Eテレ 春・夏・冬特別講座放送
※この番組は、前年度の再放送です。
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第23回
今回は、こちらの問題からスタートです。
電車やバスが発進したり走行中の電車が止まったりするときに、がくんと倒れそうになる、という経験はないでしょうか。
では、電車が発進するとき、乗っている人の体は、どちらに傾くでしょうか。
里奈 「私は進行方向に倒れると思います。」
彩加 「自分は一瞬逆方向に傾いて、進行方向に倒れると思います。」
二千翔 「足だけ持っていかれて、体はその位置のままにあるので、電車の進行方向と逆に行くと思いました。」
田畑 「なるほどね。普段、経験してはいますが、改めて考えると不思議ですね。」
体はどちらに傾くのか、実験してみました。
実験に使ったのは、川村先生のオリジナルの器具「電車のふしぎ」です。
人に見立てた人形やつり革の動きで、電車が急発進したときの様子を観察できます。
ロープで引っ張って、電車の模型を急発進させてみます。
電車が急発進すると、つり革も人も進行方向とは逆に傾きました。
スローモーションで見てみると、つり革は斜めになり、人も進行方向とは逆に傾こうとしています。
さらに加速すると、つり革も人も大きく傾きました。
急発進した電車の中で立っている人はその場にとどまり続けますが、足は電車と一緒に動きはじめるため傾いてしまうのです。
物体の運動では、「何らかの力を受けなければ、静止している物体は、静止し続けようとする」という性質があります。
これを慣性の法則といいます。
そして、「何らかの力を受けなければ、運動している物体は、そのままの速さで等速直線運動を続ける」という性質もあります。
よって、「体は進行方向とは逆に傾く」と答えた、二千翔ちゃんが正解でした。
「静止している物体は、静止し続けようとする」という法則を、テーブルクロス引きで体感してみます。
キュピトロンの3人には、缶が倒れないように、テーブルクロス引きにチャレンジしてもらいます。
これも先ほどの運動の性質を利用しています。
まずは、藤本チーフがお手本として実際にやってみました。
すばやい動きでテーブルクロスを引くと、見事テーブルの上の缶を倒さずにテーブルクロスを引き抜くことができました。
次は彩加ちゃんが挑戦してみます。
しかし、彩加ちゃんがテーブルクロスを引くと、缶は倒れてしまいました。
失敗です。
里奈 「ひょっとして、藤本チーフは何か、ずるをしていませんか?」
田畑 「失礼な!」
藤本 「僕は、科学的な知識を使って成功させたのです。科学的な知識というのは、実は僕の缶には、コーヒーが入っていたのです。そして、みんなの方は空っぽでした。つまり、みんなの缶よりも僕の缶のほうが重かったのです。」
彩加ちゃんが2つの缶を持って比べてみると、重さが全然違いました。
実は、テーブルクロス引きは『静止した物体は、静止し続ける』という特徴を使った芸です。
そして、静止した物体が重いほど、動きづらいという性質があります。
コーヒーが入った缶で、彩加ちゃんが再挑戦してみると、今度は成功しました。
次は、少し条件を変えて、コーヒーの入った缶を3つに増やして実験してみました。
さっそく里奈ちゃんが挑戦してみますが、失敗に終わります。
続いて、藤本チーフが挑戦してみると、こちらは成功です。
藤本 「僕が成功して、里奈ちゃんが失敗した理由は何だと思いますか。」
彩加 「里奈が倒した缶は全部前に倒れているから、テーブルクロスを引くあんばい?」
藤本チーフはなぜ成功したのでしょうか。
食器を落とさずに、下の布だけ引き抜く実験を行いました。
大きなテーブルに350枚の食器やリンゴを並べて挑戦しました。
テーブルクロスは、縦横約10mです。
このような大きな布を、どうすれば引き抜けるのでしょうか。
まずは自転車につないで、テーブルクロスを引いてみましたが、大失敗です。
このときの自転車の速度は、時速27kmでした。
どうやら勢いが足りなかったようです。
次に、レーシングカーを用意しました。
大きなフックで、テーブルクロスからのロープを車につなぎました。
引っ張るロープの長さは、約180mです。
これは、車を加速させ、勢いをつけるためです。
今度は大成功です。
リンゴや食器はほとんど動かずに、その場に残っています。
引っ張った車の時速は140kmです。
成功したポイントは、引き抜く “スピード” でした。
3本の缶のテーブルクロス引きでも、藤本チーフが成功したのはテーブルクロスを引くスピードが速かったからでした。
ここで、ガリレオ先生こと、川村康文先生(東京理科大学教授)に詳しく解説していただきます。
先ほどのテーブルクロス引きでは、重さやスピードの他にも、さまざまな物理的な要素が入っていました。
色水が入った2つのペットボトルがあります。
ペットボトルいっぱいに水が入った方は重心が高く、それに比べて、半分までしか入っていない方は重心が低いことが分かります。
二千翔ちゃんが、この2つのペットボトルでテーブルクロス引きをしてみます。
まずは、色水がいっぱいに入ったペットボトルで挑戦しますが、失敗です。
続いて、色水が半分まで入ったペットボトルで挑戦すると、今度は成功です。
ペットボトルは倒れず、テーブルの上で安定しています。
川村先生 「半分にすると、水をいっぱいに入れた状態に比べて重心が下がり、安定します。だから、より動きにくくなるのです。その他にも、置いたモノと、布の面との状態によって摩擦も関係してきます。」
慣性の法則を使ったテーブルクロス引きを、みなさんもいろいろ試しながら、体感してみてください。
最後に、たくさんの缶を乗せてテーブルクロス引きに挑戦する二千翔ちゃん。
惜しくも1本だけ倒れてしまいましたが、かなりコツをつかんだようです。
それでは、次回もお楽しみに〜!
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