NHK高校講座

科学と人間生活

今回の学習

第15回 物理

変化するけどなくならない 〜エネルギーって何?〜

  • 科学と人間生活監修:東京都立豊島高等学校指導教諭 佐藤 功
学習ポイント学習ポイント

変化するけどなくならない〜エネルギーって何?〜

  • スターリングエンジン
  • コップにはお湯だけが入っている

僕蔵さん 「よくこんなの考えたよな。静かでエコで、古いのに新しい!」

そう言いながら、机の上にある装置を楽しそうに見つめる僕蔵さん。コップの上に置かれたこの装置は、上部に車輪が付いていて、回り続けています。


実穂 「僕蔵さん、何それ?」

僕蔵さん 「スターリングエンジンって聞いたことある?」

実穂 「なんで動いているの?」

理陽 「乾電池とかで動いているんじゃない?」

実穂 「コップの中に乾電池があるのかな。」

コップの上に置かれた装置を取ると、コップの中には熱湯が入っているだけです。


僕蔵さん 「お湯の熱エネルギーが、車輪を回す力学的エネルギーに変化しているということなんです。」

  • 湯の温度が高いほど、熱エネルギーは大きい
  • 熱エネルギーが力学的エネルギーに変化

今日のテーマは「変化するけどなくならない」、姿を変えるエネルギーの秘密に迫ります。


理陽 「熱エネルギーが、力学的エネルギーに変化したってどういうこと?」

僕蔵さん 「コップの中のお湯が持っているエネルギーを、熱エネルギーといいます。お湯の温度が高ければ高いほど、その熱エネルギーは大きくなります。一方、車を回転させている運動のエネルギーを、力学的エネルギーといいます。」


装置の車輪は、熱エネルギーによって回っていました。つまり、熱エネルギーが力学的エネルギーに変わったため、車輪が回転したのでした。


実穂 「エネルギーは姿を変えるって教科書に載ってたよ。」

理陽 「その装置の仕組みを もっと知りたいな。」

僕蔵さん 「この装置は、熱エネルギーが装置の中の気体を膨張させて動かしているんだ。」

  • ロバート・スターリング
  • 空気が膨張してピストンを上に押し上げる

スターリングエンジンは蒸気を使わない、構造がとてもシンプルな熱機関として知られています。1816年にスコットランドの牧師であるロバート・スターリング(1790年〜1878年)によって発明されました。小さな温度差で動くエンジンとして、今もなお注目されている熱機関です。

スターリングエンジンの動く仕組みを見てみます。まずお湯の熱で空気が膨張し、ピストンを上に押し上げ車輪を回転させます(右図)。

  • 車輪の回転で板が下におり空気が収縮する
  • 板が上にあがりお湯の熱で空気が膨張する

次に車輪の回転でエンジン内部の板が下にさがります。このとき板がお湯の熱を遮るため、エンジン内部の空気の温度が下がり空気が収縮します(左図)。空気が収縮すると、車輪が回転し板が上にあがります。そして再びお湯の熱で空気が膨張します(右図)。このように、スターリングエンジンは空気の膨張と収縮が繰り返されることで動いています。

  • 装置の仕組みが違うスターリングエンジン2
  • 装置の仕組みが違うスターリングエンジン

上写真は、ピストンが上下に動くタイプのスターリングエンジンです。こちらも、下にあるコップの中に熱いお湯が入っているだけです。

お湯の熱エネルギーが、装置を上下に動かす力学的エネルギーに変わるというエネルギーの変換は、先に見たスターリングエンジンと同じです。また、中の空気が膨張と収縮を繰り返して動くという点も同様ですが、装置の仕組みが異なっています。

  • ビー玉スターリングエンジン
  • バーナーの炎で試験管を温める

次に僕蔵さんは、手作りのスターリングエンジンを見せてくれました。

僕蔵さん 「名付けてビー玉スターリングエンジンだよ。試験管の中に入っているのはビー玉なんだ。」


先に出てきたスターリングエンジンとの違いは、熱エネルギーがお湯ではなく、より強力なガスバーナーの炎を使う点です。

バーナーの炎で、ビー玉が入った試験管の下部を熱します(右写真)。すると、試験管の両端が交互に上下してシーソーのように動きました。


※この実験は適切な指導者のもとで行ってください

  • 試験管の中の空気が温められて膨張する
  • 温かい空気が試験管上部に集まる

ビー玉スターリングエンジンの動く仕組みを見てみます。

まず試験管の中の空気がガスバーナーの炎に温められて膨張します(左図)。膨張した空気は注射器へと流れ、注射器の筒を押し上げることで試験管が傾きます。それによってビー玉が試験管の底に来るため、中の温かい空気が試験管上部に集まります(右図)。

