NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:20〜10:40
※この番組は、前年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第7回

原子核と電子

  • 監修・講師:東京都立南平高等学校主任教諭 貝谷康治
学習ポイント学習ポイント

原子核と電子

  • 福

「化学基礎」では、自分たちの身の回りの物質や現象などに興味を持って、鈴木福さんと一緒に考察していきましょう!

福 「原子の中心にある原子核が、2 mmのビーズ玉くらいの大きさだとしたら、原子全体はドーム球場ぐらいの大きさだとわかってちょっとビックリしたんですけど(化学基礎『原子』の回)、その原子の世界を想像してみるだけですごく楽しいんだなと感じました。
でも、目に見えない、とっても小さな原子のしくみについて、どうして詳しくわかったのか不思議ですよね。今回も原子のことを見ていきましょう!」

原子番号と質量数
  • 福
  • 美樹

福 「同位体は、原子核の中の中性子の数が変わるから 質量数も変わる。でも、変わらないのは陽子の数。水素の同位体では、(陽子の数は)どれも『1』。確か、原子番号はこの陽子の数によって決まるんだったよね。ということは…。美樹さん、ちょっと教えて欲しいんだけど…」

美樹 「なになに、どうした?」

黒板

福 「この(水素の)元素記号『H』の左下にある数字って、『原子番号』だよね?」

美樹 「正解!左下の(数字)はどれも『1』で『原子番号』のこと。水素は陽子の数が『1』だから、原子番号も『1』。そして、陽子の数は電子の数と釣り合っているんだったよね。」

福 「うん。原子は電気的に中性だから、どんな原子でも 陽子と電子の数は同じ。つまり、原子番号=陽子の数=電子の数 ということ。この水素の同位体(水素、重水素、三重水素)3つも、どれも陽子と電子の数が同じ『1』だから、原子番号も同じ『1』なんだね。」

  • 質量数が違う
  • 質量数

福 「でも、原子番号の上の数字は、それぞれ違っている!この数字は何を表しているんだろう?」

元素記号の左上の数字が、一体何を表しているのか、三重水素の例で説明しよう。
水素の原子番号は、元素記号の左下に書かれている。
その上の数字は、「質量数」を表すんだ。

  • 陽子+中性子
  • 原子の質量数

陽子の数と中性子の数の和が「質量数」。(質量数=陽子の数+中性子の数)
水素・1Hは、陽子が1個で、中性子はない。だから、質量数は「1」となる。
同位体の重水素・2Hは、陽子が1個、中性子が1個で、質量数は「2」だ。
三重水素(トリチウム)・3Hは、陽子が1個、中性子が2個で、質量数は「3」になるんだ。

放射性同位体
  • 同位体
  • 三重水素

福 「水素の同位体の場合、元素記号Hの左下にある原子番号は3つとも同じ『1』。だけど、質量数は違うから、水素は『1』、重水素は『2』、三重水素(トリチウム)は『3』になるんだね。同位体どうしは質量数が異なっていても、化学的性質は似ていた。そうだよね?」(化学基礎・『原子』の回)

美樹 「その説明完ぺき!同位体は化学的性質はほとんど同じなんだけど、この三重水素の原子核に注目してみて!何か気がつくことないかな?」

福 「三重水素の原子核…。陽子が1つなのに中性子が2つあるのって、なんとな〜くバランスが悪い感じはするよね。」

  • 放射性同位体
  • 三重水素はヘリウムに

福くんの直感、大当たり!実は、三重水素の原子核のバランスが大事なポイント。
陽子1個と中性子2個からなる原子核は不安定で、放射線を出して別の原子核に変わろうとする。

これが、「放射性同位体(ラジオアイソトープ)」
三重水素・3Hの場合、放射線を出してヘリウム・3Heに変わる。

  • 炭素の同位体
  • 何に変わる?

ほかの同位体でも見てみよう。
原子番号6 炭素・Cには、質量数の異なる、12C、13C、14Cなどの同位体がある。
このうち、「放射性同位体」なのは 14(炭素14)。
放射線を出して、陽子数が7個、つまり原子番号が7で質量数が14の別の原子に変わるんだ。

福 「原子核が不安定だと、別の原子に変わっちゃうこともあるのか。それが『放射性同位体』なんだね。」

美樹 「うん。放射性同位体の14Cは、原子番号『6』の炭素から、『7』の元素に変わったんだけど、一体、何に変わったのかわかるかな?

