NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第11回 特別

多様な性を生きる

  • ゲスト:NPO法人「東京レインボープライド」共同代表 杉山 文野 
    監 修:横浜国立大学教授 堀内 かおる
学習ポイント学習ポイント

多様な性を生きる

今回のテーマは 「多様な性を生きる」
  • りゅうちぇる
  • 2人の高校生

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回の大事なキーワードは、「ダイバーシティ」。 
現役高校生の太哉さん(高3)と心さん(高3)は、「ダイバーシティ」についてどのくらい知っているでしょうか。

太哉 「ダイバーシティは、東京テレポートの…」

りゅうちぇる 「そのダイバーシティかぁ。完全に建物ですね。」

ダイバーシティとは、「多様性」という意味です。
誰もが働きやすく活躍できる社会にしていこうと、注目されています。

今回のテーマは、このダイバーシティについて考える、「多様な性を生きる」です。

  • 11人に1人
  • LDGTQ

ここでまず、注目してほしいデータが「11人に1人」、みなさんは何のことだかわかりますか?
実は、「セクシュアル・マイノリティー」の人たちの割合を表した2018年の調査結果です。
「11人に1人」ということは、学校で1クラスが40人いるとすると、約4人がセクシュアル・マイノリティーだという計算になります。

では、セクシュアル・マイノリティーについて、みなさんは知っていますか?
「LGBTQ」は、セクシュアル・マイノリティーの人たちの中の、代表的とされる人々の頭文字をとった言葉です。

“L”はレズビアン、女性の同性愛者。
“G”はゲイ、男性の同性愛者。
“B”はバイセクシュアル、男性と女性、両方を愛することができる人のこと。
“T”はトランスジェンダー、体と心の性が一致しない人のこと。例えば、体は女性だけど心は男性や、その逆の場合です。
“Q”はクエスチョニング、自分自身の性を分類されたくない、確定したくない、よくわからない、性をひとつに絞られたくないといった考えを持つ人たちのことを表します。

心 「私、LGBTまでは知ってたんですけど、Qのクエスチョニングは知らなかったです。」

りゅうちぇる 「でも、Qもとっても大事だよね。11人に1人はLGBTQの人たちがいるということ、自分には関係ないと思わないで、しっかり一緒に話していきましょうね」


今回の3つのポイントは、「性のグラデーション」「自分らしさを阻むもの」「社会の変化と新たなパートナーシップ」です。
ダイバーシティ、多様性を意識しながら考えていきましょう!

性のグラデーション
  • 3歳のりゅうちぇる
  • 自分を偽った

まずは「性のグラデーション」について。

りゅうちぇる 「例えば、“僕という人間”には、いろんな面があるんですよね!」

『人にはいろいろな面がある。』ということで、りゅうちぇるさんの“いろいろ”を、見ていきましょう。

幼いころからかわいいものが大好きで、お人形でよく遊んでいたというりゅうちぇるさん。
でもだんだん大きくなると、「かわいいものが好きな男子は“普通”じゃない」と気が付いてしまったのだそうです。

りゅうちぇる 「中学生になって『このままじゃ…、自分らしく居続けたらイジメられてしまう、(友だちに)からかわれてしまう』って思ったんだよね。
自分は自分でいたいだけなのに、調子乗っていると思われて、勘違いを生むんだって思って。その境界線が難しくなって、僕は自分を隠すしかないと思った。みんなとつるんでいたい安心感みたいなのがあったから、孤独になりたくなくて自分を偽ったんですよ。そうしたら結局、ものすごく孤独だったの。

  • 高校時代のりゅうちぇる1
  • 高校時代のりゅうちぇる2

無理して自分を偽り、孤独を感じていたりゅうちぇるさんは、地元の知り合いがだれもいない高校へ進学。
好きなメイクをばっちり決めて学校へ通い、SNSも始めます。
自撮りや好きな服のコーディネートを紹介する写真は大人気!フォロワーは1万人を越えました。

りゅうちぇる 「そういう風に自分を出すのが楽しくなって、原宿に上京できたのも、東京で勝負するぞって思えたのも、高校の時に自分を出して認めてもらえて、自信になったから。」

「“普通の男子”とは違うけど、僕は僕で、人は人」と自分の個性を発揮したりゅうちぇるさん。
多様な個性がそのまま認められる社会になってほしい!と願っています。
でも、まだまだ現実は…

