NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第30回 衣生活

服を着るのはなぜ?

  • 監修:お茶の水女子大学附属高等学校教諭 葭内ありさ
学習ポイント学習ポイント

服を着るのはなぜ?

今回のテーマは「服を着るのはなぜ?」
  • さとし
  • 英

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回からは「衣生活」を取り上げます。現役高校生の、さとしさん(高3)、英さん(高1)と話していきましょう。

りゅうちぇる 「高校生の二人は、ファッションについてのこだわりやポイントなどあるのかな?」

さとし 「僕はどっちかというと…、落ち着いた色合いで、周囲に溶け込む(ような感じの)…」

りゅうちぇる 「なるほどね!」

さとし 「やわらかい印象になればいいなと思って。あまり色が(派手じゃ)ないようなものが好きですかね。」

りゅうちぇる 「そうなんだね。」

英 「私は、あんまり(ファッションに)こだわりはなくて、マネごとみたいな。自分のものじゃないというか、みんなに合わせていって、なんとか頑張っている、みたいな。」

りゅうちぇる 「そうか。(英ちゃんは)まだ“こういう服が着たい”というこだわりを見つける段階っていうところなのかな。きょうは、みんなと一緒に改めて考えたいことがあります。」

今回のテーマ 「服を着るのはなぜ?」

りゅうちぇる 「服を着る理由なんてわざわざ考えることないかもしれないけど、実は、服は生活を支えるさまざまな役割を担っているんです。」

3つのポイントは「服を着る理由」「服を選ぶ」「エシカルファッション」
自分らしい服を、自信を持って選べるようになりましょう!

服を着る理由
  • チュクチ族
  • トナカイの毛皮から手作り

そもそも、なぜヒトは裸ではなく、服を着るようになったのでしょうか?
その理由を、世界各地の民族衣装からひもといていきましょう。

ロシア・シベリアの東、氷点下50℃にもなる「チュコト半島」。
ここでトナカイとともに、遊牧生活をする人々がいます。少数民族の「チュクチ族」です。
厳しい寒さから身を守るための服は、トナカイの毛皮から手作りします。

  • 大きめに作られている
  • 寒い土地で命を守る知恵

服は、大きめに作られています。
服と体の間に空気の層を作ると、体温で空気があたためられて保温のはたらきをするからです。
襟や袖には冷たい外気が入り込まないよう、毛皮のボアをつけてがっちりガード!
寒い土地で命を守る知恵です。

  • インド
  • ひだを入れて着る

続いて、「インド」。多くの女性たちが着ている「サリー」は、高温多湿のインドならではの機能的な民族衣装です。
サリーは、長さ5メートルほどの縫い目のない一枚の布からできています。
ポイントは、お腹から足首までひだを入れてゆったり着ること。
歩くたびに広がった裾から空気の入れ替えが行われ、下半身の熱と湿気が排出されます。
さらに、上半身は首や背中が大きくあき、熱を放出しやすくなっています。

  • アラブ首長国連邦
  • カンドゥーラ

ところ変わって、西アジアの「アラブ首長国連邦」。
男性が着ている白い服は、「カンドゥーラ」と呼ばれる民族衣装です。
袖は長袖、丈はくるぶしをも覆うほどの長さで、肌を露出していません。
この形には、ある理由が!

  • 紫外線や砂嵐から身を守る
  • 首元がぴったり

アラブ首長国連邦は一日の寒暖差が大きい砂漠気候。
昼間の強い紫外線や砂嵐から身を守るため、全身を被服で覆う必要があるのです。
首元がぴったりとしているのは、夜間の防寒と、砂が入り込むのを防ぐためです。

服は、健康や安全を維持するうえで不可欠なものなのです。

  • 被服
  • 被服の保健衛生的機能

さとし 「各地で違った伝統的な衣装があるとは知っていたんですけど、『(防寒などが)ちゃんと考えられてるんだ!』という発見がありました。」

りゅうちぇる 「そうだよね。衣服だけでなく、帽子や靴など、体を覆うものをまとめて「被服」といいます。」

被服の機能には、
1.体温調節を補助する機能
2.紫外線や害虫などから身体を保護する機能
3.生活活動への適合。運動する時にスポーツウェアを着るなど、被服にはさまざまな活動をしやすくする機能があります。
この3つをまとめて、被服の「保健衛生的機能」といいます。

