NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第15回 共生

支え合って生きていこう 〜どんな社会になればいい?〜

  • ゲスト:法政大学現代福祉学部教授 岩崎晋也
    監修:東京都立駒場高等学校教諭 木村 裕美
学習ポイント学習ポイント

支え合って生きていこう 〜どんな社会になればいい?〜

今回のテーマは「支え合って生きていこう 〜どんな社会になればいい?〜」
  • 人生におけるリスクとは?
  • 自然災害もリスク

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回は、支え合って生きていくことについて、現役高校生の太哉さん(高3)、心さん(高3)と一緒に考えていきましょう。


りゅうちぇる 「太哉くん、心ちゃん、早速なんだけどいきなり質問です!
人生におけるリスクとは!?

太哉 「いきなり、急に(起こることで)、自分で予防できることもあれば、できないこともあるだろうし。病気とかは自分にとって、人生のリスクなのかなと思います。」

心 「私は、自然災害 地震とか台風とか、そういう自分がいつでも当事者になるようなものは、全部、リスクかなって思います。」

りゅうちぇる 「確かに。どれも『人生のリスク』になる可能性はあるよね。
たとえば、新型コロナウイルスのような感染症(も人生のリスクになり得る)。
感染して命の危機にさらされることはもちろんなんだけど、感染しなくても、さまざまなリスクを背負うことになってしまうんです。」

  • 新型コロナウイルス
  • 失業率

2020年、世界中に感染が拡大した「新型コロナウイルス」。
その脅威は、私たちの生活にも大きな影響を与えました。
緊急事態宣言にともなう休業要請や外出自粛などにより、経済活動も停滞。
5月には失業者数は198万人を超え、失業率も4か月連続で上昇するなど、雇用情勢も大幅に悪化しました。

  • アルバイトの収入減率
  • 食料配布支援

コロナウイルスの影響は、学生の生活にも及んでいます。
2020年4月に学生団体が、全国1200人の学生に対して行った調査では、アルバイトの収入が「ゼロになった」または「減った」と回答した人が、7割を超えました。
学生たちの助けになればと横浜市の社会福祉協議会では、一人暮らしの学生を対象に米やレトルト食品を配布する支援を行いました。

(学生)「アルバイト先も営業再開のめどが立ってないので、収入も先月はゼロだし。」

(学生)「学費を自分で払っているので、学費が払えないな…」

りゅうちぇる 「新型コロナウイルスによる影響は、まさに日本中を襲った“コロナ危機”ともいえますよね。」

心 「来年から大学生なので、どうなっちゃうんだろうっていう不安がすごい…」


今回のテーマは、「支え合って生きていこう 〜どんな社会になればいい?〜」です。
コロナ危機だけでなく、人生にはリスクがつきものです。
いつ生活が不安定になってしまうかわかりません。
そんなとき、どうやってお互いを支え合って生きていけばいいのでしょうか。

3つのポイントは、「自助・共助・公助」「社会保障とは?」「税金を払う意味」です。
私たちの暮らしを支える社会保険や社会福祉の仕組みについて、学んでいきましょう!

自助・共助・公助
  • 自助
  • 自ら稼ぐことも自助

りゅうちぇる 「人生に襲いかかる、さまざまなリスクを最小限にとどめるために重要なのが、『自助』『共助』『公助』です。」

「自助」とは、自分の幸福を追求し、自由に生活するため自らの責任と努力で行動することです。
たとえば、自分のやりたいことや進学などの目標に向かって、努力すること。
その実現のために自らアルバイトで学費などを稼ぐことも、自助に当たります。

  • 共助
  • ボランティアは共助

「共助」とは、友人や地域の人たちと協働し、互いに助け合うことです。
たとえば、災害ボランティアや募金活動など、地域や周りの人たちと一緒に、お互いを支えたり助け合ったりするのが共助です。

  • 公助
  • 説明は難しい

「公助」は、国や地方公共団体、福祉事業者などがサービスや支援を行うことです。

りゅうちぇる 「僕たちの生活に密接な関わりをもっている、自助・共助・公助なんだけど、2人は理解できたかな?」

太哉 「言ってることはなんとなくわかったんですけど、いざ説明してみてと言われると、やっぱり難しいなと思っちゃいました。」

社会保障とは?
  • 社会保険と社会福祉
  • 雇用保険と労災保険

国民の生活を国が保障するのが「社会保障制度」です。
主なものに「社会保険」「社会福祉」があります。
まずは、社会保険について、どのような制度があるのか見ていきましょう。