りゅうちぇる 「少数派だっていうだけで、いろいろな面で差別を受ける場合が、やっぱりあるんだよね。どんな差別があるのか?高校生にとって身近なケースだと『制服』。ある人にとっては、学校の『制服』を着るのがとってもつらい。想像できないくらい(つらい)、僕たちには。とってもつらくて嫌で嫌でたまらないっていう場合があるんです。」

  • イシヅカ ユウさん
  • 中学生の頃のユウさん

トランスジェンダーのイシヅカ ユウさんにとって、「制服」とはどんな存在だったのでしょうか?
ユウさんの生まれもった性別は「男」。
でも、小さなころから自分は女の子だと思っていて、黒いランドセルや男の子の制服が嫌いでした。
中学生になると、ユウさんの学校生活はさらに苦しくなります。

ユウさん 「まず、学ランがすごくイヤで、学ランを着たくないがために『制服忘れちゃいました』とか言って、(先生に)怒鳴られながら(過ごしていた)。」

  • 好きな服を着るユウさん
  • 好きな服で定時制高校へ

男子の制服を着る生活がつらくて、不登校になったユウさん。
家で好きな服を着て過ごしたり、3歳から通っていた絵画教室で好きな絵を描くことに没頭したりするうちに、嫌なことを忘れ、少しずつ元気を取り戻しました。

そんなユウさんに転機が訪れます。
ある定時制高校に、女性として入学することが認められたのです。この学校には、制服もありません。
ユウさんは、とびきりのおしゃれをして学校へ通いました。

  • モデルのユウさん
  • 勇気になった

念願だった女性としての学校生活を高校でようやく楽しむことができたユウさん!
いまはモデルとして活躍しています。

ユウさん 「高校は自分が自分のあるがままの姿で、そこにいていいって言ってもらえたんですよ。生きてていいって思いますね。(自分は)いていいんだって。
一つの社会じゃないですか、学校っていうのは。その中で自分がそうやっていていいっていうことって、その後、本当にもっと大きな社会にこうやって出ていく中で、すごい力になるというか、勇気になるというか。」


太哉 「(ユウさんは)自分を貫き通して、自分自身に偽らなかったことによって、自分が自分でいられる、生活ができているんだろうなって思って、すごく尊敬しました。」

りゅうちぇる 「ユウさんすごいなって、思ったんですけど。『自分て、もう居場所がないんだ』とか『どこからも歓迎されないんだ』って思って、あきらめてしまう人のほうが多いなって思うんですよ。でも、自分でいることをやめなかった、自分でいることをあきらめなかったっていうのがすごく強くて、本当に刺激をもらえるなって思います。やっぱり、一人ひとりが自分らしく生きることが大事だよね。」

  • SDGsの目標10
  • 平等な社会に

ここで突然ですが、「家庭総合」を学ぶとき、ぜひ知っておいてほしい「SDGs」についても紹介しましょう!
今回は、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」について。
人間は、人種・信条・性別社会的身分などの違いにかかわりなく、すべての人が平等であるべきです。

りゅうちぇる 「アメリカでも黒人差別が大きな問題になっています。
セクシュアル・マイノリティーの人たちも、少数派というだけで差別され、多数派と同じ権利を持つことができないことも、いまだにあります。性別はもちろん、すべての人が差別されない平等な世界にしていかないと!

自分らしさを阻むもの
  • プライドパレード
  • レインボーフラッグ

続いて紹介するのは、ありのままの自分らしく生きていきたいと声を上げた、セクシュアル・マイノリティーの人たちのパレードです。
ダイバーシティ(多様性)を尊重する社会をめざす「プライド パレード」は、LGBTQなどセクシュアル・マイノリティーの人たちも積極的に参加し、アメリカをはじめイギリス・フランス・インドなど世界各地で行われています。
そのシンボルとなっているのが、レインボーカラーの旗です。
レインボーカラーは、性の多様性を象徴しています。

  • 東京レインボープライド
  • 東京レインボープライドのりゅうちぇる

日本でも「東京レインボープライド」というパレードが行われています。
2019年には52団体・1万人以上の人たちが参加し、盛り上がりました。
このパレードは、セクシュアル・マイノリティーの存在を社会に広めることはもちろん、すべての人がより自分らしく誇りをもって前向きに生きていくことができる、ハッピーな社会の実現をめざしています!
りゅうちぇるさんもゲスト参加して、「自分らしく生きたい!と思える社会にしていこう」と呼びかけました。