  • 被服の社会的機能
  • 渋谷でファッションショー

りゅうちぇる 「でも、被服の機能はこれだけではありません。ほかにも『社会的機能』があります。この社会的機能の中でも、僕が一番大事だなと思うのが『自分らしさを表現する(自己表現)』機能です。ということで、ぜひみんなに見てもらいたいファッションショーを紹介しますよ〜。」

若者文化の中心地 東京・渋谷で、りゅうちぇるさんが初めてプロデュースしたファッションショーが開かれました。
服はすべて「古着」です。
(りゅうちぇるさんは)モデル一人ひとりと話し合って、服を選びました。

  • 2歳のモデル
  • りゅうちぇるも登場

なんと2歳のモデルまで!
りゅうちぇるさんは、年齢や性別、肩書きなどでファッションを決めつけられていた人や、おしゃれをあきらめていた人にこそ、このショーを見てほしいと考えました。

りゅうちぇるさん自身も、古着を着て出演。イメージしたのは、渋谷に迷い込んだマイケル・ジャクソン!

  • オンリーワンの個性を表現する
  • 本当になりたい自分

古着にこだわる りゅうちぇるさん。
一点ものが多い古着は、オンリーワンの個性を表現するのにぴったりなんだって!

りゅうちぇる 「人とかぶらない、『この人しかいない』というのは自分の武器になると思う。『本当になりたい自分』というのを、みんなが抱えながら生きていると思うんですね。服がそれを実現してくれる。僕はそういう経験があったので。だからこそ、みなさんにはそういう肩書きをとっぱらって、『自分で好きに肩書きを作って、自分の好きな服を着ていいんだよ』というメッセージをこめるために、いろんな方に出ていただきました。ほんとに楽しかった、達成感がすごかったです!」

  • 解き放って見えた
  • 個性を表現

さとし 「(ショーに出ていた人)それぞれが、自分が着たい服を着て、解き放っているじゃないですけど、“服を着る楽しさ”が見えたような気がしました。」

英 「服と人が分離していない、人と服を含めて人として見れるというか…。服が生きているみたいな。みんな、いきいきしているからステキだなって思いました。」

りゅうちぇる 「僕がテレビに出はじめたばかりの時は、ヘアバンをしてナイロンジャケット、カラータイツ、厚底の靴、ルーズソックスみたいな、自分で決まりごとがあったの。でも、あの服を着ていないと、みんなに覚えてもらえなかったんじゃないかなって思うし、自分の個性を表現することで、自分の生き方も自分で選べるようになれるんじゃないかなって思うんだよね。服にはそんな力があるし、パワーがあるんだよなって思うし、信じているんだよね。」

服を選ぶ
  • 服を買う時のチェックポイント
  • あまり考えない

ここからは、実際にどうやって服を選んだらいいのか考えていきましょう。

まずは、服を買う時のチェックポイントを見てみます。
・サイズ ・デザイン ・素材
・価格 ・手入れのしやすさ
・縫製(ほうせい)の技術
・生産の背景


英 「縫製の技術や生産の背景とかって、こう聞くと『あるんだよな』って思うけど、買う時にはあんまり考えてないですね。」

高校生の二人は、あまり気にしていなかった「縫製の技術」や「生産の背景」。
意識してみたら、違う世界が見えてくるかも!

