NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第25回 特別

日本の食と世界の食

  • ゲスト:料理人 田村 隆 
    監 修:横浜国立大学教授 堀内 かおる
学習ポイント学習ポイント

日本の食と世界の食

今回のテーマは「日本の食と世界の食」
  • 和食
  • 太哉と絢音

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

いま、日本では、フレンチ、イタリアン、中華、エスニックなど、世界のいろんな料理を楽しむことができます。
その中で「和食」は、2013年に「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました。
世界各地で日本食レストランが急増していて、“和食ブーム”が起きています。

今回のテーマは「日本の食と世界の食」、現役高校生の、太哉さん(高3)、絢音さん(高1)と一緒に、和食、そして世界の食には、どんな特徴があるのか話していきましょう。

3つのポイントは、「和食の知恵」「ふるさとの味とは?」「世界の食文化」です。
「和食」がどうして世界に認められたのか、その魅力に迫ります。

和食の知恵
  • 花脊
  • 自然とともに生きる暮らし

和食には、自然の恵みをおいしくいただく知恵があります。
いまの時期、そして、これからの季節、秋や冬の味覚といったら、何を思い浮かべますか?

京都北部にある小さな集落、「花脊(はなせ)」。
この集落では、昔ながらの“自然とともに生きる暮らし”が、いまも大切に受け継がれています。

  • 中東さん
  • 柴栗

老舗旅館の4代目当主、中東 久人さんは、自ら集めた自然の恵みを使って、料理に腕をふるいます。
秋の楽しみといえば、甘くて栄養たっぷりの「柴栗(しばぐり)」。
イノシシやシカも柴栗が大好物、たっぷり食べて冬越しします。
そのため、柴栗拾いは動物たちとの競争です。
実の入っているものはなかなか見つかりません。

中東さん 「(柴栗が)落ちてる 落ちてる。」

中東さんが、柴栗をようやく見つけました。
木から落ちたばかりのイガが狙い目です。
おいしいけれど、苦労しないと手に入らない、貴重な山の幸です。

  • 料理をする中東さん
  • 準備完了した柴栗

集めた柴栗で、栗ごはんを作ります。
まずは、渋皮を取ります。
渋皮があると食感が悪い上に、アクでごはんが赤くなってしまいます。
一時間かけて、丁寧に下ごしらえをして、ようやく準備完了です。

  • 意味のあるものを食べたい
  • 柴栗ごはん

中東さん 「秋になったら こういうものを食べて、イノシシとかシカが冬を越すわけじゃない。すごい栄養があるんですよ。だからやっぱり、きちっとその季節 その季節、意味のあるものを食べていきたいですよね。」

天然の柴栗は、味が濃くホクホクとして、奥深い甘さがあります。
市場にはほとんど出回らない、山里ならではの“ごちそう”です。

  • 野付半島
  • 極寒の世界

一方こちらは、北海道東部、オホーツク海に細く伸びる、野付(のつけ)半島。
冬は、氷点下20度を下回ることもある極寒の世界。

  • 氷下待網漁
  • コマイ

この寒さをいかし、明治時代から続いている伝統の漁があります。
氷に穴をあけ、海の恵みをいただく、その名も「氷下待網漁(こおりしたまちあみりょう)」。
カレイなどにまじって獲れるのが、「コマイ(氷下魚)」です。
漢字で“氷の下の魚”と書く理由は、この伝統の漁に由来しています。

  • ゴダッペ漬け
  • 斉藤さん

漁師の妻の 斉藤 鈴子さんは、白身魚らしいうま味をいかした、コマイの一品があるといいます。

斉藤さん 「これは『ゴダッペ漬け』といってコマイの小さい魚。」

小屋に保存して、少しずつ食べるのだそうです。

斉藤さん 「この冬の時期、雪深いときなんかは家から出られなくなっちゃうから、こういうふうに(コマイをゴダッペ漬けにして)蓄えておくと、好きなときに持って行って食べられる。食卓にあげて食べる。」

