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※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第7回 現代世界の系統地理的考察
【自然環境】編

世界の気候を見てみよう ⑶
〜降水の多い気候、少ない気候〜

  • 地理監修:中央大学附属横浜中学校・高等学校教諭 田中友也
学習ポイント学習ポイント

世界の気候を見てみよう ⑶ 〜降水の多い気候、少ない気候〜

  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが絵本を読んでいると、そこに所長の石原 良純さんがやってきました。

所長 「なんだこれは、絵本じゃないか!我が研究所の評判は、うなぎのぼる!依頼が殺到してるんだから!」

さくら 「わかってますよ!これは、れっきとした調査なんです!海外進出を考えているハウスメーカーからの依頼なんです。」

暑い国に適した住宅とは?
  • 海外への事業展開を考えている。暑い国に適した住宅を考える時のポイントは?
  • 暑い国はどんな家がいい?

「海外への事業展開を考えている。暑い国に適した住宅を考える時のポイントは?」
これが今回の依頼です。

さくら 「暑い国ってことは、日本の夏のような天気が続くってことじゃないですか?」

そこで、「風通しのよさそうな、わらの家がいいかな?」「木の家も結構涼しいかも!」「レンガの家は蒸し暑そうだから、なし!」といろいろ考えていた、さくら君。

所長 「ん〜、さくら君、まだまだだなぁ。一口に“暑い”と言っても、地球上には、いろいろな暑さがあるんだよ。」

  • 気温が高いのは熱帯と乾燥帯

それではまず、復習から始めましょう。
「ケッペンの気候区分」では、地球上を大まかに5つの気候に分けました。
その中で“暑い国がある”、つまり、気温が高いのは「熱帯」、そして「乾燥帯」でした。

所長 「熱帯だけでなく、乾燥帯も気温が高くて暑いんだけど、なんというのかな、こう、暑さの質っていうか、種類が違うんだなぁ。」

雨が多い地域・少ない地域があるのはなぜ?
  • 雨がよく降る低圧帯には熱帯、雨があまり降らない高圧帯には乾燥帯が分布している

熱帯と乾燥帯の大きな違いは、樹木の“ある”“なし”でした。
木が大きく育つためには、たくさんの水が必要です。
つまり、熱帯と乾燥帯では、降水量に大きな違いがあるのです。

さくら 「でも、熱帯と乾燥帯って、隣り合ってるじゃないですか!なのに、降水量に違いがあるんですか?」

それでは、気候区分の横に「気圧帯の配置」を並べてみます。

さくら 「赤道付近に低圧帯、その北と南に高圧帯があって…。あ!雨がよく降る低圧帯には熱帯、雨があまり降らない高圧帯には乾燥帯が分布しているようです。」

所長 「その通り!そして、雨の多い少ないで、風景はガラッと変わるんだ。まずは、熱帯の様子を見てみよう。」

高温多湿な熱帯の自然
  • 熱帯雨林気候
  • スコール

熱帯といってまず思い浮かぶのは、見渡す限りに緑が広がる「熱帯雨林」ではないでしょうか。
種類や高さの異なるたくさんの木々が密生していて、昼間でも薄暗いうっそうとした森。
この熱帯雨林を育む気候が、「熱帯雨林気候(Af)」です。

1年を通じて降水量が多く、気温が高い熱帯雨林には、さまざまな生物が生息しています。
その種類は、全世界の生物種の半数以上ともいいます。
午後、天気が急変し、「スコール」という強風を伴う激しい雨が降るのも、熱帯雨林気候の特徴です。

  • 弱い乾季のある熱帯雨林気候

熱帯雨林が生育する地域でも、「季節風(モンスーン)」の影響で、降水量が少なくなる時期、「乾季」が見られるところがあります。
アマゾン川の中流に位置するマナウスでは、毎年6月から11月にかけて、やや降水量が少なくなります。
これは「弱い乾季のある熱帯雨林気候(Am)」、あるいは「熱帯モンスーン気候」といいます。

  • マナウスの川べりにある掲示板
  • 雨季と乾季とで降水量に差がある

そのマナウスの川べりにある掲示板。
西暦年は、その年の「雨季」に、川の水がその高さまで上昇したことを示しています。
雨季と乾季とで降水量に差があるため、平均すると10mほども水位が変化するのです。

