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物理基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:20〜2:40
※この番組は、前年度の再放送です。

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物理基礎

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今回の学習

第21回 第2編 さまざまな物理現象とエネルギー

物質による温まり方のちがい 〜熱の移動と保存〜

  • 物理基礎監修:豊昭学園豊島学院高等学校教諭 大津 豊隆
学習ポイント学習ポイント

物質による温まり方のちがい 〜熱の移動と保存〜

熱い石で鍋料理
  • 焼き石鍋
  • 石のほうが熱エネルギーを蓄えられる

今日は、お父さんが料理当番の日です。
お父さんが作った「焼き石鍋」は、おけの中に生の食材が入っていて、熱した石を入れることで食べ物に火が通ります。


父 「この石を温めるのにちょっと時間がかかったんだよね。これを、この中に。」

母 「石で水が沸騰した!」

リコ 「なるほど、石から熱が移動したんだ。」

父 「そのとおり。熱の移動を利用したのがこの料理なんだよ。焼き石鍋とかね、焼き石汁とか呼ばれているんだね。」

母 「これだったらアウトドアでも料理できるし、ねぇ、面白いね。」

リコ 「でも、石のかたまりじゃなくて、鉄のかたまりなんかでもいいんじゃないの?」

父 「それはね、鉄だと重いし、同じ温度に熱した場合には、石の方が多くの熱エネルギーを蓄えられるんだな。」

リコ 「熱エネルギーが蓄えられる?」

父 「うん、そうだよ。じゃあ、熱についてもっと調べてみようよ。」

熱の移動
  • 熱は高いほうから低いほうへ移動する

父 「まず、熱の性質から考えていこう。温度の高い石から、温度の低い水に熱が移動したことによって水が沸騰したんだよね。」

母 「そりゃあそうでしょう。低いほうから高いほうには移動しないでしょ。」

父 「そうだね。当たり前に思えるけど、とても大切な性質なんだよ。それじゃあ、温度の高いものから低いものへ、熱の移動はいつまでも続くのかな?」

ノブナガ 「それは、さっきの鍋も、いつまでも続くわけではないと思うよ。」

父 「どうだろうね。さっきの焼き石鍋で使った温度の高い石を水に入れて、温度がどうなっていくのか、映像を見てみようか。」

  • 石を砂に埋めコンロで加熱
  • 保温性の高い容器に水を入れる

石を高温に熱して水に入れ、温度の変化を観察します。

質量160gの石を鉄鍋に入れて砂の中に埋め、コンロで加熱します。

次に、保温性の高い容器に水を入れます。
水の質量は160g、温度は約21℃です。

この水の中に加熱した石を入れてみます。

  • 熱された石
  • 石と水の温度はほぼ同じに

熱した石の温度は約200℃になりました。

温度変化の様子を、サーモグラフィーカメラで観察します。
青いところは温度が低く、温度が高くなるほど水色→緑→黄色→赤→ピンクで表示されます。

色の変化を見てみると、石の温度が下がり、水の温度が上がっていることがわかります。
時間が経つと、石と水の温度はほぼ同じになり、変化しなくなりました。
このときの温度は39℃でした。

石と水の温度はそれぞれ、

石:200℃→39.0℃
水:20.7℃→39.0℃

のように変化しました。

  • 両方の温度が同じになると熱移動が終わる
  • 熱平衡

ノブナガ 「石の温度は下がって、水の温度は上がったね。」

父 「そうだね。両方の温度が同じになると、熱の移動が終わるんだよね。」


石と水の温度変化を、右図のグラフで見てみます。
縦軸は温度、横軸は経過時間です。

観察開始時、石は200℃の非常に熱い状態で、水は約21℃でした。
この状態で石を水の中に入れると、互いの温度が徐々に近づき、ある同じ温度になります。
この状態のことを「熱平衡」といいます。
実際には熱が逃げるため、わずかに温度は下がっていきます。


父 「ところで、温度は同じだけど、もっと大きな石を水に入れたら、水の温度はどうなると思う?」

ノブナガ 「温度が同じなら、水の温度も同じなんじゃないかな?」

リコ 「いやいや、大きいほうが高くなるでしょう。」

父 「これも実験で見てみよう。」

質量による熱移動の違い
  • 大きな石で実験
  • 質量の大きな石はより水の温度を上昇させた

先ほどの石より質量の大きい石を水に入れて、温度の変化を観察します。

質量580gの石を約200℃に加熱します。
石を入れる水の質量と温度は、小さい石のときと同じく160g、約21℃です。

水と石の温度がどちらもほぼ同じになったときの温度は、約68℃でした。
質量が大きい石は、水の温度をより上昇させました。

  • 移動する熱の量は物体の質量によって異なる

リコ 「やっぱり、同じ温度の石でも質量が大きいほうが、水の温度を上げるんだね。」

父 「そうだね。高温の物体と低温の物体が触れあうと、高温の物体から低温の物体に熱が移動してやがて同じ温度になる。でも移動する熱の量は、物体の質量によって異なるということなんだ。」

