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※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第16回 現代世界の系統地理的考察
【資源と産業】編

世界の工業を見てみよう ⑴
〜さまざまな種類や立地〜

  • 地理監修:埼玉県立大宮中央高等学校教諭 仲田莉果
学習ポイント学習ポイント

世界の工業を見てみよう ⑴ 〜さまざまな種類や立地〜

  • 石原良純さん
  • 籠谷さくらさん

石原良純さんが所長を務める、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、依頼を持ってきました。

工業ってどんなもの?
  • 見たこともない工業製品を作って世界をアッと言わせたい!何を作ればいいだろう?

「見たこともない工業製品を作って世界をアッと言わせたい!何を作ればいいだろう?」
これが、今回の依頼です。

さくら 「工業ってよく聞きますけど、一体何を指してるんでしょうか?」

所長 「工業は簡単に言うと、『付加価値』をつける産業のことだ。」

  • ペットボトルの水は100円くらいで買う
  • かき氷は500円くらいで買う

所長 「さくら君は、このペットボトルの水、いくらで買う?」

さくら 「大体100円くらいですね。」

それでは、この水を凍らせて、かき氷にするとどうでしょうか?

さくら 「500円くらい払います!」

  • 原材料を加工して付加価値をつけて有用な製品を作る産業が工業

所長 「5倍になっただろう?これが付加価値をつけるということだ。原材料を加工して、付加価値をつけて製品になる、これが工業というものだ。」

さくら 「工業って自動車とかを作るイメージがあったけど、こういうのも工業なんですね。」

所長 「さくら君、君の身の回りにだって、たくさんの工業製品があふれているんだぞ。」

身の回りの工業とは?
  • 地理野家
  • 食料品工業

例えば、地理野さんのお宅をのぞいてみましょう。
工業と関係するものはあるでしょうか?

娘さんの飲んでいるジュースやお母さんが料理に使っているみそ。
これらは清涼飲料工場や、みそ製造工場で作られた食料品工業の製品です。

  • 繊維工業
  • 機械工業

お父さんの着ているワイシャツや、娘さんのTシャツ。
これらは繊維工場で作られた繊維工業製品。

お父さんの使っているノートパソコンや、お母さんが開けた冷蔵庫。
これらはパソコン工場や、冷蔵庫工場で作られた機械工業製品。

  • 金属工業
  • 化学工業

お母さんの持っているフライパンは、金属工場で作られた、金属工業製品。

娘さんの飲んでいる薬は、製薬工場で作られた化学工業製品です。

ガラスや木製品、ティッシュペーパーなどは、その他の工業という形でまとめられています。

みなさんが工業に囲まれて暮らしていること、わかりましたか?

工業の発達と種類
  • 14〜15世紀の機織りの様子
  • 19世紀イギリスの紡績工場

工業がどうしてここまで発達したのか、歴史をひもといてみましょう。

所長 「元々工業というのはものづくりの産業だ。ここにある機織り機の絵のように、自給のための『手工業』から始まったんだ。それがやがて、生産量を上げるために、工場に労働者が集められて加工生産する『工場制手工業』へと発展した。」

所長 「さらに、蒸気機関や動力機械などが発明され、18世紀後半、イギリスで『産業革命』が進行すると、『工場制機械工業』へ移行したんだ。」

軽工業、重化学工業、先端技術産業

所長 「こうして繊維工業をはじめとする『軽工業』が発達すると、大量生産するための大型機械も必要になって、鉄鋼や機械などの『重工業』が成立したわけだ。そして20世紀になると、それらが自動車や、石油化学製品など、『重化学工業』へと発達したんだ。近年は、『先端技術産業(ハイテク産業)』が急成長して、『情報通信技術(ICT)』関連などの製品の開発が進んでいる。」

