NHK高校講座

地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

  • 高校講座HOME
  • >> 地理
  • >> 第37回 現代世界の地誌的考察 【現代世界の諸地域】編 世界のさまざまな地域を見てみよう 〜アングロアメリカ ⑵ 〜

地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第37回 現代世界の地誌的考察
【現代世界の諸地域】編

世界のさまざまな地域を見てみよう
〜アングロアメリカ ⑵ 〜

  • 地理監修:日本大学教授 矢ケ普@典隆
学習ポイント学習ポイント

世界のさまざまな地域を見てみよう 〜アングロアメリカ ⑵ 〜

  • 石原良純さん
  • 籠谷さくらさん

石原良純さんが所長を務める、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、通販で買い物をしたようです。

さくら 「通販って便利ですよね。私、通販がなかったら生きていけないかもなー。」

  • もしもアメリカ生まれのテクノロジーがなかったら世界はどうなる?

「もしもアメリカ生まれのテクノロジーがなかったら、世界はどうなる?」
これが、今回の依頼です。

所長 「まあ、コーラやハンバーガーは誕生してないかもな。それに通信販売もアメリカから始まったと言われているから、それもないかもしれないぞ。こうやって考えてみると、我々の暮らしはいたるところでアメリカの影響を受けていると言えるな。」

さくら 「もしかして、タブレットもないとか?」

所長 「ICTもアメリカで成長した産業だからな。まずは、アメリカのテクノロジーとはどんなものか、世界をリードしてきたアメリカの工業について見てみよう。」

世界最大の工業国アメリカの成り立ち
  • ペンシルヴェニア州ピッツバーグ
  • 五大湖周辺の地域

ペンシルヴェニア州ピッツバーグ。
20世紀前半まで、五大湖周辺のこの地域は重工業を中心とした経済発展の舞台でした。
スペリオル湖の西に位置するメサビでは、鉄鉱石が採掘されました。
また、アパラチア山脈の炭田では、黒いダイヤとも言われた石炭が豊富に取れました。
豊かな資源は五大湖の水運を利用して周辺に運ばれ、鉄鋼業をはじめとする国内最大の工業地域が形成されたのです。

  • 鉄の都

ピッツバーグはかつて「鉄の都」と呼ばれ、19世紀から20世紀前半にかけて、鉄鋼業の中心地として繁栄しました。
鉄鋼は交通の発達や自動車産業の基盤となっていきます。

  • ミシガン州デトロイト
  • フォードシステム

デトロイトは自動車産業の中心地として代表的な工業都市でした。
当初、自動車は熟練工がパーツをひとつずつ取り付ける組み立て方式でした。
量産を目指したフォード社は食肉工場にヒントを得て、ベルトコンベアを使用した流れ作業によってパーツを取り付ける、合理的な大量生産方式「フォードシステム」を生み出したのです。
組み上げの速度は500倍となり、品質も向上。
価格は3分の1近くまで下がりました。
しかし、単純作業の連続を嫌って労働者たちは自動車工場を敬遠しはじめました。

  • 1万人以上の労働者が殺到
  • 優れた機械を使った量産システム

フォード社は日給を倍額にすると宣言。
すると、南部のアフリカ系の人たちを含む1万人以上の労働者が殺到しました。
優れた機械を使った量産システム。
収入が倍増した労働者は自動車の買い手にもなっていきました。
街にあふれる大量生産された自動車。
フォードシステムはその他の産業にも応用されていきました。

  • 豊かな鉱物資源、巨大な資本、豊富な労働力、自由な発想と高い技術力

所長 「大西洋岸から五大湖周辺にかけて発展した原動力は、豊かな鉱物資源、巨大な資本、移民の流入による豊富な労働力、そして自由な発想と高い技術力だ。しかし第二次世界大戦後、ヨーロッパや日本で工業化が進むと、鉄鋼業と自動車産業は厳しい国際競争にさらされた。生産設備の老朽化や技術革新の遅れ、労働者の高い賃金などがあいまって工場が閉鎖され、失業者が増大したんだ。」

  • サンベルトとスノーベルト
  • 北部に比べて温暖、賃金水準が低い、州政府の優遇措置

所長 「1970年代以降、『サンベルト』と呼ばれる北緯37度以南の地域に、北部から、企業の移転や人口の移動が起こった。それに対して、経済の冷え込んだかつての伝統的な工業地帯は『スノーベルト』と呼ばれるようになったんだ。」

さくら 「なぜ企業や人がサンベルトに移動したんですか?」

所長 「ちょうど石油危機が起こったこの時代、サンベルトは北部に比べて温暖で企業のエネルギーコストを下げられた。また伝統的な工業地帯に比べて賃金水準が低く、企業誘致のために州政府が優遇措置を取るなど、企業にとって魅力的な環境が存在したんだな。このサンベルトで『ICT産業』など『先端技術産業』が発展したんだ。」

