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地理

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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地理

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今回の学習

第4回 現代世界の系統地理的考察
【自然環境】編

世界の地形を見てみよう ⑵
〜さまざまな地形〜

  • 地理監修:中央大学附属横浜中学校・高等学校教諭 田中友也
学習ポイント学習ポイント

世界の地形を見てみよう ⑵ 〜さまざまな地形〜

  • 籠谷さくらさん
  • 石原良純さん

ここは、「フィルドストン研究所」。
新人所員の籠谷(こもりや)さくらさんが悩んでいるところに、所長の石原 良純さんがやってきました。

さくら 「実は『Iターン』の意味がわからなくて、それを検索してみようかなと思ったところに、所長がやってきました。」

所長 「君はそんなことも知らないのかね?Iターンというのは、都市部で生まれた人が地方に移住することを言うんだよ。」

どうやら今回の依頼は、Iターンに関係があるようです。

  • 滋賀県高島市にIターンして農業を営みたい。どんな農作物をつくればよい?

今回の依頼は、「滋賀県高島市にIターンして農業を営みたい。どんな農作物をつくればよい?」です。

扇状地とは?
  • 扇状地
  • 扇状の土地

滋賀県高島市の場所を確認してみると…。

所長 「これは『扇状地』だな。」

さくら 「扇状地?」

所長 「君は扇状地も知らないのかね?扇のような形をした場所、扇状(おうぎじょう)の土地、だから扇状地だ。」

  • 川の上流から土砂が流れてきて堆積してできる

さくら 「なるほど、でもなぜ扇の形になっているんですか?」

所長 「川があるだろう?川の上流から土砂が流れてきて、堆積してできるんだよ。」

扇状地は、川によってできた地形というわけですね。
それではまず、川によって地形がどのように作られるか、見てみましょう!

河川によって作られた地形
  • 黒部峡谷
  • V字谷

富山県、黒部川が流れる黒部峡谷(きょうこく)です。
黒部峡谷は深い谷になっています。
アルファベットのVの形に見えることから「V字谷」といいます。

  • 侵食
  • 運搬
  • 堆積

V字谷は川の水による働きの1つ「侵食」によってできた地形です。
激しい水の流れが、長い年月をかけて、川岸の岩や山肌を削っていったのです。

谷ができる時に削られた岩や石などの土砂は川によって流されます。
これが川による働きの2つめ「運搬」です。

川は山あいを勢いよく流れ、平地に出ると流れが急に緩やかになります。
流されてきた岩や石などはここに積もります。
これが3つめの働き、「堆積」です。
堆積によってできた地形が扇状地なのです。

さくら 「『侵食・運搬・堆積』、つまり扇状地は、削って運んで積み重ねられて、できたというわけですね!」

内的営力による大地形 外的営力による小地形
  • 内的営力による大地形と、外的営力による小地形

前回は、地球のプレートの動きによって、地形ができることを学びました。

所長 「プレートの動きのような地球内部からの力、これを『内的営力』というんだけど、それによってできた大規模な地形を『大地形』というんだ。それに対して、川の流れのような力、『外的営力』によってできた小規模な地形を『小地形』っていうんだ。」

さくら 「内的営力による大地形と、外的営力による小地形ですね。」

所長 「小地形を作る外的営力は、川の流れだけじゃないぞ!」

さまざまな小地形
  • U字谷
  • 氷河が大地をえぐりながら斜面を下った

ニュージーランドにある山脈、サザンアルプスには、「U字谷」と呼ばれる地形が見られます。
このU字谷、どのように作られたのでしょうか?
今からおよそ1万5000年前、この辺りは氷河で覆われていました。
厚さ2000メートルもの氷河が、大地を深くえぐりながら、ゆっくりと斜面を下っていきました。
その爪痕として残されたのがU字谷です。
まさに自然の彫刻。
急しゅんな山と谷が織りなす造形美です。

  • フィヨルド
  • 涸沢カール

U字谷に、海水が流れ込んでできたのが「フィヨルド」
湾の入り口から奥までの幅があまり変わらない細長い入り江で、海岸の小地形です。

日本にも、氷河が削った地形があります。
長野県北アルプスの涸沢(からさわ)。
この大きな“おわん”のような形の谷を「カール」といいます。
このカールは、2万年以上前に氷河が大地を削り取ってできた地形です。

  • コイリン

水が大地を溶かすこともあります。
こちらは中国南部のコイリン(桂林)。
墨絵の世界から抜け出したような、幻想的な風景が広がっています。
たくさんの山々は、1つとして同じ形はありません。
この地を訪ねる旅人は、昔から山に名前を付けて楽しんできたといいます。

  • 石灰岩の層
  • 石灰岩が雨に溶かされた
  • カルスト地形

コイリン(桂林)は4億年前、海の底でした。
海底にサンゴや微生物が積もり、分厚い石灰岩の層ができました。
その後、海底が隆起して陸地となり、そこに大量の雨が降りました。
水に溶けやすい石灰岩は雨に溶かされて、現在のような山々の形ができたのです。

このように、水が石灰岩を溶かすことで作られた地形を「カルスト地形」といいます。

  • ナミブ砂漠
  • 風下側に崩れ落ちる

次に、乾燥地域にある地形を見てみましょう。
こちらはアフリカ、ナミビアにあるナミブ砂漠。
巨大な砂丘が連なっています。
どうやってできたのでしょうか?

