Eテレ 隔週 水曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。
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第3回 地図や地理情報システムと現代世界
ここは、編集デスクの南圭介と期待の新人編集部員・井桁(いげた)弘恵が所属する、創立間もないネットニュース「ツバサニュース・ドット・コム」の編集部です。
井桁「もう、デスクったら、『今日は大事な打ち合わせだから、絶対遅れないように!』とか言っときながら、何してんの、ホントにもう!」
南「あのシュート、ズバッと決まって芸術的だったなぁ…。あぁ、いげちゃん、おはよう!」
南さんは、昨日サッカーの試合をスマホで見ていて夜更かししたようです。
打ち合わせのために、準備をしてきた井桁さんはご立腹。
特集のネタを考えてきたのか?と詰め寄る井桁さんに、南さんは苦し紛れに提案します。
南「これよ、スマホ!スポーツが見られるだけでなく、世界中の情報にアクセスできちゃうわけ!それはもう地球が手のひらに乗っかっている感じ。今回はスマホとグローバル化で決まり!」
井桁「絶対に、今、思いつきましたよね?…でもスマホって、あっという間に進化してるじゃないですか。まずは携帯電話の歴史から入ったらどうでしょう?」
“ツバサペディア” のアーカイブスで、昔の携帯電話の映像を見てみました。
今から50年ほど前、1970年に開かれた大阪万博で人気となったパビリオンの一つが、電気通信館です。
その目玉が、ワイヤレステレホン。
携帯電話というよりは、家の電話の子機という感じでしょうか。
物珍しさも手伝って大評判となり、半年の会期中におよそ60万人が利用したといいます。
当時 個人が持ち歩く情報端末といえば、無線呼び出しサービス、いわゆるポケベルくらいでした。
その後、数字や文字を表示する機能が追加されると、ポケベルでメッセージを送り合うことが、高校生の間でもブームになりました。
そして、携帯電話サービスの開始は、大阪万博から17年後の1987年。
肩にかけて持ち歩ける、ちょっとしたバッグほどもあるショルダーホンが話題になりました。
携帯電話サービスの開始が、1987年。
その後 小型化が進んで、2000年前後になると、通話だけでなくさまざまな機能が付くようになりました。
そして、2008年に、いよいよスマホが登場します。
南「あの、今更なんだけど、スマホとケータイって、何が違うの?」
井桁「携帯はあくまで電話がメインで、そこにいろいろな機能が追加された。一方、スマホは、パソコンを小型化して、そこに電話機能を追加したって感じだと思いますけど」
南「なるほど、分かりやすい!これだけスマホが進化しちゃうと、我々の生活もガラリと変わらざるを得ないんじゃないかな?」
井桁「そうですね。特集のネタになりそうなものがないかな…」
スマートフォンの専用アプリで、生配信しながら売り買いする「ライブコマース」が、今、爆発的に拡大しています。
福岡で中古ブランド品店を経営する、李成倫さん。
彼の主なターゲットは、日本国内ではなく中国です。
中国のライブコマース利用者は、およそ4億人。
市場規模も急拡大していて、2020年には、日本円に換算しておよそ17兆円に上ったと見られています。
人気の理由のひとつは、実際に店舗で買い物をしているような感覚で商品を選べること。
知りたい情報があったら、アプリを通して質問すれば即座に対応してくれます。
商品が気に入ったら、その場で購入を決定。
電子決済で支払いを済ませれば、登録した住所に商品が届きます。
すべてスマホひとつで済ませられることも、魅力の一つです。
李さんのライブ配信をいつも楽しみにしているという、中国・天津在住の女性。
以前は、日本をたびたび訪れて、買い物を楽しんでいたといいます。
しかし、コロナ禍で旅行ができなくなり、日本の商品を扱うライブコマースのチェックが日課となりました。
女性「ライブコマースは、もう生活の一部。時間があれば、必ず見ています」
お笑い芸人の話術を取り入れるなどして、人気を集めている李さん。
