NHK高校講座

美術T

今回の学習

第12回

テクノロジー 〜テクノロジーの発展と美術〜

  • 美術教育監修:日本放送協会学園高等学校 教諭 橋本 琢磨
    美術監修:東京藝術大学 特任教授 伊東 順二
学習ポイント学習ポイント

テクノロジー〜テクノロジーの発展と美術〜

  • ミケさんの顔がたくさんついたモビール
  • インタリアとしては無理だね!

ミケさんの顔がたくさんついたモビール。
「インテリアとしては無理だね!」と言うシシド・カフカさん。
一方、石こう像の妖精(?)ミケさんは「本来は彫刻のミケさんが一斉に動いているなんて凄いでしょ!」と喜んでいます。

モビールは、アメリカの彫刻家が自分の作った彫刻を動かしたいと考えて生まれたものです。
当初は、モーターで動かしていたそうです。
このように、動かないものを動かすことで、さらに多くのことを表現しようという発想がアートを大きく変えました。

“動くアート”からの発展
  • ブラウン管のテレビ

テクノロジーとアートの関係を語るうえで欠かせないテレビ。
最近は液晶で薄型のものが多いですが、少し前まではブラウン管のテレビが主流でした。
テレビなどの映像メディアの出現はアートに進化をもたらしたと言われています。
日本でテレビ放送が始まったのは1953年。
そして、1960年頃には世界でテレビを使ったアート作品が作られるようになりました。
そのようなアートをビデオアートと言います。

ビデオアートを最初に始めたのは、ソウル生まれのナムジュン・パイク。
1960年代からテレビを使った斬新な映像作品を発表し、美術界に衝撃を与えました。
パイクは、テレビを表現の手段として活用する、「ビデオアート」を確立したアーティストなのです。

  •  「ケージの森/森の啓示」
  • 「ユーラシアン・ウェイ」

上の左図は、みずみずしい植物と無機質なテレビ画面が不思議なコントラストを作り上げている「ケージの森/森の啓示」。
テクノロジーと生命の融合は、パイクのビデオアートのテーマでした。

上の右図は、「ユーラシアン・ウェイ」という作品。
旅で集めた雑貨とテレビをユーラシア大陸の形に見立てています。
テクノロジーと東洋の融合を表現したのです。
テレビを便利な道具としてだけでなく、いかに人間に近づけるかに挑戦したパイク。
テクノロジーを人間と融合させて共存させようとしました。
生きているものと機械が一体化しているおもしろさを感じますね。

美術がつむぐ物語
  • カフカさん
  • 伊東順二先生

今回、テクノロジーとアートについて教えてくれるのは東京藝術大学特任教授の伊東順二先生。
テクノロジーは利便性などを求めて発展していきます。
メディアアート界のダヴィンチとも言われるパイクが表現したかったのは、テクノロジーを戦争などに利用するのではなく、平和に利用し、新しい表現を作り出すのが芸術であるということです。
今回は、彼の思いを継承し、発展させていくアーティストの作品を見てみましょう。

  • 「ワールド・プロセッサー」
  • 「The Growth Tendril」

上の左図は、パイクの元でビデオアートを学んだインゴ・ギュンターの「ワールド・プロセッサー」という作品です。
世界で起こるさまざまな問題を多くの地球儀を並べて表現していて、1つ1つの地球儀には紛争地域や熱帯雨林の縮小などの社会問題が表されています。
みんなが考えなければならない問題を前向きに取り上げるため、視覚的に人を説得できるような美しさで問題意識を明確にした作品です。
ギュンターはジャーナリズムとアートの関係を発展させた人物です。

パイクが新しいアートの手段として、もうひとつ注目していたのがコンピューターグラフィックス。
バーチャルリアリティーは、現実の世界ではないところにデータや情報による世界を作り上げるものです。
上の右図は、CGアート界のパイオニアである河口洋一郎の「The Growth Tendril」。
生物の動きなどの複雑な動きを鮮やかな色彩のコンピューターグラフィックスで表現しています。
この作品が作られたのは1980年代。
最先端の技術を駆使してCGアートの可能性を広げました。

デジタルとアナログの融合
  • 青山昴平さんと近藤直人さん
  • 斬新なデジタルアート作品

デジタルアートのエンジニア、青山昴平さんと近藤直人さん。
2人が所属しているのはテクノロジーとアートを組み合わせて斬新なデジタルアート作品を生み出すクリエイター集団。
最先端のテクノロジーを利用して体験できるデジタルアートを数多く発表しています。

  • お絵かき水族館
  • クラゲをクレヨンで描いたカフカさん

カフカさんが訪れたのはチームラボアイランド〜学ぶ未来の遊園地〜。
青山さんと近藤さんが開発を担当した「お絵かき水族館」のコーナーでは、来場者が描いた魚が自由に泳いでいます。

カフカさんも参加してみることにしました。
クラゲをクレヨンで色づけしたカフカさん。

  • 完成した絵をスキャニング
  • スクリーンの水槽の中を泳ぎ始めます

完成した絵をスキャニングすると、スクリーンの水槽の中を泳ぎ始めます。

  • センサーが、どこを触ったのかを検知
  • 魚が集まってきます

スクリーンに映った魚を触ると逃げていきます。
また、スクリーンに現れる餌袋を触ると、袋が破れて餌がでてくるので、魚が集まってきます。
これらはスクリーンの上部に付いているセンサーが、どこを触ったのかを検知しているためです。

  • お絵かきタウン
  • カフカさんが描いた車

同じような仕組みの「お絵かきタウン」というコーナーは街を作ることをテーマにしています。
ここでは車やUFOなどに色づけできます。
来場者がいろいろな色を使って絵を描くことを想定して、まとまりのある画面になるよう元々の背景の色味などが工夫されています。

カフカさんが描いた車も走らせてみました。
スクリーン上の車に触ると飛びはねるような動きをします。
動きも何種類か用意されているそうです。

  • ペーパークラフト用の車の展開図
  • 立体の車を実際に組み立て

描いた車を別の装置でスキャニングすると、車の展開図が印刷されます。
切り取って組み立てることで、立体の車を実際に組み立てられるようになっています。

  • 青山さんと近藤さん
  • 次回もお楽しみに〜!

コンピュータはどんどん簡単に使えるようになっていて、
近い将来、誰でも自宅でお絵かき水族館のようなものが作れるようになるのではないかという青山さん。
テクノロジーとアートが融合することで、いろいろな可能性が詰まっていて、楽しみな世界ですね。

それでは次回もお楽しみに!

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