  • スイス・チューリッヒ
  • 及川さん

日本の技術や知恵が、海外で高く評価された例を紹介します。

2013年9月、スイス・チューリッヒで着物の知恵を披露するイベントが行われました。
40年間 着物の仕立てをしてきた和裁のスペシャリスト 及川 マサ子さん、東日本大震災で甚大な被害を受けた、岩手県陸前高田市からやってきました。

  • くけ縫い
  • 着物を縫うところを初めて見た

及川さん 「これは『くけ縫い』という和裁の技法です。」

「くけ縫い」とは、折った布の間に針を入れて縫う方法。表からは糸が見えません。
ミシンではできない技です。

(スイスの女性) 「着物を縫うところを初めて見られて、とてもうれしかったです。」 

  • 東北グランマ
  • カズさん

及川さんは、陸前高田市で東日本大震災の半年後に結成された“東北グランマ”のリーダーです。
メンバーはみな仮設住宅で暮らしながら、得意の和裁でわずかな収入を得ていました。

そんな“東北グランマ”の活動を後押ししたいと、スイスからやってきたのが、カズ・フグラーさん。世界的に注目されるファッションデザイナーです。

  • 着物生地
  • しばらくは横になりたかった

カズさん 「生地もいろいろあったんだけど。」

(東北グランマメンバー) 「わあ〜懐かしい!」
 
カズさん 「懐かしい!?」

カズさんは、この地域に息づく伝統の和裁の技術を守り、支援したいと考えました。
津波で自宅を流され、和裁の道具も着物もすべてを失ってしまった及川さん。

及川さん 「しばらくは、ひまさえあれば横になりたかったね。」

  • 針刺しを作る
  • 完成した針刺し

カズさんとの出会いによって、及川さんは 自身が持つ(和裁の)技術をもう一度、見つめ直しました。
カズさんは、地元の着物の生地を使って針刺しを作り、スイスで売ることを提案。
及川さんたちは、300個の針刺しを作り上げました。どれも、柄の異なる1点ものです。

果たして、スイスの人たちの反応は…
値段は約2500円、物価の高いスイスでも、ちょっとお高め。
でも、品質の高さが認められ飛ぶように売れていきます。

  • ピエールさん
  • 日本の伝統の柄をいかしたバッグ

さらに老舗デパートでは、新商品を提案。日本伝統の柄をいかしたバッグです。

デパート広報担当 ピエール・クーンさん 「細かい部分がとてもいいですね。もっと大きいサイズでも作れますか?」 

及川さん 「大丈夫です。」

  • ビジネスの将来性を感じた
  • 世界に広がるように

ピエールさん 「日本の美しい布とその高い技術に、ビジネスとしての将来性を感じます。」 

及川さん 「スイスにお招きされるなんて夢みたいでした。土踏んでも、ここ本当にスイスなのかなって。そしたら、仕事をやる気力が出たんですよ。ひとつひとつを丁寧にやるということを基礎として、これからもよい仕事をたくさん、世界に広がるようないっぱいのお仕事をいただきたいと思っているんですけれど。」

高い技術と丁寧な仕事が、東日本大震災から復興する大きな力となっています。

  • スタジオの様子
  • SDGsの目標12

英 「仕事があることで生きる活力になっていて、それが伝統を守ることにもつながっているのは、すごく素敵だなって思った。東日本大震災で傷ついた人がたくさんいるじゃないですか。私、すごく小さかったので(東日本大震災のこと)あまり覚えていなくて。だけど、ちゃんと世界は進んでいるんだな、私も進まなきゃなって思いました。」

さとし 「僕は、生産の背景を知ることによって、もの(服)についての愛着が今までと違ったふうにわくのかなって思った。」

りゅうちぇる 「生産の背景を改めて知って服を購入することは、家庭総合でずっと学んできているSDGsの目標12『つくる責任 つかう責任』の達成にもつながるんですよね。誰が作ったのか、どうやって作られたものなのか、服を選ぶときもしっかり念頭に置いて買い物できたらいいですよね!

