NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第21回 経済生活・環境

自分の消費で社会を変える

  • お茶の水女子大学附属高等学校教諭 葭内 ありさ
学習ポイント学習ポイント

自分の消費で社会を変える

今回のテーマは 「自分の消費で社会を変える」
  • りゅうちぇる
  • さとし・英

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

前回は、悪質商法の被害にあわないために、どんなことに気をつければいいのかを中心に考えました。
今回も【消費】に関連したテーマ、「自分の消費で社会を変える」ことについて考えます。
買い物など、私たちの消費行動は投票にもたとえられます。
一人ひとりがどんな商品を選ぶかによって、企業や社会全体を変える力があるということについて、現役高校生のさとしさん(高3)、英さん(高1)と一緒に話していきましょう。

3つのポイントは「エシカル消費とは?」「よりよい地球環境のために」「商品の背景」です。
どうすれば、社会を変えるための消費を実現することができるのでしょうか!?
          

エシカル消費とは?
  • 味・鮮度
  • 値段

まずは、「エシカル消費」について、バナナとチョコレートを例にしてみましょう。

りゅうちぇる 「バナナやチョコを買うときに、2人が気にするのはどんなことかな!?」

さとし 「味ですかね。鮮度、新鮮さみたいなのは気にしますけど。」

英 「私は、最終判断は値段。」

  • 商品を選ぶ基準
  • エシカル消費

りゅうちぇる 「ほかにも、食べて安全かというのも気になりますよね。というように、商品を選ぶときの基準には『品質』や『価格』や『安全性』があると思うけど、実はもうひとつ、とても大事な基準があります。それが『エシカル消費』なんだよね。

さとし 「そこにつながってくるんですね!『エシカル消費』というのは、どういったものなんですか?」

りゅうちぇる 「『エシカル』とは『倫理的・道徳的』ということを意味する形容詞なんですね。『エシカル消費』は、環境や社会や人などに倫理的・道徳的に配慮した消費スタイルのことです。

エシカル消費

「エシカル消費」はどんな消費行動なのか、具体的にみていきましょう!

たとえば、環境や生物の多様性に配慮した商品。
資源保護などに関する認証ラベルのある商品。
地域への配慮を目的とした、被災地の経済復興を応援する商品や、人への配慮として、障害のある人の支援につながる商品。
そして、社会への配慮として、売り上げの一部が社会的に弱い立場の人たちなどへの寄付につながる商品など。
よりよい社会づくりに向けて、環境や人などに配慮した商品を選択する行動が、「エシカル消費」です。

  • バナナとチョコ
  • フェアトレードマーク

りゅうちぇる 「実はこのバナナやチョコもエシカル消費のひとつで、社会に配慮した商品なんだよね。『フェアトレードマーク』というマークがついているんです。」

英 「このマークは、ちょっと見たことあるかもしれない。」

バナナやチョコに表示された「フェアトレードマーク」は、開発途上国の人々との対等な関係や環境保護をめざし、適正な価格で取引を進める「フェアトレード」の国際基準を満たした商品の証です。

  • FSCマーク
  • 海のエコラベル

ほかにも、森林を守ることに配慮した商品に表示される「FSCマーク」や、水産資源や海洋環境を守って獲った水産物に表示される「海のエコラベル」など、
環境や社会、人に配慮した商品には、さまざまなマークが表示されています。

  • さまざまなマーク
  • SDGsの目標12

このようなマークは、「家庭総合」を学ぶとき ぜひ知っておいてほしい持続可能な開発目標・「SDGs」とも密接に関係しています。
SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」です。
“持続可能な消費と生産のパターンを確保する”ために行われる取り組みのひとつ、です。

りゅうちぇる 「環境などに配慮していることが一目でわかるマークがなぜ必要かというと、僕らの何気ない買い物の背景には、大きな問題が潜んでいる可能性があるから、なんです。」

  • 児童労働問題
  • 安い賃金で働かされる

そのひとつが、国際条約などでも禁止されている「児童労働問題」です。
輸入される商品や原材料のいくつかは、大人よりも安い賃金で働かせることができる開発途上国の子どもたちの手によってつくられているという現実があります。

  • サティヤルティさん
  • 児童労働に苦しむ子どもたち

インドで30年以上にわたって子どもたちの権利を守りたいと活動している、カイラシュ・サティヤルティさん。
児童労働に苦しむ子どもたちを、8万人以上、救い出してきました。
2014年には、その功績がたたえられ、ノーベル平和賞を受賞。
サティヤルティさんは、買い物をするとき、ぜひ「エシカル消費」を意識してほしいと訴えています。