  • 杉山文野さん
  • 高校時代の杉山さん

NPO法人「東京レインボープライド」の共同代表理事のひとり、杉山文野(ふみの)さんにお話を伺います。
杉山さんは、女性の体で生まれ、いまは男性として生きるトランスジェンダーです。
高校時代は制服のスカートをはいて、学校に通っていました。
杉山さんは、東京レインボープライドなどのイベントを通して、理解者を増やす取り組みに力を入れています。

杉山さん 「セクシュアル・マイノリティーって目で見てもなかなかわからないじゃないですか。なので、年に1回みんなで集まって『ちゃんとここにいますよ』ということを社会に伝えていかないと、いつまでたっても(LGBTQは)いない人になっちゃうんですね。
まさに知らないっていうところから、差別とか偏見につながってしまう
ので、(東京レインボープライドは)しっかりわかってもらおうということを主張する、そんなイベントになります。」


りゅうちぇる 「セクシュアル・マイノリティーの人たちは、どんな時に生きづらさや差別を感じるのでしょうか?」

杉山さん 「セクシュアル・マイノリティーだからとは言えない部分はあるんですけど、例えば就職するときの、僕自身は履歴書の男と女(の欄)、どっちに丸したらいいんだろうって(困ったことがある)。
今の日本でLGBTQであるということを、オープンにしながら社会生活を送る大人は、ほとんど目に見えないんですよね。僕自身は、例えば自分が女性として歳を重ねていく未来はまったく想像ができなかったですし、かといって男性として生きていく選択肢があることも知らなかったんで。『自分は大人になれないんじゃないかな』『死んじゃうんじゃないかな』『早く死にたいな』みたいなのが学生生活の時でした。」

りゅうちぇる 「なるほどね。ふだん意識していないところかもしれないけど、生活をしていく上で、トランスジェンダーの方が特に迷う時が、絶対にあると思うんですよね。」

  • 職場での具体的な経験1
  • 心

ここで、LGBTQの人たちは、職場でどんな生きづらさを感じているのか?具体的な例を紹介します。

「トランスジェンダーのため、通称名の使用の許可を尋ねたところ、かたくなに拒否された。」
こちらは、今は男性として生きるトランスジェンダーの人が、職場でもともとの女性の名前ではなくふだん使っている男性の名前を使用したいとお願いすると拒否された、というケースです。

心 「本当に(そういうことって)あるんですか?」

杉山さん 「そういうケースは今までにたくさんあります。例えば、僕の名前は『フミノ』っていうんですよ。フミノっていうと、どちらでもいいといえばいいかな。でも、もし僕が『文子』(という名前)だったら、その名前で呼ばれて性別がばれちゃったらどうしようとかね。
保険証の名前が呼ばれるのが怖くて、病院に行きづらいっていうトランスジェンダーもいたりしますね。」

  • 職場での具体的な経験2
  • 太哉

続いてもうひとつのケース
「LGBTと分かった時点で、挨拶をされない、にらまれるなどの差別を受けた。」

太哉 「えっ!?そうやってカミングアウトしたら、差別されるってことですか?」

杉山さん 「実際のバイオレンス、暴力的なことは少ないかもしれないけど、無視をされるとか、言葉での暴力というのはまだまだあるのかなっていうのが現実ですね。でも、気づきもしないでしちゃっている差別もあるんですよね。例えば、男同士の中で『どんな女タイプなんだよ』って言っているその輪の中に、もしゲイの子がいたりすると『この中では絶対、男の子好きって言えないな』って。なぜならば、女の子が好きっていう前提で会話しているんだ。だからすごく悪気のない差別みたいなことがたくさんあるんですよね。

「その人のバックグラウンドにどんなことがあるか、目に見える情報以外にもいろんなものがありますよね。そういうのを少しでも想像できるようなコミュニケーションになると、意味のないというか、本当に不必要な、望んでもいない差別とか、そういったことが少しずつ軽減できるんじゃないかなって思います。」


心 「私もこの話を聞く前までは、LGBTQの方たちに、変に気を使わなきゃいけないのかなって思ったんですけど、逆に気を使うことが差別になってしまったりすることもあるから…。この人は何かを訴えたいんだなとか、そういうことをちょっとでも察してあげられれば、こういう問題は徐々に解決していくんじゃないのかなって思いました。」