  • コマイのルイベ
  • 皮がむける

さらに、北海道の身も凍る寒さを逆手にとり、この時期だけのとっておきの食べ方があります。一晩外に置くだけ(でできる)、コマイのルイベです。

斉藤さん 「(コマイの)皮がこう(簡単に)むけるの。しばれてる(凍っている)から。生のうちは、これ(皮むき)できないですけど。」

  • 凍ったままの刺身
  • おいしい

凍ったまま食べる刺身・ルイベは、アイヌ民族から伝わりました。
口に入れた瞬間にトロ〜っと溶けだし、コマイのうま味が広がります。

斉藤さんの孫 悠人くん 「おいしい!」

コマイは、野付の厳しくも豊かな自然が育む、冬の宝です。

太哉 「その場所でとれたものをそこで食べるっていうのは、やっぱり最高の贅沢だなと思ったし、絶対おいしいだろうなと思う!」

りゅうちぇる 「そうだよね。」

  • 田村さん
  • 和食の特徴

ここで スペシャルゲストの登場です!
日本の古くからの暮らしや文化に詳しく、それを料理にいかして伝統を引き継いでいる、日本料理店 3代目、 料理人の田村 隆さんです。

りゅうちぇる 「田村さん、和食の特徴というと、どんなことがあげられるでしょうか?」

田村さん 「北海道から沖縄まで、長い土地にいろんなもの(食材)が(豊富に)できる。そして、四季があるということですよね。

りゅうちぇる 「四季があるからこそ、“旬”の食材も生まれますしね。」

田村さん 「そうですね。“旬”ってやっぱり、一番おいしいの。安くておいしい。栄養が一番ありますからね。

りゅうちぇる 「(旬は)栄養も、やっぱり高いんだ。」

田村さん 「(旬は栄養も)一番多いです。(旬は)最高だよね!」

りゅうちぇる・絢音 「最高です!」

  • サツマイモ
  • 紅葉した葉のようなサツマイモ

和食の特徴は、“旬”の食材を使うことだけではありません。
田村さんに、季節を演出する、とっておきの技を見せてもらいましょう!
サツマイモも田村さんの手にかかれば、あっという間に 黄色く紅葉した葉があらわれました!

  • カブ
  • 菊かぶら

こちらは3cm角に切ったカブ。
田村さんがこのカブに思い描いているのは、秋の野に咲く可憐な菊の花です。
塩水に漬けること30分。
しんなりしたら、水気をよく絞り、甘酢に漬け込んで味をなじませます。
“菊かぶら”、食卓がぱっと華やぐ一品です。

  • 田村さんの料理
  • 季節感を演出する

東京で生まれ、都心に店を構える田村さん。
あこがれの田舎の原風景、“秋の庭”を料理で表現しました。
味だけでなく、五感で料理を楽しませることが、和食の神髄だといいます。

田村さん 「自然の中とはまた違う、ビルの中で生活しているところで、ちょっとでも、一時でも季節感を味わっていただく、秋を味わっていただく。(季節感を)演出するというのは僕ら(料理人)の仕事だと思っているんですね。」

絢音 「(田村さんの作った料理は)すごく美しい、ひとつの作品みたい。びっくりしました。」

  • お座敷
  • 和食とは

りゅうちぇる 「和食の料理人は、海外のお客様などに日本の文化を伝える役目も果たしているんですね。」

田村さん 「そうですね。お座敷に入ったら掛け軸があったり、花が飾ってあったり、そこで亭主がお客様をおもてなしするっていう。だから、桜の時期は桜の器を使ったり、今の時期(秋)は赤いもみじの器を使ったりするけど…、倉庫が(物が多くなってしまって)大変なんだよ。」

りゅうちぇる 「和食は、自然を敬い、感謝する心が生んだ食文化なのだなと、(田村さんの)お話を聞いて思いました。」

  • 年中行事と行事食
  • 行事食食べてない

季節折々の行事に、決まって食べるのが「行事食」
例えば、
3月3日 桃の節句には、春の味覚 はまぐりのお吸い物。
5月5日 端午(たんご)の節句には、かしわ餅。
9月〜10月にある 十五夜には、月見だんご。
1月1日 元旦には、お雑煮。
みなさんの家では、こうした「行事食」を楽しんでいますか!?

