NHK高校講座

地学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第28回 第4編 私たちの空と海・地球のこれから

地球の熱収支

  • 星槎大学客員教授 武田 康男
学習ポイント学習ポイント

地球の熱収支

今回のテーマは“地球の熱収支”
  • 地球を出入りするエネルギーについて考える

地球は、宇宙から多くのエネルギーを受け取り、放射することで特別な環境を維持しています。
今回は、地球を出入りしているエネルギーについて見ていきましょう。


アイコ 「地球が美しく光り輝いて見えるのは、太陽のおかげよね。」

サワ 「もし太陽がなかったら真っ暗。地球なんて見えないよね。」

太陽放射
  • 地球に入るエネルギーの31%は反射される
  • 雲や大気が太陽からのエネルギーを多く反射

地球に入ってくる太陽のエネルギーのうち、約31%は反射しています。
宇宙から見て、地球が青白く輝いているのは、反射した3割の光を見ているのです。

入ってくるエネルギーに対して、反射するエネルギーの割合をアルベド(反射率)といいます。
地球は、入ってくる太陽のエネルギーの31%を反射しているので、地球のアルベドは0.31ということになります。

金星のアルベドは0.65と、地球の倍以上もあり、太陽系の惑星ではかなり高い値です。
地球の衛星である月のアルベドは、わずか0.07と少ないのですが、地球からの距離が近いため明るく見えます。
地球のアルベドが、月に比べて大きいのは、なぜでしょうか。


サワ 「地球にあって月にないものが関係しているんだよね… 海とか?」

アイコ 「そうね。海も太陽光を反射するけど、一番は雲よ。雲や大気が太陽からのエネルギーを多く反射しているの。」

  • 太陽定数
  • 地球全体で1秒間に受け取るエネルギー

太陽は可視光線を中心として、紫外線・赤外線・エックス線など、さまざまな波長の電磁波を放射しています。
これを太陽放射といいます。


地球が受けている太陽放射は、どのくらいなのでしょうか。

左の画像のように1mの平面が、地球の大気の外側にあるとすると、その平面が太陽光線を垂直に受けるエネルギーは、約1370W/mになります。
このエネルギー量を太陽定数といいます。

この太陽定数に地球の断面積をかけた値が、地球全体で受け取るエネルギー量です。
地球が1秒間に受ける太陽放射のエネルギー量は、1.75×1014kW=約175兆kWになります。
これは、大きな火力発電所3000万個分ぐらいのエネルギー量です。


サワ 「すごい量のエネルギーが太陽から届いているんだね。でも、そんなエネルギーが届いていたら、熱くて生きていられないと思うけど、実際はそうじゃないよね。」

地表に届くエネルギーは約半分の49

太陽放射を100とすると、22は雲や大気などが反射、9は地表面から反射しています。
2つを合わせた31がアルベドです。
さらに20は大気や雲に吸収されます。
この31+20=51を、100から引いた残り49が地表面に吸収されています。

地球放射
  • ライト点灯前は22℃
  • 約64℃で温度上昇が止まる

地球は、太陽からエネルギーを受け取っているだけではなく、エネルギーを放射しています。
これを、地球放射といいます。


地球は恒星である太陽のように光を自ら発してはいませんが、太陽の光で暖められているので、熱を持っています。
どんな物質でも、熱を持っていればエネルギーを放射しています。

簡単な実験を行いました。
用意したのは、黒い球体とライト、球体の表面温度を測るための温度計です。
左の画像のように、ライトを点灯する前の球体の表面温度は22℃です。

ライトを点灯し、温度変化を見てみました。
ライトの光が球体の表面を暖めます。
時間が経つにつれて、球体の表面温度は上がっていきました。

最初は急激に温度が上がっていきましたが、50℃ぐらいから温度上昇のスピードは鈍っていきました。
そして、64℃ぐらいで、ほとんど温度は上がらなくなりました(右画像)。

  • あるところで温度上昇が止まる
  • ライトからのエネルギーと球体からのエネルギーが等しくなった

今回の実験結果をグラフにすると、左の図のようになりました。
なぜ、温度上昇が止まったのでしょうか。

球体は、ライトが放射するエネルギーを受けて熱を持ちます。
それと同時に、球体からもエネルギーが放射されていて、温度が上がるにつれて、そのエネルギーは大きくなっていきます。

球体の温度が上がらなくなったのは、ライトから球体に放射されるエネルギーと、熱を持った球体から放射されるエネルギーが等しい状態になったからです。

  • 球体が放射していたのは赤外線
  • 放射平衡

サワ 「ライトが放射しているエネルギーって、光のエネルギーだよね。球体が放射するエネルギーってなんなんだろう?なにか出てるようには見えなかったけど?」


熱を持っている物質が放出するエネルギーは、電磁波です。
以前、目に見える光も電磁波だということを学びました。
ライトが出している光は目に見える電磁波であり、球体が出している電磁波は、私たちの目には見えない赤外線です。

対流圏が地表に近いほど暖かい理由は、太陽によって暖められた地表面が、下から大気を暖めているからです。
つまり、地球は太陽からの光を吸収することでエネルギーを受け取っているだけでなく、赤外線を出すことでエネルギーを放射しています。

実験で球体の温度上昇が止まったように、地球の温度も上昇し続けてはいません。
それは、入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーのバランスが取れた状態だということです。
この状態を放射平衡(ほうしゃへいこう)といいます。