  • 漁師は魚を袋に詰めて投げ上げる
  • 客は岸壁の上で受け取る

乾季のマナウス港では、ちょっと変わった光景が見られます。
朝、魚をとってきた漁師と、新鮮な魚を求める客が集まります。

客が、岸壁の上から欲しい魚を伝えると、漁師はそれを袋に詰めて投げ上げます。
岸壁の高さは、雨季の水位を考えて作られているため、このような方法が習慣化したそうです。

  • サバナ気候
  • 野生の王国

熱帯でも、雨季と乾季の差がはっきりした地域では風景が一変し、「サバナ」と呼ばれる草原が広がっています。
「サバナ気候(Aw)」です。
雨季には、青々とした草原が広がり、背の高い樹木も葉を茂らせます。

ここは、まさに野生の王国。
バッファローにキリン、シマウマといった、多くの大型草食動物が生息しています。
そして、それらを狙う肉食動物も。
生き残るための過酷な戦いが繰り広げられている場所が、サバナの草原なのです。

  • 日本の夏はまるで熱帯?

さくら 「熱帯って、1年中ずっと雨が降るところや、乾季や雨季があるところがあるんですね。日本の夏は、やっぱり熱帯みたいですね!」

所長 「特に最近の日本の夏は暑いからね。突風が吹いてザーッと雨が降るゲリラ豪雨なんていうのは、熱帯のスコールをイメージできるかもしれないね。」

さくら 「では、暑い国には風通しのよい涼しい家がいいっていうことで…。」

所長 「雨が多くて、湿気でジメジメするところには、適しているかもしれないけども、今見たのは、熱帯だけだろ?乾燥帯の様子を見てみよう。」

水の少ない乾燥帯の自然
  • 砂漠気候
  • カイロの降水量は年間でわずか35 mm

乾燥帯の代表的な風景といえば、アフリカ大陸のサハラのような砂漠。
降水量が極めて少ないため、木や草がほとんど生えない「砂漠気候(BW)」です。

降水量がどれくらい少ないかというと、東京の月別降水量は、冬場の少ない時期で50 mmほどですが、カイロの降水量は、“年間”で、わずか35 mmほどしかありません。

  • 砂砂漠、れき砂漠、岩石砂漠

なお、砂漠というと、周りは砂だらけというイメージが強いですが、石ころなどがゴロゴロしている「れき砂漠」や、岩石が露出している「岩石砂漠」などがあり、「砂砂漠」よりも面積が大きいのです。

砂漠では、1日の気温の変化が激しいことも特徴です。
昼は40℃近くまで上がり、夜はぐっと冷え込んで10℃以下になることもあります。
砂漠で命を落とす原因の1位は、凍死だという話もあります。

  • 外来河川
  • カナート

そんな砂漠で、人々が定住するには、何らかの方法で水を得る必要があります。
例えば、古代文明の時代からエジプトを潤してきたナイル川のような「外来河川」
赤道直下の国・ウガンダなど、降水量の多い熱帯地方から流れてきます。

川がなくても、井戸を掘って水を得られる場合があります。
また、何十kmもの地下トンネルを掘って、遠い水源から水を引いてくる技術も発達しました。
このようなかんがい施設は、地域によって「カナート」や「カレーズ」、あるいは「フォガラ」などと呼ばれています。

  • ステップ気候

砂漠気候の周りには、降水量がやや多くなる雨季があり、「ステップ」と呼ばれる草原となっている「ステップ気候(BS)」が分布しています。
熱帯のサバナ気候と似ているようにも見えますが、大きな樹木が育つほどの降水量がないため、背の低い草しか育ちません。
ステップ気候の草原は、人間活動などによって砂漠化の危機に追いやられているところもあります。

暑い国に適した住宅とは?
  • 田中友也先生

所長 「『砂漠には、1日のうちに四季がある』ともいわれている。日中は真夏のように暑く、夜になると真冬のように寒い。」

では、暑い国に適した家とはいったいどんな家なのか、研究所のブレーン・田中友也先生に聞いてみましょう!

