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※この番組は、前年度の再放送です。

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地理

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今回の学習

第36回 現代世界の地誌的考察
【現代世界の諸地域】編

世界のさまざまな地域を見てみよう
〜アングロアメリカ ⑴ 〜

  • 地理監修:日本大学教授 矢ケ普@典隆
学習ポイント学習ポイント

世界のさまざまな地域を見てみよう 〜アングロアメリカ ⑴ 〜

  • 石原良純さん
  • 籠谷さくらさん

ここは、「フィルドストン研究所」。
サラダを用意しているのは、所長の石原良純さん。
そこへ、新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、依頼を持ってやってきました。

さくら 「今回はメジャーリーグ関連の依頼がきていますよ。」

アメリカの中心はどんな人たち?
  • メジャーリーグベースボールでは、さまざまな人種・民族の選手が活躍している。アメリカ合衆国全体ではどのような人々が中心となっているの?
  • 民族のサラダボウル

「メジャーリーグベースボールでは、さまざまな人種・民族の選手が活躍している。アメリカ合衆国全体では、どのような人々が中心となっているの?」
これが、今回の依頼です。

さくら 「中心って考えると難しいですよね。オリンピックとかだとアフリカ系の選手が多いし、政治家だと白人が多いし…。」

所長 「アメリカは『多民族社会』だからな。別名、民族の『サラダボウル』だ!いろんなものが混在してるだろ?アメリカ合衆国がどうしてこんな多民族社会になったのかを、調べる必要がありそうだな。まずは人々が暮らす自然環境を見てみよう。」

アングロアメリカの自然
  • アメリカ合衆国とカナダを含む広大な地域をアングロアメリカと呼ぶ
  • 西側にはロッキー山脈、東側にはアパラチア山脈がある

北アメリカ大陸のアメリカ合衆国とカナダを含む広大な地域を、アングロアメリカと呼びます。
西側にはロッキー山脈、東側にはアパラチア山脈があり、その間をミシシッピ川が流れています。

  • プレーリー
  • グレートプレーンズ

川の西側には「プレーリー」と呼ばれる草原が広がります。
ロッキー山脈の東側にあるのは、半乾燥の大平原「グレートプレーンズ」
こちらは牧畜に利用されてきました。

  • 西経100度付近を境に、東側には湿潤地域、西側には乾燥地域が広がっている
  • バロー

気候は西経100度付近を境に、東側には湿潤地域が、西側には乾燥地域が広がっています。
南北を見ても大きな気候の差があります。北アメリカ大陸最北端の街、バロー。
冬はマイナス30℃を下回ることもあるツンドラ気候です。

  • タイガの広がる亜寒帯湿潤気候
  • 温暖湿潤気候

その南から五大湖にかけては、タイガの広がる亜寒帯湿潤気候になっています(左図)。
アメリカ合衆国の大西洋岸からメキシコ湾にかけては、温暖湿潤気候です(右図)。

  • 熱帯モンスーン気候
  • ハリケーンに襲われることも

フロリダ半島の一部には熱帯モンスーン気候の地域も(左図)。
夏には「ハリケーン」に襲われて、大規模な被害を受けることもあります(右図)。

  • デスヴァレー
  • 地中海性気候や西岸海洋性気候

またアメリカ合衆国の南西部には、砂漠も見られます(左図)。
そして太平洋岸では、偏西風や海流の影響で、地中海性気候や西岸海洋性気候となっています(右図)。

  • シェールガス採掘場

広大なアングロアメリカは、エネルギー資源や鉱産資源も豊富です。
特にアメリカ合衆国は、近年の「シェールガス」「シェールオイル」の開発によって、世界一の天然ガス・原油生産国となっています。

アメリカの開拓史
  • コロンブス

さくら 「こんなに広いところに、どうやって人が集まったんでしょうか?」

所長 「まずは、アメリカの開拓の歴史から考えてみよう。北アメリカ大陸に、最初に到達したのは誰かな?」

さくら 「コロンブス!」

  • 上陸したのは今のラテンアメリカ
  • サン・サルヴァドル島

所長 「正解。1492年、コロンブスがヨーロッパの人間としては最初に到達した。ただ正確には上陸したのは北アメリカ大陸ではなく今のラテンアメリカ、西インド諸島だったんだ。この中のサン・サルヴァドル島という小さな島に上陸したんだ。」

  • コロンブスと先住民

所長 「そこにはすでに、先住民の『ネイティブアメリカン』が暮らしていたんだ。コロンブスたちスペイン軍は、先住民の土地や資源を略奪した。さらに、ヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘などの伝染病が大流行して、先住民の人口は激減してしまったんだ。ヨーロッパのさまざまな国が、このようなやり方で、アメリカ大陸に植民地を築いていったんだ。」

