NHK高校講座

地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

  • 高校講座HOME
  • >> 地理
  • >> 第18回 現代世界の系統地理的考察 【資源と産業】編 世界の第3次産業を見てみよう

地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

今回の学習

第18回 現代世界の系統地理的考察
【資源と産業】編

世界の第3次産業を見てみよう

  • 地理監修:お茶の水女子大学附属高等学校教諭 沼畑早苗
学習ポイント学習ポイント

世界の第3次産業を見てみよう

第3次産業って?
  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんは、第3次産業の中身がわからず悩んでいます。
所長の石原良純さんと一緒に、確認しておきましょう!

  • 産業の分類

所長 「第1次産業というのは、“自然界に働きかけて、直接に富を取得する産業”。第2次産業とは、“第1次産業が採取・生産した原材料を加工して富を作り出す産業”。『第3次産業』とは、“第1次産業・第2次産業以外の産業”だ。」

さくら 「え?そんな分け方なんですか?」

所長 「そんな分け方なんだよ。一般的に、経済が発展していくと、産業の中心は第1次産業から第2次産業、そして第3次産業へと移っていく。日本の産業別人口の推移を見ると、そのことがよく分かるぞ。」

  • 日本の産業別人口構成の割合

所長 「1950年以前は第1次産業の比率が大きかった。50年代の後半から70年代前半にかけての高度経済成長期に第2次産業と第3次産業が伸びた。その後は、第3次産業が伸び続けている。」

さくら 「現在では、70%以上の人が、第3次産業で働いているんですね。」

所長 「そして、さまざまな第3次産業の中で、今、特に注目されているもののひとつが、『観光産業』なんだ。」

外国人観光客を増やすには?
  • 外国人観光客を増やすには、どんなことをすればいい?
  • 外国人旅行者受入数ランキング(2016年)

「外国人観光客を増やすには、どんなことをすればいい?」
これが今回の依頼です。

所長 「実際に外国からたくさんの観光客を受け入れている国から学ぶのが一番だな。」

外国人観光客が一番多い国は、フランス。
フランスには、自然、歴史、文化などの豊かな観光資源があり、温暖な気候で気象条件にも恵まれています。
地理的に、西ヨーロッパのほぼ中心に位置しているという点も、有利に働いています。
それに加えて、フランスは早くから観光客の受け入れに力を入れてきました。

まずは、フランスの代表的な観光地をいくつか見てみましょう。

観光大国 フランスの魅力
  • 凱旋門
  • ルーヴル美術館

フランスの首都 パリは、世界中の観光客を魅了し続けている都市です。
市内のあちこちで、歴史的建築物を見ることができます。

その代表が、凱旋門(がいせんもん)。
ナポレオンが戦いに勝利したことを記念して建てられました。

美術に興味のある人には、世界最大級のルーヴル美術館がおすすめ。
有名なモナリザをはじめ、常時およそ35000点の美術品を見ることができます。

そのほか、グルメを堪能したい人や買い物を楽しみたい人など、さまざまなニーズに応えられるパリは、まさに“花の都”です。

  • 幅広い遊歩道
  • マルシェ

地中海に面した街、ニースは、1年を通じて「バカンス」を楽しむ観光客が訪れるリゾート地です。
ビーチに沿って幅広い遊歩道が設けられていて、夏場には日光浴を楽しむ人々でにぎわいます。

マルシェ(朝市)も、ニース名物のひとつ。
花や野菜、果物などを売る店が旧市街にある広場を埋めつくし、陽気な掛け声が飛び交います。

  • ガヴァルニー圏谷
  • 山岳列車

山好きの観光客が目指すのは、スペインとの国境に横たわるピレネー山脈のペルデュ山。
最大の見どころのひとつ、ガヴァルニー圏谷(けんこく)は、
2万年以上前の氷河の侵食によって作られた地形です。

