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※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第15回 現代世界の系統地理的考察
【資源と産業】編

世界のエネルギー・資源を見てみよう ⑵
〜現代世界が抱える問題〜

  • 地理監修:お茶の水女子大学附属高等学校教諭 沼畑早苗
学習ポイント学習ポイント

世界のエネルギー・資源を見てみよう ⑵ 〜現代世界が抱える問題〜

  • 石原良純さん
  • 籠谷さくらさん

石原良純さんが所長を務める、「フィルドストン研究所」。

所長 「いや、こないだの穴掘りは楽しかったなぁ。」

そこへ新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが、依頼を持ってきました。

地球の資源がなくなると…
  • 地球の資源はいつかなくなる。その前にどんな手を打てばいい?
  • 資源が採れなくなったら?

「地球の資源はいつかなくなる。その前にどんな手を打てばいい?」
これが、今回の依頼です。

所長 「前回調べただろう?エネルギー資源や鉱産資源を、これまで人間は掘り続けてきた。このままだと、確かになくなるかもしれないぞ。ガソリンがなくなれば、車は走らなくなる。鉄やアルミがなければビルも建たない。レアメタルがなければスマホもできないんだ。第一、電気だって消えてしまうかもしれないぞ。」

まず、世界中でエネルギーがどれだけ使われているか、見てみましょう。

現代人とエネルギー
  • 人工衛星から見た夜の日本、地球
  • 変電設備が完成

人工衛星から見た夜の日本、そして地球(左図)。
この無数の輝きは、世界中でエネルギーを使用している証しでもあるのです。

ベトナム北部の農村、フンロン村。
小さな村に、ある事件が起こりました。
変電設備が完成、使いたいときに電気が使えるようになったのです(右図)。
村人は、早速50q先の家電量販店に向かいました。
テレビも、冷蔵庫も、洗濯機も、もう我慢しなくていいのです。

  • 電線の状態
  • 毎日停電が起こる

ところ変わって、インド。
人口の増加に電気の供給が追いつかず、電線はこの状態(左図)。
電気代を払えない人々が、勝手に電線を自宅に引き込んでいるのです。
ある織物工場では、電力不足で毎日停電が起こり、復旧までに10時間もかかることがあるそうです(右図)。
もはやエネルギーの足りない暮らしは考えられない、誰もがそう感じているのです。

2018年の世界の人口はおよそ75億人。
2050年には100億人近くまで増えると言われています。
このままだと、近い将来、資源の枯渇に直面します。

  • シェールオイル

そこで、人々はこれまで手をつけていなかった場所に、資源を求めるようになりました。
シェール革命、新たな石油資源の開発です。
「シェールオイル」の他に、「シェールガス」「オイルサンド」などの種類があります。

  • シェール層
  • シェール層に閉じ込められたオイルやガスを吸い上げる

これは、従来のガス田や油田以外から採掘される、新しいタイプの化石燃料です。
まず、地下数千mまでドリルで掘り、シェール層に到達すると、水平に掘っていきます(左図)。
その後、化学物質を混ぜた大量の水を注入、シェール層に閉じ込められたオイルやガスを吸い上げる、という方法です(右図)。
しかし、コストが高い上に、環境への悪影響が心配されています。

石油資源の歴史
  • 1970年当時の世界の原油埋蔵量

なぜシェールガスが注目されたのか、石油の歴史を見てみましょう。

所長 「かつて中東と呼ばれた地域に、20世紀の初め、膨大な石油資源が眠っていることが判明したんだ。しかしその地域の国々は、資源はあっても石油を開発したり、精製したりする技術がなかったんだ。」

所長 「そこに、アメリカ、イギリス、オランダ、フランス、国際的な石油会社、『国際石油資本(メジャー)』ってやつがやってきて、わずかな利権料だけ払って石油を採掘し、販売して大もうけしたんだ。しかし、搾取されていた産油国も黙ってはいなかった。“自分の国の資源を経済的自立と発展に結びつけよう”という運動を起こしたんだ。これを『資源ナショナリズム』と言う。」

  • OPEC(石油輸出国機構)

1960年、産油国は自分たちの利益を守るために「石油輸出国機構(OPEC)」を結成し、実質的に原油の価格や、産油量を決定するようになりました。
その後、中東戦争の時にOPECによって石油の輸出量が制限され、世界中で「石油危機(オイルショック)」が起こりました。
これを教訓として、1980年代、先進国は石油の備蓄や「省エネルギー」、またエネルギー源の多様化を試みるようになりました。