  • 注射器の空気が試験管に流れ込む
  • ビー玉が試験管の底から離れる

集まった空気が冷やされると今度は収縮します。試験管の中の空気が収縮すると、注射器の空気が試験管の中に流れ込み(左図)、試験管が左に傾くため、ビー玉は試験管の底から離れます(右図)。

このような空気の膨張と収縮で動いています。

  • 廃熱

理陽 「この装置はずっと動き続けられるの?」

僕蔵さん 「熱エネルギーを与え続けさえすればね。」


しかし、ガスバーナーの熱エネルギーをどれだけ力学的エネルギーに変えられているのかといえば、それほど多くはないといいます。
ガスバーナーの炎の、熱エネルギーの大部分が空気中に逃げてしまうためです。


また、スターリングエンジンが動くためには、試験管の中の空気を温めて膨張させるだけでは不十分です。試験管の中の空気を冷やし、収縮させることも必要になります。

実穂 「冷やすということは熱を逃がすということ。熱を逃がすということは、熱エネルギーをそのまま捨てちゃうってこと。」


このように熱エネルギーが力学的エネルギーに変わる際、多くは力学的エネルギーとして利用されないまま、捨てられてしまいます。このような、捨てられてしまう熱を廃熱といいます。


僕蔵さん 「理陽くん、車に興味あるよね?廃熱を動力に利用したり熱エネルギーを効率よく利用する仕組みを “熱効率を向上させる” なんていうけれど、車の世界ではその開発がすごく進んでるみたいなんだよ。ちょっと調べてみたら?」

リサーチモード! 自動車の熱効率
  • リサーチモード!自転車の熱効率
  • 山根健さん

理陽くんは自動車の熱効率に関する取り組みを調査するために、レーシングチームのテクニカルディレクターである山根 健さんを訪ねました。山根さんは長年エンジンの開発に携わっているエンジニアでもあります。

理陽 「今日は車の熱効率の向上のために、どのような取り組みをしているのかを尋ねに来ました。」

山根さん 「では、まずはボンネットの中とブレーキの温度を測ってもらいたいと思います。」


まずは車が走り出す前とドライブした後で、どれだけ温度が変化するのかを確かめるため、エンジンとブレーキの温度を測ってみます。

エンジンとブレーキの温度と、熱効率の間には、いったいどのような関係があるのでしょうか。

  • ボンネットを開ける
  • ブレーキの温度を測る

ボンネットを開け、エンジンの温度を測ります。エンジンの温度は33.7℃でした。また、タイヤに付いているブレーキの温度は、27.8℃でした。

  • ブレーキの温度の変化
  • エンジンの温度の変化

車で五分間走った後スタート地点に戻り、エンジンとブレーキの温度を再度計測します。

その結果、ブレーキは59.1℃になり、ドライブ前より約31℃も上がっていました。またエンジンは58.4℃で、約25℃も温度が上がっていました。

このように、車が走るとたくさん熱が出るということが分かりました。その熱がすべて車が走るということに使われればいいのですが、そうではありません。このような捨てられてしまう熱、すなわち廃熱の少ない車が熱効率の良い車なのです。


理陽 「車のパーツの温度を測らせてもらいましたが、車は走ることによって熱を生じるということが分かりました。熱効率はどうなっているんでしょうか。」

山根さん 「熱効率はだいたい30%かそれ以上というところが今のエンジンです。30年前のエンジンは20%行くか行かないかというくらいでした。それからいろいろな技術の進歩によってようやく30%になり、将来は40%を目指す開発を今みなさんがやっているところです。」

  • ターボエンジン
  • 気体を爆発させてピストンを動かす

ガソリン自動車の熱効率を上げる技術の一つにターボエンジンがあります。ガソリン自動車のエンジンは、ガソリンと空気の混ざった気体を爆発させてピストンを動かしています(右写真)。そのとき、動力として使われず捨てられてしまう多くの熱エネルギーや運動エネルギーがあります。