エシカルファッション
  • エシカルファッション
  • 葭内先生

りゅうちぇる 「以前も“エシカル消費”について取り上げたんだけど、覚えてるかな?」

英 「エシカルは、“倫理的、道徳的な”って意味でしたよね!?」

りゅうちぇる 「そう!『エシカルファッション』は、素材選び・生産・販売、そして処分にいたるプロセスまで、人と地球環境に配慮して作られたファッションのことです。」

ここからは、番組の監修を担当する、お茶の水女子大学附属高等学校 教諭、葭内(よしうち)ありさ先生と一緒に考えていきましょう。

りゅうちぇる 「学校の授業では、エシカルファッションのことをどんなふうに教えているのですか?」

葭内先生 「ファッション産業は環境への負荷がとても大きくて、“気候変動” “服の大量廃”そして“動物への配慮”など、たくさんの問題があります。
授業ではさらに、“開発途上国で子どもたちや大人が過酷な労働を強いられている現実を知る”ことや、“日本の伝統と最新技術を生かした染色を体験する授業”、“企業とコラボして商品開発”などを行いながら、エシカルファッションについて考えてきたんです。」

  • 葭内先生の授業
  • 河村さん

葭内先生の学校の、2年生の授業にお邪魔しました。
それぞれがアイデアを盛り込んで、エシカルな服づくりに挑戦しています。

環境を守るために、天然素材を使って服を作りたいと考えていた 河村 陽さん。
昔、お母さんが幼稚園に持って行くグッズを作るために、専門店で買ってくれた麻の布をリサイクルすることにしました。

河村さん 「私の肌(が弱いこと)を考えてくれて、(母が)買ってくれた麻なので、思い入れがありますね、この布は。ものをもらう側だった私が、この布で作っているので、お母さんの苦労とかがしみじみと伝わってきながら、作っています。」 

  • 藍染め
  • たまねぎ染め

日本に古くから伝わる伝統技術を学び、染めものにチャレンジした人も!
藍染めをはじめ野菜や花で染めるなど、化学染料を使わず天然素材で染め、環境に配慮しました。

  • タナローン生地
  • 田中さん

生産の背景に気付いた人もいます。
田中 菜織さんが縫っているのは、おばあさんが昔イギリスで買った布。
調べると「タナローン生地」と呼ばれる布でした。
この生地の原料は、アフリカ・エチオピアのタナ湖周辺で作られた綿花。
アフリカの綿花栽培は、児童などの過酷な労働が問題となっているとわかりました。

田中さん 「綿花(栽培)がどういう事情にあるのか深くは知らなかったので、知るきっかけになりました。」

  • 高校生が作った服
  • エシカルを意識することが大事

エシカルな服作りを通して、自分と人や自然とのつながりをあらためて意識した高校生のみんな。
長く大切にしたい、お気に入りの一着ができました!

英 「藍染めもやったことはあるけど、エシカルという言葉を知らなかった。エシカルって、その背景やこれは伝統的なことなんだとか、そういうのを意識してやっていくことが大事なんだなと思いました。」

葭内先生 「まずは、何かエシカルなことに1つ興味を持って調べてみたり、どんな工夫が自分でできるかを考えてみたりしてほしいんです。」

  • さとしの感想
  • 自分がどう生きたいか服で表すこと

りゅうちぇる 「今回は、二人はどんなことを感じたかな?」

さとし 「その服から生産者の背景を知る・考えるというのは、想像もしなかったので、新しい楽しみを知ることができたなと思います。」

英 「私は、『生産者の気持ちも考えたうえで選んだ服を着るんだ』ということがあるだけで、自分のファッションが自分色になれる、自分のファッションに自信が持てるんじゃないかな(と思った)。」

葭内先生 「見た目がよいだけではなくて、地球も誰も傷つけていない服を着ることは、自分がどう生きたいかを服で表すことになります。ファッションのパワーで、自分も、周りも、地球も元気にしていきたいですね。」

りゅうちぇる 「エシカル消費のこととか、自分が着たい服を選ぶ力、意識みたいなものを身に付けていれば、服について、とても楽しみながら生きていけるんじゃないかなって思いました。」


それでは次回もお楽しみに!

【第30回 服を着るのはなぜ?】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第30回 ポイント1
  • 家庭総合 第30回 ポイント2
  • 家庭総合 第30回 ポイント3

1:服を着る理由
被服には、伝統的な暮らしの知恵があります。

2:服を選ぶ
生産の背景を知ると、服選びの幅が広がります。

3:エシカルファッション
人や地球環境に配慮した「エシカルファッション」を楽しみましょう!

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