NHK高校講座

家庭総合

今回の学習

第9回 子ども

子どもを育てるのは誰!? 〜子どもの“育ち”を支える存在〜

  • ゲスト:東京大学名誉教授 汐見稔幸
    監修:大阪府立天王寺高等学校教諭 谷 昌之
学習ポイント学習ポイント

子どもを育てるのは誰!? 〜子どもの“育ち”を支える存在〜

今回のテーマは「子どもを育てるのは誰!? 〜子どもの“育ち”を支える存在〜
  • りゅうちぇる
  • 英

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

今回のテーマは、「子どもを育てるのは誰!?〜子どもの“育ち”を支える存在〜」です。
考えるための3つのポイントは、「子育ては母親だけの仕事?」「認定こども園ってなに?」「子育て支援を活用しよう!」
現役高校生の英さん(高1)と一緒に、社会全体で子どもの育ちや子育て世代を支えていくにはどうしたらいいか、考えていきましょう!

子育ては母親だけの仕事?
  • 英の意見
  • ワンオペ育児にならないようにするには…

りゅうちぇる 「(子育ては母親だけの仕事?)、全然違うよね!」

英「ひとりだけで育児をするなんて、本当に大変だと思う。そもそも子どもって、母親だけじゃなくて、(母親と父親の)2人の子どもだと思うから、母親だけなんてありえないと思います。」

だれか一人に負担がかかる、ワンオペ育児にならないようにするには、どうすればよいのでしょうか。
実際に、ワンオペ育児でとてもしんどい思いをしているお母さんの声を聞いてみましょう。

子どもと向き合うなかで、「なかなか思い通りにならなくてイライラする」など、自分の子育てに自信が持てず、悩んでいるお母さんはとっても多いのです。
ひとりの赤ちゃんでも世話をするのは大変です。それが、一度に3人の子育てをすることになったら…

  • 裁判の様子
  • 睡眠は1〜2時間

2018年、愛知県豊田市で、三つ子の母親が次男を床にたたきつけて死亡させる事件がありました。
その裁判で明らかになったのは、育児に追いつめられた母親の姿でした。
3人の赤ちゃんのミルクは1日24回、睡眠時間は1〜2時間ほどでした。
同居している夫はいましたが、うまく手伝ってもらうことができず、頼れなかったといいます。
育児のつらさを保健師に相談した母親は、子どもを一時的に預けることができるファミリーサポートセンターを紹介されます。
しかし、3人の子どもを連れて外出するのは難しく、利用することができませんでした。
癒えることのない蓄積した育児疲れが、母親を追い込んだのです。

  • 執行猶予を求める声
  • 共感の声

裁判で実刑判決となった一審のあと、「母親への厳罰は当然」という声の一方で、執行猶予を求める声も3万件を超えました。
双子や三つ子を育てるのはもちろん、たとえひとりでも育児は大変だと、子育て中の母親からも共感する声が多く寄せられたのです。

(子育て中の母親) 「わたしは育児に向いていないなと思いつめ、子どもをあやめるか、自殺をしようか、どちらがよいか迷っていました。もしも保育園の入園が決まっていなければ、わたしは三つ子事件よりも先に、虐待死事件を起こしていたかもしれません。」

「私も誰も手伝ってくれる人がまわりにいなかったので、心中をよく考えていました。」

「わたしも、そうです。ギリギリの一線をこえずにいられたのは、ただただ幸運だったから。」

  • 孤育てにならないように
  • こうとう子育てメッセ

母親ひとりでなにもかも担う、ひとりぼっちの「孤育て」にならないように、パートナーの支援はもちろん、子育ての情報交換や親同士の交流ができるイベントなど、社会全体での支援が必要不可欠なのです。

りゅうちぇる 「もし自分や自分のパートナーが、こんな(弧育てする)気持ちになったらどうしよう…。子育てっていうのは、パートナーとしっかり協力し合って、幸せなことも共有する分、辛いこともしっかり共有してやっていくことが大切なのに、それがうまくできない“孤育て”っていうのは、特につらいなって思う。

