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物理基礎

Eテレ 毎週 木曜日 午前10:30〜10:50
※この番組は、前年度の再放送です。

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物理基礎

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今回の学習

第36回 第2編 さまざまな物理現象とエネルギー

なぜ交流を使うのか 〜直流と交流〜

  • 物理基礎監修:筑波大学附属高等学校教諭 小沢 啓
学習ポイント学習ポイント

なぜ交流を使うのか 〜直流と交流〜

AC DC とは?
  • ACとDCとは?
  • バッテリー

パソコンの電源をなくしてしまったノブナガ。
倉庫から電源コードがたくさん入ったかごを持ってきて、使えそうなものを探しています。


リコ 「これってどれも似た形をしているけど、どれでもいいのかな?」

ノブナガ 「どうだろう。ん?何か書いてある。『インプット:AC 100V、アウトプット:DC 6V』……ACとDCって何だっけ?」

リコ 「それって、交流と直流のことじゃない?」

ノブナガ 「パソコンは、バッテリーでも動くよね。このバッテリーは直流だから、DCっていうのは直流で間違いなさそうだね。」

リコ 「この前発電所に行って、交流発電を見てきたから、コンセントは交流だよね。だからACはきっと交流のことだよ。」

ノブナガ 「じゃあ、この装置は交流から直流に変えているってことなのかな?そういえば、ラジオってコードが付いているけどさ、非常時には電池でも動くよね。ってことは、ラジオも直流?なんか意外に直流で動くようなものが多い気がするんだけど、どうして家の電源は交流なんだろう?」

リコ 「そんなことないよ。確か、電球や蛍光灯なんかは交流で光っているはずだよ。他にも探せば、交流で動く電気製品は結構あると思う。」

ノブナガ 「じゃあ、家の電気製品が直流か交流か調べてみよう。」

リコ 「うん、わかった。」

DCとACの電気製品を調べる
  • 直流で動く電気製品
  • 交流で動く電気製品
  • ACアダプターとプラグ

二人はそれぞれ、直流・交流で動いている電気製品を考えて持ってきました。
ノブナガが直流で動くと予想した電気製品は、スマートフォン、小型掃除機、ラジオです。
これらの電気製品には、「バッテリーや電池で動くこと」、「コンセントを使う際にはACアダプターと呼ばれる装置を使う」という共通点があります。

リコが交流で動くと予想した電気製品は、トースター、照明器具、アイロンです。
ACアダプターを使わずにコンセントにプラグを差し込めば動くので、交流をそのまま使うのだと考えました。


ノブナガ 「でもさ、リコが集めたものって、直流でも動くと思うんだよね。だから、発電所が最初から直流で電気を送ってくれれば、こういうのはいらないんじゃないかな?」

リコ 「でも発電には電磁誘導が必要でしょう?(第35回)コイルのそばで、磁石を動かし続けなきゃいけないんだから、発電される電気は交流になるじゃない。だから交流で送って、直流で動くものだけ変換すれば済むんじゃない?」

ノブナガ 「そうなんだけど……。」

  • ACアダプター
  • ACとDC

父 「ただいま。あれ?こんなに電気製品を集めてどうしたの?」

ノブナガ 「家の電源が、なんで交流なのかなと思って。直流で動く電気製品と……」

リコ 「交流で動く電気製品を調べてたの。」

父 「直流と交流か。直流、交流といえば、そこにあるのはACアダプターだね。ACアダプターは、交流を直流に変換する装置だよね。AC(Alternating Current)は交流、DC(Direct Current)は直流のことなんだよ。」

リコ 「ACとDCの推理は当たってたね。」

ノブナガ 「うん。でもお父さん、交流から直流に変換するってどういうこと?」

父 「じゃあね、ACアダプターを分解したもので見てみようか。」

  • ACアダプターの中のコイル
  • ノブナガとリコの主張

ACアダプターを分解したものを見てみると、中にはコイルが2つありました。
この2つのコイルは、電圧を下げるはたらきをしています。

パソコンなどの電子機器は直流で動きますが、100Vもの電圧を必要としません。
ACアダプターは、家庭に送られてくる交流電圧100Vから、まずは使う機器に必要な電圧に下げます。
そして、電圧の低い交流にしてから直流に変換しているのです。