さくら 「やっぱり大切なのは省エネですよね。」

所長 「それと、どのエネルギー資源を使うかだな。それぞれに長所もあれば、短所もある。」

エネルギー資源の問題点
  • パリ協定

2015年、地球温暖化対策の国際的枠組み『パリ協定』が採択されました。
これは、温室効果ガスを削減し、世界の平均気温の上昇を、産業革命以前から2度未満、1.5度に抑える努力をする、という世界共通の目標です。

しかし、温室効果ガスのひとつ、COを減らすのは、なかなか大変です。
石炭や石油、天然ガスなどの「化石燃料」を燃やすことで発生するからです。
また、化石燃料を燃やすことで発生する硫黄酸化物や窒素酸化物は、大気汚染や酸性雨などの原因になります。

  • 水力エネルギー
  • 原子力エネルギー

一方、「水力エネルギー」は再生可能であり、温室効果ガスを排出しません。
しかし、ダム建設によって自然環境が破壊されるなどの欠点があります。

「原子力エネルギー」も温室効果ガスを直接出さないエネルギーです。
しかし安全性の確保と、使用済み核燃料や放射性廃棄物の処分が問題になっています。

  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 地熱発電

現在、先進国を中心に「再生可能エネルギー」の活用が進んでいます。
家庭用から事業所まで広く普及しつつある「太陽光発電」に、風の強い地域では「風力発電」、また火山の多い地域では「地熱発電」が行われています。

  • リサイクルエネルギー
  • バイオマスエネルギー

他にも、ゴミを焼却する際の熱を利用する「リサイクルエネルギー」、家畜のふん尿や植物を利用する「バイオマスエネルギー」などがあります。

  • 日本の発電電力量の内訳

ただし、この再生可能エネルギー、まだまだ使用の割合は低く、日本では2016年の時点で、全発電電力量の6.9%を占めているに過ぎないのです。

再生可能エネルギーの弱点
  • 沼畑早苗先生

再生可能エネルギーは、なぜ一気に広まらないのでしょうか?
研究所のブレーン・沼畑早苗先生に詳しく聞いてみましょう。

沼畑先生 「再生可能エネルギーは、繰り返し利用ができ、しかも発電時にCOを出しません。いいことばかりのようですが、実は弱点もあります。ひとつは、化石燃料を燃やす火力発電に比べて、発電コストが高いということです。また、太陽光発電や風力発電などは発電量が天候に左右され、安定しないという問題があります。」

「また、日本ならではの問題があります。」と沼畑先生。

沼畑先生 「国と国が陸続きのヨーロッパでは、再生可能エネルギーの発電量が天候に左右されたとしても、隣の国と送電線で融通しあうことができます。しかし、島国である日本では、この方法をとることが難しいのです。そこで、再生可能エネルギーと、他の発電方法を組み合わせていくことが必要なのです。」

それでは、いろいろなエネルギーを併用している、日本のケースを見てみましょう。

日本の資源・エネルギー問題
  • 日本が自給できる鉱産資源は石灰石だけ

かつては銀や銅で世界有数の産出を誇った日本。
しかし資源の枯渇や、コストに見合った利益が得られない、などの理由で、ほとんどが閉山してしまいました。

石炭は第2次世界大戦の頃までは自給していたのですが、安価な輸入石炭に押されて、1960年代をピークに産出が減少。
原油や天然ガスも、北海道や新潟県でわずかな産出はありますが、大部分は輸入に頼っているのが現状です。
現在日本で自給できている鉱産資源は、大分県や山口県などで産出される「石灰石」だけです。

  • 日本のおもな資源供給量の輸入割合
  • 石油危機でトイレットペーパーを買い占める人々(1973年)

鉱産資源やエネルギー資源のほとんどを海外から輸入している日本。
このような資源の輸入に依存した経済は、国際情勢の変化の影響を受けやすいのが特徴です。
そこで石油備蓄を進める一方で、省エネルギーや、地熱・風力・太陽光などの代替エネルギーの開発に力を入れています。

