NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第14回 高齢者

“高齢社会” いつかは自分も・・・

  • 監修:兵庫教育大学教授 永田 智子
学習ポイント学習ポイント

“高齢社会” いつかは自分も・・・

今回のテーマは「 “高齢社会” いつかは自分も・・・」
  • 英
  • ジュリアン

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回も、現役高校生の英さん(高1)、ジュリアンさん(高2)と一緒に、超高齢社会をどのように生きていけばいいのか、考えていきましょう。

りゅうちぇる 「高校生の2人は、『いつか自分も高齢者になったら!?』と想像すると、どう思うかな?」

英 「私は高齢者になったら、人のいないところに行きたい…」

りゅうちぇる 「人のいないところっていうのは具体的に(どういうところ)?」

英 「今は人がいっぱいいて、建物がいっぱいあるところにばかりいるけれど、もっと自然がいっぱいあって…もうちょっとゆったりした生活がおくりたい。」

ジュリアン 「僕は将来も(高齢者になっても)俳優の仕事を続けながら、自分の洋服のブランドとかを作ってみたいです。」

りゅうちぇる 「ステキ!外国にルーツもあるジュリアンくんだったら、日本から飛び出すとかもあるかもしれないね。」

今回のテーマ「 “高齢社会” いつかは自分も…」を学ぶための3つのポイントは、「年金制度とは?」「介護保険・介護サービス」「高齢者を支える地域社会の役割」です。
超高齢社会の課題を解決するためには何ができるのか、一緒に考えていきましょう!

年金制度とは?
  • 永田先生
  • 現役世代

高齢者の暮らしを支える年金制度とは、どのような仕組みなのでしょうか?
番組の監修を担当している、兵庫教育大学 教授の永田 智子先生と一緒に考えていきます。

「年金制度」は高齢者の生活を経済的に支える制度のことです。
年金制度には、すべての国民の加入する「国民年金」と、一定の条件を満たすサラリーマンなどが加入する「厚生年金」があります。
ほかにも、民間が運営する「個人年金」「企業年金」などもあります。


永田先生 「今回は主に、国民年金について考えていきたいと思います。国民年金は、現役世代の保険料の負担で年金が支払われるんです。」

英 「現役世代というと、20歳以上から60歳未満のことですよね?」

永田先生 「はい。国民年金の運営は『世代間扶養』という考え方で成り立っていて、国庫からの負担もありますが、20歳以上60歳未満の現役世代の人たちの保険料負担で支えられています。

  • 平均寿命
  • 老齢年金制度

すべての国民が加入する現在の年金制度は、1961年にスタートしました。
「老齢年金」が支給される年齢は65歳からです。
1961年当時の平均寿命は男性が66歳、女性は71歳でした。
その後、平均寿命は年々長くなり、20年余り後、1985年の平均寿命は男性が75歳、女性が80歳です。
さらに、2020年には男性は81歳、女性は88歳。
つまり、今の老齢年金制度は、男性の場合65歳から81歳までの16年間を、女性の場合65歳から88歳までの23年間を、年金で暮らすというプランなのです。
果たして国民年金だけで老後の暮らしが成り立つのか、不安が広がっています。


ジュリアン 「(年金制度のことを考えると)80歳まで自分が幸せに暮らせるかっていうのが、ちょっと心配です。」

りゅうちぇる 「本当に老後を年金だけで暮らせるのか?とか、年金がちゃんと支払われるのか?という話も、実際にありますもんね。」

  • 高齢化の推移のグラフ
  • 給付と負担のバランスが課題

高齢化の推移を示したグラフを見てみましょう。
下の方のオレンジと青の部分が高齢者です。
2040年には高齢者が総人口の3分の1ほどを占めると推計されています。
一方で現役世代の人口は減っていきます。
高齢者が増えると、現役世代の負担は増加します。
この負担をどう分かち合っていくか、また給付と負担のバランスをどう見直していくかが課題です。

  • 老齢年金・障害年金・遺族年金
  • 学生納付特例制度

国民年金制度は、65歳になったら給付される老齢年金のほかにも、病気やケガで生活や仕事などが制限された場合の「障害年金」や、生計の中心を担う働き手が死亡した場合の「遺族年金」があります。
つまり、国民年金は高齢者だけでなく、給付を受けることができる制度なのです。

ちなみに、国民年金の保険料負担は20歳からですが、学生の支払いは猶予される「学生納付特例制度」があります。
申請すれば、在学期間中の保険料納付が猶予され、加入期間として認められます。
もし、この制度を利用せず滞納すると、障害年金の対象外となってしまう場合があるので注意が必要です。

りゅうちぇる 「いつかは自分も年金に助けてもらう立場になるかもしれないってことをしっかり把握しておいて、ちゃんと義務を果たすべきだなって思いました。」

介護保険・介護サービス
  • 介護保険
  • 通所介護

りゅうちぇる 「介護保険と介護サービスは、どちらも高齢者の暮らしを支える大事な仕組みです。介護保険は年金制度とどう違うのですか?」

永田先生 「介護保険も年金制度と同じように、高齢者を支えるためのものです。ただ、『介護保険』は高齢者の中でも、特に75歳以上の後期高齢者の増加に伴って導入された制度です。」

