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※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第27回 現代世界の地誌的考察
【現代世界の諸地域】編

世界のさまざまな地域を見てみよう
〜中国 ⑵ 〜

  • 地理監修:東京国際大学 名誉教授 高橋 宏
学習ポイント学習ポイント

世界のさまざまな地域を見てみよう 〜中国 ⑵ 〜

  • 石原良純さん
  • 籠谷(こもりや)さくらさん

ここは、「フィルドストン研究所」。
所長を務める石原良純さんが、スポーツ観戦をしています。

所長 「中国強いな。同じ東アジアだからライバル意識があるんだな。」

そこへ、新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが依頼を持ってやってきました。

日本と中国の関係
  • 日本は中国と関係を強めるべきなの?距離を置くべきなの?
  • 古くは遣隋使・遣唐使の時代、近くは日清戦争・日中戦争の時代もあった

「日本は中国と関係を強めるべきなの?距離を置くべきなの?」
これが、今回の依頼です。

所長 「日本と中国は長い歴史の中で、友好的におつきあいしたり、衝突したり、いろんな経験をしてきたんだ。古くは遣隋使・遣唐使の時代、近くは日清戦争・日中戦争の時代もあった。だから特別視しちゃうんだろうな。」

さくら 「これからは、どうしたらいいんでしょうか?」

所長 「そのためにはまず、新しい中国の姿をちゃんと知っておくことが大切だな。」

巨大市場の登場
  • 1990年代、多くの外資系企業が中国に工場を設立し、輸出を拡大、国内経済を活性化させた

「世界の工場」と呼ばれ、国内総生産世界第2位の経済大国となった中国。
人々の生活水準は大きく向上しました。
今や、自動車もスマートフォンも中国が世界最大の市場です。

背景には1990年代、多くの外資系企業が中国に工場を設立し、輸出を拡大、国内経済を活性化させたことがあります。
国民一人当たりの所得が向上し、消費が拡大したのです。

くらしの変化 大気汚染
  • PM2.5が大気中に滞留

大きな発展を遂げた中国ですが、さまざまな問題を抱えているのも事実です。

例えば、「大気汚染」
エネルギーの8割近くを石炭に依存していた中国では、細かい粒子状の物質「PM2.5」が大気中に残り、ぜんそくなどの健康被害をもたらしました。
そして、それは海を越えて日本にも飛来しました。

くらしの変化 地域格差
  • 上海から1800キロ内陸に入った小さな村

もう一つが、「地域格差」の問題です。
中国の工業は沿海部を中心に発展してきたため、ほとんどの大都市は東に集中しています。
では西の内陸部はどうなっているのでしょうか?

シャンハイから1800キロ内陸に入った小さな村。
雨が少ない土地ですが、農業以外に収入を得る術がなく、貧しさから学校に通えない子どももいます。
ここの住民はなぜ、もっとたくさん仕事がある沿海部に引っ越さないのでしょうか?

そこには、中国の「戸籍制度」の問題があります。

  • 農業戸籍
  • 農地が割り当てられるが、都市に定住することはできない

村で農業を営んでいる方の家を訪ねました。
父親は、自分の戸籍の謄本を見せてくれました。
そこに書かれていたのは、「農業」の2文字。

中国には農業戸籍と非農業戸籍の2種類の戸籍があります。
農業戸籍の持ち主には農地が割り当てられますが、その代わり都市に定住することはできない仕組みになっているのです。

  • 果たして、合格したことがよかったのか…

この家の娘さんは、この年見事に大学に合格しました。
大学を卒業すれば、農業戸籍から非農業戸籍に変わることができる。
そうすれば、娘さんだけでも都市に住ませて、安定した職業に就かせられる。
それがお父さんの願いだったのです。

しかし、入学金は8万円。
それは一家の年収の7倍の金額でした。

格差は、中国の内陸部に今なお残る問題です。

戸籍制度の問題点
  • 農業戸籍
  • 都市にマンションを建てて、そこに農村の人を移住させ、戸籍も非農業戸籍に変える

所長 「これがさっき見た、中国の農民の戸籍、農業戸籍だ。真ん中には中国語で“農業”とある。これを持っている人は、都市に住むのに制約があるわけだ。ただ、農業戸籍を持っていても、都市へ『出稼ぎ』には行ける。そこで働き盛りの男女が出稼ぎに出る。そうすると農村には、高齢者と子どもだけが残されてしまう。問題だな、これも。」