ある日のライブ配信は、10時間以上続き、90点以上、700万円近くを売り上げました。
李さん「何万人、何千人が、同時にこの店の商品を見られる。とても効率がいいビジネスだと思います。売り上げがさらに上がる自信があります」
こうしたライブコマースをはじめとした国際通信を支えているのが、高速かつ大容量の通信を可能にした光ファイバー。
そして、それを用いた海底ケーブルの通信網です。
新しい海底ケーブルが次々と敷設されていて、その総延長は、およそ120万キロメートル。
なんと地球30周分もの長さに達しています。
南「こうして見ると、確かに地球は小さくなっているんだってことが分かるよね」
井桁「はい、そうなると、国同士の関係がますます重要になってくるんじゃないですか?政治、経済、文化…」
南「そうだね。政治や文化はなかなか難しい面があるけど、経済に関してはスパッと数字で表せるんじゃないかな?」
「世界の国・地域別の貿易額の推移」のグラフを見てみます。
全体で1970年に1兆ドルくらいだったものが、40年余りで30兆ドルを超えるまでに増えています。
しかし上の右の画像から分かるように、2008年〜2009年あたりで、世界全体でガクッと落ち込んでいます。
2008年、リーマンショックと呼ばれる出来事が起こりました。
アメリカ合衆国の投資銀行リーマンブラザーズが経営破綻したことから、世界規模の金融危機が発生したのです。
一国の一企業の倒産が、世界中に影響を及ぼした出来事です。
井桁「国や企業レベルだけでなく、個人レベルでもスマホを武器にグローバルな経済活動をしている人がもっといそうですよね」
南「あ、いる!アフリカのケニアから面白いレポートが届いたの覚えてる?」
2019年7月のリポートです。
電線も水道も通っていない、ケニアのサバンナの住人が手放せないのが、スマートフォンです。
ケニアでは、携帯電話の普及率が100%を超え、インターネットがどこでも使えるようになっています。
男性「毎日新しい情報が入ってきて役立つし、うれしいです」
情報通信技術が急速に普及したことで、アフリカでは今、新たなビジネスが次々と生まれています。
ケニアの郵便事情に、革命を起こしたサービスがあります。
携帯電話のGPSを使い、受取人がどこにいても荷物を届けるサービスです。
ケニアでは、ほとんどの建物に、正式な番地が割り振られていません。
そこで、住所の代わりにしたのが携帯電話。
住所がないケニアで、配達物がきちんと届くようになったのです。
男性「ネットで買ったものを届けてもらえるようになりました。携帯電話一台で、なんでも手に入るようになったんです」
このビジネスを立ち上げたのは、起業家のアブドゥルアジズさんです。
アイデアのきっかけは、自分自身の苦い経験でした。
公務員試験を受けたとき、合格していたのに期限内にその通知を受け取れず、就職のチャンスを逃してしまったのです。
アブドゥルアジズさん「”必要は発明の母”、就職の失敗からひらめいたんです」
この会社を後押ししている日本人がいます。
投資会社を経営する、寺久保拓摩さん。
およそ1千万円を投資し、システムの実用化を支援しました。
寺久保さん「物流のインパクトはすごく大きいので、それによって経済は一気に加速します。彼らは、モノを届ける部分を作っているというところに、可能性しか感じないです」
さらに、日本の大手バイクメーカーも、この動きに加わろうとしています。
物流サービスが拡大すれば、配達のため、より多くのバイクが必要となることに注目したのです。
メーカーでは、お金がない人でもバイクを使った仕事を始められるように、得られた収入からバイクの購入代金などを支払うという仕組みを作ろうとしています。
日本にいる担当者も交え、寺久保さんの意見を聞きながら、ケニアで起きている変化に合わせた販売方法を模索しています。
バイクメーカーの向原さんは、次のように語ります。
向原さん「今あるビジネスに凝り固まっている僕らにとっては、非常に刺激を受けて、かつ可能性を見出せる土地だと思っています」
寺久保さんは、世界中に拠点をもつ日本企業と連携することで、アフリカで生まれた仕組みを世界に広げていきたいと考えています。