世界の頭脳が集まる街シリコンヴァレー
  • シリコンヴァレー
  • IoT・モノのインターネット

サンフランシスコ郊外にある「シリコンヴァレー」はアメリカの情報通信産業の中心地です。
世界的ICT企業の本社があり、若手起業家や有望なベンチャービジネスに投資する投資ファンドが数多く集まります。
ここで革新的な技術とアイデアを持つ起業家たちが巨大企業を生み出してきました。
ICT関連だけではなく製造業を中心とする世界各国の企業が、機会があるたびにシリコンヴァレー進出に挑戦しています。

今、注目されているのが「IoT・モノのインターネット」。
あらゆる“モノ”をインターネットでつなぐシステムのことです。
新たな価値を生み出した製品には、巨額の投資がなされます。

  • スマートヘルメット
  • 走行中に映像や音楽を利用できる

台湾のある企業はスマートヘルメットの売り込みを行っていました。
ヘルメットに小さなモニターが付き、走行中に映像や音楽を利用できるIoT製品です。

  • スタートアップ
  • 株を投資会社に渡し、代わりに投資を受ける

アメリカの投資会社最大手の企業では、「スタートアップ」を巨大企業に育てるべく投資を行っています。
スタートアップとは、革新的な技術を開発して、立ち上げたばかりの会社のことです。
スタートアップは株の5%をこの企業に渡し、代わりに10万ドルの投資を受けます。
投資だけでなく、実践的な経営手法もレクチャーされます。

  • キム・スンフンさん
  • リハビリ用医療機器

韓国から新たにシリコンヴァレーに乗り込んできた起業家キム・スンフンさん。
開発したのは最新の医療機器です。
手の動きのデータをコンピューターに蓄積し、リハビリにつなげるIoT製品です。
韓国の病院では2年前から利用されています。

  • 手の不自由な患者に製品を試してもらう
  • 楽しめるようコンピュータゲームを利用

キムさんが狙うのは13兆円に上るアメリカの医療機器市場。
この日は、手の不自由な患者に、実際に製品を試してもらいます。
リハビリを楽しめるようにコンピューターゲームを利用。
流れてくるすしを、種類によって左右に振り分けます。
患者が、装置を装着した手のひらを動かすことで、センサーが反応して、すしが分けられていきます。

アメリカに集中する先端技術産業
  • アメリカの先端技術産業集積地

所長 「NASAの拠点があるヒューストンを中心とした地域やフロリダ半島では航空宇宙産業が盛んだ。かつての鉄の都ペンシルヴェニア州ピッツバーグとその周辺は、再生医療やバイオテクノロジーなどの開発の拠点として発展している。」

世界に輸出されるアメリカの農産物
  • とうもろこしと大豆の上位輸出国(2016)
  • アメリカ合衆国とブラジルの食肉輸出量(2016)

所長 「そして、アメリカが世界に影響を及ぼしているテクノロジーは、工業だけではないんだ。農業もそうなんだ。アメリカの農産物は世界中に輸出されている。とうもろこしと大豆は生産量も輸出量も世界1位。どちらも世界の総輸出量4割をアメリカが占めている。牛肉、豚肉、鶏肉などを合わせた食肉の輸出では、ブラジルと世界第1位の座を競っているんだ。」

さくら 「世界中の“食”がアメリカに頼って成り立っているということですか?」

所長 「そう、アメリカは『世界の食料庫』と呼ばれているんだ。アメリカは国土全体のおよそ40%が農地だ。でも農業従事者は人口のわずか2%ほど。大規模な農場のほとんどが家族経営なんだ。」

  • センターピボット

さくら 「でも、そんな大きな農場、家族だけでやっていけるんですかね?」

所長 「それができるのがアメリカの科学技術力、テクノロジーだ。少ない人数で広大な農地を耕作するために、機械化や合理化に取り組んできた。アメリカでは、いわゆる『農業の工業化』が進んでいる。例えばこの衛星写真(図)、なんだか分かるかな?これはセンターピボットだ。」

合理的な農業と食料生産
  • カンザス州ガーデンシティ
  • 地下水をくみ上げ散水する灌漑システム

アメリカ中部のカンザス州ではセンターピボットを利用した農業が行われています。
センターピボットとはポンプで地下水をくみ上げ、長さ400m近くもあるアームに送り、そこから散水する灌漑(かんがい)システムです。

  • 車輪がついていて装置全体が自動的に動き円形に散水する

車輪がついていて、装置全体が自動的に動き、円形に散水します。
1950年代に誕生し、電動化され、1980年代に爆発的に広がりました。

  • フィードロット
  • 大規模な食肉工場もグレートプレーンズに進出

降水量の少ない「グレートプレーンズ」では、「フィードロット」とよばれる企業的な肥育場が発展していきました。
センターピボットの普及により、飼料となるとうもろこしの栽培が盛んになったからです。
そうした高カロリーのエサを与えることで、肉質を高めることができます。
牛の管理の機械化も進められ、短期間で効率のよい肥育が行われています。
大規模な食肉工場もグレートプレーンズに進出し(右図)、牛肉の新しい生産地域が誕生しました。