  • 赤外線サーモグラフィーの映像
  • 赤は温度が高く、青は温度が低い

赤外線は、いろいろなものから出ています。
テレビの情報番組などでもよく目にする左の画像のような映像は、「赤外線サーモグラフィー」という装置で撮影されたものです。
最近では、スマートフォンに取り付けられる小型のものもあり、手軽に赤外線を測定できます。
温度が高いところが赤く、低いところが青く表示されています。

赤外線は私たちの身の回りにある、あらゆるものから出ていて、温度が高いほど多くの赤外線を放射しています。
アスファルトは、とても熱くなるのでたくさんの赤外線を放射します。

  • 海面の温度は砂浜ほど上がらない
  • 昼間蓄積した熱を夜間も放射

自然の中にあるものは、どうでしょうか。
砂浜は太陽光で暖められて温度が上がおり、その分多くの赤外線を放射しています。
一方、海面の温度は砂浜ほど上がらず、赤外線の量も少なくなっています。

右の写真のように、太陽光が当たらない夜でも、昼間に蓄積した熱を赤外線として放射しています。
このように、地球は24時間、いつも赤外線を放射し続けているのです。

地球が放出するエネルギー=地球放射

地球はどのくらいのエネルギーを出しているのでしょうか。
太陽放射を100とした場合、地球が太陽から受け取っているエネルギーは49でした。

上の画像は、先ほど見た、地球が受け取る太陽放射のゆくえを示した図に 地球放射の内訳を加えたものです。
地表面から宇宙空間へ直接放射される赤外線は、わずか12です。
大部分の赤外線が、地表面からの放射として102、大気や雲に吸収されてしまいます。
そのほかに、対流・伝導・蒸発によるエネルギーの移動が30あります。


サワ 「大気や雲に102ものエネルギーが吸収されているの?太陽放射の100を超えているよね。どうなっているの?」

地球放射の102のうち、95が地表に戻る

大気中の水蒸気や二酸化炭素などは、地球から放射される赤外線を吸収し、再びさまざまな方向に放射する性質を持っています。
大気から放射されて地表面に戻ってくる赤外線は95です。
つまり、地球が放射した赤外線102のうち、ほとんどが再び地表面に戻ってくるわけです。

温室効果
  • 温室効果ガス

アイコ 「『温室効果』っていう言葉、聞いたことない?」

サワ 「地球温暖化の話題で聞いたことがあるわ。二酸化炭素が増えて、それが温室効果を高めているみたいだって。」

アイコ 「そうね。環境問題の話で耳にすることが多いから悪いイメージがあるかもしれないけど、必ずしもそうじゃないの。」


地球が放射する赤外線が、水蒸気や二酸化炭素などによって戻ってくる現象が、温室効果です。
温室効果は、地球に住む生物にとって欠かせないものなのです。
水蒸気や二酸化炭素のほかに、メタンやフロンなども、地球が出した赤外線を吸収して地表に戻す性質を持っています。
こうした働きをする気体を温室効果ガスといいます。

現在の地球表面の平均温度は15℃ぐらいです。
もし温室効果ガスがなく、地球のアルベドが変わらないとすると、地球の表面温度は約−18℃になってしまいます。
このように、温室効果の有無で33℃も違ってきます。
地球は、温室効果があるおかげで、人間などの生物にとって快適な温度で熱収支が保たれているのです。

地表面の熱収支は±0

ではもう一度、地球の熱収支を確認してみましょう。
まず、地表面での熱収支を計算してみます。
地表面が吸収する太陽放射が49。
大気から放射されて地表に戻ってくるエネルギーが95。
入ってくるエネルギーは合計144になります。

一方、地表面から大気への放射が102。
地表面から宇宙へ直接放射されるのが12。
対流・伝導・蒸発で放出されるのが30。
出ていくマイナスのエネルギーも合計144。

地表面の熱収支はプラスマイナスゼロになります。

宇宙空間との熱収支も±0

宇宙空間との熱収支はどうでしょうか。
宇宙から入ってくるエネルギーは太陽放射の100。
出ていくのは、地表面からの反射が9。
大気や雲などからの反射が22。
大気からの放射が48。
雲からの放射が9。
地表面からの直接放射が12。

これらを合計すると100になり、宇宙空間との熱収支も、プラスマイナスゼロになります。


サワ 「地球が宇宙に向けてエネルギーを放射しているなんて知らなかったわ。」

アイコ 「地球が放射している赤外線が、私たちの生活にも役立てられているのよ。」

  • 星槎大学 客員教授の武田 康男さん
  • 気象衛星の画像は赤外線で撮影している

アーカイブスにアクセスして、星槎大学 客員教授の武田 康男さんにお話を伺いました。


サワ 「地球が出している赤外線って、何に役立てられているんですか?」

みなさんが毎日のように目にしているものに利用されているんです。右の画像、ご存知ですか?
この画像は、気象衛星が赤外線で撮ったものに、陸地や海を見やすいように着色したものです。



アイコ 「なぜ赤外線で観測しているんですか?」

主な理由は、夜も撮影できるという点です。地球は夜でも赤外線を放射しています。夜間の雲の分布や台風の動きがわかるのは、赤外線カメラのおかげなんですよ。


サワ 「赤外線って地球の熱を調節したり、気象観測に役立ってくれたり、とても大切なものなのね。」


それでは、次回もお楽しみに!

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