超高齢社会の日本では支援や介護が必要な高齢者が増える一方、家族だけによる介護には限界があります。
そこで、家族の負担を減らし社会全体で支えていこうと2000年にスタートしたのが、「介護保険・介護サービス」です。
介護保険には40歳からすべての国民が加入し、保険料を負担します。

制度の利用には、要介護の認定が必要です。
その認定に基づいて費用の1〜3割を負担し、デイサービスなどの「通所介護」や、「訪問介護」を受けることができます。
介護保険や介護サービスは、介護の仕事と費用を社会全体で分かち合う仕組みなのです。

  • 介護サービスの問題
  • 必要な介護職員数と不足数

りゅうちぇる 「介護保険や介護サービスは、介護を実際にしている家族の負担を軽くするためにとても大事な仕組みだとは思うんですけど、問題もあるんですよね?」

永田先生 「そうですね。介護が必要な高齢者は年々増え続けているんですけれども、逆に受け皿となる施設が満床のため、入所することができないといった問題があります。また、介護施設で働く人たちが不足しているという問題もあります。」

厚生労働省の試算では2025年には、介護職員が約38万人も足りなくなると推計されています。
「介護が必要な高齢者の増加に介護をする人の数が追い付かない」という課題を抱えているのです。

永田先生 「そしてさらに、言いにくいんですけれども、介護する人材が足りないということは、実は別の問題にもつながっているんです。」

りゅうちぇる 「これ以上、問題があるんですか!?」

永田先生 「はい。介護の苦労が若い世代にまで重くのしかかっているという現実があります。」

  • 原島さん
  • 保夫さん

原島 なつみさん(25歳)は、学生時代から父親の介護を続けています。
脳の障害から体が徐々に動かなくなる病気の父、保夫さんを介護しています。

  • 原島さん家族
  • 原島さんと真由美さん

介護が始まったとき、原島さんは高校生でした。
当時、保育園で働いていた母の真由美さんが介護保険を利用しながら、保夫さんの介護を担っていました。
ところが4年前、真由美さんが突然、倒れました。大腸にガンが見つかり、仕事が続けられなくなったうえ、介護もできなくなりました。

  • 大学生のころの原島さんの勉強ノート
  • しょうがなかった

当時、大学3年生だった原島さんは、専門知識を身につけ、将来、福祉関係の仕事に就きたいと必死に勉強をしていた時期でした。
介護施設や病院に、父を一時的に預けることも家族で検討しました。
しかし、介護保険を利用しても金銭的な負担は重く、長女である原島さんが介護を引き受けるしかありませんでした。
介護と学業の両立について相談できる人はみつからず、夢を諦めざるをえませんでした。

原島さん 「もうどうしたらいいかわからなかったんですけど、わたしにとっては残念というか、しょうがなかったのかなとは思いますね。」

原島さんは近くの病院で受付として働きながら、父の介護を続けました。

  • ヤングケアラー
  • 英の感想

永田先生 「若い世代で介護を担う人を『ヤングケアラー』といいます。
2017年の調査では、家族の介護を担っている15歳から29歳の若者は17万人余りいるという推計もあります。」

りゅうちぇる 「今、もし高校生の2人がその(家族の介護を担うような)環境になっても、高校生だからおかしくないわけじゃないですか。英ちゃんはどう思う?」

英 「心のどこかで夢をあきらめないで…(と思う)、あきらめているわけじゃないけど、またチャレンジして欲しいっていったら人ごとみたいになっちゃうけど…」

りゅうちぇる 「とても難しい選択だったり、とても難しい決心がついてくるわけだから、そこは(原島さんのインタビューから)すごく感じとれたよね。」

  • 介護ロボット
  • コミュニケーションロボット

永田先生 「介護に関して大変な話ばかりになってしまったんですけれども、介護施設で働く人材不足を解消するために、介護福祉士をインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国から受け入れたり、さらには日本の高い技術力を生かした『介護ロボットの開発』といった取り組みも進んでいます。

ベッドから車椅子への移動などをサポートする介護ロボットは、人を抱えるときの微妙な力加減を調節し、やさしくサポートします。
人の呼びかけや、触られると鳴き声などで反応するコミュニケーションロボットは、相手の接し方を学習し、反応の仕方もその相手によって変わります。
アニマル・セラピーと同じ効果があると期待されています。

英 「ロボットと人間が対面して何かをしているのは、ものすごく最先端というか、すごい時代になったんだなっていうのが、すごいびっくりしています。」

りゅうちぇる 「そうだよね。僕たちはまだそういうの(ロボットによる介護など)に慣れてはいないけど、それがまた当たり前になっていって、それで助かる人々がいたり、幸せができたらすごくステキだよね。」

高齢者を支える地域社会の役割
  • 徘徊
  • 声をかける

りゅうちぇる 「高齢者を支えるうえで必要不可欠なもの、それは『地域社会の協力』なんです。前回、認知症のひとつの症状として『徘徊』がある、という話をしましたよね!?」