さくら 「“開拓”ってそういうことなんですね。ひどい話ですね…。」

所長 「ネイティブアメリカンにとっては悲劇の始まりだ。だが、ここからアメリカ合衆国は、超大国への階段を上っていったんだ。その後の移民の歴史を見てみよう。」

移民の歴史
  • 開拓前線(フロンティア)の移動

17世紀、ヨーロッパからの移民は、北アメリカ大陸の大西洋岸に、次々と植民地を建設していきました。
人口増加に伴って開拓民は内陸へ向かい、「開拓前線(フロンティア)」は次第に西へ移動していきました。
そしてネイティブアメリカンは、西の不毛な土地に追いやられていったのです。

ネイティブアメリカンはいま
  • クロウ族の居留地
  • ダンスコンテスト

そんな先住民の子孫たちは、今、どうしているのでしょうか?
8月半ば、モンタナ州にあるクロウ族の居留地では、お祭りが行われます(左図)。
ほかの居留地やカナダのネイティブアメリカンも集まる大きな催しです。

午後になると、メインイベントのダンスコンテストが始まります(右図)。
長い迫害の時代を経て、ようやくアメリカでも、ネイティブアメリカンの文化が認められつつあるのです。

アメリカ合衆国誕生
  • タウンシップ制
  • ホームステッド法

アメリカ合衆国が誕生したのは1776年。
イギリスの植民地が、本国からの独立を宣言したのでした。
当時、開拓を促進するために連邦政府が行った土地の測量と分割の方式が「タウンシップ制」です。
道路を直交させて、真四角な土地を準備し、家族ごとに農場を経営していくものです。
また土地を無償で開拓民に与える「ホームステッド法」など、自作農を育成する農業政策が実施されました。

こうして「開拓者精神(フロンティアスピリット)」が、アメリカ人の国民性を表す言葉として使われるようになりました。

アメリカの人種・民族
  • ワスプ

移民の中でも多数派のヨーロッパ系の人々は、アメリカ全域で暮らしています。
特に白人でアングロサクソン、プロテスタント系の人々は「ワスプ(WASP)」と呼ばれ、政治・経済・文化の発展に大きな役割を果たしました。

  • アフリカ系の人々
  • プランテーション農業

アフリカ系の人々は南部に集中しています。
19世紀中ごろまで、奴隷に依存したプランテーション農業が行われていたためです。

  • ヒスパニック
  • アジア系(韓国)

スペイン語圏の、ラテンアメリカ系移民やその子孫の「ヒスパニック」は、メキシコと国境を接する南西部や、カリブ海諸国に近いフロリダ半島に集中しています。

一方太平洋岸は、アジア諸国と密接な関係があり、大都市には中国・韓国・フィリピン・インドなどからの移民が集中しています。

  • 1960年代、キング牧師らが公民権運動を推進

アメリカは移民が国家を作り、移民によって発展を遂げてきました。
しかし少数派集団に対する偏見や差別は存在し、摩擦や対立が繰り返されてきました。
中でもアフリカ系の人々に対しては、根強い差別が続きました。
1960年代の「公民権運動」の結果、法律上は平等な権利が保障されるようになりました。
最近では、互いの文化的な伝統を尊重しながら共生しよう、という意識が強まっています。

カナダの自然と資源
  • ロシアに次ぐ世界第2位の国土面積
  • カナダの気候

アングロアメリカにはカナダもあります。
カナダもサラダボウルなのでしょうか?

所長 「カナダはロシアに次いで、世界第2位の国土面積を持っている。北部はツンドラ気候、南部はほとんどが亜寒帯湿潤気候で、比較的温暖な南部に人口と都市が集中しているんだ。

  • オイルサンド

森林資源や鉱産資源に恵まれたカナダですが、最近は「オイルサンド」が有名です。

所長 「これは原油を含んだ砂なんだ。地下のオイルサンド層を蒸気で熱することで、原油が溶けだしたものだ。これが見つかったおかげで、カナダは原油埋蔵量は世界第3位になったんだ。」

さくら 「原油の生産量はアメリカが1位でしたよね。アングロアメリカって資源が豊富なんですね。」

カナダ開拓 意外な歴史
  • ビーバー
  • ナポレオンの二角帽子

所長 「続いて歴史の面を見てみよう。カナダにも、先住民のネイティブアメリカンが住んでいた。まず、そこにフランスが植民地を作ったんだが、フランスの目的は領土よりも、あるものを先住民と物々交換することだったんだ。何を手に入れようとしたんだと思う?」

さくら 「カナダだから木材とか、魚とか?」

所長 「答えは毛皮だ。中でも価値の高かったのがビーバー(左図)。ビーバーの毛皮で作った帽子が、防寒・防水に大変優れていて、ヨーロッパの上流階級の間で大人気だったんだ。例えばこれ!(右図)」

さくら 「ナポレオン!」

所長 「こういうのを二角(にかく)帽子と言うんだ。ナポレオンの二角帽子も、ビーバーの毛皮製だったことがわかっているんだ。」

所長 「そんなビーバーの毛皮を奪い合ってフランスとイギリスが争った結果、カナダは最終的にはイギリスの植民地となる。しかしフランス系の住民も残ったために、カナダでは今でも英語とフランス語が両方とも公用語になっているんだ。」

