NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:20〜10:40
※この番組は、前年度の再放送です。

化学基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:20〜10:40
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第8回

電子殻と電子配置

  • 監修・講師:東京学芸大学附属高等学校教諭 岩藤英司
学習ポイント学習ポイント

電子殻と電子配置

  • ホタル
  • 原子のしくみ

「化学基礎」では、自分たちの身の回りの物質や現象などに興味を持って、鈴木福さんと一緒に考察していきましょう!

福 「夏、水のきれいな川べりなどで、夜になると見られるものといえば…ホタルです!ほのかな光を出しながら舞い飛ぶ姿って、とっても幻想的ですよね。でも、ホタルがなぜ光るのか不思議に思ったことはありませんか?あれって、実は化学反応なんですって。
きょうは、そんな不思議にも迫りながら、物質を構成するとっても小さい粒・原子のしくみについて、見ていきましょう!」

原子の構造
  • クイズ
  • 電子

美樹 「きょうはこんなクイズを用意したんだ。」

Q:電化製品を動かしたり、冬場にバチッとしたり、水や塩をつくるときに働いているものはなんだ?

福 「電化製品を動かすのは電気でしょ。冬場にバチッとくるのは、静電気。どっちも電気が関係しているけど、水や塩っていうのは ちょっとわからないな。水は H2O。塩は 塩化ナトリウムだから NaClだったよね。」

美樹 「H、O、Na、Clは原子だよね。その原子を、もっとミクロの視点で考えると?」

福 「原子を構成しているのは、陽子と中性子と電子…。電気が流れるのは、電子が動くからだよね。もしかして、水や塩をつくるときも電子が働いているってことかな?」

美樹 「正解! きょうは“電子”に注目して、原子のしくみを見ていこうと思っているんだ。」

  • 水素
  • リチウムは?

美樹 「電子は、原子の中で“居場所”が決まっているんだけどわかるかな?ちょっと、そこの黒板を使って書いてみてくれる? では、もっとも構造が単純な 水素 は?」

福 「まず、中心に原子核。水素の原子核は、陽子1個でできているから、電子も1個、回っている。」

美樹 「では、原子番号2の ヘリウム は?」

福 「ヘリウムの原子核は、陽子2個と中性子2個。電子も2個、回っている。」

美樹 「ちょっと簡単すぎるかな? では、原子番号3の リチウム の場合、電子はどこにいると思う?

福 「原子番号は陽子の数だから、原子核には陽子が3ついるってことでしょ?電子も3つあるってことでしょ。」

( 同じ円周上に3個の電子を置いた )

美樹 「残念〜!! 電子の居場所には、ある決まりがあるんだ。」

福 「居場所に…決まり?」

電子の並び方
  • 電子殻
  • 原子の電子配置

原子の中の電子は、原子核の周囲にいくつかの層をなして存在していて、その層を「電子殻」という。
そして、電子殻は原子核に近い方から順に K殻、L殻、M殻、N殻と呼ぶ。
それぞれの殻は収容できる電子の最大数が決まっていて、外側に行くほど多くなっている。
そして、電子殻には原則として内側から電子が埋まっていく。
たとえば、原子番号12のマグネシウム・12Mgの場合、K殻に2個、L殻に8個、M殻に2個ということになる。
このような電子殻への電子の配列の仕方を「原子の電子配置」というんだ。

  • リチウムの電子配置
  • 電子の最大数は?

福 「原子の電子配置ね、そんな決まりがあったんだ。ということは、リチウムの場合、一番内側のK殻には(電子が)2つ。その外側にL殻があって、ここに3つめ(の電子)が入るんだね。」

美樹 「その通り! でね、それぞれの電子殻に入る電子の最大数は、外側に行くほど多くなるんだけど、その増え方にはちょっとした法則があるんだ。 
N殻の外側にあるO殻には、最大で何個の電子が入れるのか わかるかな?

福 「2、8、18、32、…どんな法則だろう。難しいなぁ…。」

  • 答えは50個

みんなは、増え方の法則、わかったかな?
2から8へは「6」、増えている。
8から18へは「10」、増えている。
18から32へは「14」、増えている。
ということは…? 増える数が「4」ずつ、大きくなっているんだ。
だから、O殻に入る電子(の最大数)は、32から18増えた「50個」となる

福 「美樹さん、原子ってとーーっても小さくて、電子顕微鏡で見てもすごくぼんやり見えるくらいだったよね?」

美樹 「うん、そうだよ。」

福 「そんな原子のしくみ、電子殻とか電子配置がこうなっているとか、どうやってわかったんだろう?」

美樹 「それはね、今からおよそ100年前、ある実験の結果を説明するために考えられたんだよ。」

福 「100年前の実験!?」

  • 分光器
  • 太陽光

これは、光を分解して その光の特性を調べるための「分光器」。
先端のスリットを通った光が、虹の七色に分けられる。
たとえば、太陽光だったら、こんなふうに見えるんだ。