  • 捨てられるエネルギーを取り込む
  • ピストンの動力として再利用する

ターボエンジンでは、その捨てられてしまうエネルギーを再び取り込み、ピストンを力強く動かす動力として再利用しています。


結論:ターボエンジンで熱効率をアップ

  • 電気自動車

また、燃料をガソリンに頼らない自動車の一つに電気自動車があります。
電気自動車が電気エネルギーを仕事に変える割合は70%程度と、高い割合を実現しています。
電気自動車など次世代の自動車もまた、進化し続けています。

エネルギーの変換
  • 力学的エネルギーと四つのエネルギー
  • 力学的と四つのエネルギーの関係

ここからは、いろいろな種類のエネルギーの変換について考えていきます。

パネルには力学的エネルギーの周りに、熱エネルギー・電気エネルギー・化学エネルギー・光エネルギーが配置されています。力学的エネルギーと前述の四つのエネルギーの関係を示したカードを、パネルの対応する部分に貼り付けていきます。


まず、スターリングエンジンは、熱エネルギーを力学的エネルギーに変換しています。

摩擦は力学的エネルギーを熱エネルギーに変換しています。
前回(第14回「熱くなったり冷たくなったり」)、理陽くんが水の温度を上げるためにシェーカーをタオルでこすり、中の水の温度を上げました。

  • 自転車のライト
  • パネルの回答

自転車のライトは、ライトを車輪の回転を使って点灯させており、力学的エネルギーから光エネルギーに変換しています。

ソーラーカーは、太陽の光エネルギーを力学的エネルギーに変換しています。

ガソリンエンジンは、石油の化学エネルギーを力学的エネルギーに変換しています。

モーターは、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換しています。

手回し発電機は、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換しています。


理陽 「でも、手回し発電機って実際に見たことないな…。」

  • 手回し発電機の先に電極をつける
  • ハンドルを回すと電球が光る

実際に、手回し発電機で実験します。まず、手回し発電機の先に、導線で電球を接続します。
ハンドルを回すと、電球が光りました(右写真)。


理陽 「ハンドルを回転させる力学的エネルギーが、電球をつける電気エネルギーに変わったということだ。」

僕蔵さん 「そういうこと!」

実穂 「でもそれって、自転車のライトと同じじゃないの?」

僕蔵さん 「実は自転車のライトは、力学的エネルギーが電気エネルギーに変わり、それが光エネルギーになったということなんです。」

理陽 「エネルギーにはいろいろな種類があって、姿も変えるんだね。」


エネルギーの変換は ほかにもたくさんありますが、エネルギーの変換にはある一つの法則があります。エネルギー保存の法則です。エネルギーは変換されてもその種類を変えるだけで、エネルギーの総量は増減しないというものです。

  • ケミカルライト
  • ケミカルライトを折ると光る

最後に、化学エネルギーから光エネルギーへの変換を見てみます。
ケミカルライトの両端を持って、中心を折ると光ります(右写真)。

ケミカルライトは、化学物質の反応で光っています。
この化学反応はシュウ酸ジフェニル・過酸化水素・色素によるもので、混ぜる色素を変えることで、いろいろな色に光らせることができます。

エネルギーの種類にはいろいろなものがあり、姿を変えながら私達の暮らしの中で利用されています。身の回りにどのようなエネルギーの変換があるのか、調べてみましょう!

  • 驚く二人

理陽 「いろいろな種類のエネルギーがあるというのは分かったけれど、エネルギーのおおもとって何なの?」

僕蔵さん 「なんといっても太陽だよね。地球に降り注ぐ太陽のエネルギーは、一時間分が人類が使うエネルギー一年分とほぼ同じらしいんだよ。でもその太陽のエネルギーを活かしきれているかというとまだまだだな。電気を大量に蓄えておくことも難しいしね。その点、保存でいうと石油や石炭などの化石燃料は優れているよね。でも化石燃料にも限りがあるから、エネルギーは大切に使おうってこと。あっ、ちなみに太陽にも寿命があるって知ってた?」

理陽・実穂 「そうなの?!」


驚く二人に対し、語り続ける僕蔵さんなのでした。


それでは次回もお楽しみに〜!

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