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地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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地理

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※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第20回 現代世界の系統地理的考察
【資源と産業】編

世界の貿易に目を向けてみよう

  • 地理監修:埼玉県立大宮中央高等学校教諭 仲田莉果
学習ポイント学習ポイント

世界の貿易に目を向けてみよう

  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、お昼ごはんを食べています。
そこへ、所長の石原良純さんがやってきました。

  • 和食

今日のお昼は和食。
ただ、100%国産というわけではないようです。

所長 「食べ物だけじゃないよ、その服だって、家具だって、電化製品だってな。われわれはさまざまな輸入品に頼って生活しているんだよ。」

  • 日本の貿易をリードしたいぜよ。なにがおすすめ?
  • 貿易

「日本の貿易をリードしたいぜよ。なにがおすすめ?」
これが今回の依頼です。

所長 「エビは価格の安いタイから輸入して、日本でつくってる高性能の自動車はタイに輸出される。このように、互いに『国際競争力』を持つ商品を交換し合って利益を得ること、それが『貿易』だ。」

また、来日した海外アーティストのコンサートを見ることも、「サービス貿易」という貿易の種類のひとつです。
日本各地で旅行を楽しむ外国人観光客が、日本の飲食店で食事をしたり、お土産を買ったりすることもサービス貿易です。

所長「今や、外国との貿易なしに自給自足を営んでいる国はほとんどない。人手のかかるものは人件費の安い発展途上国でつくり、高度な技術力が必要なら先進国でつくる。そうやって、世界全体で足りないところを補い合う“分業”をすることで生産性を高めているんだ。」

垂直分業と水平分業
  • 垂直分業
  • 水平分業

各国が得意とする商品。
すなわち、国際競争力を持つ商品を輸出し合うことを「国際分業」といいます。

発展途上国が原材料を輸出し、先進国がその原材料を元に工業製品をつくって輸出することを「垂直分業」といいます。
垂直分業では、多くの利益を得るのは、付加価値の高い工業製品を輸出する先進国です。

一方、先進国の間では、工業製品を輸出し合う「水平分業」が行われています。

  • 分業の変化1
  • 分業の変化2

これまでの垂直分業、水平分業のあり方に、変化が起こっています。
1980年以降、安くて豊富な労働力を持つアジアの発展途上国に、先進国の大企業が次々と工場を移転しました。
このように複数の国に拠点を持ち活動する企業を「多国籍企業」といいます。

発展途上国でつくった部品が輸出され、先進国で組み立てられた完成品が発展途上国に輸出される(左図)。
高度な技術が求められる部品は先進国でつくって発展途上国に輸出され、現地で組み立てられた完成品が先進国に輸出される(右図)。
発展途上国と先進国が、互いに工業製品を輸出する水平分業も増えています。

発展途上国は、先進国の技術力を吸収することで工業化を進め、ますます貿易に力を注いでいます。
貿易は世界経済を支える大事な活動なのです。

  • 世界の貿易輸出額ランキング(2016年)
  • 日本の主な貿易相手国

日本は輸出主導で経済成長してきた国でもあります。
世界の貿易輸出額ランキングで、日本は第4位です。

では、世界と日本の関係を見てみましょう(右図)。
円グラフは日本と主な貿易相手国の貿易の総額を示しています。
円グラフのピンクが輸出、水色が輸入の総額です。
日本との貿易が大きい国を見てみると1位が中国、2位がアメリカ、3位が韓国。
一番大きな円グラフの、中国との貿易総額は33兆3490億円です。

  • 天然ガスや原油を輸入している国のグラフ
  • 日本は世界中の国々と貿易している

次に、天然ガスや原油を輸入している国のグラフを見てみるとサウジアラビアやアラブ首長国連邦は水色の輸入額が大きいことがわかります(左図)。
日本は世界中の国々と貿易していると言っても過言ではありません(右図)。

  • 日本からの輸出品
  • 日本への輸入品

日本が多く輸出しているのが自動車や集積回路などの機械類。
これは、経済大国によく見られる傾向です。
一方、輸入の1位は機械類。
最近はアジアからの家電製品などの輸入が増えているからです。

さくら 「発展途上国との貿易も垂直分業から水平分業に変わってきているんですね。」

所長 「若者に人気のファストファッションのほとんどは輸入品だ。食料も輸入に頼っている。例えば、牛丼チェーン店で使われる冷凍牛肉は9割が輸入だ。」

貿易には、関税がかかる保護貿易と、関税のかからない自由貿易の2つがあります。

自由貿易と保護貿易
  • 保護貿易
  • WTO・世界貿易機関

現在多くの国で行われているのが、関税がかからない「自由貿易」です。
世界中で自由貿易が主流になっているのには理由があります。

1929年、アメリカ・ニューヨークで株価の大暴落が起こりました。
これをきっかけに、世界中に大不況が広がっていきました。
世界恐慌です。 
世界中で多くの会社が倒産し失業者が街にあふれました。

そこで、アメリカやイギリス、フランスは国内の産業を守るために輸入を制限し、また、輸入品に高い関税をかける「保護貿易」を行いました。
その結果、世界の貿易が縮小し世界経済はますます悪化したのです。
 
この保護貿易による各国の対立は、第二次世界大戦の原因のひとつと言われています。

その反省から、いま、世界では自由貿易が推進されているのです。
自由貿易を進めるため、世界のルールを協議しているのが、「WTO 世界貿易機関」です。

  • 仲田莉果先生

WTOとは何なのか、研究所のブレーン・仲田莉果先生に聞いてみましょう。

仲田先生 「WTOとは世界貿易機関の略称です。加盟しているのは現在164の国と地域です。1995年に設立された、貿易のための国際機関なんです。WTOでは、自由貿易を進めるための交渉やルールづくりが行われています。」