  • 元素表
  • 遺跡の調査に利用

福 「原子番号『7』は窒素・Nだから、14Cは放射線を出して、炭素・Cから 窒素・Nに変わったってこと?」

美樹 「そう。実は この14Cは、放射性同位体のある性質を生かして、遺跡の調査に利用されているんだ。」

福 「遺跡の調査に14C…どんなふうに使われているんだろう?」

  • 炭素放射線同位体存在比
  • 植物の中にも

放射性同位体・14Cの地球上での存在比はごくわずか。
また、大気中の二酸化炭素にも、ほぼ一定の割合で14Cが含まれる。
そのため、光合成によって二酸化炭素を体内に取り込んでいる植物にも、大気中と同じ割合で14Cが含まれているんだ。

  • 一定の割合で減少
  • 半減期

しかし植物が死ぬと、大気から二酸化炭素を取り入れることができなくなる。
このため、植物の中の14Cは次第に14N(窒素)に変化し、一定の割合で減少していく。

植物が生きていたときの14Cの存在量を1とすると、5730年で2分の1に減り、
さらに5730年経つと4分の1に減る。
これが「半減期」放射性同位体の量が半分になるまでの時間だ。

14Cの半減期を利用して、植物の化石などに含まれる14Cと、大気中の14Cの割合を比べれば、植物が死んでどれくらい経ったのか、つまり 生きていた年代が推定できる。
これが、14Cによる年代測定だ。

福 「たとえば、古い地層の中から見つかった木の化石の14Cを調べれば、その木がいつごろ枯れたのかわかる。」

美樹 「そう!そして、もし(木の化石と)同じ地層に人間が使った土器があれば…」

福 「いつごろの時代の人々が使った物(土器)か、推定できるんだね。」

美樹 「14Cは、動物の体内にも取り込まれるので、動物の化石の年代を調べるのにも有効な手段ってこと。」

  • ナウマン象の歯の化石
  • 半減期の長さ

美樹 「例えば、愛媛県で発見されたナウマン象の歯の化石(画像提供:名古屋大学宇宙地球環境研究所)。14Cの割合から、この化石の年代を調べると、約4万3000年〜4万4000年ほど前のものであるとわかったんだ。」

福 「歯の化石から、ナウマン象が生きていたかもしれない年代までわかるなんてすごいね! でも、14Cみたいに放射性同位体の性質って、ほかにもいろんなところで使われている気がする。」

美樹 「鋭いね〜、福くん。地球上には、さまざまな種類の放射性同位体があって、いろいろと活用されている。そこで注目してほしいのが『放射性同位体の半減期の長さ』!」

福 「半減期の長さね。14Cは半減期が5730年、すごく長かったよね。原子によって放射性同位体の半減期って、長さが違ったりするのかな?」

美樹 「例えば、フッ素・Fの放射性同位体の18(フッ素18)の場合、半減期はわずか110分なんだ。」

福 「18Fの半減期って、そんなに短いんだ!」

  • がん細胞はブドウ糖を多く取込
  • PET検査

半減期が短い放射性同位体 18Fを利用して、放射線の影響をできるだけ少なくした、がんの検査が行われている。
がん細胞は正常な細胞に比べ、多くのブドウ糖(グルコース)を取り込む。
それを利用して、ブドウ糖に似た物質に、ごく微量の18Fを結合させた検査薬(ブドウ糖類似化合物・18F―FDG)を注射し、画像診断を行うPET検査。
18Fから出る放射線を検出することで、がん細胞の正確な位置や大きさを調べる。
それが一部のがんの診断に役立てられているんだ。

福 「放射性同位体18Fの性質を利用することで、がん細胞の正確な位置なんかがわかるんだね。」

美樹 「ちなみに医療現場での放射線の利用は、厳しい安全管理のもと、いずれも限られた目的のために行われるんだ。」

福 「ほかにも、何か(放射性同位体が)使われていることってあるのかな?」

美樹 「例えば、農業では稲や花などの新品種の開発(や品種改良)。工業や環境保全(の分野)でも、(放射性同位体は)利用されているんだ。」

福 「なるほどね。放射性同位体が、ほかにもどんなふうに利用されているのか、調べてみようっと!」

電子と原子核

美樹 「さぁ、きょうのクイズいくよ!」
Q:アクリルの棒を毛糸でこすってから、水に近づけると、一体どうなるでしょう?
答えは、三択。 
1.棒が水に溶ける 2.棒が光る 3.棒に水が引きつけられる


福 「アクリルの棒が水に溶けるのは、まずないでしょ。光るもないかな。ということは(答えは)、水が引きつけられる?」

  • 毛糸でこする
  • 静電気

さあ、答えはどうか!?
アクリルの棒を毛糸でこすって、水に近づけると…、棒に水が引きつけられた!
実はこれ、静電気の仕業 なんだ。

美樹 「福くん、大正解!」

福 「まぁそうでしょ。でも、あの水を(毛糸でこすったアクリル棒に)引き寄せていた力が、静電気!? 下敷きをこすって髪の毛にかざすと、髪の毛が立つのと一緒ってことだよね?」

美樹 「その通り!でも何で、静電気の話を持ち出したかっていうと、このアクリルの棒は静電気を帯びていたってこと。つまり、毛糸とこすり合わせることで、このアクリルの棒は毛糸から電子を受け取って、負(−)に帯電したんだ。」