  • ノーベル賞
  • サティヤルティさんのお願い

サティヤルティさん 「児童労働が関わっていないと保証される製品を使用してください。これは消費者の意識の問題です。子どもの奴隷によって作られていることを知りながら、これらの製品を買い続けることは、それに加担していることと同じことです。
エシカル消費と呼ばれる活動は、商品が児童労働によってつくられていないかを問うことから始まります。」

さとし 「自分が買っている商品とかも、児童労働によってつくられているものだったら・・・と考えると、すごくショックな気持ちになりましたね。」

英 「(フェアトレードマークとか)小さなマークでも、その背景に児童労働問題があるかないか見分けるガイドになるんだなって思いました。」

りゅうちぇる 「大事なガイド、大事なヒントだね。マークの存在によって、自分たちの意識が変わり、社会を変えるきっかけになるよね。二人とも、ちょっと「エシカル消費」のこと、わかってきたんじゃない!?」

  • 森さん
  • カンボジアを訪問

ここからは、ある高校の取り組みに注目します。
カンボジアの農家の人たちと、お菓子作りを通して交流を図っている徳島県の高校生の様子を見てみましょう。

徳島商業高校のビジネス研究部では、カンボジア特産のヤシ砂糖を使ったお菓子作りに取り組んでいます。
部員の森 幸大さん(高2)は、高校1年生の時に仲間とともにカンボジアを訪問。
ヤシ砂糖をつくる農家が直面する、厳しい現実を目の当たりにしました。

森さん 「けっこう貧しい人もいたので、ヤシ砂糖を日本でも普及したり、もっとヤシ砂糖を生産して売り上げを上げることで、農家さんの生活も向上すると思うので、自分たちがしてあげられることを精いっぱい頑張ろうと思うようになりました。」

  • カンボジアの高校生と商品開発
  • エシカル甲子園

森さんたちは、カンボジアの高校生たちと話し合いながら、一緒に、ヤシ砂糖を使ったお菓子の商品開発を行っています。

2019年12月に行われた、持続可能な社会づくりをめざす全国の高校が集まり、活動の成果を発表する「エシカル甲子園」。
森さんたち、徳島商業高校ビジネス研究部の取り組みは、“国境を越えたエシカル消費活動”として高く評価され、見事、最優秀賞に輝きました。

森さん 「自分たちの活動を広める機会というか、チャンスでもありますし、自分たちが(お菓子を)販売して、その商品とか、ヤシ砂糖とかを知っていただいて、カンボジアに対して興味を持ってくれる人が増えればいいなと思います。」

  • フロランタン・カステラ
  • 未来に続くチャンス

りゅうちぇる 「徳島の高校生とカンボジアの高校生がアイデアを出し合って共同開発したお菓子、フロランタンとカステラです!」

さとし 「すごい おいしそうですね!」

りゅうちぇる 「先程、試食させてもらったんですけど、(徳島の高校生たちの)愛を感じる、温かみを感じて、とってもおいしかったです。」

さとし 「カンボジアの現状を日本にも広めているというのは、すごくいい取り組み。」

英 「同年代の子の経験を私たちが聞いて、同年代同士で伝えあって広めていくっていうことも、エシカル消費、未来に続くひとつのチャンスなのかなと感じました。」

よりよい地球環境のために
  • 地球温暖化問題
  • 温室効果ガス

りゅうちぇる 「エシカル消費をする上で、社会や人などへの配慮のほかにも、とっても大切なことがあるんです。」

さとし 「地球環境への配慮、ですよね!?」

りゅうちぇる 「そう!僕たちは地球上の限りある資源やエネルギーを消費しています。それらを循環して使い続けることも大切なんだけど、世界的に、いま真っ先に取り組まなければならない課題があるんです。それは、『地球温暖化問題』です。」

世界各地で頻発する干ばつや台風、豪雨などの気候変動。
その原因は、温室効果ガスによる地球温暖化ともいわれます。

  • パリ国際会議
  • パリ協定

2015年にパリで行われた国際会議で、世界各国は地球温暖化対策の国際的な枠組みとなる「パリ協定」を締結。
“世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比較して2度までにする目標を設定し、1.5度未満に抑える努力を追求すること”、を目標に掲げました。