カナダとアメリカの違い
  • 多文化主義

さくら 「じゃあ、カナダもサラダボウルの国ってことですか?」

所長 「そうだな、カナダには200以上の民族がいると言われているからな。ただ、カナダは民族や人種の多様性を尊重する『多文化主義』を世界で初めて導入した国でもあるんだ。アメリカより洗練されたサラダボウルって印象かな。」

さくら 「アメリカはネイティブアメリカンの迫害とか、人種差別とか、いろいろ問題がありましたもんね。」

所長 「アメリカ合衆国の抱える問題はそれだけじゃないんだな。都市部にも新たな問題が出てきているんだ。アメリカ合衆国の今の姿を見てみよう。」

アメリカの大都市
  • メガロポリス
  • モータリゼーションが進行

世界第3位の人口を持つアメリカ。
その大部分は都市に集中し、国土の東半分に多く分布しています。
特に大西洋岸のボストンからワシントンD.C.にかけての地域は、「メガロポリス」と呼ばれる人口集中地域になっています。
しかし「モータリゼーション(車社会化)」が進行し、産業構造が変化すると、都心とその周辺部は衰退し、都市のさまざまな機能の中心は郊外に移っていきます。

郊外の発展
  • ビジネスセンターや工業団地が誕生
  • ヒスパニック向けに改装して成功

ビジネスセンターや工業団地が次々と生まれ、企業活動の場となっています。
そして消費や人々の交流の中心となるのが、ショッピングセンターです。
次々とアメリカにやってくるヒスパニックをターゲットに改装したという、このショッピングセンターでは、女性服はLサイズを多めに用意し、逆に靴は小さいサイズの品ぞろえを充実させています。

ヒスパニックの人にとっても居心地のよさを感じる場となっています。
時には、ショッピングセンターの中で結婚式も。

こうして都市機能が郊外に移転すると、新たな問題も出てきます。

デトロイトのインナーシティ問題
  • 1955年のデトロイト
  • 新たな貧困や犯罪発生が危惧される

都市部や周辺の旧市街地では、経済状況がひっ迫し「インナーシティ問題」が起こるのです。
ミシガン州デトロイトは、自動車産業の世界的な中心地でした。
しかし、日本車の好調な売れ行きなどもあって産業が不振に陥り、市の財政が破綻。
その結果、都心周辺部で失業率が上昇し、生活環境の悪化、教育の荒廃などの問題が深刻化したのです。
国民総所得(GNI)では世界第1位のアメリカ。
しかし都市部では、新たな貧困や犯罪の発生が危惧されています。

アメリカの現状と未来
  • 矢ケ蕪T隆先生
  • ドナルド・トランプ

アメリカの多民族社会は、今後どうなるのでしょうか?
研究所のブレーン・矢ケ蕪T隆先生にお話を伺います。

矢ケ武謳カ 「3つほどの観点からアメリカの現状と未来を考えてみましょう。1つめは第45代大統領のドナルド・トランプです。トランプ大統領は、移民に対して強硬な姿勢を取り続けています。不法移民の取り締まりも強化しているんですね。1960年代の公民権運動の時代を経て、アメリカ社会は多様な人々と文化の存在に寛容になってきました。トランプ大統領は、アメリカの分断化を助長しているとして、反発も増大してるんです。」

  • 2017年のアメリカ合衆国の移民構成

矢ケ武謳カ 「2つめは移民の割合です。アメリカは毎年100万人を超える移民を受け入れているんですね。アジアからの移民が一番多いんです。このままでいきますと、アメリカの人口構成は緩やかに変化していきます。また移民の多くは若い世代で、人口増加に寄与しているわけなんです。日本を含めて先進諸国では、高齢化が問題になっていますが、アメリカでは高齢化の速度が大変緩やかなんですね。」

  • 多民族社会のゆくえ

矢ケ武謳カ 「そして3つめは、多民族社会の今後についてです。アフリカ系アメリカ人やネイティブアメリカン、またアジア系などへの差別がなくなったとは言えません。移民に対する偏見や差別も存在するんですね。しかし、カナダのように多様な文化を尊重しようという人たちが増えているのも確かなんです。多様な人々の存在はアメリカにさまざまな活力をもたらしてきた、ということを忘れてはいけません。アメリカは資源に恵まれた国なんですけれども、多様な人々もこの国の発展にとって、重要な資源であると言うことができるでしょう。」

  • アメリカはさまざまな民族が自由に活躍することで超大国になった。どの民族でも中心になることができる。それがアメリカのいいところである。

それでは、今回の依頼に対する答えです。

さくら 「アメリカはさまざまな民族が自由に活躍することで超大国になった。どの民族でも中心になることができる。それがアメリカのいいところである。ということだと思います!」


それでは、次回もお楽しみに!

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