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物理基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:20〜2:40
※この番組は、前年度の再放送です。

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物理基礎

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今回の学習

第6回 第1編 物体の運動とエネルギー

落下運動を調べる 〜重力加速度〜

  • 物理基礎監修:学習院女子中・高等科教頭 増渕 哲夫
学習ポイント学習ポイント

落下運動を調べる 〜重力加速度〜

スマートフォンの不思議
  • スマホを縦向きで見る
  • 横向きにしても写真の向きは変わらない

お母さんとリコは、ノブナガにスマートフォンで写真を撮ってもらっています。
スマートフォンが縦向きのままだと写真が小さく表示されますが、横向きにすると大きく表示されました。


母 「スマホって不思議だよね。なんで縦でも横でも、写真が同じ向きに見えるんだろう。」

リコ 「スマホって、そうできてるんだよ。」

母 「それはそうだけど、私が高校生のときには携帯電話もなかったんだから!リコにとっては普通でも、私にとってはすごく不思議なの!」

父 「お母さん、その不思議いいね。なぜスマートフォンの向きを変えても写真の向きが変わらないのか、調べてみようよ。」

リコ 「きっとスマホの中にセンサーが入ってるんじゃない?」

ノブナガ 「わかった!傾きを調べるから角度センサーだ!」

父 「なるほどね。でも傾きや角度を調べるためには、その基準になるものが必要でしょ。実はスマートフォンには、加速度センサーというものがあって、これが上下を検知しているんだよ。」

リコ 「なんで加速度センサーで上下がわかるの?」

父 「加速度センサーは重力による加速度を測定しているんだよ。重力は地球の中心に向かっているから、その向きが下だというふうに基準を決めればいいんだ。」

母 「重力とか加速度とか言われても、全然わからないんだけど。」

父 「それじゃあ、重力について考えてみようか。」

母 「私はスマホのことについて知りたかっただけなんだけど、なんだか話が大きくなってきちゃったな……。」

落下運動と重力
  • 物が落ちるってどんなこと?
  • バンジージャンプ

父 「重力に関係が深い現象と言えば、落下運動でしょ。そもそも物が落ちるってどんなことだろう。」

母 「地球の重力に物が引っ張られるっていうことよね。」

父 「じゃあ、落ちているときに物体はどんな動きをしていると思う?」

リコ 「そういえばお兄ちゃん、この間のバンジージャンプはどんな感じだった?」

ノブナガ 「どんなだったって……だんだん速くなっていたようなんだけど、自分ではわからないよ。」

父 「じゃあ、このリンゴを実際に落として、その運動を調べてみようよ。」

  • 2mから落下するリンゴ
  • リンゴの等加速度直線運動

リンゴが落ちる様子を詳しく調べてみました。
約2mの高さから落としたリンゴは、0.1秒ごとに動きを止めてみると、同じ時間に落ちる距離がだんだん長くなっていることがわかります。

この実験を元にして、速度vと時間tとの関係を表すv−tグラフを作ると、一定の傾きを持った直線になります(右図)。
このような運動を等加速度直線運動といい、前回の物理基礎で学びました。


ノブナガ 「ボールが坂道を転がる運動だよね。」

父 「その斜面の角度を急にしていって角度が90°になったとき、それが落下運動だと考えればいいんだ。」


グラフからわかるように、初速度は0です。
リンゴを落とす際、最初に力を加えていないためです。
このように、重力だけによって落下する運動のことを「自由落下」といいます。