  • りゅうちぇる家族
  • ナイトルーティンの様子

りゅうちぇるさんは、パートナーのぺこさんとどうやってコミュニケーションしているのでしょうか。
りゅうちぇるさんは、毎晩、子どもが眠った後、夫婦で話す時間をとるようにしています。それが2人の「ナイトルーティーン」です。

りゅうちぇる 「ペコリン、ママ友できたの。すごくな〜い!?」

ぺこ 「できたね。相当、必死になってがんばらないと(できないと思ってた)。一番、友達できたのは、支援センター。(支援センターに)めっちゃ行ってるから、それで広がった。」

りゅうちぇる 「支援センター、いいらしいよ!」

いまは主に育児をしているぺこさんと、日常のなにげない情報も共有します。
この日はママ友のこと、育児支援サービスの大切さなど、たっぷり語り合いました。

  • 汐見先生
  • 性別役割分業意識

なぜ子育てが母親ひとりだけのワンオペになってしまいがちなのでしょうか?
ここからは、幼児教育の専門家、東京大学 名誉教授 汐見稔幸先生と一緒に考えていきます。

汐見先生 「ワンオペ育児で、お母さんがひとりで奮闘しているという家庭が、まだまだ非常に多いですよね。時代の要請に、現実がまだ合ってないっていう感じは強くありますね。(その理由の)ひとつは、男は外に出て仕事をして、女の人(お母さん)が家事・育児をやるんだというのを『性別役割分業意識』というのですが、この意識がまだかなり残っていますね。

  • 母性本能
  • 3歳児神話

汐見先生 「ふたつめの理由は、『母性本能』という考え方。母性というのは、子どものすべての気持ちをしっかりと受け止めていくということですね。
(母性とセットの)父性は、ちょっと突き放して要求するっていうことなんです。
母性で受け止めて、子どもをかわいがるのは、女性の本能だという考え方があるんですね。

(そのような感情は)だんだん身についてくるものだと分かってきていますから、母性本能説は否定されているんですけれども、まだやっぱり、『母性は女性に本能的にあるものだから、育児は女性がすべき(母性神話)』と思っている人がいるわけですよね。


母親だけが担う、ワンオペ育児になりがちな3つめの理由は、「3歳児神話」です。
「3歳までは母親の手で育てないと、後々取り返しのつかないダメージを子どもに与える」という考え方です。
いまでは、合理的な根拠は認められないと、否定されています。

英 「母親だけが(育児をする)というのは、絶対におかしいという気持ちが自分の中にすごくあるけれど、でも、時代の流れで定まってきてしまった。(母親だけが育児をするという考え方が)できてしまって当たり前なのかなって思った。時代は進んでいくから、今の時代にあわせて、いろいろ変化していったらいいのに、と思いました。」

認定こども園ってなに?
  • 幼稚園と保育所
  • 対象年齢の違い

「認定こども園」は、幼稚園の役割と保育所の役割を、併せ持った施設です。

りゅうちぇる 「そもそも、保育所と幼稚園って、どんな違いがあるんですか?」

汐見先生 「出発は明治時代ですから、かなり古いんです。幼稚園は、教育施設として発展してきました。だけども、親が働いていて昼間、面倒をみられないような子どもたちの、(面倒を)みてあげようと、福祉施設として発達してきたのが保育所なんですね。」

保育所と幼稚園の大きな違いのひとつは、年齢です。
保育所には0歳から、幼稚園には3歳から、入ることができます。

  • 幼稚園でも要望
  • 認定こども園

ところが近年、「幼稚園の方でも2歳から子どもを預かってほしい」「夕方まで預かってほしい」といった要望が増えてきました。
そうした要望にこたえるため誕生したのが、保育所と幼稚園が一緒になった認定こども園です。
0歳から5歳までの幅広い年代の子どもたちが一緒に過ごすことで、教育的なプラスの効果も得られると期待されました。