そして、ここを訪れたらぜひ乗っておきたいのが、100年以上の歴史を持つ山岳列車。
標高1500mを越える高原や険しい峡谷を走り抜けていきます。

  • グリーンツーリズム

フランスの東部、レジー村で体験できるのは、近年、注目されている「グリーンツーリズム」
緑豊かな農村にゆっくりと滞在し、自然や人々との交流を楽しみます。

食事は、オーナーが育てた肉や野菜を使った家庭料理。
宿泊客みんなでテーブルを囲み、楽しく味わいます。

観光による経済効果
  • 沼畑早苗先生
  • 国際観光収入ランキング

研究所のブレーン・沼畑早苗先生に、観光産業について聞いてみましょう。

沼畑先生 「観光客がお金を使ってくれることで、経済効果が期待できます。例えば、ホテルに泊まり、レストランでご飯を食べ、お店で買い物をしてくれます。」

こうして得られた、世界の観光収入に注目してみると、アメリカはなんと2000億ドル以上!

沼畑先生 「アメリカは、国土面積が広く、グランドキャニオンやナイアガラの滝など雄大な自然を楽しむ観光からラスベガスやテーマパークまで、さまざまな観光資源があります。また、“ついでにカナダやメキシコにも行こう”とはなりにくく、滞在日数が長くなって、ひとり当たりの観光費用が高くなる傾向にあります。」

  • GNIに占める観光収入の割合

さくら 「日本は、11位じゃないですか。けっこういい線行ってるんじゃないですか?」

沼畑先生 「ところが、『GNI(国民総所得)』に占める観光収入の割合を見てみると…。」

さくら 「日本と中国は、緑のグラフ。1%未満って、どういうことですか?」

沼畑先生 「日本は、GNIが、アメリカ、中国に次いで世界第3位です。その経済規模から見ると、国際観光収入が占める割合は、まだまだ大きいとは言えないんです。」

国際観光収入で世界第3位のタイ。
GNIに占める割合も10%以上と、高いことがわかります。
タイの観光産業の強さの秘密を、探ってみましょう。

ほほえみの国 タイの観光事情
  • ワット・プラケオ

“ほほえみの国”と呼ばれるタイ。
仏教があつく信仰されていることでも知られています。

首都バンコクの観光の中心は、仏教寺院巡りでした。
タイで最も格式が高いワット・プラケオ。
本尊がエメラルドのように輝くことがら、“エメラルド寺院”とも呼ばれます。

  • 医療ツーリズム

ところが、最近多くの外国人旅行者を集めているのが、病院。
中東やアジアの富裕層を中心に、タイ全体で年間およそ300万人の外国人を受け入れています。
こうした“医療ツーリズム”は、ひとり当たりの支出金額が大きく、滞在日数も長くなるため、多額の収入が期待できるのです。

  • MICE

このほか、タイは、“MICE(マイス)”と呼ばれる会議や展示会などのビジネストラベルの招致にも力を入れています。
これらは、参加者が多くなるので、観光収入も多くなります。

国・政府が果たす役割
  • 病院内の通訳カウンター

所長 「タイの医療ツーリズムに人が集まっているのには、何か理由があるんですか?」

沼畑先生 「官民を挙げて、積極的な誘致活動と受け入れ体制の整備を行っていることが要因のひとつです。例えば、政府はビザ発行手続きを簡素化するなど制度の整備を図り、病院は設備の充実やスタッフの訓練に力を入れています。ある民間病院では、英語だけでなく、アラビア語、中国語、ミャンマー語など、多言語に対応し、通訳を無料で用意するなどの体制を整えています。」

  • 訪日外国人旅行者数の推移

所長 「ところで、日本は、何か手を打っているんですか?」

沼畑先生 「日本政府は、2004年から“ビジット・ジャパン・キャンペーン”という訪日外国人観光客を増やそうという取り組みに力を入れています。キャンペーンの成果もあって、2017年は、2010年にくらべて3倍以上に伸びています。2020年には4000万人、30年には6000万人という目標を掲げ、フランスやタイなど海外の事例を参考にしながら、さまざまな施策を行っています。」

さくら 「外国人観光客を増やすには、国の役割が大きいんですね。」

沼畑先生 「そうですね。でも、地方自治体や民間の力も大きいですよ。例えば、埼玉県の川越市は、市や商店街の取り組みの結果、近年、外国人観光客を大幅に増やしています。」