みんな一緒に落ちる?
  • リンゴとティッシュペーパーの落下実験
  • リンゴはティッシュより速く落下する

父 「ところで、リンゴとティッシュを同時に落としたら、どちらが速く落ちると思う?」

母 「そりゃリンゴでしょ、ティッシュよりもリンゴの方が重いから。」

父 「重い方が先に落ちるってこと?本当にそうなのか、実験してみようか。」


お母さんが手に持っていたリンゴとティッシュペーパーを同時に離すと、確かにリンゴの方が先に落ちました。


父 「でも、リンゴはどうして先に落ちるの?」

母 「だから、リンゴの方が重いからでしょ?」

父 「あくまで『重いから』っていうわけだね。それじゃあ、ティッシュを丸めて落としたらどうなるかな?」

どちらが速く落ちる?
  • ティッシュを丸めるお母さん
  • ほぼ同時に落下するティッシュとリンゴ

今度は、丸めたティッシュペーパーとリンゴを、先ほどと同様に同時に落とします。
すると、今度はほとんど同時に落ちました。


父 「ティッシュは丸めただけだから重さは変わっていないでしょ?でも、どうして一緒に落ちたのかな。」

ノブナガ 「そうか。ティッシュは広げた方が、空気抵抗が大きいんだ。」

父 「そうかもしれないね。それじゃ、空気がない状態で落としてみたらどうなるのかを調べてみたらいいわけだよね。」

リコ 「重さは全然関係ないの?」

母 「えー、さすがにそんなことないんじゃない?」

  • メリーさんの傘
  • 開いた傘は空気抵抗でゆっくり落下

そこで、落下速度に対する空気抵抗の影響を調べてみました。

用意したのは2つの傘のミニチュアで、質量はどちらも1円玉より少し軽い0.8gです。
2つの違いは、「開いている」か「閉じているか」という点だけです。

まずはこのミニチュアを空気中で同時に落としてみると、開いている傘の方がゆっくり落ちました。
傘が開いている方が、受けた空気抵抗が大きいためと考えられます。

  • 真空落下実験装置全景

続いて、空気をなくした状態で実験してみます。
お父さんが用意したアクリル容器の実験装置は、真空ポンプで空気を抜いてあり、ほとんど真空の状態にしてあります。

  • 電磁石で留めてある
  • 真空中では同時に落下

容器の中には先ほどの傘のミニチュアが電磁石でとめてあり、電磁石のスイッチを切ると同時に落下します。
空気抵抗がなくなったときに傘はどのように落ちていくのか、2つを同時に落として調べます。

結果は、閉じた傘と開いた傘が同時に落下しました。
同じ質量の傘は、空気抵抗がないと落ちる速さも同じです。

  • おもちゃのリンゴと鳥の羽根
  • 空気中では鳥の羽根よりリンゴが速く落下

それでは、質量が違うものでは、落ち方に違いはあるのでしょうか。

おもちゃのリンゴと鳥の羽根を、まずは空気中で落としてみます。
すると、リンゴはすぐに落ちますが、空気抵抗を受けやすい羽根はゆっくり落ちていきました。

  • 真空ポンプ
  • 真空中では鳥の羽根もリンゴも同時に落下

続いて、真空ポンプで容器の中の空気を抜いて落としてみます。

結果は、リンゴと羽根がほぼ同時に落下しました。
質量が違っても、落ちる速さは変わりません。

  • 質量の異なる木製の球
  • 真空中では質量が異なる木製の球は同時に落下

今度は、木でできた質量が違う3つの球で比較してみます。
球を真空中で同時に落としてみると、3つとも、ほぼ同時に落下しました。

  • 質量も形も違う物を真空中で一緒に落とす
  • 真空中では同時に落下

最後に、質量も形も違う物を真空中ですべて一緒に落としてみます。
結果は、すべて ほぼ同時に落下しました。


ノブナガ 「すごいね。全部一緒に落ちるんだ。」

リコ 「質量に関係なく、落ちる速さは一緒ってことだよね。」

  • 真空中のリンゴの自由落下グラフ
  • 重力加速度g=9.8m/s<sup>2</sup>

ほとんど真空にした状態での、リンゴのおもちゃの自由落下の運動をグラフにすると、左図のようになります。
グラフは直線なので、等加速度直線運動になっています。

この直線の傾きが加速度となり、計算すると約9.8m/sとなります。
ノブナガがバイクでサーキットを走行したときの加速度は2.6m/sだったので、落下の加速度はとても大きいことがわかります。

加速度が9.8m/sということは、1秒後の速さは9.8m/sです。
2秒後、3秒後にはその2倍、3倍にもなり、わずか3秒で時速100kmを超えることになります。

また、先ほどの実験からもわかるように、自由落下の加速度はどのような物体でも同じで、9.8m/sになります。
この自由落下のときの加速度を「重力加速度(gravitational acceleration)」と呼び、記号「g」を使って表します