太哉 「いや、全然(行事食を食べていない)。元旦だけは、餅(お雑煮)を食べますけど、十五夜やかしわ餅とかはやらないですね。」

りゅうちぇる 「わりと大人になると(行事食を)忘れがちになる日本人が多いのかなと思った。このように、季節の行事と食事が 密接に結びついていることも、和食の特徴なんですね。」

田村さん 「やっぱり(2013年に)ユネスコが和食を無形文化遺産と認めたのは、『日本の大事なものを、日本人が忘れないようにしなさいよ』『日本人がんばれよ』と、日本じゃない ほかの国の人たちが言っているような、僕はそういう言葉に聞こえるんですよ。」

りゅうちぇる 「確かに。」

ふるさとの味とは?
  • 沖縄そば
  • うらやましい

日本各地に、その土地ならではの「ふるさとの味」があります。

りゅうちぇる 「二人の地元に伝わる郷土料理、ふるさとの味はあるかな!?」

太哉 「いや…なんだろな…」

絢音 「自分の住んでいるところの郷土料理って、知らないかもしれないです。聞いたこともない。」

りゅうちぇる 「僕のふるさとの味は、やっぱり“沖縄そば”。『よし!東京でがんばるか』って、魂をふるわせてくれるみたいな、すごい元気が出る料理だから。」

太哉 「いいですね。『ふるさとの味はこれ!』って(自信もって)言えて。」

絢音 「うん、うらやましい。」

田村さん 「うらやましいなあ。」

りゅうちぇる 「でも、沖縄に住んでいたときは、『また沖縄そば?』みたいに(思っていた)。東京に来て、(沖縄そばの)よさに気付きました。やっぱり“ソウルフード”って、いいですよね。」

いまは交通や流通の発達によって、どこでも 何でも食べられるようになったことや、地域の高齢化などが進んだことにより、「ふるさとの味」がなくなりつつあります。
そんななか、ふるさとの味を守ろうと立ち上がった高校生がいます。

  • 石川県金沢市
  • かぶら寿司

石川県金沢市。古くからこの町で受け継がれてきた郷土料理があります。
代表的な冬の味覚です。
カブにブリを挟み、米麹で乳酸発酵させて作る「かぶら寿司」と呼ばれる漬け物。
いま、家庭で作る人は少なくなっています。

  • 鹿西高校家庭部
  • 近江さん

ふるさとの味を将来に残したい。
石川県立鹿西(ろくせい)高校の家庭部が立ち上がりました。
地域で“かぶら寿司作りの達人”として知られる、近江 節子さんから作り方を教わり、レシピ化しようというのです。

近江さん 「もういっぺん 塩入れて。(塩の入れ方が)やさしいなあ。もうちょっと入れよう!」

  • はかりで量ったことがない
  • 麹も手作り

近江さん 「20年ほど かぶら寿司を作っているけど、(材料を)はかりで量ったためしがないんです。」

高校生は、使う塩の量を調べるため、最初に用意した量から減った分を計測することに。
また、発酵させるために使う甘糀(あまこうじ)は、地元で栽培された米を使って自分たちで手作りしました。

  • レシピの完成
  • 上野さん

カブに挟むのは、サバとサーモン。
何度も試作を繰り返すこと3か月。ついにレシピを完成させました!

近江さん 「子どもさん(高校生)なりの手のかけ方で、上手にやってくださったなあと思って。子どもさんを誇りに思っています。」

レシピを作った 上野 友莉さん 「かぶら寿司を食べたことはなかったんですけど、近江さんのかぶら寿司を食べてみたらすごくおいしくて、いろんな地域の人に(かぶら寿司を)広めていけたらなと思っています。」

  • かぶら寿司はどんな味
  • かぶら寿司食べてみたい

太哉 「昔ながらの料理を受け継ぎたいと、高校生が思うということは、心が動かされるほどおいしい(のだろうと思った)。」

りゅうちぇる 「かぶら寿司、どんな味なんだろう?」

絢音 「どんな味なんですか!?」

田村さん 「カブの水分が塩分によって出る、ということは、カブが新鮮じゃなきゃだめってことなんだよ。カブのシャキシャキっていうのと、ブリのブリブリっとした脂身がひとつになって、そこに乳酸発酵された麹が口の中に広がる。だから…かぶら寿司みたいな味だよ。」

  • 食べてみたい
  • 地産地消

3人 「わあー!」

りゅうちぇる 「食べてみたいね。」

絢音 「食べてみたいですね!」

りゅうちぇる 「そして、地域でとれたものを地域で消費することを『地産地消』というのですが、この 『地産地消』の大切さが改めて見直されているんですよね?」

田村さん 「そうですね。ゴミをなくそう、山をきれいにしよう、最終的には海もきれいになって魚もおいしくなって、ということにつながっていくので、その地域の人たちが地域の土地をきれいにするということが、『地産地消』なのかなと思いますね。」

