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ヘルメットで自転車事故を防ぐ 高知の親子の思い

  • 2023年05月25日

自転車の事故から頭部への衝撃を軽減し、命を守るヘルメット。2023年4月、道路交通法の改正で着用が努力義務となりました。
施行から1か月あまり。県内の状況と自らの事故の体験を通じてヘルメット着用の大切さを訴える親子を取材しました。
(高知放送局 記者 園田孝一郎)

努力義務化から1か月 街の声は

2023年4月、自転車に乗るすべての人を対象にヘルメットの着用が努力義務化されました。
施行から1か月あまり、自転車の利用者に話を聞きました。

ヘルメットを着用している人は

頭を保護しないと、と思いまして

(見た目より)自分の命を大事にしたいから周りにもおすすめしたい

一方、ヘルメット未着用の人は

押さえつけられて髪が崩れるので それはちょっと嫌だな

習慣がなく まだ努力義務なので

ヘルメットの大切さを実感しているものの、まだ着用することに消極的な意見もありました。
実際、施行後、高知県警察本部が高知市内で行った調査で着用率はわずか1割あまりにとどまり、
ヘルメットの着用は浸透していないのが現状です。

生死をさまよう事故を経験 着用を訴える親子

塩見 和朗さん

事故の体験を通じてヘルメットを着用する大切さを訴える若者がいます。
高知市の大学1年生の塩見和朗さんです。

高知市横浜の事故現場

6年前の2017年1月、当時小学6年生だった和朗さんは高知市の路上で自転車に乗って塾から帰る途中に車にはねられました。

フロントガラス横にあるピラーと僕の頭がぶつかったらしいです。
後から聞きましたが、警察官は『あの部分に頭がぶつかったら絶望的だろう』と話していたようです

意識不明となった和朗さん

家族でサイクリングに出かけることが多く、小さい頃から母親にヘルメットをつけるよう言われていました。しかし事故当日、たまたまヘルメットを着用していなかった和朗さんは、頭を強く打ち意識不明の重体となりました。
ICU(集中治療室)に入り、生死の境をさまよう和朗さんに家族は懸命に声をかけ続けました。

意識を取り戻した瞬間の和朗さん

そして3日後、回復を願う家族のもとに奇跡が訪れました。ICレコーダーに録音した学校の友人たちの
励ましの声に目を開いて反応したのです。

和朗さんの母親 塩見絵里香さん

母親の絵里香さんはこの時ほど命の大切さを実感したことはないと振り返ります。

和朗が出産で生まれた時よりうれしかったです。やっとこっちに戻ってきたって。この子この先また生きていけるんだって

リハビリに取り組む和朗さん

和朗さんの意識は戻りましたが、脳にダメージを受けたことで一時、後遺症に悩まされました。

今は大丈夫ですが、後遺症で記憶力が低下した時期がありました。
あの時ヘルメットをかぶっていたら、軽傷で済んだかもしれないと思います 

命を大切にして欲しい ヘルメット着用を訴える活動

講演でヘルメット着用を訴える絵里香さん

事故をきっかけに、塩見さん親子はヘルメットの大切さを訴える活動を始めました。

みなさんに頭と体、自分で守ってほしいんです。
みなさんの家族が私たちみたいに一生分の涙を流さなくて済むように 

2018年10月 県議会でヘルメット着用求める条例案が可決

塩見さん親子の強い思いが実を結びます。事故翌年の2018年10月、子どもにヘルメットを着用させるよう保護者に努力義務を求める県独自の条例が制定されました。

すごく早く条例が制定されてびっくりしました。
高知の人たちに子どもの命を守るための思いが伝わってうれしかった 

そして事故から6年。大学生になった和朗さんはヘルメット着用の努力義務化について、活動の成果であると喜ぶとともに着用が“当たり前の社会”になることを願っています

ヘルメットをかぶってほしいという願いが国に届いたわけじゃないですか、それは大きな進歩かなって思います。
皆、人それぞれ自分のやりたいこととか将来の夢とかあると思うんですけど、その将来に届く前に命が絶たれてしまったら本当に元も子もないので。
いま命を守るために何ができるか、しっかり考えていただいて
その上でヘルメットをかぶってほしいっていうのが僕の願いです

「ダサい、面倒くさい、着用しなくても罰則がない」 
 取材を進める中、ヘルメットに対しこのような声を多く聞きました。
 しかし「そういった声は全て生きているからこそ言えることだ」と和朗さんは強調します。

 交通事故は「いつ」「どこで」起こるか分かりません。
 
 塩見さん親子の思いを通じて、この記事をご覧の方々が
「いつか着用しよう」ではなく「今すぐ着用しよう」と、感じてもらいたいと思います。 
 

  

  • 園田孝一郎

    高知放送局 記者

    園田孝一郎

    2017年入局
    司法・警察取材を担当
    日々、ヘルメットとともに
    取材に奔走しています。


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