかの目印?」

渡部先生 「放射線同位体は、放射線を出します。この放射線を追いかけることにより、その原子がどこにいるか、どのように動いていくかが分かるんです。」

ケン 「どういうことですか?」

渡部先生 「実は、植物の成長に必要なリンやカリウムにも放射性同位体があります。この同位体から出る放射線を目印として追いかけることにより、植物の中でリンやカリウムがどのように動いて行くかが分かるんです。」

  • 東京大学大学院 田野井 慶太朗 准教授
  • 放射線を光に変える物質でできたパネル

ローザは、東京大学大学院を訪ねました。
農学生命科学研究科 准教授 田野井 慶太朗先生の研究室では、放射性同位体を使って植物の中の肥料の動きを調べています。

放射性同位体を追いかけるとき大切な役割を果たすのが、右写真のパネルです。
このパネルは、目に見えない放射線を光に変える物質でできています。

  • 植物をパネルに貼り付ける
  • 放射線をとらえる装置にセット

プランターに植えられた植物を、パネルに貼り付けます。
土の中には、調べたい放射性同位体を含む養分が入っています。
植物が貼り付けられたパネルを、放射線をとらえる装置にセットします。

この装置は、植物に吸収された放射性同位体から出た放射線が光に変えられ、反対側にあるカメラで撮影される仕組みになっています。

  • 放射性同位体のリンを見た画像
  • 新芽にはたくさんのリンが運ばれる

左写真は、この装置で放射性同位体のリンを見た画像です。
矢印部分など、白や赤くなっている所は、放射性同位体の32Pがたくさんある部分です。

右写真は、ダイズの葉の中をリンが移動していく様子です。
成長した葉に比べ、若い新芽にはたくさんのリンが運ばれています。
この画像から、若い芽の成長には多くのリンが必要だということが分かります。

  • リンは植物の中を非常に速く移動する
  • 田野井先生の研究

次に、リン・カルシウム・マグネシウムの、24時間の動きを見てみました。
それぞれの放射性同位体が動く様子を比較すると、リンはカルシウムやマグネシウムに比べ、非常に速く植物の中を移動していくことが分かりました。

このような研究を通して、植物の成長とそれに必要な元素との関係が分かってくるといいます。


ローザ 「放射性同位体ってすごい!」

田野井先生 「今、このような技術を使って、少ない肥料で、たくさんの作物を収穫するための研究を進めています。」

ローザ 「おー、素晴らしいです。」

  • 放射性同位体は医療分野にも利用される
  • 次回もお楽しみに〜

所長 「放射性同位体を使った植物の研究はどうだったかな。」

ローザ 「植物によって栄養の吸収の仕方が違う様子を、目で確認することができたんです。本当にすごいですよね。」

渡部先生 「これまで見てきたように、放射性同位体は年代測定や目印として使われます。しかし、実はそれだけでなく、医療の分野にも広く使われているんですよ。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約