母 「なんでそうなるの?」

父 「それじゃあね、こんな実験をやってみよう。」

熱平衡の仕組み
  • 温度と熱の移動のモデル
  • ペットボトルはホースでつながっている

左写真は、温度と熱の移動をわかりやすくしたモデルです。

右側の2つのペットボトルは小さい石と水を表し、左側のペットボトルは、大きい石と水を表しています。
ペットボトルの中の色水の水位は温度を表しています。
小さい石と大きい石のモデルには、200℃を表す赤い線が引かれています。

また、最初の水の温度を表す水位には黄色い線が引かれています。
どちらも低いところにあり、同じ高さで21℃を表しています。

この2つのペットボトルはそれぞれホースでつながっていますが、間に栓があり、色水の移動は止めてあります。

  • ホースの間の栓を外す
  • 色水の水位がほぼ同じになる

父 「2人とも、2つのペットボトルをくっつけてみようか。これが温度の高いものと低いものがくっついた状態だよ。ホースのあいだの栓を外してごらん。」

ノブナガ 「だんだん変わってくる。」

リコ 「じわじわと。」

ノブナガ 「あ、両方のペットボトルの水位が同じになった!」

母 「リコちゃんのほうもだんだん同じになってる。なるほどね、熱平衡っていうのは、こういうことを言うのね。」

リコ 「大きい石のほうも同じだ。でも小さい石のほうより水位が高くなっている。大きい石のほうが温度が高くなったっていうことだよね?」

  • 色水は熱エネルギーを表す
  • 熱量の保存

父 「実は、ペットボトルの中の色水は熱エネルギーの量を表してたんだ。だから温度が同じでも熱エネルギーをたくさん持っていた大きい石のほうが、水の温度をより高くしたというわけなんだね。このように、移動した熱エネルギーの量を熱量といってるんだ。」

リコ 「なるほど、質量が大きい方が、移動する熱量が大きかったんだね。」

父 「そうだよ。ところで、2つのペットボトルをよく見てごらん。色水の総量は増えも減りもしていないはずだよね。」

ノブナガ 「本当だ。色水はこっちからこっち(右写真オレンジ色の部分)に移動しただけだ。」

父 「石が失った熱量と水が得た熱量は同じだっていうことなんだね。これが『熱量の保存』ということなんだ。」

母 「つまり、全体では増えも減りもしていないっていうことなのね。」

異なる金属で熱の移動を調べる
  • 金属を加熱する
  • 同じ質量では銅のほうが温度を上昇させた

リコ 「石から水に熱エネルギーがどうやって移動するのかはわかったけど、鍋に入れるのは金属でもいいんじゃないの?」

父 「そうだね。金属についてちょっと比べてみようか。」


銅とアルミニウム、同じ体積ではどちらが水の温度を上げることができるか、調べてみます。
質量は、銅が1135g、アルミニウムは340gです。
熱が逃げにくい容器に、質量200gの水を入れます。

はじめに、銅を沸騰した湯の中に入れ、加熱します。
十分に熱が伝わったところで、銅を約21℃の水に入れます。
2分後、約46℃で熱平衡になりました。

続いて、アルミニウムも同じ温度に加熱して水に入れます。
水の質量と温度は、銅のときと同様に200gで約21℃です。
2分15秒後、約40℃で熱平衡になりました。

同じ体積では、銅のほうが水の温度を上昇させました。
これは、銅の方が熱量が大きいということなのでしょうか。

  • 質量1gあたりで比較

それぞれの金属の質量1gあたりで比較してみます(上図)。

銅は水の温度を25℃上げました。
25℃を1135gで割り、1gあたりに直すと0.02℃上げたことになります。

一方、アルミニウムは水の温度を19℃上げました。
銅の場合と同様に、1gあたりに直すと0.06℃上げていることになります。

つまり、1gあたりで比較するとアルミの方が水の温度を大きく上昇させたことがわかります。
このように、物質による水の温度上昇の違いを数値で表したものを「比熱」といいます。

物質による比熱の違い
  • 比熱
  • さまざまな物質の比熱

比熱とは、ある物質1gの温度を1K上げるために必要な熱量のことを指します。
比熱が大きいものほど、同じ温度を上げるためには、たくさんの熱量が必要だということなります。

