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Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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地理

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今回の学習

第13回 現代世界の系統地理的考察
【資源と産業】編

世界の食料問題に目を向けてみよう

  • 地理監修:お茶の水女子大学附属高等学校教諭 沼畑早苗
学習ポイント学習ポイント

世界の食料問題に目を向けてみよう

  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんは、ラーメンのスープを飲み干して、次はステーキを食べようとしています。

さくら 「カロリーオーバーじゃない?こんなことしちゃ、だめだめ!」

その様子を見た所長の石原良純さんは…。

所長 「いいか、世界ではおよそ8億人が飢餓に苦しんでいるといわれている。その一方で、君のようにカロリーの取り過ぎに悩んだり、料理を残す人間がいるというのは問題だと思わんかね?」

食料が足りない国 余っている国があるのはなぜ?
  • 世界には食料が足りない国、余っている国があるのはなぜ?

「世界には食料が足りない国、余っている国があるのはなぜ?」
これが今回の依頼です。

さくら 「私のようにダイエットで悩む人がいれば、アフリカでは飢えで苦しんでいる人もいるってことですね。」

所長 「まずは、食料不足や飢餓がなぜ起きるのかを考えてみようじゃないか。」

発展途上国の食料問題
  • 食料生産が人口増加に追いつかない
  • 干ばつ

西アフリカにあるニジェール。
「食料不足」からたびたび「飢餓」の危機に襲われています。
ニジェールは出生率の高い国。
食料が不足する原因の1つは、食料の生産が人口の増加に追いつかないことです。
さらに、たびたび起きる干ばつが、ニジェールの食料生産を悪化させています。
こうした干ばつなどの自然災害も飢餓の原因です。

  • サヘル
  • 過耕作などによる砂漠化の進行

ニジェールを含む、サハラ砂漠の南には「サヘル」と呼ばれるステップ気候の地域があります。
干ばつなどの自然災害が発生しやすい地域です。
また、人口の増加に伴って過剰な耕作や放牧をしたことなどの人為的な要因も重なり、砂漠化が進んでいます。
ようやく作物の収穫ができた年でも、さらなる自然災害があります。
バッタの襲来です。
数十億ものバッタが、すべての農作物を食べつくしてしまうのです。
5歳未満の子どもの死亡率で、上位の国の多くはサヘルとその近隣の国々なのです。

  • 紛争・内戦

紛争や内戦も飢餓の原因です。
南スーダンは民族間での対立から、内戦状態が続いています。
紛争が激しくなるにつれ、大勢の人々が「難民」となり隣国に逃げだしました。
難民キャンプでは、子どもたちの多くが飢えに苦しんでいます。
南スーダンの人口のおよそ3分の1にのぼる人々が深刻な食料危機にあるといわれています。

  • カカオ栽培に集中

植民地時代に作られた体制が、飢餓の原因となることもあります。
ガーナでは、19世紀にイギリスの植民地経営が始まると、それまでの自給的な農業から、チョコレートの原料であるカカオ栽培に集中。
独立後の現在も、多くの農家がカカオを作っています。
このようにアフリカには、特定の一次産品の生産と輸出に依存する「モノカルチャー経済」の傾向が残っているのです。

その欠点は、輸出品の価格が国際市場によって変動し、経済が安定しない事にあります。
カカオ価格の暴落により、生産者の収入が大きく減少し、飢餓が一気に広まった年もありました。

人口増加、紛争や干ばつ、モノカルチャー経済など、さまざまな原因で飢餓は発生するのです。

  • 6秒に1人が亡くなっているといわれている

所長 「飢餓や食料不足で1番の犠牲者は子どもなんだ。6秒に1人が亡くなっているともいわれている。」

さくら 「これは、絶対に食料援助が必要です!」

所長 「確かに緊急時には迅速な食料支援が必要だ。しかし、単に不足している食料を援助すればいいということではないんだ。」

世界最大の人道支援基地
  • 人道支援物資
  • ドバイは物流の拠点

アラブ首長国連邦のドバイ。
砂漠の真ん中に60団体もの国連機関や、「NGO」が拠点を構える世界最大の人道支援基地があります。
倉庫には、食料や医薬品などの人道支援物資があり、紛争地や自然災害の被災地に送られます。
ビスケットには、子どもの成長に欠かせないビタミン・ミネラルが配合されています。
調理設備のない場所では、配給しやすいビスケットが最適です。