病気やケガ、失業など、さまざまなリスクに備える社会保険。ここでは、「雇用保険」「労災保険」について見ていきます。

  • 59歳の男性家族
  • 雇用保険

東京近郊で暮らす59歳の男性は、20歳で結婚し、2人の子どもにも恵まれ、仕事に家庭にと充実した人生を過ごしていました。
しかし、会社に勤めて30年目、不景気の波にのまれ会社が倒産し、失業してしまったのです。
この時この男性の生活を守ったのは、雇用保険(失業保険)です。
雇用保険は、働く人や会社が保険料を出し合い、対象となる人に国が一定の保険金を給付する仕組みです。

男性は住宅ローンや子どもの学費を払い続けることができ、再就職先も決まりました。

  • 労災保険
  • 助かることは事実

しかし、再び困難に直面します。
新しい会社に勤めて3年目、急に手足がしびれ、脳梗塞で倒れます。仕事による、過労が原因でした。
男性は労災保険を申請します。
労災保険は、働く人の業務中のケガや仕事が原因による病気に備えるもので、会社が保険料を支払って、国が対象となる人を支援する仕組みです。

(男性)「やっぱり、(保険金が)ありますから、なんとかね。それに応じて若干食費を切り詰めていこうかとか。(生活費が)ゼロというよりは、(労災保険金があると)助かるということは事実ですよね。」

りゅうちぇる 「社会保障のひとつ、『社会保険』に助けられた男性のケースだったけど、2人はどう思ったかな?」

心 「これって、男性ひとりじゃなくて、もし保険に入ってなかったら、男性の家族にも関わることだなって思って。」

  • 社会保障を知るきっかけになった
  • アルバイトも保険料を負担しなければならない場合もある

りゅうちぇる 「社会保障に対する国に納めるお金って、『本当に役に立つのかな』と思ってしまいがちだと思うんだけど、(保険に)助けられることは絶対にあるんだって、知るきっかけになったと思う。」

社会保険は、パートやアルバイトで働く人も、保険料を負担しなければならない場合もあります。
これから働こうと思っている会社の保険制度がどうなっているのか、しっかりチェックしておくことが大事です。

心 「でも保険料って、たとえば払わないといけないけど、(お金がなくて)払えない人っていますよね?」

りゅうちぇる 「心配しなくても大丈夫なんです。生活に困っている人を援助する制度も、社会保障にはしっかり含まれているんですよ。

  • 公的扶助
  • 生存権

それは、「公的扶助」にあたる「生活保護制度」、生活に困っている人たちの最低限度の生活を保障する仕組みです。
生活保護制度によって、対象となる人には生活・医療・教育などの費用が給付される扶助が行われます。

この生活保護も含めた社会保障制度は、日本国憲法第25条、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めた「生存権」を保障するために整備された制度です。

  • 望月さん
  • 恵さんが受けた子育て支援

そして、社会保障でもうひとつ、注目してほしいのが「社会福祉制度」
実際に子育てをしている女性のケースで見ていきましょう。

2人の子どもがいる 望月 恵さんは、初めての出産のとき精神的にも経済的にも、子どもをきちんと育てていくことができるのか不安になったと言います。
その不安を取り除いたのが、自治体などで提供しているさまざまなサービス(児童福祉と保健医療サービスも含む)でした。

望月さん 「こんなにサポート受けながら、子育てしていたんだなというのを、目の当たりにしてちょっと嬉しかったですね。」

りゅうちぇる 「社会福祉には、子育てに関するサービスもたくさんあるんですよね。(サービスは)経済的にも助かるし、心も助けてもらえる、自分も頑張って子育てをしていくんだっていうふう(な気持ち)にもなれたから、すごく助かりましたね。」