  • シェルンフーバーさん
  • SDGsの目標13

パリ協定のルールづくりに携わった 元ポツダム気候影響研究所所長 ハンス・シェルンフーバーさん 「もし将来、(気温上昇により)南極の大規模な氷床が崩壊して溶け出せば、最終的には最高で70メートルも地球の海面が上昇します。我々は、かつてないリスクに直面しているのです。東京やロンドン、その他、世界の主要都市が完全に消滅してしまうリスクです。」

パリ協定と同じ年に採択された「SDGs」でも、目標13「気候変動に具体的な対策を」として、気候変動やその影響を軽減するための緊急対策がかかげられています。

  • 世界のCO2排出量推移
  • 世界のCO2排出国ランキング

しかし、2015年以降も世界のCO排出量は減少していません。
それどころか、近年も増加傾向にあります。

COの排出量が世界第5位である日本。
率先して地球温暖化問題に取り組む必要があるのです。

英 「想像つかないじゃないですか、東京が水で埋まっている未来って。だけど、実際に日本はたくさんCOを排出しているし、それが原因で地球温暖化が進んでいるってことは事実だから、しっかり(取り組みに)力を入れていかなきゃいけないなって、(課題に)向き合わなきゃいけないなって思います。」

  • 地球温暖化に向けてできること
  • 森林を大切にする

りゅうちぇる 「世界中が危機に直面しているわけなんだから、僕たちも何かしなきゃ!と思うんだけど、実際どんなことができると思う?」

さとし 「僕はCOと聞いたら、車から出るようなイメージがあるので、車に乗らないという方法があるのかなと思います。」

英 「森林を大切にするとか?」

りゅうちぇる 「そうだよね。とても大切な財産、財源ですもんね。」

  • 世帯のCO2の内訳
  • 電力会社を選ぶ

家庭1世帯あたりの年間のCO排出量の内訳を見てみると、3割以上が照明・家電製品など、つまり電気を使うごとにCOをたくさん出しています。

りゅうちぇる 「生活に関わることだから、僕たちができることもあるんじゃないかなと思っていて、たとえば電気の節約をするならこまめにスイッチをオフにするとか。一人ひとりが意識して電気の節約することで、大きなCO削減になると思うんですよね。
いまは電力の自由化でさまざまな電力会社があるから、電力会社のCO削減の取り組みを調べて、契約する電力会社を選ぶという方法もあるよね。」

英 「日常生活の中の選択でも、エシカル消費につながるんですね。」

りゅうちぇる 「こうした電力会社も含めて、商品などを販売する企業は、環境に配慮した商品を提供する、社会的責任があるんです。」

商品の背景
  • エシカル商品
  • 銅冶さん

りゅうちぇる 「人や環境などに配慮した『エシカル消費』について見てきましたが、こうした商品の背景は、あまり注意しないことが多いんだよね。」

英 「確かに自分は結構、値段や、表面的な方ばかりを見ていたかもしれない…。」

りゅうちぇる 「味がどうなのかなど、わかりやすいところだけを見てしまいがちだけど、実際、企業にとっても、日本でエシカルを意識した商品をつくって、利益を得ることはそう簡単ではないんです。」

そんななか奮闘している、ある会社の取り組みを見てみましょう。

  • 本屋の一角
  • 商品のクオリティが高くなければ

東京 六本木にある大型書店の一角に、色鮮やかなポーチやTシャツが並べられたコーナーがあります。
アフリカで生産された、エシカルに配慮した商品です。
この商品を取り扱う会社では、こうした出店などさまざまな機会をとらえ、エシカル消費を広めたいと積極的に活動しています。

アパレルメーカー社長 銅冶 勇人さん 「商品の価値、商品のクオリティが高くなければ、(エシカルを意識した商品であっても)お客様に選んでいただけない。しっかりと継続的にお客様にこの商品を手に取ってもらえ続けるということは、お客様に必要とされるブランド、必要とされる商品をつくり続けることが、一番大事なことかなと思います。」

  • ガーナ
  • ジェンダー格差

この会社では、アフリカのガーナにある難民キャンプや小さな村に自社工場をつくり、現地の人たちの雇用を生み出しています。
かつては仕事がなく、貧困生活に苦しんでいる人々が大勢いました。

銅冶さん 「やはり仕事がないことには、その先の人生につながっていかない。かつ、女性や障がい者の方々のジェンダー格差と呼ばれる部分での圧倒的な地位の低さというのを現地で感じた。なので、一番大事なことというのは、継続的に彼らの未来をしっかりとつくっていけるような支援(をすること)。」