ノブナガ 「でも、それって面倒じゃない?最初から発電所が直流で送って、電気製品に合わせて電圧だけ下げれば簡単だよね?」

リコ 「うーん。でもお兄ちゃんが考えつくくらいだから、きっとそういう議論はとっくの昔にされたんじゃない?それでも、交流で家に電気が送られてくるんだから、何かそれなりの理由があるんだよ。」

父 「じゃあ、今日も2人の主張を検証してみたら?」

ノブナガ 「わかった。ぼくは、家の電気は直流がいいと思う!」

リコ 「私は、家の電気は交流がいい!」

直流の特徴
  • 直流でつなぐ
  • 直流は一直線に表れる

直流と交流はどのような電気なのか、オシロスコープを使って調べてみます。

はじめに直流をつないで見てみると、一直線に表示されました。

オシロスコープは横軸が時間、縦軸が電圧を表しています。
真ん中にある水平のラインが0Vで、上側が(+)、下側が(−)です。

この場合、直流の電圧は(+)の一定の値になっていることがわかります。

  • (−)側に直線が表れる

次は、電池を逆向きにつないでみます。
オシロスコープには、下の方に一直線に表示されました。

電池の向きを変えると、電圧は(−)の値なので、(−)の値で一定になっていることがわかります。

このように、直流は電圧の向きと大きさが一定に流れる電流です。

交流の特徴
  • 交流でつなぐ
  • 電磁誘導の実験

交流をつないで見てみると、音さの波形と同じような波が表れました。

電圧0Vを境に(+)と(−)で向きが逆になって流れています。
つまり、交流は振動しており、(+)と(−)を行ったり来たりして電圧の向きが変化しています。


リコ 「電磁誘導の実験のときも、検流計の針が振動していたよね?」

ノブナガ 「うん、左右に振れてた。それと同じことなの?」

父 「そういうことだね。実は、オシロスコープの他にも、交流か直流かを確かめる方法があるんだよ。」

  • 発光ダイオード
  • 逆向きにすると点灯しない

お父さんが用意したのは、発光ダイオードです。
乾電池をつなぐと、点灯しました。

しかし、電池を逆向きにすると、発光ダイオードは点灯しません。


父 「発光ダイオードは一方向にだけ電流が流れる性質があるんだ。じゃあ、これを交流につないだらどうなるかな?」

ノブナガ 「電流が行ったり来たりするから、ついたり消えたりする?」

父 「じゃあ、やってみようか。交流をつなぐよ。」

  • 交流につなぐと発光ダイオードは点灯する
  • 交流で逆向きにしても点灯

リコ 「あっ、ついた。」

ノブナガ 「でも、ついたままだ。なんで?」


回路の向きを逆にしてつないでみても、発光ダイオードは点灯したままのように見えます。


父 「交流だと、どちら向きにつないでも ともっちゃうんだね。これは実はね、ものすごく速く点滅してるはずなんだけど、変化が速すぎてそういうふうには見えないんだね。そこでね、ちょっとこれを見てほしいんだ。」

  • スローモーションだと発光ダイオードは点滅
  • スローモーションだと発光ダイオードは点滅

交流を流した発光ダイオードをハイスピードカメラの映像で見てみます。
約30倍のスローモーションで見てみると、発光ダイオードがついたり消えたりしていることがわかります。

  • 周波数のモデル
  • 東日本と西日本の周波数

オシロスコープで見た交流の波形は、左図のようなものでした。

交流を流すと、発光ダイオードは一方向にしか電流を流さないので、逆向きの電圧がかかると光りません。
つまり、グラフの山の部分では光り、谷の部分では光りません。

交流では電圧の変化が繰り返されており、1秒間に向きと大きさが変化する回数を周波数といいます。
周波数の単位にはHz(ヘルツ)を使います。
東日本では1秒間に50回変化する50Hzの電気が、西日本では60回変化する60Hzの電気が供給されています。

  • 直流に変えてから電圧を変換するのは?
  • コイルの巻き数が違う

ノブナガ 「でもさ、家の電源が直流なら、発光ダイオードも光り続けるんだよね。だったら、やっぱり直流でいいんじゃないかな?」

リコ 「うーん。そんな気もするんだけど、何か見落としている気がする……。あっ、お父さん、『交流の電圧を変えてから直流に変換する』って言ってたけど、直流に変えてから電圧を変換するのではだめなの?」

