インドの憲法では、１９５０年にカースト制による身分差別を禁止しました。
職業選択や婚姻の自由も認められています。
しかし、就職で必要となる学歴を得るには、多くの場合、親の社会的地位や経済力が求められます。
そのため、従来のカースト制に基づく分業が繰り返されることも多くあります。

ところが、近年、新たな潮流が生まれました。
２０００年代以降、情報通信技術産業（ＩＣＴ産業）が急速に発展し、いまやインドの経済発展を支える産業にまで成長しました。

大手ＩＣＴ関連会社の会長は、次のように語ります。
「地方の農村でさえ、親たちは子どもにエンジニアになるよう勧めています。エンジニアになれば仕事に恵まれ、海外に行くチャンスもあります」

ＩＣＴ産業は、カースト制が廃止された後にできた産業のため、カースト制の影響を受けませんでした。
そのため、幅広く優秀な人材をそろえることができ、発展を支えたといいます。

ＩＣＴ産業がインドで急成長を遂げているのには、ほかにも理由があります。
・かつてイギリスの植民地だったことから、英語に堪能な人材が多いこと
・数学やコンピュータ技術などの教育に力を入れてきたこと
・地球の裏側にあたるアメリカ合衆国との時差を生かせること
などが、その理由です。

例えば、コールセンター業務やデータ処理業務をインド側が引き継ぐことで、２４時間体制で稼働することが可能になります。