ジュリアン 「街で徘徊している人がいたら声をかけるみたいな、そういうことでしたよね。」

りゅうちぇる 「そうだよね。まず自分から、そして社会全体で高齢者を支えていかなくちゃって話をしたよね。認知症の人たちが自由に、そして安心して街を歩けるようにするには、地域社会の協力が本当に欠かせません。」

  • ネットワーク登録票
  • 松本さん

京都市左京区では地域の包括支援センターを中心に、認知症の人の安全な外出を手助けする取り組みが行われています。
めざすのは行方不明を防ぐのではなく、「ふだんから安心して外出できる街づくり」
認知症の人や家族から聞き取り、登録カードを作成し、その人にふさわしい支援を行います。

岩倉地域包括支援センター長 松本恵生さん 「(帰宅困難になるのを)繰り返しておられて、これはということで登録された方もいらっしゃるし、これから心配だということで予防的に(登録)しておきたいという方もいらっしゃいます。」

  • みえ子さん
  • 寺田さん

夫が心配して3か月前に登録した、みえ子さん(仮名・74歳)。
夫が働いている昼間は介護施設で過ごします。
夫の帰宅が遅く家で一人きりになると、みえ子さんはスーパーへ買い物に向かう習慣があります。
しかし、途中で道に迷い、20回以上保護されています。

ケアマネジャー 寺田和代さん 「みなさん、目的があるんですよ。散歩に行きたい、買い物に行きたいという目的があるんです。ただ、その目的途中で認知症のために分からなくなって、たどりつけなくなるっていうだけでね。それをそっと手助けしてあげるだけで、徘徊はなくなります。」

  • 一緒に最寄り駅へ
  • 小磯さん

みえ子さんが安全に外出できるように、松本さんと寺田さんはみえ子さんと一緒にスーパーの最寄り駅へ向かいました。
以前、行き先が分からなくなったみえ子さんは、この駅で保護されたことがあります。

松本さん 「(鉄道会社主任の)小磯さんが、一緒にしゃべってくれはったん?」

小磯正彦さん 「30分間、お孫さんの話とかしてくれはってん。」

また困った様子のみえ子さんを見かけたら、声かけや手助けを改めて頼みました。

  • みえ子さん
  • 駅員さん

寺田さん 「お電話くださったら私が迎えに来ますので、徹底してますので。よろしくお願いします。」

みえ子さん 「よろしくお願いします。」

寺田さん 「駅員さん、みんな優しいもんね。」

情報は、同じ路線の終着駅にも届きました。
みえ子さんがふだん使うことはないはずですが、迷った時に備えて広く見守りをしようという狙いです。

駅員さん 「依頼が来ました。もしこういう方、そこに貼り出しますので、普通に優しい感じで声をかけていってもらったらいいので。
係員がいるからこそできることをこの駅ではやっていかなあかんなと。」

認知症の人と地域の人が、互いに顔の見える関係づくりをめざす取り組みが続いています。

  • スーパーも見守り活動に協力してくれた
  • 地域全体で支えていくことが大事

りゅうちぇる 「いま紹介したのは駅員さんたちの協力だったんだけど、実はほかにも、みえ子さんが一人きりになるとよく行くスーパーマーケットも、見守り活動に協力してくれたそうです。2人はどう思った?」

英 「広い地域のつながりというか、ここの駅(に伝えるだけ)でもう終着駅まで話が伝わっていて、スーパーマーケットも手伝ってくれて、という。それって全部、やさしさの連鎖というか、それでつながっていく地域のつながりというのは、ほんとにあったかくてステキだなって思いました。」

ジュリアン 「認知症だからって落ち込むんじゃなくて、認知症でも楽しめるような街づくりをできたらいいなと思います。」

りゅうちぇる 「そうだね。地域って、そういう独特の優しさがあるから、しっかり頼ったり守っていただくっていうことは、大事かもしれないですよね。」

永田先生 高齢者を支えるということを、家族や専門の介護施設だけにお任せするのでなくて、そこも含めて地域全体で支えていけるということが、これから大事な視点になってくるかなと思います。」

りゅうちぇる 「なるほど。僕も息子と散歩していたら地域のおじいちゃん・おばあちゃんと会ったりもするので、そういう(高齢者を支える)知識もありながら、信頼関係を作れていくといいのかなって思う。それが、みんなが安心して自分らしく地域で暮らしていくためには、ほんとに大事なことだと思う。みなさんもそれぞれ、どうしたらいいのか、考えていきましょうね!」

英・ジュリアン 「はい!」


それでは次回もお楽しみに!

【第14回 “高齢社会” いつかは自分も・・・】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第14回 ポイント1
  • 家庭総合 第14回 ポイント2
  • 家庭総合 第14回 ポイント3

1:年金制度とは?
高齢者の生活を経済的に支える国民年金には、老齢年金のほか、障害年金・遺族年金もあります。

2:介護保険・介護サービス
介護保険や介護サービスは、介護をする家族の負担を減らすためにも大事な制度です。

3:高齢者を支える地域社会の役割
地域全体で高齢者を支えていくにはどうしたらよいか、自分たちにできることを考えて、行動していきましょう!

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