右図の表は、さまざまな物質で比熱を調べたものです。
比熱の単位は〔J/(g・K)〕で表します。
※海水以外は25℃における比熱です。

銅は0.38、アルミニウムは0.90なので、銅よりもアルミニウムのほうが同じ温度に温めるためにより多くの熱エネルギーが必要だということになります。


ノブナガ 「反対に、銅は少しのエネルギーで温められるっていうことなんだね。」

父 「そのとおりだね。」

石の比熱を求める
  • 物質と比熱の関係
  • 石の比熱を求める

石の比熱は、どれくらいなのでしょうか。
この値は、水の比熱がわかれば求めることができます。

まずは、熱量と比熱の関係を見てみます。
左図の式から、熱量 は、質量 、比熱 、温度変化凾s にそれぞれ比例します。

ここで、水の比熱 は、4.2ということがわかっています。
この式を使って、お父さんが用意した石の比熱を求めてみます。

  • 水に石を入れる
  • 熱平衡

この石の質量は275gです。

沸騰した湯の中で加熱し、十分熱が伝わったところで、水に石を入れます。
このとき石の温度は100℃、水は200gで21.1℃です。

そして約7分後、36.2℃で熱平衡になりました。

石の比熱を求める

実験結果をもとに、mc凾s を使って、石の比熱を求めてみます。
式中の質量 は275、 は求める石の比熱なのでそのまま 、温度差凾s は63.8です。

石が失った熱量を計算すると、
275 × × 63.8 = 17545 [J]
となります。

水が得た熱量は、質量 が200、比熱 は4.2、温度差凾s は15.1です。
計算すると、
200×4.2×15.1=12684[J]
となります。

石が失った熱量と、水が得た熱量は熱量保存によって同じです。
つまり、
17545 =12684
が成り立ちます。

これを解くと、この石の比熱
=12684/17545
≒0.72[J/(g・k)]

と計算できます。

石焼き鍋に石を使う理由
  • 石は鉄や銅に比べ比熱が大きい
  • 焼き石で料理をしていたとされる

父 「今のやり方で求めた石の比熱は、0.72ということなんだね。これは、鉄や銅などの金属と比べて比熱が大きいよね。つまり、質量や温度が同じだったら、石は鉄や銅よりもたくさんの熱エネルギーを持っているということだね。これが鍋に石を使う理由の1つというわけだ。」

リコ 「でも、アルミのほうが比熱が大きいから、そっちでいいんじゃないの?」

父 「比熱だけ見ればそうなんだけど、アルミニウムは660℃くらいで溶けてしまうんだよ。でも石は1000℃以上にしてもまだ平気なんだよね。」

リコ 「へえ、そうなんだ。」

父 「詳しいことは知らないんだけど、海岸で漁師さんがたき火で熱くなった石を、とれたての魚介類を入れた木製の弁当箱に放り込んで料理していたらしいね。石のほうが手軽に手に入って経済的でしょ?」

母 「なるほどね、焼き石鍋に石が使われる理由っていうのはつまり、石の手軽さと比熱の大きさっていうことなのね。よーくわかった!」

  • お父さんのひと言
  • 次回もお楽しみに!

〜お父さんのひと言〜

熱い物と冷たい物を触れあわせると、やがて同じ温度になりますね。
これはきわめて明確な法則なんですね。
このとき、何かが移動したと考え、この何かを熱と呼んだんですね。
さらに物体の違いによって温度変化が違うということに気づき、比熱という物質による熱の個性に気が付いたんですね。
この比熱は水を基準として最初は考えられました。
水と比べて何倍という考え方なので、比熱と呼んだんですね。
個性というのは、とかく誰かを基準として比べられることがありますね。
でも、個性に絶対的な基準なんかありません。
あなた、自分自身を大切にして生きていってください。



母 「ところでお父さん、私のダイヤの指輪が見当たらないんだけど……。」

父 「あー、あれね。ダイヤモンドの比熱を調べる実験をしようと思って指輪から外してみたんだけど、戻せなくなっちゃって……。」

母 「なんですって!」

父 「だってダイヤは金属よりずっと熱を伝えやすいから、比熱はどうなんだろうって気になって……。」

母 「本当にお父さんはいつも、テーブルやお鍋を切ったりして、今度は私の大切な指輪ですか!」

ノブナガ 「またお母さん熱くなっちゃった。止めたほうがいいかな?」

リコ 「いやいやいや、焼け石に水でしょう。」

父 「まあまあまあ!お母さん、頭を冷やして!」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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