父 「それがね、だめなんだよ。その理由を考えてみよう。ACアダプターを分解したものをもう一度見てみようね。コイルをよく見てごらん。2つのコイルがあるけど、導線で何か違いがないかな?」

リコ 「あっ、巻いている数が違う?多いのと少ないの。」

父 「そのとおり。このコイルの巻き数が重要なんだ。」

コイルの巻き数と電圧の関係
  • 巻き数の違うコイル
  • 一次コイルと二次コイル

お父さんが用意したのは、2つのコイルです。
これらは、ACアダプターの巻き数の異なる2つのコイルの代わりと見なします。

右が一次コイル、左が二次コイルといいます。
一次コイルは500回、二次コイルは5回、導線が巻いてあります。


父 「じゃあ、この一次コイルに交流を加えたらどうなると思う?」

ノブナガ 「んー、一次コイルに磁場ができて、交流だからその磁場がすぐ逆になる。」

リコ 「あっ!電磁誘導でこの二次コイルに電圧が生じる!発電機と同じじゃない?」

父 「そう。発電機の実験と似ているね。」

  • コイルの巻き数と電圧は比例している?

父 「電圧を上げていくね。一次コイルの電圧は、今10Vだ。じゃあ、二次コイルの電圧計はどうなっているかな?」

ノブナガ 「0.099V。」

リコ 「二次コイルは、およそ0.1V?二次コイルの巻き数が一次コイルの巻き数の1/100で、電圧もだいたい1/100になってる。」

ノブナガ 「コイルの巻き数と電圧が比例しているんだね!」

父 「ノブナガ、そう決めつけるのは早いんじゃないかな。この場合は?」

リコ 「他の巻き数のコイルで実験してみる!」

父 「いいぞ、2人とも。じゃあ、やってみようか。」

  • 二次コイルを20回巻きにして実験
  • 約0.4V

今度は、二次コイルを20回巻きにして電圧をかけてみます。


リコ 「20は500の1/25だから、10の1/25で……。」

ノブナガ・リコ 「0.4V!」

父 「じゃあ。やってみるよ。一次コイルの電圧を10Vまで上げてみようね。二次コイルの電圧は0.399V、およそ0.4Vだね(右写真)。2人とも正解!」

ノブナガ・リコ 「やったー!」

ノブナガ 「そうか、これでやっと『比例している』って言えるんだね。」

  • 電圧と巻き数はV1:V2=N1:N2
  • 電磁誘導で直流の実験

一次コイルの電圧を 、二次コイルの電圧を とすると、電圧と巻き数の間には

という関係が成り立ちます。


父 「交流電圧は、簡単に効率よく電圧を変えることができるんだよ。このような装置を変圧器とか、トランスというんだ。

ノブナガ 「直流を加えたらどうなるのかな?」

リコ 「それは何も起きないんじゃない?磁石を動かさなかったら、検流計の針も動かなかったよね?」

父 「じゃあ、直流を加えてみようか。」

  • 直流ではコイルの変圧器は使えない
  • オームの法則

電源として直流電源装置をつなぎ、それを一次コイルにつないでいます。
この一次コイルには、直流電圧計がつないであります。

専門家の指導の下に実験を行っています

一次コイルに電圧をかけてみたところ、二次コイルの電圧が一瞬上がりましたが、すぐに0Vになりました。


父 「直流の場合、コイルの変圧器は使えないということなんだよ。」

リコ 「なるほど、直流にしてから電圧を変えるわけにはいかないってことがわかった。でもその点、交流は、コイルの巻き数で電圧を変えることができるから直流よりも交流の方が優れているってことになるね。」

ノブナガ 「いや、オームの法則から直流も簡単に変圧できるんじゃないかな?抵抗を変えるとか……。」

父 「なるほど、オームの法則か、よく気づいたね。でも、複数の抵抗を使って電圧を分けることはできるんだけど、電源で加えられた電圧をそれ以上上げることはできないんだよ。」