乾燥地域では、日中と夜間とで極端に気温の変化が大きいため、岩盤の風化が進みやすくなっています。
また、乾燥により植物がほとんど生えていないため、風による侵食・運搬・堆積作用によって砂丘が形成されるのです。
風によって砂丘の頂上に堆積した砂は、やがて重さに耐えきれなくなり、風下側に崩れ落ちます。
ナミブ砂漠の砂丘は、風上から風下に向かって1年に10メートル以上も動いているのです。

滋賀県高島市現地調査
  • 田中友也先生
  • 2万5000分の1地形図

扇状地のある、滋賀県高島市。
さくら君は現地調査にやってきました。
研究所のブレーン・田中友也(ともなり)先生と一緒に、調査にあたります。

さくら君が用意したのは、国土地理院発行、2万5000分の1地形図です。
土地の形や土地利用が分かるため、地域調査の必需品です。

  • 扇頂・扇央・扇端

2人はまず、この地域が見渡せる高い山に登りました。

さくら 「確かに扇のような形してますね。」

田中先生 「この扇状地の手前側の方を『扇頂』、真ん中を『扇央』、そして、はしっこの方を『扇端』というふうに呼びます。」

  • 地形図で扇状地を見る
  • 等高線の間隔が広くなっている

この扇状地は緩やかな傾斜を帯びています。
地形図で扇状地を確認してみましょう。

2人は矢印の方向に扇状地を眺めています(左図)。
等高線の間隔が広くなっていることから(右図)、扇状地に緩やかな傾斜があることがわかります。

  • 百瀬川

この緩やかな傾斜は、向かって左手に見える百瀬川が上流から運んだ土砂の堆積によってできたのです。

滋賀県高島市現地調査〜扇状地・扇央〜
  • 百瀬川の扇央あたり
  • 水無川

2人は百瀬川の扇央あたりにやってきました。

田中先生 「今見るとけっこう水量ありますよね(左図)。でも夏になると、水の量がぐっと減るんですよ(右図)。」

このように季節によって水の流れが無くなる川を、「水無川(みずなしがわ)」といいます。

こんなところで農業ができるのでしょうか?
それを確かめるため、2人は扇央の南へ向かいます。

  • 扇央の南にはたくさんの木が植えられていた

扇央の南には、たくさんの柿の木が植えられていました。
この柿は、富有柿(ふゆうがき)という甘みの強い柿で、高島市の特産だといいます。

ここで柿の木のせんていをしていた藤原さんに、柿栽培の秘密を見せてもらえることに。
ついていくと…。

  • 大小さまざまな石
  • 大きな石などを運ぶことができない

倒木の下に、大小さまざまな石が埋まっていました。
なぜ、こんなに石だらけなのでしょうか?

川は斜面が急な山あいからなだらかな平地に流れ込むと、大きな石などを運ぶことができません。
そのため扇状地は石が多く、水はけのよい土地になるのです。

  • 藤原さん

さくら 「でも、こんなに石がごろごろある所で柿の木を栽培するのって、向いてるんですか?」

藤原さん 「柿は、水はけがいいと根をより深く伸ばすので、すごく甘くておいしい柿がとれるんです。」

  • 扇状地扇央の南には果樹園、北には広葉樹林、針葉樹林、荒地がある

ここで現在いる位置の確認をしておきましょう。
現在地、扇状地扇央の南には果樹園の地図記号があります。
一般的に、水はけのよい扇央は果樹園に向いているのです。

ところが、扇央の北には果樹園がありません。
ここにある地図記号は広葉樹林、針葉樹林、そして荒れ地です。

これは一体どうしてなのでしょうか?

  • 昔は南東方向に流れていた
  • 北に流れるように変えた

藤原さん 「昔、百瀬川が氾濫を繰り返し、長く荒れていたので、開墾されなかったんじゃないかと思います。」

このあたりでは、南東方向に流れていた川(左図)を、人間が堤防を築き、北に流れるように変え(右図)、開墾してきた経緯があり、扇央の北は農地としての開発が遅れたのではないかということです。

  • 新しい住宅が建ち並んでいる
  • 扇状地の扇端に古くからの家がある?