  • 放電機
  • 水素ガスを見ると

放電管に水素ガスを入れて高電圧をかけると、紫色に光った。
この光を、分光器を通して見ると、赤と青がひときわ強く筋状に光っている。
実はこれこそが、電子殻が存在していることの証明なんだ。

  • 電気エネルギー
  • 励起状態

水素の電子は、通常はK殻にある。
しかし、高電圧をかけて電気エネルギーを与えると、K殻にとどまっていることができなくなって、外側のL殻やM殻 さらにN殻に移動してしまう
んだ。
このとき、電子は「励起(れいき)状態」にあるという言い方をする。

  • 青と赤の光
  • 放電管にヘリウムを入れた場合

しかし、励起状態は電子にとって不安定な状態なので、与えられたエネルギーを放出して、内側の電子殻に戻ろうとする。
先ほど見た青い光の線はN殻からL殻に戻るとき、赤い光の線はM殻からL殻に戻るときのもの。

いろいろな元素でこのような実験を繰り返した結果、電子は原子の中で決められた居場所があるということがわかったんだ。

福 「もし電子殻がなくて電子の居場所が決まっていなかったとしたら、青とか赤だけじゃなくって、もっといろんな色の光が出るはずっていうことなのかな?」

美樹 「そんなところかな。詳しく説明しようすると難しくなっちゃうからね。ところで、電子を励起状態にするには、電気エネルギーだけではなくて、ほかにも方法があるんだけど、見たくない?」

福 「もちろん、見たい!」

  • 炎色反応
  • 熱エネルギーによって

以前紹介した、炎色反応の実験。(化学基礎 「元素の確認」の回)
物質を炎の中で加熱したとき、炎が特有の色を示す現象だ。
炎色反応では、熱エネルギーによって電子が励起状態になっているんだ。

  • ヘモグロビン粉末を入れると
  • 励起状態に

もうひとつ、今度は化学反応によって、電子の励起状態が起きる例(ルミノール反応)を紹介しよう。
ルミノールという物質を水酸化ナトリウムの水溶液に溶かし、過酸化水素水を加える。
それに、ヘモグロビンの粉末を加えてよく混ぜると、青白く発光した。
ヘモグロビンは赤血球の中に存在するタンパク質の一種で、ルミノールと過酸化水素水との化学反応を促進する働きがあるんだ。
この化学反応によって、ルミノールがほかの物質に変化する。
その過程で、電子が励起状態になった後、エネルギーを放出するので光って見えるというわけ。
ルミノール反応は、警察の科学捜査で血痕を探すために使われている。

福 「ルミノール反応。刑事ドラマで見たことあるけど、あれも電子の働きだったんだ。」

  • 踊る美樹
  • ケミカルライト

美樹 「♪〜 水兵リーベ僕の船! 七曲りシップス クラークか!!」×3
   (暗闇でケミカルライトを振りながら、ダンスをする)

福 「・・・。あー なるほどねぇ。ケミカルライトって、中にガラスの容器が入っていて、それを割ると化学反応が始まって光るんだ。使われている薬品は、毒性は強くないみたいだけど、これ自体は使い捨てなんだ。」

美樹 「福くん、福くん。少しは反応してよ。冷たいんだから。」

福 「いや、あれはちょっと…」

美樹 「ちなみに、ホタルが光を発するのも、化学反応によって電子が励起状態になるからなんだよ。」

  • ホタルも化学反応
  • 美樹

ホタルのお尻に近い部分には、発光器という器官があって、その中にルシフェリン(発光する物質)と、ルシフェラーゼ(発光を助ける酵素)がある。
この2つの物質が酸素と出会うと、ルシフェリンの電子が励起状態になって、光を発する
んだ。

美樹 「ホタル(が発光するの)は、光でコミュニケーションを取っているとか、敵を威嚇(いかく)するためとか、いろいろな説があるんだ。」

福 「そうなんだ。深い海に住んでいる生物にも発光するのが多いよね。光る生物について、いろいろと調べてみるのもおもしろそうだな。」

閉殻(へいかく)ってなに?
  • 最外殻電子

福 「それにしても、とっても小さいのに、励起状態になっていろんな現象を起こす電子って、本当にスゴイやつなんだね。」

美樹 「そうだね。でも、電子って一口にいっても、“働き者の電子”と“そうでない電子”とがあるんだよ。」

福 「えっ?どういうこと?」

化学反応などで重要な役割を果たす“働き者の電子”とは、もっとも外側の電子殻に入っている電子のこと。
マグネシウム原子・12Мgだったら、M殻に入っている2個の電子。
これを「最外殻電子」と呼んで、内側の電子殻にある電子とは区別しているんだ。
そして、最外殻電子は1〜7個の場合「価電子」とも呼ばれている
ただし、ヘリウム・2Heだけは、最外殻電子が2個だけど 価電子とは呼ばないので注意しよう。

