イギリス人植物研究者 牧野富太郎博士について語る
- 2023年05月19日
高知市にある県立牧野植物園と共同研究を行ってきたイギリス・オックスフォード大学附属植物園の学芸員が5月15日、4年ぶりに牧野植物園を訪れました。
高知とイギリスをつなぐ共同研究、いったいどんな研究が行われているのでしょうか?
また、高知出身の植物学者・牧野富太郎博士の功績についてもお話を聞きました。
(高知放送局 カメラマン 山本青)
イギリスの植物園から研究者がやってきた!
牧野植物園を訪れたのは、オックスフォード大学附属植物園の学芸員ベン・ジョーンズさんです。
牧野植物園とオックスフォード大学附属植物園は、2019年に希少植物の保全に関する共同研究の協定を結び、これまでに四国地方で優先的に保全すべき植物などを見つけ、データベース化してきました。
4年ぶりに再会した牧野植物園の藤川和美研究員と今後の研究の進め方などについて話し合いました。
ジョーンズさんは高知に3日間滞在し、どの森林を本格的に調査していくのかを検討するため、フィールドワークを行いました。
(オックスフォード大学附属植物園 ベン・ジョーンズ学芸員)
高知はとても興味深い地域です。
四国の島は石灰岩でできていることや、気候の影響などもあり、このエリアにはたくさんの固有種があります。
世界各地の絶滅が心配されている植物やその特徴を把握するうえで、牧野植物園との関係はとても重要です。
植物を守るために
~海を越え協力する研究者たち~
牧野植物園は高知県のどこに希少種が生えているかという情報は持っていますが、オックスフォード大学附属植物園のように、それを増やしていく技術がまだ十分ではないということです。
牧野植物園の藤川研究員によると、
・生育域での保全
・植物園のような生育域外での保全
この2点が希少種の保全には重要とのこと。
そこでジョーンズさんたちイギリスの研究者たちが、四国のどの植物を優先的に保全すべきかという情報のデータベース化と、その後の種の増やし方に関する技術面でサポートをしてくれています。
(県立牧野植物園 藤川和美研究員)
植物消失のリスクを分散するためには、日本国内だけではなく技術を持った世界の研究施設が協力し合って増やしていくことがとても大事なことです。
海外の研究者も驚く牧野博士の姿とは
ジョーンズさんは、高知県出身の植物学者・牧野富太郎博士についても高く評価し、次のように話しました。
牧野博士の研さんを積む姿には、私もとても刺激を受け、自分の研究に対するモチベーションにもつながっています。
また、緻密な描写が特徴的な牧野博士の植物図については。
彼の描写力は・・・私にはまねできません。100年かけても同じようには描けません。植物の研究者として彼の植物図を見ると、とても魅了されます。
牧野博士がたくさんの植物を見つけ、名前を付けてきたことは、ジョーンズさんたちが進めている「植物の保全」の研究にもつながっています。
牧野博士の研究が重要なのは、この植物が何なのか、何と呼ばれる植物なのか、ほかの植物との関係はどうなのかを知らなければ、植物を保全することができないからです。博士がたくさんの植物に名前を付けたことは、植物学の発展に大きな貢献をしています。とてもすばらしい遺産です。
そして、ジョーンズさんは、牧野植物園に多くの人が訪れていることについて、たくさんの人たちが牧野博士への敬意を感じていることを証明しているとも話していました。
取材を終えて
植物について真剣な表情で語り合うジョーンズさんと藤川さん。
その姿からは植物や生態系を守りたいという情熱や思いを強く感じました。
「植物多様性は一回失われてしまっては復元できないもの」
藤川研究員のことばです。
今後もこの取り組みについて取材を続けていきたいと思います。