ドバイはアジアとアフリカ・ヨーロッパをつなぐ物流の拠点。
世界の多くの地域に僅か7時間以内で緊急支援物資を届けることができるのです。

自立した食料供給に向けて
  • ネリカ米

飢餓に対する迅速な食料援助は重要ですが、それによって食料問題が根本的に解決するわけではありません。
ウガンダでは自立した農業を確立し、食料を自給するための技術支援が行われました。
栽培しているのはネリカ米という米。
New rice for Africaの略です。
日本をはじめ世界の研究者が協力して開発しました。

  • アジアの稲
  • アフリカの稲

ネリカ米はアフリカの稲とアジアの稲をかけ合わせた米です。
アジア原産の稲は、稲穂の先が枝分かれして、それぞれにたくさんの実をつけます。
一方、アフリカ原産の稲は、実を多くはつけません。
しかし、アフリカの土壌に適し、病害虫に強いのが特徴です。
ネリカ米は、アジアの稲とアフリカの稲、それぞれの長所を持っているのです。
水をはらない畑でも栽培でき、しかも年2回収穫できます。
主食のとうもろこしやバナナに加え、ウガンダではネリカ米が広く食べられるようになりました。

  • ネリカ米と日本の米

所長 「食料問題の解決には、単に食料を援助すればいいわけではないことが、わかっただろう?」

さくら 「安定して食料が生産できるようにするための体制作りを支援することが大切なんですね。」

所長 「そのとおり。ところで、実は食料が足りている国でも問題があるんだ。」

先進国の食料問題
  • ザンビアは1900キロカロリー、アメリカは3600キロカロリー
  • リサイクルされる廃棄食品

アメリカでは国民の40%近くが肥満状態にあります。
その理由の1つは、カロリーの過剰な摂取です。
1日の平均摂取カロリーは、アフリカのザンビアがおよそ1900キロカロリーなのに対し、アメリカはおよそ3600キロカロリーと2倍近くになります。

先進国では、食料が日常的に大量に廃棄される「食品ロス」と呼ばれる問題も存在します。
スーパーなどでは賞味期限切れの食品が次々と捨てられていきます。
日本の食品ロスは年間およそ600万トン。
これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量を大きく上回る量です。

  • 世界で1年間に生産される穀物の内訳
  • 牛肉1キロ=穀物訳10キロ

先進国の食料生産システムが、発展途上国の食料不足に関係しているという問題もあります。
世界で1年間に生産される穀物は、およそ25億トン。
これは、世界中の人々が1年間に食べる穀物の2倍にあたるといわれています。
こんなにたくさんの穀物があるのに、なぜ食料不足が起こるのでしょうか?
実は穀物の中で、人間の食用になるのは48%に過ぎません。
35%にあたるおよそ9億トンは、飼料、家畜のえさになるのです。

先進国での一般的な牛の育て方では、1kgの牛肉を作るためにおよそ10kgの穀物を飼料として使います。
つまり、牛肉を食べるということは、間接的にその10倍の量の穀物を食べているのと同じです。
世界の穀物の多くは、先進国に住む私たちが食べるための肉などに使われています。
これが発展途上国と先進国における食料消費の偏りを生んでいるのです。

  • バイオエタノール

穀物の中でも、とうもろこしの用途は飼料だけではありません。
この無色透明の液体はバイオエタノールという車の燃料。
実はこれもとうもろこしから作られるのです。
バイオエタノールの需要が増えると、とうもろこしの価格が高騰します。
そのため発展途上国にとうもろこしが行き渡らなくなってしまうのです。

牛肉200グラム=穀物約2キログラム
  • 牛肉200グラム=穀物約2キログラム

所長 「さっきさくら君が残したステーキ、およそ200gくらいかな。この肉を作るのに必要な穀物飼料を、とうもろこしで換算すると、およそ10倍の2kgだ。これだけの量が必要なんだよ。ここまでわかれば、今回の依頼に対する答えも分かるはずだ。」

さくら 「食料が不足しているのは主に発展途上国で、急激な人口増加、自然災害や紛争、モノカルチャー経済などが原因になっている。世界の人口をまかなうだけの穀物は生産されているが、食品ロスも含めて、先進国での消費が多いため、不足している国に行き渡らない。