  • 水素とヘリウム
  • 閉殻

では、価電子の働きを確かめる実験を見てみよう。
構造が単純な原子で構成される「水素・1H」と「ヘリウム・2He」の燃焼実験だ。
試験管に「水素ガス」を注入してライターの火を近づけると、(ボンっという)音を発して燃焼した。
次に「ヘリウム」。同じように(ヘリウムガスを)試験管に注入して火を近づけると、何も起こらない。

この違いは、最外殻の電子が最大数になっているかどうかによるもの。
ヘリウムのK殻のように、最大数の電子が収容された電子殻を「閉殻(へいかく)」という。
閉殻の構造を持つ原子は、ほかの原子とは結びつきにくいんだ。

福 「水素はK殻に電子が1つで、これが価電子。ヘリウムはK殻に電子が2つで、K殻の場合これで(電子の最大数)いっぱいだから、価電子は0個と考えるんだね。
価電子のあるなしによって、燃焼反応に違いが起きる。
美樹さん風にいえば、水素の電子は価電子だから“働き者”で、閉殻になっているヘリウムの電子は“そうじゃない”ってことかな?」

美樹 「そう。つまり、私は価電子で、福くんは閉殻の電子ってことかな。」

福 「え!? 僕だって、働いてるよ!」

美樹 「そうでしたね(笑)」

原子番号と電子配置の秘密
原子の電子配置のモデル

美樹 「ここで、いろんな原子の電子配置を確認しておこう。ここでは、価電子は赤い色で示してあるよ。一番右側の縦の列に注目してみて。『ヘリウム・2He』、『ネオン・10Ne』、『アルゴン・18Ar』のように価電子がない、つまり最外殻が閉殻になっている場合、原子にとって、もっとも安定した電子配置になるんだ。」

  • カリウム・カルシウム
  • 貴ガス

福 「あれ?ちょっと待って。4段目の『カリウム・19K』と『カルシウム・20Ca』の電子配置、ちょっとおかしくない? M殻には電子が18個まで入るはずじゃない? でも(カリウムとカルシウムは、M殻の電子が)まだ8個なのに、次のN殻に電子が入ってるよ。」

美樹 「福くん、鋭い! そこがちょっとおもしろいところだと私は思うんだけど、『カリウム・19K』のひとつ前の『アルゴン・18Ar』は、もっとも安定した電子配置っていったでしょ? そうすると、M殻に9・10番目の電子が入るよりも、N殻に電子が入った方が安定した状態になるんだ。」

福 「へぇー。電子も安定志向なんだね。」

(原子の電子配置モデルの)図を見ると、原子の電子配置は 原子番号の順に電子が1つずつ増えて規則正しく変化していることがわかる。
一番右の列には、ネオン、アルゴンのほか、「クリプトン・36Kr」、「キセノン・54Xe」、「ラドン・86Rn」など、最外殻電子が8個の原子が並んでいる。
ヘリウムを加えたこれら18族の原子は「貴ガス(希ガス)」と呼ばれている。
貴ガスは価電子を持たないため、他の原子とは結び付きにくいという共通の性質を持っている。
そして、電子は、原子の性質を決めるだけでなく、化学反応にも深く関わっているんだ。

  • 岩藤先生
  • 福

(化学基礎・監修講師) 岩藤先生 「化学反応は 何かが反応して、光を出したり・燃えたり・大きい音が出たり・色が変化したり・沈殿したり、いろいろなことが観察できますよね。実は化学反応が起きるとき、電子が動いて働いていることがほとんどなんです。
たとえば水は、水素と酸素がくっついて(化学反応して)できていますが、水素と酸素が結びついているのは、電子のおかげなんです。
また、塩(塩化ナトリウム)は、塩素とナトリウムがもつ電子が出入りすることでイオンとなって結合しています。
金属の場合は、一部の電子が原子に固定されずに自由に動き回り、原子を結び付けています。
電子は化学反応の陰の主役なんですね。詳しくは、これから少しずつ学んでいきますが、化学反応の陰には常に働き者の電子がいることを覚えておいてくださいね。」


福 「 “化学反応の陰の主役は電子”、か〜。ちっちゃいけどスゴイ奴、電子に注目していけば化学の勉強がはかどるってことか!」

美樹 「福くん、やっとその気になってくれたんだね。一緒に化学の道を突き進んでいこう!」


それでは、次回もお楽しみに!

【第8回 電子殻と電子配置】3ポイント まとめ
  • 第8回ポイント1
  • 第8回ポイント2
  • 第8回ポイント3

1:電子の並び方
原子の中の電子は、原子核を中心とした「電子殻」に存在している。
電子殻への電子の並び方を、「原子の電子配置」という。

2:閉殻ってなに?
電子殻に最大数の電子が収容されているとき、その電子殻を「閉殻」という。
閉殻の構造をもつ原子は、ほかの原子と結びつきにくい。

3:原子番号と電子配置の秘密
原子の電子配置は、原子番号の順に規則正しく変化している。
縦に並んだ原子のグループは、価電子が等しいため、原子の性質が似ている。

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約