  • アグリビジネス企業
  • サウジアラビアの灌漑農地

農業の合理化が進むことで、アメリカ国内の消費量を大きく超える農産物が生産されるようになり、余った農産物を世界各国に輸出する農業が生まれました。
農業や食肉産業に影響を与えているのが、多国籍化した「アグリビジネス企業」です。
中でも「穀物メジャー」と呼ばれる巨大穀物商社は、穀物の流通や加工も手がけ、世界の穀物の相場を左右する存在です。

また、農業に必要なさまざまなものを売り込むのもアグリビジネスの仕事です。
例えば、サウジアラビアに設置されたセンターピポットにより、砂漠に農地が出現しました(右図)。
食料を輸出するだけではなく、アメリカの農業技術もアグリビジネスによって世界に輸出されています。

アメリカがけん引する農業の技術革新
  • 矢ケ蕪T隆先生
  • センターピボット灌漑装置

もしもアメリカの技術がなければ、世界の食料生産はどうなっていたのでしょうか?
研究所のブレーン・矢ケ蕪T隆先生に伺います。

矢ケ武謳カ 「アメリカが世界の農業の技術革新をけん引しています。世界各地では伝統的な農業が行われてきましたが、機械、農薬、化学肥料を使って、大規模に経営するアメリカ式の農業が浸透しつつあります。アメリカの農業技術がなければ、世界の農業生産は現在のようには拡大しなかったでしょうね。」

所長 「先生は今、アメリカの農業技術のどこに注目されていますか?」

矢ケ武謳カ 「やはり農業機械が重要です。先ほど出てきたセンターピボット灌漑(かんがい)装置(右図)、これはアメリカで生まれた農業機械の傑作なんですね。労働力をかけずに水を効率よく散水でき、起伏した農地でも灌漑(かんがい)できるわけなんです。最近ではさらに節水型のモデルも出ています。また、大型のトラクターやコンバイン収穫機などが、アメリカの大規模な農業を支えてきました。そして最近、普及しているのが、ICT技術を活用した『精密農業』。日本ではスマート農業ともいいます。」

精密農業とは
  • 大型コンバイン
  • 情報通信技術を利用

精密農業とは、ICT技術で精密なデータを活用することで、農作物の生産量を増大させる農業のことです。
例えば大型コンバインで作業しながら、インターネットでGPSやGISなどの情報通信技術を利用して作物の生育状況や土壌の情報を把握。
このデータをコンピューターで分析して、農作業に活用するのです。

  • ドローン
  • 作物の状態は緑の色味の量から分析

最近ではドローンが、農業に利用されています。
ドローンを使って畑の映像を撮影し、大きな1枚の地図を作ります。
この画像から作物の生育状況や、土地の条件などの情報が得られるのです。
作物の状態は写真に写る緑の色味の量から分析。
肥料のバランスも分かります。
また病害虫の影響を受けているところも細かく映像で把握できるので、対象の範囲を絞って農薬をまいたり、水や肥料をバランスよく与えることが可能になります。

世界に影響を及ぼすアメリカ合衆国
  • データ管理による農業で少ない労働力で持続的な農場経営が可能に

矢ケ武謳カ 「従来は、飛行機を使った農薬散布などがありまして、いかにもアメリカの大規模経営を象徴していました。しかし、周辺の環境に与える影響や、農業生産者へ与える影響が危惧されていました。ドローンやICTの技術を農業に利用することで、水、肥料、農薬など、必要な場所に必要な量をピンポイントで投与することができるわけなんです。こうして、安全性を高めて健康的な農業が実現できますし、コストダウンもはかれるわけなんですね。データ管理による農業で、少ない労働力で持続的な農場経営が可能になります。

所長 「農業も新しい時代に入っているんですね。でも、アメリカがけん引していなければ、こうした技術革新はなかったかもしれないということですか?」

矢ケ武謳カ 「そうですね。アメリカは“新しいものを開発する力にたけた国“です。国際特許出願件数が世界で最も多いのもアメリカです。実はこのような科学技術の発展に移民が果たした役割は大きいんですね。例えばドイツからの移民がアメリカの科学技術の発展を促進したとも言われています。」

  • アメリカ合衆国はその時代に必要とされる新しいものを生み出す力にたけた国
  • アメリカのテクノロジーは世界に大きな影響を与えている

それでは今回の依頼に対する答えです。

さくら 「アメリカ合衆国はその時代に必要とされる新しいものを生み出す力にたけた国です。アメリカで開発され発展したテクノロジーは世界に大きな影響を与えています。もしそれらがなかったら、世界のあり方は今とは大きく違っていたと思います。


それでは、次回もお楽しみに!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約