日本の食料問題
  • 沼畑早苗先生
  • おもな国の食料自給率の推移

一方で、日本の食料事情も深刻です。
研究所のブレーン・沼畑早苗先生にお話を伺います。

さくら 「先生、日本には食料がないってどういう事ですか?」

沼畑先生 「それは、日本で消費される食料のうち、国内で生産される食料の比率が低いということです。」

いくつかの先進国の食料自給率の推移をカロリーベースで示したグラフ(右図)を見てみると、2011年では、日本は5か国の中で一番低いことがわかります。

沼畑先生 「日本の現在の『食料自給率』はカロリーベースでおよそ4割と、先進国の中でも最低水準です。一方、アメリカやフランスは、100%を超えています。」

推移にも注目してみると、日本は1961年ではドイツやイギリスより高いものの、その後どんどん下がっていきます。

  • 食生活の変化

沼畑先生 「食料自給率が低下した原因のひとつに、食生活の変化が上げられます。食生活が洋風化し、日本でたくさん作ることができる米を食べる量が減り、肉や乳製品などの畜産物や油脂の消費量が増えたのです。家畜のえさのとうもろこしや油脂の原料の大豆やなたねも、ほとんど海外から輸入しています。その結果、日本は世界一の食料輸入国になりました。」

  • 消費者の意識を変える。安定的に食料生産を行う

沼畑先生 「食料自給率が低いと、海外の産地や国際市場の影響を直接受けることになります。例えば、海外の産地で異常気象などが起こると、日本への輸入がストップしてしまう事態も考えられます。食料自給率を高めるためには、国内で生産できる農産物を食べるよう消費者の意識を変えるとともに、安定的に食料生産を行なっていく必要があります。しかし、今の日本の農業は、生産者の高齢化が進み、担い手が減少しているという問題があります。」

日本の農業を魅力的に
  • みずほの村市場
  • 長谷川久夫さん

魅力的な農業を行っている人たちがいると聞き、農産物の直売所にやって来ました。
この直売所、スーパーなどに比べて値段はちょっと高め。
それでも人気がある理由を聞いてみると、「とてもおいしい」「鮮度が違う」「品質がいい」といった声が。
品質がいい分、値段が高い。
直売所の長谷川久夫さんにお聞きしました。

長谷川さん 「農業者が、再生産、また作れる値段で売らなかったら、成り立たないよ、生活が。例えば、500円かかるものを、300円で販売したんでは200円の赤字でしょ?200円の赤字じゃ、今年は作れても来年作れないでしょ?」

  • 販売価格を決めるのは農家自身

野菜や果物の値段は、普通、小売店が決めます。
その値段以上の生産コストがかかれば、農家は赤字になってしまいます。
この直売所では、販売価格を決めるのは農家自身。おいしい作物を作るために手間暇をかけて値段が高くなっても、お客さんが納得して買ってくれれば、農家がもうかるという仕組みです。

  • 方波見洋一さん

メロン農家の方波見(かたばみ)洋一さんは、畑の土壌作りに手間暇をかけているそうです。
現れたのは、理科実験で使うような機器と薬品。
これで土壌を分析し、メロンに最適な成分の畑を作るのだそうです。
日本の農業がその経費を見てくれているのかどうか疑問に思っていたという方波見さん。
「自分で価格を決められるのはありがたい」といいます。

  • 佐伯福一さん
  • 1つのつるに、メロンを2つ実らせる

佐伯福一さんの農園では、栽培の仕方にこだわりがありました。
ひとつのつるから、2個だけを実らせ、甘みを集中させます。
自分でメロンの値段がつけられるため、このような栽培でも利益が出るといいます。

  • 帰国する外国人向けに果物や野菜を売っている
  • みずほの村市場バンコク店

成田空港のおみやげ店では、帰国する外国人向けに果物や野菜を売っています。
日本の農家が作る高品質の農作物を、世界中の人に知ってもらう試みです。

また、輸出も始めました。
新しい直売所をタイのバンコクに作り、3年目で年商2700万円を売り上げています。
日本のメロンを口にしたタイの人たちからは、「とてものどごしがいい。大好きです。」といった声が聞かれました。

  • 品質の良いものが高く売れるような販路を開拓し、農業がビジネスになる仕組みを作ることが大切

所長 「品質のよい農産物が高く売れて、農家のモチベーションが高まるというのはいいですね。」

沼畑先生 「農業経営の基盤が強化され、農業の担い手が増えれば、日本の食料自給率を高めることにもつながります。国内外で品質の良いものが高く売れるような販売ルートを開拓し、農業がビジネスになる仕組みを作ることが大切だと思います。」


それでは次回もお楽しみに!

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