世界の食文化
  • スウェーデン
  • サンナさん

ここまで 和食文化を見てきましたが、世界では食文化はどのように受け継がれているのでしょうか。
北欧の、スウェーデン。季節は、長くて暗い冬から春へ。
サンナ・フィリング・リードグレンさんの家では、二重窓を取り外し、春を迎える準備をしていました。

サンナさん 「春を待ち望んでいたわ!」

  • 塩漬けニシン
  • ニシンの酢漬け

春分を過ぎると、町は“イースター”と呼ばれるお祭りの準備をする人たちでにぎわいます。
サンナさんも、イースターのパーティーに向け、準備にとりかかります。
バルト海で大量にとれるニシン。スウェーデンでは、塩漬けして保存食にしています。
これ(塩漬けニシン)をマリネ液に漬け、紫たまねぎ・自家製マヨネーズ・サワークリームなどと合わせます。この「ニシンの酢漬け マヨネーズソースあえ」は、サンナさんが、シェフだった父から受け継いだ得意料理です。

  • ごちそう
  • 集まった親戚

午後6時、親戚が続々と集まり始めました。
スウェーデンでは、イースター・夏至・クリスマスと年3回、家族と親戚が集まり、ごちそうを食べる習慣があります。
サンナさんが作るニシンの酢漬けは、みんなが心待ちにする、家族の味です。

(サンナさんの親戚) 「すばらしいわ。伝統の味を満喫しています。」

手料理が、家族をつなげる大きな役割を果たしています。

絢音 「ふるさとの味で、家族や親戚とかとつながれて、一緒に食べる中でのコミュニケーションもあるんだなと思いました。」

りゅうちぇる 「本当だよね。食事は、ただ単に栄養を取るための行為ではなく、地域の気候風土・社会・文化と密接に結びついて、暮らしを支えているんだよね。」

  • 絢音の感想
  • 太哉の感想

りゅうちぇる 「今回は日本の食・世界の食について、さまざまな角度から見てきたけど、二人ともどうだったかな?」

絢音 「“旬”で、なおかつその地方でしか食べられないものが、かぶら寿司のようにあるんだなって思った。そういうことを意識して食べてみたり、季節のものを感じたりしながら生活したいなと思いました。」

りゅうちぇる 「それを感じられる心を持っている大人になりたいよね。」

太哉 「田村さんの技術のVTRを見て すごいなって思って。(田村さんの作る料理を)食べてみたいし、食べられるような大人になりたいなって思いました。」

りゅうちぇる 「うん、ステキ! 田村さん、いかがでしたか?」

田村さん 「ありがとうございます。 中学生ぐらいの時に、祖父に『食べるために生きるのか、生きるために食べるのか、どっちだと思う?』 って言われたの。」

りゅうちぇる 「う〜ん…」

絢音 「えっー(どっちだろう)?」

  • 食べるために生きるのは人間だけ
  • 誰と食べるかが大事

田村さん 「“生きるために食べる”のは、動物なんだよね。でも、“食べるために生きる”っていうのは、人間しかいないんだよね。」

りゅうちぇる 「うん、確かに。」

田村さん 「だからやっぱり、いろんな人と交わって食事を楽しむ。何を食べるかではなくて、誰と食べるかというのが大事かなって、思いました。」

りゅうちぇる 「和食は“おもてなしの心”を伝える素敵な文化なんだなって、改めて感じました。みんなのおかげで、日本の伝統が守られ 受け継がれてきたわけだから、自分たちもしっかり、日本のおもてなしの心、和食の美しさ、ステキさは受け継いでいかないといけないなって本当に思いました。」


それでは次回もお楽しみに!

【第25回 日本の食と世界の食】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第25回 ポイント1
  • 家庭総合 第25回 ポイント2
  • 家庭総合 第25回 ポイント3

1:和食の知恵
和食には、自然の恵みをおいしくいただく知恵があります。

2:ふるさとの味とは?
郷土料理を守ることは、地域の自然環境を守ることにもつながります。

3:世界の食文化
食事は、気候風土、社会、文化と密接に結びつき、暮らしを支えています。

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