  • 社会福祉
  • 現代の社会福祉の役割

社会福祉は、子どもを対象とした「児童福祉」のほか、高齢者・障がい者・在日外国人など、支援を必要とする人たちを援助する制度です。
現代の社会福祉の主な役割は、虐待や差別などの人権侵害を防止し救済すること。
つまり、“個人の尊厳を守ること”です。

そしてもうひとつは、社会生活を送る上で困難を抱える人が社会参加できるように支援すること。

  • 岩崎先生
  • 高等学校等就学支援金制度

ここからは、社会福祉に詳しい、法政大学 現代福祉学部 教授 岩崎晋也先生と一緒に考えていきます。

岩崎先生 「現代社会では、特に『孤独』が大きな社会問題になっています。社会的なつながりが弱い人や、社会的排除を受けている人が、もう一度 社会とのつながりを取り戻すために支援することがすごく重要になります。」

「たとえば、高校生のみなさんにとっては学校というのはすごく大きな社会だと思うんです。そういった社会に経済的など さまざまな理由で、学業が続けられなくなるような事態もあると思うんですが、学校を続けられるように(社会福祉で)支援を行ったりしています。」

りゅうちぇる 「それこそ、太哉くんや心ちゃんが通っている、高校の授業料が実質無償化されているのは知ってた!?」

心・太哉 「知らないです。」

りゅうちぇる 「授業料は『高等学校等就学支援金制度』によって、国から支給されています。これまでは公立高校だけが対象だったんだけど、2020年の4月から、世帯の所得制限はあるんだけど、私立も含めてすべての高校が実質無償化されたのです。
みんなが同じような家庭環境や生活水準ではないっていうのはある。そんななかで、本当に助かる子も多いとは思う。すごく助かるんだよね。」

心 「(社会福祉制度を)すごく身近に感じました。社会福祉制度は難しい感じがして、大人になった時の話なのかなって思っていたので、学生のうちからでも、こうやって関わりがあるんだなって思いました。」

りゅうちぇる 「(社会福祉制度は)大人になってから理解するものと思いがちだけど、高校生も子どもたちも関わっているから社会福祉はみんなのセーフティ・ネット(安全網)なんだなって、すごく思いました。でも、いまの社会福祉制度には、まだまだ不充分なところがあるんです。」

  • 彰くん
  • 彰くん宅の支出

高校1年生の彰くん(仮名)は、母親と姉と妹の4人で暮らしています。
彰くんの家の手取り収入は、母親のパートで月に13万円、3人分の児童手当などを加えても、約20万円です。
家賃や光熱費などを支払うと、ほとんど手元には残りません。
将来の進学に備えて、塾に通いたいと考えていますが、学費を工面できません。
彰くんは、大学への進学もためらっています。

彰くん 「できたら僕も、大学とか行って学びたいなって。でも、お母さんが大変ですよね。どうしても無理だったら、もう諦めようとは思ってますけど…」

太哉 「勉強がしたくても、経済面で(大学に)行けないというのは、すごく悲しいこと。行きたくても行けない人がいると思うと、どうにかならないのかなってすごく思いました。」

  • 進学を支援する制度は?
  • 奨学金制度

りゅうちぇる 「そうだよね。みんな平等に夢を叶えるチャンスや、夢を叶えるために頑張ることができるはずなのに。岩崎先生、こうした生活が苦しい学生の進学を支援する制度はあるんでしょうか?」

岩崎先生「2020年の4月から、経済的に困難ではあるけれども進学を目指したい、そういった子どもたちの、新たな制度が始まりました。
住民税非課税世帯と、それに準ずる世帯の学生が対象となるのですが、授業料や入学金が免除・減額されたり、給付型の奨学金が支給されたりします。」


りゅうちぇる 「対象にならない世帯の高校生でも、大学に行きたいけど授業料が払えるかどうか不安になる人もいますよね?」

岩崎先生 「奨学金には2種類あって、給付型と貸与型といわれるものがあります。給付型はもらえば返さなくていいんですが、貸与型は返さなくてはいけません。大学を卒業するときに(借りた奨学金が)平均で約350万円の借金を抱えて卒業するという実態もあります。そのため、学費の無償化や給付型の奨学金の拡充を推進することが、子どもたちの学びを支えるためにはすごく重要なことだと思います。