さくら 「じゃあ、昔ながらのものはどうなったんでしょう?」

所長 「工業の中には、役割を終えたものもあるんだ。でも、まだまだ形を変えてがんばっているものもある。」

変化する伝統産業
  • 風鈴
  • ランプシェード

こちらの風鈴(左図)、作ったのは熊よけの鈴や、仏教で使う道具、仏具を作ってきた富山の鋳物(いもの)会社。

続いて、ランプシェード(右図)。
これは150年以上も和傘を作り続けてきた京都のメーカーが、傘作りの技術を生かして作りました。

  • 和傘のメーカーが作ったバスケット

そして、傘に見えるこちらの製品は、果物を入れたりするバスケットです。

所長 「『伝統産業』は、消えていくばかりじゃないんだ。時代に合わせて変化して、成功しているものも多いんだ。」

では、今回の依頼者も、こういうことをすれば成功するのでしょうか?

所長 「アイデアはもちろん大切なんだけど、立地条件と立地因子を考えないといけないぞ。」

工業の立地
  • 立地因子
  • 立地条件

工場で製品を作り、市場で販売する工業では、費用の節約を考え、工場を立地します。
立地にあたって最も重要なのが、輸送費や人件費など、生産にかかる費用です。
これを、「立地因子」と言います。

そして交通の利便性や地形など、立地に影響する条件を、「立地条件」と言います。

  • セメント
  • 石灰石などの原料を粉砕

例えば、コンクリートの材料となるセメントの工場の場合、どんなものを重視して立地を決定しているのでしょうか?

大分県津久見市のセメント工場では、この日も製品作りが行われていました。
まずは、石灰石を中心とした原料を混ぜ合わせて粉砕します。

  • 原料を1450℃で、およそ40分焼く
  • クリンカ

続いて、大型の機械でそれを熱していきます。
最終的には、この巨大な窯(左図)の中で、1450℃で40分ほど焼きます。
この、焼くという工程によって、原料が水を加えると固まる性質を持つのです。

できあがったのが、こちらのクリンカ(右図)。
これに石膏を加えて、さらに細かく砕くことで、セメントが完成します。

  • 海に近いという理由だけで立地したのではない

年間500万トンものセメントを生産、国内への供給はもちろん、世界各国に輸出しているこちらの工場。
しかし、海に近いというだけで、ここに立地したわけではないのです。

  • 新津久見鉱山
  • 立坑

理由は、メインの原料となる石灰石の鉱山です。
この鉱山と工場は、わずか3kmしか離れていないのです。

採掘した石灰石を、立坑(たてこう)と呼ばれる穴に落としていきます。
石は100m以上立坑を落下、その後、機械で砕かれます。
そこから、ベルトコンベアで直接工場へ運ばれていくのです。

  • 原料の輸送費という立地因子を第一に考えた

重い石灰石を運ぶのは輸送費がかかります。
そのため、できるだけ鉱山のそばに工場を立地しました。
つまりセメント工場は、原料の輸送費という立地因子を第一に考えて、立地を決定したのです。
このような工業を、「原料指向型工業」と言います。
海の近くで、出荷に利便性があるという立地条件も、工場の立地に影響しました。

  • 立地因子=製品輸送費
  • 立地因子=人件費

それに対して、水や空気などどこでも得られる原料を使う工業は、製品の輸送費を最小化するため、市場の近くに立地します。
こちらは、「市場指向型工業」
立地条件としては、交通の便などを重視します。

また人件費を第一の立地因子と考えて、賃金の安い発展途上国に立地する工業もあります。
こちらは、「労働力指向型工業」
治安の良さ、電力の安定供給などが立地条件となります。

  • 立地因子=生産費
  • 鹿島臨海工業地帯

自動車などの工業は、製品を組み立てる工場と、関連する多数の工場が一定の場所に「集積」し、「工業地域」を形成する傾向があります。
これは工場同士の輸送費や、特殊な機材を安価に利用できるなど、生産費を立地因子と考えたものです。
これが、「集積指向型工業」
多くの工場が集まることで、インフラなどの立地条件が整備されやすくなります。

原料や製品の輸送費を第一の立地因子と考える工業は、他にもあります。
例えば、鉄鋼業の場合、原料となる鉄鉱石の輸入、そして加工して製品となった後の輸出、その両方とも、船舶によって行われます。
そこで臨海部に立地するのです(右図)。
これは、「交通指向型工業」
交通の利便性が立地条件です。

工業の分類

このように立地によって工業はいくつにも分類されます。
どの工業でも立地の決定には、立地因子と立地条件が必ず関係しているのです。

それでは次に、世界の工業地域を見てみましょう!