落下運動を式で表す
  •  等加速度直線運動の公式
  •  自由落下運動を求める公式

自由落下の運動を式で表してみましょう。

自由落下は等加速度直線運動なので、左図の「速度」を表す式と「移動距離(変位)」を表す式がそのまま当てはまります。

この運動では初速が0なので、vは0となって、消えます。
加速度aは、重力加速度なのでgとします。
移動方向が縦方向になるので、移動距離xはyとします。
こうして導いたものが、自由落下のt秒後の速度と、落下距離を表す式です(右図)。
自由落下の速度は「v=gt」、落下距離は「y=(1/2)gtになります。

このとき、落下速度vは時間tに比例していて、落下距離yはtに比例しています。
gは重力加速度で、値は9.8m/sです。

重力加速度の地域的違い
重力加速度の地域差

自由落下の加速度は、いつでもどのような物体でも9.8m/sと考えます。
しかし、厳密には地域によって少し異なります。

世界各地の重力加速度を見比べると、北極や南極に近い方が数値が大きく、赤道付近は小さくなっています。
これは、北極や南極では地球の重力が強く、赤道付近では弱いためです。

  • 重力加速度が変わるのは自転の遠心力

地球は、北極と南極を結ぶ地軸を中心として回転する「自転」をしています。
北極や南極に比べ赤道の方が地軸から遠いため、強い遠心力が生じます。
するとこの遠心力が、地球の中心に向かって引く重力を弱める働きをして、結果として重力加速度が小さくなります。

  • 赤道ダイエット?
  • 体重計の地域設定

ノブナガ 「じゃあ重力加速度が小さくなると、どんな影響があるの?」

父 「それはね、少し物が軽くなるっていうことかな。」

母 「じゃあ、赤道近くに行くと、体重が軽くなるってこと?」

父 「そう。」

リコ 「それって、赤道ダイエットってこと?」

母 「そうか、この間北海道に行ったとき、なんか動きたくないなって思ったのは、体重がちょっと重くなったからなのかな?」

父 「確かに沖縄に比べて北海道の方が少し体重が重くなるかな。とは言っても、大人でせいぜい100gくらいなんだけどね。だから、体重計には地域設定という機能がついているものもあるんだよ。」

リコ 「どんなふうに地域設定してるの?」

父 「地域としては『北海道』の地域、『沖縄』の地域、そして『九州・四国・本州』の地域に分けて設定できるんだよ。」


日本国内でも

札幌:9.805m/s
東京:9.798m/s
沖縄:9.791m/s

のように、重力加速度に地域差があります(右図)。

加速度センサーの仕組み
  • 重力加速度を表示する加速度センサー
  • 傾けると重力加速度は小さくなる

父 「ここまで来れば、スマホが加速度センサーで上下を検知している仕組みが、ある程度想像できるんじゃないかな?」

ノブナガ 「重力加速度を検知するセンサーなんだよね。」

父 「そう。このスマホの、加速度センサーの働きを見るアプリの情報を見てみると、縦に置いたら重力加速度の9.8m/sを表示しているだろ。」

リコ 「本当だ。」

父 「このスマホは縦方向の加速度を調べているから、本体を傾けていくと数値が、どんどん小さくなっていくだろう。つまり、重力加速度がかかる方向から、スマートフォンがどんな角度にあるのかを検知して、上下を調べてるんだよ。」

リコ 「重力はいつも地球の中心に向かって働いているんだもんね。」

母 「スマホが地球の重力を感じてるなんて全然知らなかった。」

  • 加速度センサーの仕組み ばねとおもり
  • 傾けるとばねとおもりが変形する

スマートフォンの加速度センサーの仕組みを見てみましょう。

加速度センサーは、ばねと動くおもりからできていると考えてください。
本当はもっと複雑ですが、基本的にはこのような構造になっています。

スマートフォンを傾けるとそれぞれのばねが変形し、その変形によって傾きを測定し、スマートフォンの向きを検知します。

  • お父さんのひと言
  • また次回!

〜お父さんのひと言〜

重い物の方が速く落ちる、それは常識なのでしょうか?
今日の学習では、重い物も軽い物もみんな一緒に落ちるということを知りました。
でも、これは物理学の常識なのでしょうか?
すべての物がみんな一緒に落ちるのはなぜか、それは物理学の深遠な謎なんです。
常識だからといって人の意見を排除しないでください。
あなたの目をさえぎっている常識の壁の向こうには、多様性を認める世界、そして真理を求める広い世界が広がっているんです。



それでは、次回もお楽しみに!

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