貿易の自由化と国際連携
  • WTOが決めるルール
  • 畳表、長ネギ、シイタケ

貿易をする上で、国によって法律や習慣、経済状況などさまざまな違いがあります。
そこで、自由で公正な貿易を行うためのルールが必要となり、1995年につくられたのがWTO 世界貿易機関です。

WTOが決めるルールには物の貿易以外に、サービス貿易という、海外の銀行を利用したり、海外旅行者が現地でサービスを受けることなどが含まれます。
また、著作権などの「知的財産権」の保護に関するルールも定めています。

WTOは、安価な輸入品の急増によって国内産業に重大な損害を受ける国に対しては、産業を保護するための緊急輸入制限(セーフガード)を認めています。
日本では2001年に輸入品の「畳表(たたみおもて)、長ネギ、シイタケ」に対して、初のセーフガード発動がありました。
この時のセーフガードは、過去の輸入枠を超えた輸入品に対し、一定期間、国産品の卸売価格と同等になるまで高い関税をかける、というものでした。

ただし、このような保護手段は自由貿易を阻害するおそれが指摘されています。

  • 特定の国同士や地域間で協定を結び、新たに貿易の自由化を進める

仲田先生 「加盟国の間で起こる紛争の解決も WTOが果たす役割のひとつなんです。」

さくら 「WTOが世界の貿易を守ってくれているんですね。」

仲田先生 「ところが、そううまくいかないんです。WTOで多国間交渉するのでは、交渉分野によっては意見がまとまらず、時間がかかり過ぎてしまって、実質機能できていないというのが現状なんです。」

さくら 「世界の貿易に関するルールを決めるWTOが機能していないなら、各国はどうしているんでしょうか?」

仲田先生 「今、ほとんどの国は、特定の国どうしや地域間で協定を結び、新たに『貿易の自由化』を進めようとしています。」

  • FTAとEPA
  • EPAの人的交流

仲田先生 「こちらを見てください。『FTA 自由貿易協定』『EPA 経済連携協定』です。」

さくら 「EPAの中にFTAが入っているんですね。」

仲田先生 「FTAは、特定の国や地域間でたがいに関税を撤廃する協定です。EPAは、関税撤廃はもちろん、投資や人的交流など、もっと幅広い分野での貿易の規制をなくしていく協定なんです。2017年に締結されたTPP 環太平洋経済連携協定もこのEPAのひとつなんですよ。」

さくら 「関税がなくなれば、安く輸入品が入ってくるから、天ざるももっと安くなりますね。」

所長 「だけど安い農作物が入ってくると、国内の農業がダメージを受けるおそれもあるんだ。」

さくら 「そうなんですね。保護貿易は行き過ぎると戦争になるかもしれないし、自由貿易は農家さんが困っちゃうかもしれないし、貿易って難しいですね。ところで、EPAの中にある人的交流ってどんなものがあるんですか?」

仲田先生 「人的交流とは国境を越えた労働力の移動です。つまり、おたがいの国で働くことができるんです。ただし、だれでも働けるわけではありません。例えば、日本では一部の国から看護師、介護福祉士を受け入れています。」

EPAによる人的交流
  • エクセルシス・ボールボンさん
  • 齊藤あけみさん

八王子にある病院。
ここには、長期入院のお年寄りが多くいます。
この病院では、2009年にEPAによる人材の受け入れを始めました。
現在、日本の国家資格を取得した外国人看護師、介護福祉士、そして資格取得を目指す候補者あわせて、11人が働いています。
日本がEPAに基づいて人材を受け入れている国は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。
看護部長の齊藤あけみさんにお話を伺いました。

齊藤さん 「われわれが培った技能を、まだまだこれから高齢化を迎えるフィリピンやインドネシア、ベトナムそういったところで波及させていくリーダーになってくれることもひとつの希望です。」

  • ホー・トゥイー・ハンさん
  • 週1回、2時間の資格試験勉強会

介護福祉士候補者のハンさん。
ベトナムから3年前にやって来ました。
今、働きながら日本の国家資格を目指して勉強しています。

候補者が受験のために滞在できる期間は決まっています。
看護師が3年以内、介護福祉士が4年以内です。
来年、4年目になるハンさんは試験に合格できなければ帰国することになります。

ハンさんは、ベトナムで1年半看護師として働いていました。
日本に来て、初めて介護の仕事をした時、患者の着替えやおむつ替えをすることに驚いたといいます。
ベトナムでは、患者の身の回りの世話は、家族がするのだそうです。
ハンさんは、日本で高度な医療を身につけ、将来はベトナムに戻り、学んだ技術を伝えたいそうです。

病院内では、先輩看護師による資格試験対策の勉強会が開かれています。
難しい介護福祉士の専門用語を日本語で学ぶハンさん。
試験勉強と仕事の、忙しい日々が続きます。

  • EPA候補者になる条件
  • 受け入れ側の条件

仲田先生 「ハンさんのようなEPAの介護福祉士候補者は、まず自分の国で資格を取ることや最低限の日本語能力も求められます。受け入れる病院側にも条件があるんです。それは、住居の確保、試験のための学習指導、日本語教育、そして日本人と同等かそれ以上の給料の支払いです。」

所長 「さくら君、今回の依頼の答えはどうなるかな?」

さくら 「これから注目したいのは貿易による人の交流です。EPAなどによって知識や技術の習得ができるし、おたがいの国の理解も深まりそうです。

それでは次回もお楽しみに!

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