  • 乳児クラス
  • おかあさんの反応

神奈川県横浜市にある、ゆうゆうのもり幼保園では、幼児教育と保育の両方を提供していて、0歳の乳児から5歳の幼児まで、200人ほどの子どもたちが通っています。

0歳〜2歳の「乳児クラス」では、子どもたちは三輪車に乗ったり、水遊びをしたり、思い思いに遊んでいます。
たとえ服が泥だらけに汚れてしまっても、大人は何も言いません。
自由に、そして主体的に遊ぶ子どもたち。
こうした遊びの中から、なにかに気づいたり、感じたりしながら、考える力を育みます。

親が働いていても、働いていなくても、認定こども園には子どもを預けることができます。
子どもを預けることで、お母さんにも、変化がありました。

(子どもを預けたお母さん) 「子どもといない時間があることで、子どもにやさしくなれたりとか、そういうのはあります。」

「ひとりの時間があることで、やっぱり他に気がいくので、ストレス解消になっていると思います。」

  • 幼児クラス
  • 先生の話を聞く

3歳〜5歳の「幼児クラス」では、みんなで一緒に楽しく遊んだり、先生の話を聞くときはちゃんと集中しています。
こうして、子どもたちは集団で行動することの大切さを学びます。

また、乳児から幼児まで、異なる年齢の子どもたち同士が関わることで、お互い、刺激を与え合いながら成長していきます。

  • 子育て支援
  • 参加者の感想

さらに、地域の子育て支援も担う認定こども園では、親同士のコミュニケーションの輪も広がります。

(参加者) 「つながることが一番楽しくて、いろんな人がそれぞれ考えていることとか、お互いに情報交換したりとか、そういうことでまた私もいろんなことを知ることができるし、つながるってことはすごい楽しいですね。」

子育て世代のニーズと、時代の要請に応える認定こども園は、いまでは全国で約7200か所と、施設の数も増え続けているのです。

英 「(認定こども園は)年齢の幅が広いことで、傍観遊びとか、小さい子がもっと大きい子の遊ぶ姿を見て学べることもたくさんあるんじゃないかと、すごくおもしろいなと思いました。」

  • 待機児童
  • 待機児童の理由

りゅうちぇる 「認定こども園のように保育所と幼稚園が一体化するのはいいと思うんですけれども、そもそも子どもをそういった施設に入れたくても入れることができない、『待機児童』の問題っていうのも深刻ですよね。」

汐見先生 「そうですね。どういう子どものことを『待機児童』というのかは、定義によって数が変わるんですが、全国で何万もの子どもたちが、(施設に)入りたくても入れないという状態でいることは、間違いなくそうなんですよね。」

りゅうちぇる 「なぜ、そんなに(待機児童が)多くなってしまっているんでしょうか?」

汐見先生 「1990年代以降バブル経済が崩壊した後、社会が不安になって、母親が働かないといけなくなってしまった、という背景があるんですよね。(女性の社会進出が進み、共働き世帯が多くなり)、ともかく保育所に入れたいという人が急速に増えた。
しかし、国の政策としては、『(今後)子どもは減っていくんだから、どんどん保育所を作ることはしない』とある時期までやっていた。だけど、それでは間に合わないので、(いまは)急速に保育所を増やすことをやっていますけれども、追いつかないんですね。」

りゅうちぇる 「子育てに困っている親たちを減らすためにも、もっといろいろな対策を考えていくべきですよね。」

子育て支援を活用しよう!
  • 子育てコンシェルジュ
  • 一時保育

共働きや、離婚して母親や父親だけといった一人親など、子育てに悩める親をサポートしてくれる、頼もしい存在とは?
一体どんな子育て支援があるのでしょうか。

全国の自治体には、子育ての相談にのってくれる窓口があります。
「子育てコンシェルジュ」などと呼ばれる相談員は、保育所や幼稚園などの入園に関することや、日ごろの子育てにまつわる不安など、さまざまな相談に応じてくれます。