さくら 「なんとか農村の人を救う方法はないんですか?」

所長 「中国政府も対策を進めている。都市にマンションを建てて、そこに農村の人を移住させ、戸籍も非農業戸籍に変える、そんな動きはあるんだ。」

西部大開発
  • 2000年以降、中国は西部地域に鉄道や道路、工業団地などを整備して、地域格差を解消しようとしている

所長 「もう一つ、『西部大開発』だ。前回見ただろ?人口境界線。中国の西部と東部を分けている境界線だ。東部は沿海部が経済発展したが、内陸の西部はそこから取り残されている。そこで2000年以降、中国は西部地域に鉄道や道路、工業団地などを整備して、地域格差を解消しようとしている。これが西部大開発だ。外資系の企業なんかも誘致しているんだぞ。」

さくら 「外国の企業を誘致すると、何かいいことがあるんですか?」

所長 「よし、実際何が起こっているか、見てみよう。」

経済の国際化
  • WTO(世界貿易機関)が中国の加盟を承認

2001年、中国は「WTO(世界貿易機関)」に加盟。
これによって関税が低くなり、市場開放が進んで、外資系企業の中国市場への参入が加速しました。

  • 中国国有のコンビニチェーン店
  • 外資系コンビニエンスストア

中国最大の経済都市、シャンハイ。
2001年、ここにオープンした中国国有のコンビニチェーン店です。
僅か数年で1000店を超す、シャンハイ最大のコンビニチェーンに成長しました。

しかし、突然ある店の売り上げが10分の1に激減。
不振の理由は明らかでした。
外資系の大手コンビニチェーンが、3軒隣に店を出したのです。
そこには学校帰りの子どもたちが詰めかけています。

  • 表紙が見えるように整理されている
  • 国有コンビニでは入口に米が積んである

人気の理由は何なのか、国有コンビニのスタッフが探りにやってきました。
日用品が充実し、雑誌コーナーもきれい。
表紙が見えるように整理されています。

これに比べると、国有コンビニの方は表紙が見えません。

しかし、違いはこれだけではないのです。
外資系コンビニのターゲットは、ひとり暮らしの若者と学生たち。
頻繁にコンビニを利用する人たちです。

一方、国有コンビニでは入口になんと米が積んであります。
その隣には卵。
これを買うのは、あまりコンビニに来ない主婦層です。
外資とのマーケティングやリサーチ能力の差が、利益の差となってしまいました。

しかし、こうした外資との競争が、中国の企業を変えていったのです。

競争力をつけて海外進出
  • 外資によって鍛えられて、競争力がついた。そして海外に進出

所長 「外資によって鍛えられて、競争力がついた。そして海外に進出したわけだよ。日本の企業もそうやって欧米から学んで成長してきたんだけど、今は中国が、日本やその他の企業から学んで発展してるわけだ。」

次は、日本と中国の関係を振り返ってみましょう。

日本と中国の結びつき
  • 日中貿易総額33兆3490億円(2017年)
  • 中国からの観光客は年間736万人(2017年)

1972年の国交正常化以降、日本と中国の貿易額は順調に増加しました。
2007年以来、中国は日本にとって最大の貿易相手国となっています。
中国で活動する日系企業は3万社に上り、駐在する日本人も13万人を超えました。

一方、「爆買い」という言葉で話題になった中国からの観光客も、今や年間700万人以上に及びます。

  • 訪日旅行消費額1兆6947億円(2017年)

最近は、ただの買い物ではなく、日本の自然や文化を楽しむために来日する人も増えました。

寒い冬の青森にも、中国からの観光客。
凍りついた滝、氷瀑(ひょうばく)を見るツアーです。
こうした、中国から観光に来た人たちが日本で消費した金額は、1年でなんと、1兆7000億円。

さくら 「やっぱり日本にとっては、中国って大切な存在ですよね。せっかく隣にいるんだから、仲よくした方がいいんじゃないですか?」

所長 「じゃあ、そのためにはどうすればいいんだろうか?そんな日中の問題に取り組んでる人たちが埼玉にいる。調査してきてくれたまえ。」

さくら 「了解です!」

埼玉県の団地の取り組み
  • 川口芝園団地

さくら君がやってきたのは、埼玉県の川口市にある川口芝園団地。
川口市は都心まで電車でおよそ20〜30分。
その割に、比較的家賃が安いと言われています。
それもあって2006年頃から、中国からの住民がどんどん増えていきました。
この芝園団地も、そのひとつ。