日本の観光産業〜川越〜
  • 江戸時代の面影を残す街並み
  • 小峰春彦さん

埼玉県川越市は、東京の池袋から電車で30分という近場でありながら、江戸時代の面影を残す町並みで人気の観光地。
浴衣姿の観光客も多く、タイムスリップしたような気分が味わえます。
でも、以前はこの町並みが“時代遅れ”と考えられていたこともあったそうです。
川越一番街商業協同組合の小峰春彦さんにお話を伺いました。

小峰さん 「昭和40〜50年代、少し町が寂れてきたときに、商店の活性化をもとにして町を盛り上げていこうと。古い建物を、保存活用していこうという機運というか運動が盛り上がって、“町並み委員会”というのを組織として作りました。そこで、都市景観だとか建物そのものについて、詳しく“こうしたほうがいいんじゃないか”っていうようなルール作りを決めていきました。今現在も、それに基づいて建物をつくっています。」

  • 真新しいお店も和風の木造建築
  • 電柱地中化で景観が向上

通りには、真新しいお店もありましたが、和風の木造建築。
店の内装や看板の文字、のれんの色なども、町の景観を損なわないようにデザインされています。

景観の保全については、電柱の地中化を行ったことで、さらに江戸情緒が増しました。
当時は、電柱なんてありませんでしたからね。

  • 川越市外国人観光客数の推移
  • 小高慎太郎さん

こうした取り組みもあって、年間およそ700万人が訪れるようになりました。
ここ数年は、外国人観光客数も大きく伸びていて、2017年には19万人に達しています。

さらに多くの人に来てもらうためには、ターゲットを絞ったPRが大切なのだとか。
川越市産業観光部の小高慎太郎さんに伺います。

小高さん 「特に、本市ではインドネシアに力を入れて、有名な方、ブロガーさんみたいな方を川越に招いて、SNSで拡散をしてもらっています。インドネシア向けのプロモーション動画を作成しまして、現地のテレビ局のほうで放映していこうと考えています。」

  • 指差すことで簡単にコミュニケーションが取れるツール
  • 宮内茂さん

外国人観光客が増えると、言葉や文化、マナーの違いなどの問題も生じます。
川越市では、指差すことで簡単にコミュニケーションが取れるツール(左図)を配布しています。

また、商店街でも、店頭に英語表記のPOPを出したり、自主的に英語の勉強会を開いたりしているそうです。
そして、ボランティアで英語の観光ガイドをしている方もいます。

  • 川越氷川神社
  • 境内におよそ2000個の風鈴

そんな川越市の課題は、観光客により長い時間滞在してもらうこと。
川越氷川神社では、夏になると、境内におよそ2000個の風鈴が飾られます。

日が沈む頃にはライトアップもされて、日中とは一味違った風情を味わうことができるんです。
この神社には、「光る石を祀(まつ)った」という言い伝えがあります。
その光を移したぼんぼりを手に、川越の町を夜まで楽しめるようになりました。

外国人観光客を増やすには?
  • 外国語への対応など受け入れ体制を充実。ターゲットとする地域を絞ってアピール。
  • 日本が人口減少社会を迎える中で観光産業は産業の柱、経済活性化の切り札

所長 「では、今回の依頼の答えは?」

さくら 「まずは、外国語対応の整備など、受け入れ体制の充実を図ることが大切です。そして、ターゲットとする地域をある程度絞って、地元の魅力を積極的にアピールしましょう。テレビやインターネットを活用すると効果的です。

沼畑先生 「特産品やおいしい食材などもアピールすると、地域の農業など、産業全体が元気になると思います。日本が今後、本格的な少子高齢化、人口減少社会を迎える中で、観光産業は従来の“ものづくり”に加えて産業の柱として、経済活性化の切り札となる可能性があります。日本人一人ひとりが、言語や文化の異なる外国人を質の高い“おもてなし”で受け入れる体制を整えることが大切です。」

それでは次回もお楽しみに!

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約