現在では、別荘地として新しい住宅が立ち並んでいます。

さくら 「家が、新しい感じがしますよね。」

田中先生 「じゃあ、古くからの家がある集落は、どこにあると思いますか?」

さくら君が地図で予想した場所は、扇状地の扇端であることがわかりました。
古くからの集落は、なぜ扇端にあるのでしょうか?

滋賀県高島市現地調査〜扇状地・扇端〜
  • 水が湧いている

田中先生 「さくらさん、ここから水が湧いているのが見てとれますか?」

さくら 「あ、本当だ!けっこうな量が湧いてますね。でもあんまり冷たくないです。」

扇端に古くからの集落があるのは、水を得やすいためでした。
あちこちに湧き水や井戸があるそうです。

  • 堆積した土砂の粒が大きいので水はけが良い土壌になる
  • 川の流れの途中で水が下方にしみ込んでしまう

  • 扇端で水は地表から出て湧き水になる
  • 全部湧き水

さくら 「でも先生、水が出るのはどうしてですか?」

田中先生 「扇状地というのは、山頂から土砂が堆積してできた地形だという話をしたと思うんですけど、流れてくる土砂の大きさ、粒の大きさがかなり大きいんですね。そのため、非常に水はけがよい土壌になっています。なので、流れる時に水が下の方に染み込んでいってしまい、水が無くなって、途中で水無川になるわけです。そして扇状地の扇端の所で、この水は地表から顔を出して、湧き水になる。」

地元の方々は、湧き水で里芋を洗っていました。
湧き水は皆さんにとって、生活の一部なんですね。

滋賀県高島市現地調査〜百瀬川・下流域〜
  • 平たんで、広い範囲に水田が作られている

扇端をあとにした2人が着いたのは百瀬川の下流です。
そこは平たんで、広い範囲に水田が作られていました。
なぜ、ここでお米が作られているのでしょうか?

  • 鳥居さん
  • 粘土層の土になっている

農家の鳥居さんにお話を聞きました。

鳥居さん 「土が稲作に非常に向いています。粘土層の土になっています。」

川が上流から運んだ土砂は、流れが緩やかになった下流域では、細かい粘りけのある土などが堆積するため、水はけの悪い土地になるのですが、これがお米を作るのに向いているのです。
この辺りのお米は「近江米(おうみまい)」と呼ばれ、高い評価を得ています。
よいお米作りの秘密は、川が作った土壌にあったんですね。

  • 扇頂から南東に向かって水田が広がっている
  • 清水さん

さくら 「扇頂から南東に向かって水田が広がっているのはどうしてなんですか?(左図)」

確かに扇状地に水田があります。
その理由を、農家の清水さんに伺いました。

清水さん 「こちらの水田の特徴としては、山手から水を引いているんです。」

  • 上流から人の手で水路を引き、水の少ない扇状地に水田を作った

百瀬川の上流から人の手で水路を引き、水の少ない扇状地に水田を作ったそうです。
ところが、この水田は水はけがよいため、何度も上流から引いた水を入れなければいけないそうです。
そんな環境でお米を育てているのはなぜでしょうか?

清水さん 「収穫量はあんまり多くないんですけど、おいしいお米をとることができます。」

人の手が加わることで、土地利用にも変化が現れてくるんですね。

滋賀県高島市現地調査報告 どんな農作物をつくればよい?
  • 現地の調査報告

さくら 「それでは、現地の調査報告です!」

扇央の部分は、水はけがよいため果物の栽培に向いています。
ここでは柿の栽培を行っていました。

次に扇状地よりも下流の領域。
ここは水はけが悪いため、水田に向いています。
おいしい近江米を作っていました。

そして、お米は扇状地でも作っていました。
本来なら水はけが良く、水田に向いていないのですが、水路を引くことによって作ることができるようになったそうです。

  • 自然環境をそのまま受け入れるだけではなく自分たちで工夫して土地の利用を変えてきた
  • 作るなら果物、お米もお勧め

田中先生 「一般的には、扇状地の扇央の上を中心とした辺りというのは、水はけがよく、水が得にくいので、果樹園が広がっています。ただし百瀬川扇状地のように、人間が水を得る工夫をしているところは、その限りではありません。」

田中先生 「人間はこのように、その地域の自然環境をそのまま受け入れるだけではなくて、自分たちで工夫して、土地の利用を変えてきたんですね。」

所長 「さあ、それじゃあ、今回の質問に対する答えは?」

さくら 「作るなら果物。お米もお勧めです!やっぱり、地図だけではわからない疑問を現地の人に聞いてみると、とても楽しいですし、とてもわかりやすかったです!

所長 「現地に行ってその目で確かめるってことが大事だからね。」


それでは次回もお楽しみに!

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