世界の工業地域
  • ドイツ・ルール地方
  • オランダ・ユーロポート

産業革命以降、世界の工業の中心となったのが西ヨーロッパです。
石炭や鉄鉱石などの資源が採れるドイツのルール地方や、フランスのロレーヌ地方、イギリスのミッドランド地方などが、製鉄業によって大きく発展しました。

しかし1960年代以降、石炭から石油へとエネルギー源が移り、それまであった立地の有利性は失われてしまいました。

現在では西ヨーロッパの工業の中心は、オランダのロッテルダムにあるユーロポートなど、石油化学コンビナートが立地する臨海部です。

  • インドネシアの生地プリント工場

日本を除くアジア諸国は、第二次世界大戦後、工業化に向けて動き始めました。
当初は、輸入していた工業製品を輸入する代わりに国内で生産する「輸入代替型」の工業化が進められましたが、経済発展に結びつかず、1960年代からは海外への輸出向け製品を作る「輸出指向型」に。

  • 台湾のカメラ工場

韓国・台湾・ホンコン・シンガポールは積極的な工業化政策によって輸出が増大し、「アジアNIEs(新興工業経済地域)」と呼ばれています。

続いてマレーシア・インドネシア・タイなどのASEAN諸国も、工業団地を造成し、「輸出加工区」も設けました。
輸出加工区とは、製品の輸出を条件に、税金などを優遇して企業の立地を促進する地区のことです。
これによって外国企業を誘致していったのです。

  • BRICS(ブリックス)

近年は豊富な資源や労働力を持つブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ共和国も存在感を増しています。
これらの新興国は頭文字をとって「BRICS(ブリックス)」と呼ばれ、その目覚ましい工業化が注目されています。

第4次産業革命
  • 仲田莉果先生

それでは、今回の依頼者にはどのような工業製品をすすめればいいのでしょうか?
研究所のブレーン・仲田莉果先生に聞いてみましょう。

仲田先生 「今、工業化が進んだ国ほど、より付加価値の高いものを作るようになっています。先進国で加速しているのは、第4次産業革命と呼ばれる変化です。これはAIやIoTを活用した、新しいものづくりです。」

さくら 「先生、 AIとかIoTって何ですか?」

仲田先生 「AIは人工知能、IoTとは身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながることです。例えばAIを搭載した調理器は、利用者に合ったメニューを考えて提案してくれます。IoTなら、店員さんに聞かなくても、その商品の詳細な情報がすぐわかる電子タグなどがあります。これらの技術で自動車の自動運転も実現しつつあります。分野によっては膨大なデータを収集し、人間を超える正確な分析や、高度な判断ができるのがAIやIoTの強みです。」

  • AIを搭載した機械が自動的に牛乳をしぼる

AIやIoTは、さまざまな分野で活用が試みられています。
鹿児島大学と地元の酪農家が酪農を成長産業にしたいと始めたのがこの取り組み。
AIを搭載した機械が、自動的に牛乳をしぼります。
同時に、牛乳の成分に含まれるホルモン濃度を調べ、人工授精のタイミングや病気の兆候を見つけることも可能です。
こうした技術によって、労働時間の短縮も期待できます。

  • これまでの工業製品にAIやIoTなどを活用した新しい機能を加え、今の顧客に最適な製品やサービスを開発すべき

それでは、今回の調査結果です。

さくら 「『これまでの工業製品にAIやIoTなどを活用した新しい機能を加え、今の顧客に最適な製品やサービスを開発すべき』だと思います!」

それでは次回もお楽しみに!

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