田中先生 「まず、日本で快適な家をそのまま持っていっても、だめだと思うんですよね。なので、熱帯地域や乾燥帯の、それぞれ伝統的な住居っていうのを参考にすればいいんじゃないかなと思います。」

熱帯と乾燥帯の生活(住宅)
  • 高床式の住宅
  • マナウスの高床式の家は川の上にある

フィリピン、ルソン島北部の山あいにあるイフガオ族の集落。
2000年にわたって、棚田の文化を守ってきたといわれています。
熱帯モンスーン気候に属するこの村の伝統的な家は、高床式の住宅です(左図)。
床と地面が離れているので、通気性が高く、湿気を防ぐこともできます。
強い雨を流しやすいように、屋根の傾斜が急になっていることも特徴です。

ブラジルのマナウスにも、高床式の家がありました。
しかも、この住宅地は川の上にあります(右図)。
水が蒸発する時に周囲の熱を奪っていくため、水上は陸地に比べて涼しく快適なのだそうです。

このような水上集落は、各地の熱帯地方で見ることができます。

  • 窓が小さい家
  • 日干しレンガを積み上げる
  • 泥を塗り固めていく

今度は、乾燥帯の家を見てみましょう。
マリ共和国のジェンネは、サハラ砂漠の南側、ステップ気候に属する街です。

ここの家は、窓が小さいことが特徴です。
建築中の家の様子を見ると、日干しレンガを積み上げ、しっかりとした分厚い壁を作って、その上から泥を塗り固めていきます。
近くを流れるニジェール川で取れる、粘り気の強い泥を使った、先祖代々の家作りです。

昼と夜の気温差が大きい乾燥帯では、窓を小さくして壁を厚くすることで断熱性を高め、室内の温度を一定に保てるように工夫しているのです。

  • ゲル
  • 藤村舞さん

続いて紹介する住宅は、ステップ気候に暮らすモンゴル遊牧民の家「ゲル」
ゲルに泊まることができる宿泊施設から、さくら君のレポートです。
案内してくださるのは、藤村舞さんです。

  • 中は広く、色鮮やか。
  • 天井が窓になっている

さくら 「意外と広いんですね。」

藤村さん 「モンゴルだと、家族5人とか6人とかで、このサイズです。」

そして、さくら君は色の鮮やかさに目を奪われたようです。

藤村さん「モンゴルのゲルに行くと、こういう感じの色合いのところが多いですね。」

さくら 「窓とかないですよね?」

藤村さん 「そうですね。ゲルはですね、いわゆる壁にあるような窓っていうのはないんですが、上を見ていただきますと、天井が窓になっています。天窓ですね。(右図)」

窓が小さいという特徴は、アフリカの泥の家と共通しています。

  • フェルトで覆われている

藤村さん「ゲルは、木と動物の皮とか毛、あとは布ですね、これらでできているんですね。」

さくら 「じゃあ、覆われているのも?」

藤村さん 「フェルトですね、羊の毛を使った。」

さくら 「そうなんですね。それだったら、あったかいですよね。」

  • 組み立て・解体が簡単にできる
  • およそ40分で組み立て完了!

遊牧民は、牧草や水を求めて移動しながら生活します。
そのため、ゲルは、組み立て・解体が簡単にできるようになっているのです。
棒状の木材で骨組みを作ったら、布や羊毛のフェルト、毛皮などを被せて完成!

アフリカの泥の家と同じで、断熱性を高めることが、快適な住居の条件なんですね。

気候と生活文化
  • 今回の答え

所長 「熱帯、乾燥帯の、それぞれの伝統的な住居を見てきたけれども、どうやら今回の依頼、答えはひとつだけじゃなさそうだな。」

さくら 「そうですね。その場所の気候による、それぞれの暑さの特徴を知った上で、熱帯なら通気性、乾燥帯なら断熱性などを考えた家作りをすることがポイントですね。その際、その土地の伝統的な住居がヒントになるはずです。

田中先生 「暑さの特徴というのは、単に年平均気温が何度かということだけではなくて、どういうふうに、1日、1年の間に変化をするのか、これを見ていくこともとっても大事だと思います。また、降水量および湿度も関係しているということを、依頼主の方にちゃんと伝えておいてください。」

  • 住宅・衣服・食事などの伝統的な生活文化は気候などの自然環境から大きな影響を受ける

田中先生 「家の構造だけではなくて、どんな素材が使われているのかっていうのにも注目が必要ですよね。熱帯では木がいっぱい生えていますから、木材を使った家というのが見られます。ところが、乾燥帯の場合は木が生えていませんので、羊の毛だとか日干しレンガといったようなものを使っていますよね。」

田中先生 「こうした住宅、あるいは衣服だとか食事もそうなんですけれども、伝統的な生活文化っていうのは、その地域の気候などの自然環境にかなり影響を受けていたという側面があります。なので、今後もこういう視点を持って、地域を分析していってほしいなと思います。」


それでは次回もお楽しみに!

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