  • 深さ5500mの海底を調査
  • コバルトなどを含んだ岩石

鉱産資源の分野で注目されているのが、海の底です。
日本の東の端、南鳥島近辺で調査が進んでいます。
無人の探査機を海に沈めて、深さ5500mの海底を調査。
レアメタルの、コバルトなどを含んだ岩石が、発見されたのです。
南鳥島周辺の広範囲に分布していると言われています。

  • メタンハイドレート

そして、エネルギー資源の分野でも、海底には大きな可能性を持つものがあります。
“燃える氷”と呼ばれる「メタンハイドレート」
こちらも、日本の埋蔵量は世界有数と言われています。
しかし、コスト面や技術面での課題が大きく、現時点では研究や調査の段階にとどまっています。

日本で活用できるエネルギーは?
  • 再生可能エネルギーの中にも発電量が安定しているものがある
  • 地熱発電

今後、日本はどんなエネルギーに注目すべきなのでしょうか?

沼畑先生 「なるべく資源を自給するという観点からも、地球温暖化を防ぐためにも、日本にある自然のエネルギーを活用することが、ポイントのひとつになります。太陽光や風力は、天候などによって発電量が不安定になると話しましたが、再生可能エネルギーの中にも発電量が安定しているものがあるので注目してみましょう。」

その再生可能エネルギーとは、地熱発電。

沼畑先生 「火山国である日本にとって、地熱は重要な資源です。資源量では世界第3位とも言われています。最近は、深く地面を掘らなくても済む、小規模な地熱発電“温泉発電”という方法もあるんですよ。」

温泉熱で省エネに挑戦
  • ヒートポンプ
  • 岡本吉広さん

栃木県那須町のリゾートホテル。
どのように温泉熱を利用しているのか担当者に伺ってみると、案内されたのがこちら。
2006年に導入したという、ヒートポンプです。
この大きな機械をどんなことに使っているのか、岡本吉広さんにお話を伺います。

岡本さん 「当ホテルの温泉は、ここから9kmくらい離れたところから引いているんですね。そうするとどうしてもその間に、温泉の温度が下がってしまうんです。そこで以前はボイラーをたいて、温泉を温め直して使っていたんですが、そうすると大量の重油を使ってしまうんです。そうすると環境に良よくないので、それでこのヒートポンプを導入いたしました。」

  • 重油の使用量を3分の1に減らし、年間550トンのCO2削減に成功

ヒートポンプは、電気を使ってパイプの中の物質に熱を与え、更にお風呂で捨てられたお湯の熱も併用して、温泉の湯を温めるというエコなマシン。
これによってホテルは重油の使用量を3分の1に減らし、年間550トンものCOを削減することに成功したのです。

  • 温泉熱発電所
  • イチゴやブドウの栽培用ビニールハウスを作る

そして、更に上を目指してホテルが取り組み始めたのが、2016年、源泉のそばに建てた温泉熱発電所です。
地下から汲み上げた85度の温泉を使って蒸気を作り、タービンを回して発電しています。
年間発電量は、一般家庭20世帯分にもなるのだそうです。

ホテルでは、ここで作った電気を使って、イチゴやブドウの栽培用ビニールハウスを作って、お客さんに収穫体験をしてもらったり、ペットの温浴施設なども設置する構想を持っているそうです。

  • 国立公園の中にホテルが位置している
  • 自然に恩返しをするために、自然の資源を使って、環境保護に取り組んでいる

さくら 「こちらのホテルでは、なんで温泉の熱をここまで有効活用されているんですか?」

岡本さん 「はい、当ホテルはですね、国立公園の中に位置してるんですね。このすばらしい自然を、多くのお客さんが見に来てくれてるんです。ですから私たちは、その自然に恩返しをするためにね、こういう温泉だとかそういう自然の資源をいっぱい活用して、環境保護に取り組んでいきたいなと思っているんです。」

那須の美しい自然に、環境保護で恩返し。
こんなホテルがもっと出てくるといいですね!

  • みんなが省エネを心がけるのが大事。再生可能エネルギーなどいろんなエネルギーを併用する。

沼畑先生 「地熱発電については、2012年以降に規制が緩和されて、国立・国定公園内でも条件付きで発電所の建設が認められるようになりました。再生可能エネルギーのひとつとして、今後の活用が期待される発電方法です。」

では、今回の依頼に対する回答は...?

さくら 「まずはみんなが省エネを心がけることが大事。そして再生可能エネルギーをはじめとする、いろんなエネルギーを併用することが大切だと思います!」

それでは、次回もお楽しみに!

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