福 「そっか!ドアノブを触るときバチっと指先に流れる静電気も、原子の中の電子の仕業ってこと?」

美樹 「うん。原子核のまわりにある、電子と関係しているんだ。でも、原子の構造が詳しくわかる前には、何でそんな現象が起きるのかわからなかった。だから、ただ漠然と、物質の中に正や負の電荷をもった粒子のようなものがあるのではないかって、想像していたわけ。」

福 「電子は負の電荷を持っているんだよね。その電子の存在って、どうやって突き止められたんだろう?」

  • トムソン
  • 陰極線

電子を発見したのは、物理学者のJ.J.トムソン。
真空のガラス管の中に電極を入れて高電圧をかけると、陰極から陽極に向かって、目に見えない光が放出される。これが「陰極線」だ。

  • プラスの方に曲がる
  • 電極を逆に

トムソンは、陰極線に対して垂直方向に電圧をかけた。
上の電極を−極、下の電極を+極とすると、陰極線は+極の方に曲がった。
次に、上と下の電極を逆にすると、今度も+極の方に曲がった。
常に+極方向に曲がることから、陰極線は−、つまり “負の電荷を帯びた粒子の流れ” であると証明された。
さらにトムソンは、「この粒子は、わずかな質量しか持たない」と推定した
んだ。

美樹 「トムソンはいろいろな金属の電極を使って実験を重ねることで、その負の電荷を持った粒子はすべての原子に含まれていると考えたんだ。」

福 「そして、その粒子のことを『電子』と呼ぶようになったんだね。」

  • 正の電荷をもつ成分
  • ブドウパン型原子モデル

美樹 「小さな粒子、つまり 電子は 原子の一部。そして、原子は、負の電荷をもつ電子と、電気的に中性となる正の電荷を持つ成分 からできているのではないか? そんな考えから登場したのが、これ!(ブドウパン型原子モデルの絵を福くんに見せる)」

福 「え? これ(ブドウパン型原子モデル)って、原子の構造をイメージしているってこと!?」

美樹 「その通り!これは『プラムプディングモデル』。日本では『ブドウパン型原子モデル』と呼ばれているんだ。パンに見立てた全体が原子というわけ。

福 「じゃあ、ブドウのように散らばっている粒が、負の電荷を持った電子をイメージしているってことかぁ。それで、パンの生地みたいなのが 正の電荷を持った成分だったら、電気的にも釣り合った原子モデルになるってことだよね。」

  • ラザフォード
  • 金ぱく

原子の中に、正の電荷はどのように存在しているか? その答えを実験で明らかにしたのは E.ラザフォード。
金ぱくに、正の電荷を帯びた α(アルファ)粒子を当てて、その粒子がどこに到達するかを調べたんだ。

  • α粒子を当てた
  • 跳ね返った粒子があった

ブドウパン型原子モデルのように、原子の中の正と負の電荷が全体に均一に分布しているなら、α粒子は金ぱくを通過する、とラザフォードは予測した。

実験の結果、ほとんどのα粒子は金ぱくを突き抜けた。
だが、約1万回に1回、曲がったり、跳ね返ったりするα粒子があった。

  • 貝谷先生
  • 原子核

(化学基礎・監修講師) 貝谷先生 「ごくまれに、大きな角度で曲がったり、跳ね返された粒子があったという実験結果から、ラザフォードは『原子のどこか一点に正の電荷が集まっている。原子の質量もほとんどがその一点に集中している』と考えました。
そして、原子の中で正の電荷が集まっているところを『原子核』と名付けたんです。
電子に続いて、原子核が発見されたことも、原子の構造を解き明かす大きな手がかりとなりました。」


その後、さまざまな科学者が試行錯誤した結果、原子核の周りを電子が取り巻いているという原子の構造が明らかになった。

  • 電子殻
  • 美樹と福

原子の中の電子は、原子核の周囲にいくつかの層をなして存在している。これらの層が「電子殻」
原子核に近い方から順に、K殻、L殻、M殻、N殻・・・・・・と、さらに続いていくんだ。

福 「とっても小さくて目に見えない原子の構造を、電子の存在からひもといていった科学者たちの探究心って、ものすごく強かったんだね。でも、そのおかげで原子のしくみがわかってきたんだから、感謝しかないよ。」

美樹 「やっぱり、化学は愛と、情熱!!」

福 「それにしても、K殻とかL殻とか、どうして電子殻があるってわかったのかなあ?ちょっと気になるかも・・・」


それでは、次回もお楽しみに!

【第7回 原子核と電子】3ポイント まとめ
  • 第7回ポイント1
  • 第7回ポイント2
  • 第7回ポイント3

1:原子番号と質量数
原子番号は、陽子の数。 そして、陽子の数+中性子の数=質量数 だ。

2:放射性同位体
放射性同位体(ラジオアイソトープ)は、遺跡の年代測定や医療など さまざまな分野で利用されている。

3:電子と原子核
電子に続いて原子核が発見され、原子の構造が解明された。
原子の中の電子は、正の電荷を帯びた小さな原子核の周囲に、いくつかの層をなして存在している。

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