ノブナガ 「交流だって、さっきから電圧を下げてるんじゃないの?」

父 「いやいや、一次コイルと二次コイルを逆にするだけで、電圧を上げることもできるんだよ。それが交流の利点なんだよね。」

  • 発電所
  • 発電機
  • 送電線

家庭に届く電気の出発点である発電所では、発電器を使って数万ボルトの交流電気を作り出しています。
その電気を数十万ボルトという、とても高い電圧にして送電します。

  • 変電所
  • 柱状変圧器
  • 家庭へ

送られた電気は、市街地などにある設備で数万ボルトから数千ボルトまで下げられます。
さらに、電柱の上にある変圧器で主に100Vにして、家庭に届けられているのです。


ノブナガ 「これが交流の利点なの?使うときに100Vに下げるんだったら、なんでわざわざ数10万Vっていう高い電圧で送るの?100Vで送ればいいと思うけど。」

父 「それがね、そうはいかないんだよ。」

交流の送電実験
  • 発電所から変圧しないで送電する装置
  • 発電所で電圧を上げて家のそばで電圧を下げる装置

父 「じゃあね、家側での消費電力が同じになるように、変圧器を使った送電と使わない送電を比べてみようね。」


左写真は、発電所から変圧せずに送電する装置です。

右写真は、発電所で電圧を上げて、家のそばで電圧を下げる装置です。
発電所側で電圧を10倍に上げて、家がある側で1/10にします。

  • ニクロム線で送電
  • 家側の電圧が12Vになるように設定

送電線は、ニクロム線を使っています。

家の側の電圧が12Vになるまで、それぞれの送電側の電圧を上げていきます。

  • 発泡スチロールが切れる
  • そのまま送電した電流のほうが大きい

どちらの装置も同様に電球がついているため、消費電力は同じです。
2つの装置のそれぞれのニクロム線に、発泡スチロールを置いてどうなるか見てみました。

すると、変圧をせずに送電する装置の送電線に置いた発泡スチロールは切れてしまいました。


リコ 「これって、熱が発生してるんだよね。この前やったジュール熱。」

父 「そう、よく覚えてたね。電気エネルギーがニクロム線で熱になっているんだね。この熱の分だけ、電気エネルギーが電球に届かないで、ロスになっている。」


変圧器をつないだ装置(右写真上)の電流と、そのまま送電する装置(右写真下)の電流を比べたところ、そのまま送電した方が電流が大きいことがわかりました。

  • P=VI

ノブナガ 「交流でわざわざ高電圧で送電するのは、ロスを減らすためっていうこと?」

父 「そのとおり。電圧を大きくして電流を小さくして送電する方が、ジュール熱が発生しにくいんだね。前にやったこの式を覚えているかな?VI で考えたとき、家の側での消費電力 を一定に保ったまま電流 を小さくするためには、電圧を?」

リコ 「大きくする。」

父 「そういうことだね。交流は、変圧器を使って簡単に電圧を上げたり下げたりできるので、エネルギーの損失を少なくするっていうメリットがあるんだね。交流がいいと言ったリコちゃんの主張が当たっていたのかもしれないね。」

リコ 「やったー!」

ノブナガ 「ただ使うためだけじゃなくて、送電や変圧のことも考えられているのか。直流、破れたり……。」

父 「そう気を落とすなノブナガ。直流の送電という例もあるんだよ。調べてみたら。」

ノブナガ 「えっ、直流の送電もあるの?調べてみる!」

  • お父さんのひと言
  • 次回もお楽しみに!

〜お父さんのひと言〜


明治20年頃、皇居のまわりに5か所の発電所ができました。
そこで使われた発電機はエジソン式直流発電機です。
125V、25kW。
この発電所から送ることができた電気は、せいぜい2kmの範囲です。
やがて、直流送電にこだわっていたエジソンに対抗して、部下のテスラが交流送電を提案します。
交流発電機と変圧器を組み合わせた交流送電は日本に広まり、その後文明の明かりは日本中を照らすようになります。
この明かりを守っていたのは、発電所や送電所の人々です。
ろうそくやランプ、電球、蛍光灯、そして今はLEDと明かりは変わってきましたが、人々の心を照らす明かりは変わらないと思います。
社会を暖かく照らし出すのは、懸命に生きる人々、誠実に生きる人々の姿ではないでしょうか。



それでは、次回もお楽しみに!

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