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山梨県市川三郷町が「財政非常事態宣言」

人口1万人の町、どうして財政難に?今後の改革は?
  • 2024年05月23日

町長の月給38万円!行政サービスも困難に?

 

2023年9月の記者会見

市川三郷町の遠藤浩町長は去年9月に記者会見を開き、「財政非常事態宣言」を出しました。
この宣言には法的な拘束力はありませんが、町民に町の財政が危機的な状況だと知ってもらうため、独自に自治体トップの判断で出すものです。

そして町長は、自身の給料の4割カットにも踏み込み、月給は38万円ほどに減額されました。県内の市町村長のなかで最低水準だといいます。どれだけ危機的な状況なのでしょうか。聞いてみました。

遠藤浩
町長

将来に向けての事業が行いづらい、政策的なことができない状況です。
そればかりか、住民の大切な今の行政サービスも不可能になってくるという危機的な状況と認識しています。

もう少し詳しく説明すると・・・。

 

町長が宣言を出すのにあたり、示した指標の1つが「経常収支比率」です。

「経常収支比率」は収入に対して、人件費など削ることができない経費がどのくらい占めているかを示すものです。

これが100%に近づくほど、自由に扱えるお金が少なくなり、町が独自に進めたい政策にお金を振り分けることが難しくなります。
たとえば、人口を増やそうと子育て政策を充実させようとしても「お金がなくてできない」ということになってしまいます。

市川三郷町は令和4年の決算で、この「経常収支比率」が98.2%。ほとんど余裕がない状態です。

どうしてこんな状況に?

こうした状況に陥った原因として、町は原因は主に2つあるとしています。

1:少子高齢化により、住民税など町の収入が減ったこと
2:合併から10年後には、国からの交付金が減らされることがわかっていたのに、財政運営を見直さなかったこと

これをもう少し詳しく説明すると・・・
複数の自治体が合併してできた新しい自治体には、特例措置として合併から10年間は、合併した自治体の分だけ、3つの町が合併した市川三郷町では3つの町の分の「地方交付税」が国から交付されるので、町の財政はいっとき潤います。しかし、その期間は10年間だけ。それ以降は段階的に減らされていきます。これは合併時にわかっていたことで、本来なら10年後以降を見据えて財政運営を見直すべきでした。たとえば図書館や学校、スポーツセンターなど、管理費がかかる公共施設について新しい町の人口の規模に応じた統廃合が必要でしたが、合併後に統廃合されたのは保育園1か所にとどまりました。
また、高齢者や子育て世帯に給付する町独自の給付金事業も、ほとんど見直されてこなかったということです。

想定されていた財政危機

ただ、この財政危機は“想定内”でした。

 

市川三郷町ホームページより

平成17年に合併する際に作成された「新しいまちの将来構想」という冊子では“地方交付税の特例措置がなくなれば厳しい財政運営が迫られる”という指摘が、すでにされていたのです。

それでも改革が進まなかった理由について取材を進めると、「将来の地域のため」という目的で行った合併の“負の側面”が、財政危機という形で出てきたのではないかと感じるようになりました。

ある元町議は

3つの町の合併後も、それぞれの町が地域をよくしたいと主張し、どこかの町の施設をなくすという動きにつながらなかった。

また、この町議は議員が自分たちが立候補する地域の選挙を意識していたこともあり、町全体の課題である財政問題に切り込むことができなかったとも、吐露していました。

さらに町の幹部からは

合併することが最大の目的になってしまい、合併して大きくなった町を、どう効率的に運営していくかという視点が欠けていたのではないか

という指摘もありました。
この話を聞き、目的と手段が逆になってしまっていたのではないかと感じました。

町の改革は

町はようやく、この危機から脱却しようと動き出し、去年12月に「行財政改革推進計画」を策定しました。

この計画のなかでは、令和7年度までに集中的な改革を進め、

「経常収支比率」を令和3年度の98.1% → 95%以下にすることを     目標に掲げました。

そして、これを達成するために、

・現在ある201の公共施設のうち、30施設を統廃合することで施設の運営費を年間約2億円削減

・補助金やイベントの集約などで令和6年度は、関連の経費を約2億円縮小

としています。

しかし、計画の推進は前途多難と言えそうです。
ことし1月に行われた住民説明会では、住民から不安の声が上がりました。

 

住民の
男性

住民の癒やしとなっている温泉施設など、地域の主要施設は残してほしい

 

住民の
女性

子どもが集まる図書館がなくなると不便になり、若い人が定住しなくなるのではと不安に感じます。地域の未来を描けるような希望を示してほしい

この計画をどのように実行に移していけばいいか、平成8年に宣言を出した岐阜県多治見市で当時市長を務め、山梨学院大学で地域経営論を担当していた西寺雅也さんに話を聞きました。

西寺雅也さん

多治見市では、市民の委員会をつくって将来のまちづくりを議論してもらう形で計画を進めていくことや、植樹を住民にやってもらうなど参加の仕組みをつくって、自分たちが住んでいる環境そのものを守りながら、経費を節減しても大丈夫だとわかってもらうようにしました。一般の町民にとって、財政はわかりにくいので、財政がどうあるべきかがわかるような、みんなで議論する場をつくり、情報を共有することが非常に大切です。

多治見市では、こうした取り組みを5年続けて、宣言を解除したということです。

合併後、手がつけられてこなかった財政改革を進めることは容易ではありません。
住民が納得できる改革を進め、財政を立て直すことができるのでしょうか。

大﨑

【取材後記】                                新しい年度が始まる4月から、市川三郷町は改革に向け本格的に取り組みを始めました。手始めとして、新しい年度の予算案を審議する3月の町議会の定例会に、温泉施設やスポーツ施設の利用料を値上げするための条例の改正案を提出しました。しかし町議会は「値上げの前に集客を伸ばすよう工夫することが大事だ」などとして、この改正案を否決しました。町の改革は前途多難と言えそうです。

そして、あなたが住むまちの「お財布事情」、いかがですか?この記事が、まちの財政に関心を持つきっかけになれば幸いです。

  • 大﨑 智都

    甲府局・記者

    大﨑 智都

    2023年に同業他社から転職し、地域職員として入局。
    山梨を盛り上げるために頑張ります!

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