心 「私もいま高校3年生で、奨学金のこととか学校でも話を聞いたりするんですけど、もっとみんなが平等に教育を受けられるようになってほしいなって率直に思います。

  • 子ども食堂
  • 補助金や助成金でまかなわれている

りゅうちぇる 「社会福祉というと、給付金など金銭的な支援ばかりだと思われるかもしれないけど、実際はそうではないんですよね。」

岩崎先生 「はい、そうです。実際の社会福祉はソーシャルワーカー(福祉の専門職)が困った人に寄り添った相談支援が中心となっています。こうした専門職の支援以外にも、地域の人たちによるボランティア活動などの支援もあります。たとえば、たくさん増えている『子ども食堂』などがあります。(子ども食堂は)食事や勉強の機会が十分ではない子どもたちなど、地域に住む子どもたちに食事や学習支援の居場所を作る取り組みなんですね。もともとはボランティアで運営されていましたけど、現在は自治体などの補助金や民間企業の助成金などでもまかなわれています。いま全国で約4000か所子ども食堂があるといわれています。

りゅうちぇる 「4000か所!(子ども食堂のケースのように)こうした人とのつながりを作るのも、社会福祉なんですよね!?」

岩崎先生 「はい、そうです。」

太哉 「安心していられる居場所というのは、すごくいいなって思ったし、誰でも行けるというのがすごくいいなと思いました。」

りゅうちぇる 「そうだよね。そういう、子ども食堂に平等を感じるよね。」

税金を払う意味
  • 2019年度の国家予算
  • 所得再分配機能

社会保障の財源は、主に税金や保険料によってまかなわれています。
国の予算のどのくらいを占めているのかグラフで見てみると、2019年度の社会保障関係費の支出は34兆円ほど。なんと国の予算の約3分の1を占めています。

りゅうちぇる 「先生、あらためて社会保障の財源に使われる税金や保険料を、僕たちが払う意味について教えていただけますか?」

岩崎先生 「ここまで社会保険や社会福祉による『生活安定・向上機能』や『経済安定機能』について見てきました。
社会保障にはもうひとつ機能があります。それは、所得の格差をなくすこと、減らすことで 国民の生活の安定を図る『所得再分配機能』です。
社会保障の財源というのは、所得の多い人からは(税金や保険料を)多めに納めてもらい、実際に社会保障サービスを提供するときは、所得に関係なく必要な人に提供する仕組みといえます。社会の公平性を実現するために、所得の再分配を行っているわけです。
社会保障の機能を正常に、持続可能なようにしていくためには、財源となる税金や保険料を払っていく意味があるのです。

  • 太哉の感想
  • 心の感想

りゅうちぇる 「今回は、どんなふうに支えあって生きていくのか、社会保障制度などについて、すごくいっぱい学んできたんですけれども、2人はどう感じたかな?」
 
太哉 「子ども食堂は、いまSNSとかで人と人とのコミュニケーションがあまりないから、子ども食堂のような場はすごくいいなと思ったし、当たり前の生活を送る幸せさを、すごく学びました。」

心 「自分のことだけを考えがちだったんですけど、結局はみんながみんなお互いを支え合っているんだなっていうのが、今回すごくわかった。自分も誰かを支えてあげたいし、いつか支えられる側にもなるんだろうなって思いました。」

りゅうちぇる 「そうだね。『自分の人生なんだから、自分で何とかしなくちゃ。自分の夢、絶対叶えなくちゃ。』と、高校生のみんな思っていることだと思うんだけど、『支え合って、僕たちは生きているんだ』ということを忘れず、前を向いて進んでいきたいですよね。」


それでは次回もお楽しみに!

【第15回 「支え合って生きていこう 〜どんな社会になればいい?〜」】3ポイント まとめ
  •  家庭総合 第15回 ポイント1
  •  家庭総合 第15回 ポイント2
  •  家庭総合 第15回 ポイント3

1:自助・共助・公助
困ったときは、「自助」や「共助」だけでなく、「公助」も大切です。

2:社会保障とは?
「社会保障」は生活上のリスクを、社会全体で支えるセーフティ・ネットです。

3:税金を払う意味
社会保障の財源は、税金や保険料に支えられています。

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