  • 異業種とのコラボ
  • アフリカ工場

この会社では、さまざまなメーカーや異業種とのコラボで、エシカルに配慮した商品を次々と製品化し、業績を拡大させています。
めざすのは、アフリカの工場での10万人の雇用の実現です。

しかし、この会社にも新型コロナウイルスの影響が…。

  • バスケットの注文がキャンセル
  • 雇用を継続するため寄付を募る

ガーナ工場で働く女性 「COVID−19(新型コロナウイルス)の影響でバスケットの注文が延期やキャンセルになっています。収入が無くなった女性達は家族に食べさせる食糧を買うことさえできずにいます。」

アフリカの人々の雇用を継続するため、この会社では、クラウドファンディングでも寄付を募り、現地に食糧などを送る支援活動も行っています。

銅冶さん 「(開発途上国のさまざまな問題といった)事実があるんだよねということを、SNSだったり いろんなコミュニケーションを通じて、どんどんみんなで話し合ったり、広げたりすることが、大きなエシカル消費のきっかけになるなと思います。

さとし 「(支援をしながら商品が)継続的に売れないといけない。それができるっていうのは、すごいなって思いながらも、大変だな…」

りゅうちぇる 「アフリカで働く人たちのことも支援する、企業活動と社会貢献を両立していくのが、僕たちの中でも大切だと思うし、(それを両立させている)この会社もすごいなって思いました。」

  • 葭内先生
  • 消費者の意識が変われば企業も変わる

ここからは、番組の監修を担当している、お茶の水女子大学附属高等学校教諭の葭内(よしうち)ありさ先生と一緒に考えていきます。

葭内先生 「世界的な感染拡大の影響で開発途上国では、先進国からの商品の発注がキャンセルされたりして、突然解雇されたりするなど、雇用に深刻な影響が出ているんですね。国連の専門機関(ILO)は世界で7億人が職を失うともいっていて、特にセーフティネットの弱い開発途上国の低所得者層では、職を失うことが即、命にかかわるんです。このようなときだからこそ、継続した支援が必要とされているんですね。

りゅうちぇる 「このように企業とアフリカの人たちが一緒に作っている商品に対して、僕たち消費者もその商品を選ぶ際に、『エシカル消費』をすることで、社会を変える一歩につながるということですよね。」

葭内先生 「そうですね。私たち消費者の意識が変われば、企業の意識も本当に変わるんですよ。エシカル消費には、実は買わないという選択肢もあります。買うときには本当に好きなものや、必要なものを買って、長く使うというのもエシカル消費、なんですよ。」

  • さとしの感想
  • 英の感想

さとし 「僕は、選ぶ側の責任として、やっぱりマーク一つひとつでも、全部に背景があって、理由があって、なんでそのマークが存在しているのか、やっぱり自分から知ろうとすることが、僕にできることなのかなって思いました。」

英 「児童労働の問題とか、コロナウイルスの問題とか、すべて自分の生活が社会とつながっているんだっていうことを意識しながら消費活動をすることで、世界もどんどん変わっていくのかなって思うので、一人ひとりが(課題に)向き合って(エシカル消費を)意識することが大切なのかなって思いました。

葭内先生 「その通りですね。これからは自分がいいなとか、心地よいと思って選んだもの 暮らし方が、誰かの笑顔やきれいな自然を次世代につなげられるような選択をしていくことが必要です。」

りゅうちぇる 「いまの社会を持続可能なものに変えることができる!と信じるためにも、自分から行動していくってことが大切なんだなって思いました。僕たちも積極的にエシカル消費、していこうね!」


それでは次回もお楽しみに!

【第21回 自分の消費で社会を変える】3ポイント まとめ
  •  家庭総合 第21回 ポイント1
  •  家庭総合 第21回 ポイント2
  •  家庭総合 第21回 ポイント3

1:エシカル消費とは?
買い物をするとき、人や、社会、環境に配慮して行動するのが、「エシカル消費」です。

2:よりよい地球環境のために
企業にも、地球環境に配慮した商品を提供する責任があります。

3:商品の背景
商品の背景を知り、行動することで企業や社会を変えることができます。

科目トップへ

制作・著作/NHK (Japan Broadcasting Corp.) このページに掲載の文章・写真および
動画の無断転載を禁じます。このページは受信料で制作しています。
NHKにおける個人情報保護について | NHK著作権保護 | NHKインターネットサービス利用規約