社会の変化と新たなパートナーシップ
  • 結婚
  • 第24条

次に取り上げるのは「結婚」の問題です。
結婚に関する日本の法律「日本国憲法 第24条」は、
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない」
と、家庭生活における個人の尊厳と男女の本質的平等について規定しています。

第二次世界大戦後の1946年に公布された日本国憲法制定当時は、男女の本質的平等を認める先進的な内容でしたが、70年以上たった今では、セクシュアル・マイノリティーの人たちを苦しい立場に追い込むことになってしまいました。

  • 同性婚は認められない
  • パートナーの関係を承認している国の地図

憲法 第24条にあるように、現在の日本では男性と女性という異なる性同士の結婚は認められています。
しかし、同性同士の結婚、いわゆる「同性婚」は認められていません。
憲法を理由に、同性婚の届け出が受理されなかったこともありました。

一方、世界では2001年に、オランダで同性婚が可能になりました。
2020年現在では、29の国と地域で同性婚が認められるなど広がりを見せています。

  • パートナーシップ証明書
  • 自治体のパートナーシップ制度地図

日本では、2015年に初めて東京・渋谷区と世田谷区で同性カップルを認定する、「パートナーシップ制度」が設けられました。
この制度によって、パートナーは家族と同じだと認められ、病院の面会や公営住宅の申し込みなどができます。

2020年6月現在、52の自治体でこの制度が設けられ、946組もの同性婚カップルが生まれました。
しかし、「パートナーシップ」は法律上の「結婚」とは異なり、財産権や相続権などは保障されません。
法的な効力は限定的で、課題が残っているのです。

  • 子育てする杉山さん
  • 太哉の感想

杉山さん 「今、僕は10年一緒にいるパートナーがいて、子育ても一緒にしているんですけど、見た目は男女のカップルだけれども、戸籍上、僕は女性になっているので、女性同士なんですよ。そうすると法的に(結婚している)パートナーとして認められないので、例えば僕が死んだときに、僕の財産が彼女や子供にいかないっていうことだったりとか、まだまだ本当に課題が盛りだくさんなんですね。」

りゅうちぇる 「そういうところで平等じゃない、本当にこのもやもやはどうしたらいいんだろう!?」

杉山さん 「同性が結婚できるようになると異性が結婚できなくなるのであれば、それはいろんな議論が必要だと思うんですけど、別に同性同士が結婚できるようになっても、異性の権利は奪うわけではないので。どうすればみんなにわかってもらえるかなっていうのは頭を悩ましているところですね。」

りゅうちぇる 「なるほど〜。きょう、いろいろ話を聞いたなかで、太哉くんはどんなことを思った!?」

太哉 「全部、明日から変えられる、気を配れるものだなって。相手の気持ちになって思いやってあげるっていうのが大事、みんな手を取り合っていくことが大切だなって思いました。」

りゅうちぇる 「うん。本当ですね。」

  • みんなの課題
  • りゅうちぇるのテーマ

杉山さん 『すべての国民はみんな平等に』としているのであれば、矛盾がないように(法律や制度を)直していくっていうことはすごく大事だと思うんですよね。
今、当事者だけでなくて、明日の自分かもしれないし、明日の自分の大切な人(が当事者になる)かもしれない。そういう風に考えると、みんなの課題だから、みんなで準備しておいたほうがいいよね、というすごく単純な話だと思います。」

りゅうちぇる 「多様な個性がありのままで認められる社会を、僕たちは作っていけるから、これから。そして、『自分の人生を自分の好きな色で生きていく』、これ僕のテーマなんですよ。この色で生きていかなきゃいけないっていう風に縛られず、自分で好きな色を決めて、今の自分が気持ちよくなれる色で生きていくっていうことが、とにかく大事なのかなって。でもそのためには、自分にはいま何ができるのかっていうことも考えていくことが大事なのかなって、ものすごく思います。」


それでは次回もお楽しみに!

【第11回 多様な性を生きる】3ポイント まとめ
  •  家庭総合 第11回 ポイント1
  •  家庭総合 第11回 ポイント2
  •  家庭総合 第11回 ポイント3

1:性のグラデーション
「男らしさ」「女らしさ」の強制は、差別につながります。

2:自分らしさを阻むもの
自分らしく生きるために、周りの人のことも尊重しましょう。

3:社会の変化と新たなパートナーシップ
だれもが平等な社会の実現をめざし、法律や制度のことも考えていきましょう!

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