親からの相談のなかで特に要望の多いのが、短時間、子どもを預ける「一時保育」サービスです。
一時保育では、子どもを施設などで預かってもらうことができます。

  • 家庭訪問型子育て支援
  • 病児保育

また、子育て経験のあるボランティアが話を聴いてくれる「家庭訪問型子育て支援」もあります。

ほかにも、支援を求める声が多いのが「病児保育」です。
子どもの体調が悪くなったときにも、子どもを預かってくれるサービスです。
病児保育には、訪問型のサービスもあります。
保育スタッフが病気の子どもを預かり、必要な場合はかかりつけの病院を受診します。
その後、利用者の家で子どもの世話をする仕組みです。
病児保育は、共働きの家庭や一人親にも、とても頼りになる子育て支援です。

  • パパママ銭湯の日
  • 利用者の声

そして、パパとママの子育ての疲れをいやしてもらうおうという、ユニークな支援もあります。
東京杉並区の銭湯では、ボランティアの人たちが子どもの世話をしてくれている間に、
パパとママはありがたく、のんびりとお湯を楽しみます。(「パパママ銭湯の日」

(パパママ銭湯利用者) 「大人がいる環境っていうのが、やっぱりありがたいですね。なにかあったときに『助けて』といえる環境っていうのは、ありがたいです。」

社会のみんなで、子どもたちを育てていく。
パパママ銭湯や、一時保育、病児保育など、さまざまな支援が広がって、子育てしやすい地域づくりが進められているのです。

  • 心の支えになる
  • 人類史にはない

英 「訪問型病児保育、急な変化に自分が対応しきれなかったとき、すごいパニックになると思うんですよ。でもそういうときに、助けてくれる存在があるっていうことだけでも、すごく心の支えになるというか、強い味方だなあと思います。」

汐見先生 「病児になったときに、わざわざ迎えに来てくれるという制度は、まだ一部の地域しかできていません。こういうのを当たり前にどこでもやる、申し込むときにも電話一本ですぐ来てくれるような、申し込みが簡単にできる、敷居の低いサービスが各地でできていくことが、いま課題になっています。
そういう方向に、いま急速に変わってきているんだということはよく知っておいていただきたいですね。」

「実は、人類史の研究によると、『人間の母親が孤立して育児をしたことは、人類の歴史上にはない』ということがわかってきたんです。いつも誰かに手伝ってもらっている。『今日は病気だから』って言ったら、『寝てなきゃダメじゃないの』『ごはんぐらい作ってあげるから』と近所の人がやってくれたんですね。いまはそれがなくなったので、現代風に工夫して子育てを手伝ってくれる場を、もう一回、制度的に作っていこうという努力をしている最中ですね。

英 「家族だけではなく、もっと広い視野で周りの人を見ると、支えが見つかったりすることで、また子どもへの愛情というところにもつながっていくから、周りの支えは本当に重要なんだなって思いました。」

りゅうちぇる 「地域の人たち、保育所や幼稚園などで関わる人たち、いろいろな人たちの支えがあって、子どもは成長していくんですよね。」


それでは次回もお楽しみに!

【第9回 「子どもを育てるのは誰!? 〜子どもの“育ち”を支える存在〜」】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第9回 ポイント1
  • 家庭総合 第9回 ポイント2
  • 家庭総合 第9回 ポイント3

1:子育ては母親だけの仕事?
母親だけに負担のかかるワンオペ育児にならないように、さまざまな子育て支援が必要です。

2:認定こども園ってなに?
保育所と幼稚園、2つの機能を併せ持つ認定こども園。子どもたちは遊びや集団での活動を通して成長します。

3:子育て支援を活用しよう!
支援サービスを充実させ、社会全体で子育てを支えましょう!

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