  • ひまわりの種
  • 火鍋に使う調味料

まずは、入り口にある雑貨店に入ってみると…。

さくら 「これ、ひまわりの種ですよね。え?ここからここ、全部ひまわりの種?これもしかして、火鍋に使う調味料ですかね?すごいたくさん種類がある!」

  • 表示が3か国語

この団地を中心とした芝園町。
5000人ほどの町民の半数近くが中国系の人たちです。
ですから、ゴミ捨て場もちょっと変わっています。
表示がすべて3か国語。

  • 岡崎さん

このような団地になった背景を、自治会の岡崎さんに伺ってみました。

さくら 「最初から団地の人と中国の人は、うまくつき合えたんですか?」

岡崎さん 「以前は、例えばゴミの分別が日本に来たばかりでできないとか、ほかにも夜の11時くらいでも外で騒いでる人がいるとかで、なかなか難しいときがあって。落書きされてる机なんかも見つけて、中国とか外国の方に対する心ない落書きが書かれていた時期もあったのが実態ですね。」

さくら 「どうやって、その環境をよくしていったんですか?」

岡崎さん 「顔が見えることによって、お互いの関係がよくなっていくってことを目指してやってきた、っていう感じになりますね。」

  • 住民同士の交流イベントを開催
  • 学生ボランティア団体が活動に参加

まず、2013年から商店会が中心となって住民同士の交流イベントを度々開催。
すると自治会にも中国系住民が加入するようになり、ゴミや騒音の問題は収まっていきました。
2015年には、学生ボランティア団体が活動に参加。
ヘイトスピーチの書かれた机を、さまざまな国籍の住民が一緒になって塗り直しました。

こうして、団地は変わっていったのでした。

  • 学生たちが定期的に団地で開催している、住民同士の交流イベント
  • エレベーターの中で、特に子どもを連れているとき、声かけてくれる

学生たちが定期的に団地で開催している、住民同士の交流イベント。
秋の休日、和菓子と中国の菓子・月餅をつまみ、日本と中国の住民が楽しいひとときを過ごすのです。
おしゃべりは2時間経っても終わりませんでした。

中国系住民のみなさんに、この団地の日本人はどんな印象か聞いてみたところ、「優しいし、親切にしてくれる。」「エレベーターの中で、特に子どもを連れているとき、声かけてくれる。」「私、この団地はずっと住みたい。」といった声を聞くことができました。

さくら 「芝園団地では日本と中国の住人たちが、顔と顔を合わせて、いろんな話をして、時間をかけて仲よくなっていきました。そういうこと、私たちにもできると思います!」

日本と中国のつき合い方
  • 高橋宏先生
  • 戦略的互恵関係

日本は中国とどんな関係を築くべきか、研究所のブレーン・高橋宏先生に伺います。

高橋先生 「日本にとって中国は重要な貿易相手国でもあり、相互に協力・交流し合うことで、どちらにとっても利益となるわけですね。少し難しい用語ですけれども、こんな言葉があります。『戦略的互恵関係』という言葉です。これは2008年の日中共同声明で発表された考え方で、主に3つの重要な要素があります。第1に、日中両国がアジア及び世界に対して厳粛な責任を負うという認識を持つべきこと。第2に、それを前提にして、両国がアジア及び世界に共に貢献すること。そして第3に、そうした貢献の中で、両国がお互い利益を得て共通利益を拡大し、日中関係を発展させる、こういった考え方が表明されてるわけです。2000年代に入って、日中関係は冷え込みましたけれども、それを打開するため、日中両国間でこういう約束を交わし、2008年の共同声明に至っているというものであります。」

  • 両国が協力し合い、お互いに更に発展していくために、相手の意見を聞き、相手国のことを考えて行動すべき

それでは、今回の依頼に対する答えです。

さくら 「『両国が協力し合い、お互いに更に発展していくために、相手の意見を聞き、相手国のことを考えて行動すべき』ということだと思います!」

所長 「そうだな。国と国との関係は、利害関係があるから、ときに対立することもある。それを乗り越えるのが日本・中国の世界に対する責任でもあるんだからな。」


それでは、次回もお楽しみに!

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