寺久保「ここを解決出来たら、世界中どこでも解決できるだけのノウハウを得られると思ったので、そこを一緒に起業家と作りたいと思いました。いずれは、ここで生み出したものを、日本やほかの先進国に持って行くことが最後のミッションですね」
南「スマホとグローバル化の記事になりそうなネタはあった?」
井桁「ケニアの携帯電話普及率が100%以上というのが驚きでした」
南「1人で2台持っている場合もあるから、100%を超えちゃうんだよね」
上の画像は、アフリカでの携帯電話加入者数と普及率の推移です。
アフリカの携帯電話の普及率は、2003年に8.6%だったのに対して、2014年では84.7%と、およそ10倍になっています。
これは、元々固定電話の普及率が低く通信に対する潜在的なニーズが高かったことが要因の一つです。
それに加え、固定電話より携帯電話の方がインフラ整備も簡単でコストもかからないので、普及に拍車がかかったと考えられます。
南「こりゃ、近い将来、アフリカ諸国が通信先進国になるかもしれないね」
井桁「起業家のアイデアも豊富でしたね。携帯のGPSを住所代わりにするなんて、日本にいるとなかなか思いつかないですよね」
日本の宅配業者の悩みのひとつである「不在配達が多いこと」は、「荷物を家ではなく直接に人」に届けられれば、解決できるかもしれません。
また、日本企業との打ち合わせは、オンライン会議で行っていました。
スマホがあれば、世界中のどこにいても会議がができます。
南「つまり、グローバル化って、人と人とをつなぐことなんだよ!」
私たちはスマホでどんなことをしているでしょうか。
海外のスポーツを見たり、最近ではアーティストのライブ配信を見たりすることもできます。
SNSは、今やコミュニケーションの必須アイテムとなっています。
井桁「毎日のように呟いてるし、フォロワーさんの反応を見るのも楽しいし…」
通信技術が発達して世界中の人とコミュニケーションをとれるようになると、いろいろな問題も起きてきます。
例えば、個人情報の流出、文化・慣習の違いによる行き違い、フェイク・ニュースなどです。
井桁「こういうデメリットについても、ちゃんと触れておいた方がよさそうだなぁ」
高木先生「ケニアの郵便サービスというケーススタディを通して、スマホとグローバル化を考えるという企画は本当に面白いと思います」
日本でも、ドローンを使っての配達サービスが計画されていて、 スマホの位置情報を使って届ける仕組みのようです。
この技術は、他にも使い方次第で、災害対策などにも利用できるといいます。
南「寺久保さんに追加取材をしてきました。アフリカの起業家たちは、ユニークなアイデアを持っていて、自分たちの世代で社会の課題を解決しようとしている人たちが多いそうです。やる気があれば、ビジネスの世界では簡単に国境を越えられるんですね」
井桁「私は、今回の特集では、メリットだけじゃなくて、デメリットもちゃんと伝えようと思うんです。ネットで世界とつながるうえで注意すべきこと、いわゆる”ネットリテラシー”について」
高木先生「それは、とても大事なことです。個人レベルでは、ネットリテラシーを身につけることが大切です。そして、国や社会レベルでの課題としては、“デジタルデバイド”というものがあります」
ネットリテラシーとは、 インターネットの情報や事象を正しく理解し、それを適切に判断・運用できる能力をいいます。
デジタルデバイドは、日本語では、「情報格差」といいます。
情報通信技術がもたらす恩恵や影響は、国や地域によって異なります。
また、同じ国内でも大都市や地方、富裕層や貧困層では得られる情報や利用できる技術が異なります。
情報通信技術を利用できる人と利用できない人とで、機会や収入などに差が生じることが情報格差、つまりデジタルデバイドです。
それをいかに解消していくかということが求められています。
井桁「デスク、『デジタルでバイト』か言ってると、情報社会に置いて行かれますよ」
南「いやいや、知ってましたから!」
それでは、次回もお楽しみに!
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