高知の春の風物詩『フラフ』が小さくなった?
- 2023年05月01日
高知では端午の節句に「フラフ」と呼ばれる大きな旗を掲げる風習があります。
ところが、ここ数年でフラフのサイズが小さくなっているといいます。縁起物なので大きいほうがいいような気がしますが・・・いったいなぜ?
ということでフラフ作りの現場を訪ねました。
(NHK高知放送局 山本青カメラマン)
高知の春の風物詩「フラフ」って何?
「フラフ」とは、高知県の東部や中部の地域を中心に、端午の節句に飾られる大きな旗です。
子どもの誕生と健やかな成長を願い、こいのぼりとともに掲げられます。
大きさは縦3メートル、横5メートルほどもあります!
最近は「小さなフラフ」が人気
その迫力のある大きさが特徴のフラフ。
昔は、近所の人と大きさを競い合うくらいだったそうです。
ところが、ここ数年、小さなフラフが人気を集めているといいます。
いったいどういうことなのでしょう?
香南市にある創業150年あまりの染物店を訪ねました。
5代目の吉川毅さんです。
吉川さんの店で7、8年前から注文が増えているのが、室内やベランダに飾ることができる小さなサイズのフラフです。
今年の注文のおよそ8割が小さなサイズとのこと。
小さなフラフの注文が増えた背景の1つには、大きなフラフを飾る場所がないことがあげられます。
集合住宅で暮らす人が増えたことや、一戸建てでも十分なスペースを設けられないことから、大きなフラフを掲げる家庭が少なくなってきました。
マンションでも飾りたいというお客さんの声をきっかけに、吉川さんは小さなサイズのフラフを作り始めました。
お子さんが生まれて、健やかに育ってほしいという親御さんの願いは変わりません。
サイズは小さくても、思いの大きさは変わらないんです。
特に今頃のコロナ禍で大変な時に頑張って出産をされて新しい命ができたわけやないですか。
やっぱりね、お子さんが元気で健やかに育ってほしいなという願いを込めて作るわけです。
小さいからこそより丁寧に
1枚1枚すべて手作業で作られるフラフ。
これまでの大きなフラフと同じように、表も裏も塗り上げていきます。
外に飾るフラフに比べて、室内用は裏が目立ちません。
だから裏を塗らなくてもいいじゃないかと言われる方もいますけど、やはり表も裏も塗ると、表が深い色になるんです。ムラも消えます
室内用の小さなフラフは、より近くで人の目に触れる機会が多いため、細い筆も使って表情を緻密に描くようにしました。
伝統工芸だからと昔の形にこだわらない
150年以上の歴史がある工房で、職人として伝統工芸のフラフを作り続けてきた吉川さん。
小さなフラフを作る機会が増えたことに対してはどう思っているのでしょうか。
伝統工芸だからと昔ながらのこれというのにこだわる人もいるかもしれませんが、やはり社会はどんどん変化していますので、それに応えるようなものを、こちらもどんどん提供していかなくちゃいけない。
フラフを通して贈るメッセージ
吉川さんが作った小さなフラフを注文したご家族にもお話を伺いました。
高知市で暮らす林さん一家です。
去年5月に生まれた柾緒(まさお)くん。初めて迎える端午の節句を祝うため、ベランダに飾ることができるミニフラフを注文しました。
近隣のお宅も近いので、危ないのが気になって小さめを選びました。
柾緒くんへのメッセージを込めてフラフを飾ります。
「金太郎ちゃんみたいに強く大きくたくましく」
「でもおおらかに」
「いろんなお友達ができるように」
これから大学とか就職とか、もしかしたら県外で長く過ごすかもしれないけど、毎年5月が近づいてきたら思い出す、(フラフが)家族とか地域の思い出につながるような存在になってくれたらいいな。
(吉川毅さん)
お子さんも自分が生まれて親が喜んでこういうふうにしてくれたんだなって、親の愛情も感じ取ってもらえたら、それは本当にうれしいことですね。
取材をして・・・
高知に赴任して初めての春、のどかな風景の中、風にはためくフラフを初めて見たときのことをよく覚えています。遠くから見るとどこか懐かしさを感じ、近くから見ると描かれている人物がまるで風に乗って動いているかのように見える力強い印象がありました。親や祖父母から子どもたちへの愛情を込めて・・・。ずっとフラフが子どもたちの未来を明るく照らし続けますように。