2023年02月06日 (月)冬の里山を歩く ~丹波篠山市/丹波市・三尾山(みつおさん)~
今年度の「兵庫山歩道」、
兵庫五国の摂津・但馬・淡路・播磨とめぐって、
いよいよ残すは丹波となりました。
さて、目的地は…
丹波篠山市と丹波市にまたがる三尾山(586m)。
とがった峰が3つ連なる姿が特徴的で、
きれいな円錐形ではないにもかかわらず
「丹波富士」とも呼ばれているそうです。
「『富士』は急こう配であることが多い」というのは、
前回の「夢前の播磨富士」こと明神山でも実証済み。
さて、今回はどうでしょうか!?
ご案内は兵庫県山岳連盟理事・羽田宗子さん。
一般的には北側=丹波市側からの入山が多いようですが、
今回は丹波篠山市側からの周回ルートとなりました。
神戸市内は小雨模様でしたが、
現地に向かうにつれて空が少しずつ明るくなり…
スタート地点の「佐仲ダム」に着く頃には
雲の向こうの太陽がわかるようになっていました。
この時期はワカサギ釣りでにぎわうそうで、
10台ほどの車が道沿いに並んでいました。
(出典:国土地理院ウェブサイト)
国土地理院の地形図を見ると、
「佐仲ダム」湖畔の道路は黄色で表示され、
県道(289号線)であることがわかります。
このまま「佐仲峠」まで歩いてから北上すれば、
三尾山に楽々登れそう! …ですが。
県道をしばらく進むと
「近畿自然歩道」の道標が現れました。
「佐仲ダム」の表示の下、
小さな板がくくりつけられていて
よく見ると「鏡峠→」と手書きされています。
ここで再び先ほどの地形図を見ていただくと、
2つ続くヘアピンカーブを抜けて北上したあと、
東へUターンするような林道があるのが分かります。
私たちはここから「鏡峠」方面に進みました。
なお、県道289号線のこの先の区間は
下山ルートで歩き、なかなかに趣がありました!
番組ではご紹介できませんでしたので、
当ブログで後ほどご覧いただきます。
林道に入ると、クマの爪あとがありました。
新しいものではなさそうですし、
さすがにこの時期は冬眠しているはずですが。
念のため用心のレベルを上げました。
「鏡峠」の手前で進路を北西へ。
丹波篠山・丹波の市境となる尾根道に入ると、
だんだん「富士」らしいアップダウンになり、
こんな道標も出てきました。
兵庫県は日本海と瀬戸内海の両方に面していますが、
川がどちらに流れるか、その分岐点が「分水界」。
そういえば、丹波市内には
「本州で一番低い中央分水界」があるそうです。
この尾根もそうした「分水界」なのでしょうか!?
流れ出す水があるならぜひ見てみたいと思いましたが、
すぐにかなり厳しい下りになったので
ひたすら転ばないように進むのみでした。
下ってひと息ついたところに、また!
これも新しいものではなさそうですが、
やはり彼らの行動範囲なのは間違いありません。
さて、今回は真冬の低山歩き。
草花に出会えないのは少々寂しいものの、
虫もヤマビルもいないので快適なことこの上なし!
ただし、注意すべきポイントもあります。
番組では2点ご紹介しましたが、
道中、他にも話題に上ったことを記します。
「冬はなるべく汗をかかない!」
いくら寒くても、動けば汗は出ますよね。
でも、夏と違ってなかなか乾いてくれません。
動いている間はさほど気にならなくても
休憩で止まったとたん、寒さを感じる…
いわゆる「汗冷え」の原因になってしまいます。
そこで、
●脱ぎ着しやすい服の重ね着で、こまめに調節!
休憩中に1枚羽織るのはいうまでもありませんが、
とにかく少しでも暑ければ脱ぐ、寒ければ着る!
登り下りの間は「止まりたくないな…」と思いがちですし
同行者がいればなおさらかもしれません。
でも面倒がらず、我慢せず、こまめに調節しましょう。
さらにいえば、少なくとも肌着にあたる部分だけは
吸水・即乾性にすぐれた山用のものを着ましょう!
やっぱり快適性がかなり違います(体験談)。
●汗をかかないくらい、ペースをゆっくり!
そもそも汗をかかないくらいか、あるいは
かいてもすぐ乾く程度に収まるペースでいきましょう。
楽すぎて物足りないな… と思うくらいが
安全・確実な足運びにもつながり、ちょうど良いかも!?
なお、雨上がりで気温も低かったこの日は、
ペースを調整するだけで汗冷えとは無縁でした。
東西に長く延びる稜線まで登ってきましたが、
下界はほぼ見えません。
一昨年の氷ノ山ロケと同じような感じで、
頑張ったわりには高いところにいる実感が希薄です。
一方、手前にはたくさんの冬芽。
ここ三尾山は春にクリーム色の花を咲かせる
「ヒカゲツツジ」の群生地だそうですので、
ひょっとするとそれかもしれません。
であれば、花の時期に再訪しなくては!
その後、雲の動きが早くなり、
「覗岩(のぞきいわ)」周辺ではこのようになりました。
盆地(丹波市春日町)の周囲に連なる山々。丹波らしい風景です。
そして、ようやく見えてきました!
三尾山の3つの峰のひとつ「東峰(529m)」と
その左、まだ雲に隠れていますが「西峰(552m)」。
主峰こそまだ見えませんが、こうなってくると
俄然(がぜん)やる気が出てきます!!
さらに15分ほど登って下って…
初めて、目指す山頂が現れました!
画面左にはっきり見える峰ではなく、
その奥でうっすらと雲をまとっているのが、
標高586mの三尾山・主峰です。
ということは、
また“前衛峰”を登って下らなければなりませんが、
とにかくもうひと頑張り!
到達した山頂には「三尾城址」の石碑が。
去年登った丹波エリアの「金山」も山城でしたが、
三尾山も山城だったのですね。
これは主郭の石垣のなごりでしょうか?
また、曲輪(くるわ)らしきスペースも確認できました。
「兵庫山歩道」を担当していなければ、
こうしたことにも全く気付けなかったでしょう!
本当にいろいろなことを学びました。
到着直後は再び雲に覆われて下界が見えなくなり
「また氷ノ山の再現か…」と思いましたが、
その後は青空ものぞくほどになりました。
ここから西峰・東峰に足を延ばすことも可能ですが、
今回は見送り、早めに下山に移ります。
なかなか画像では傾斜が伝わりにくいですが、
ほぼ等高線に直交する「激下り」。
(なんだかこういうパターンが多い!?)
浮き石や木の根で何度もずるっといきかけました。
こうした下りに、距離にして700mほど耐えたあと
「佐仲峠」へと進みました。
この先はブログのみでのご紹介です。
到着してみると、目をひいたのはこの案内板よりも…
「春日町」の道路標識!
(※2004年の合併で丹波市春日町になっています)
そうです。前半でご紹介した、
県道289号線の「佐仲峠」に出たのです。
…これはいわゆる、「険道(けんどう)」!?
端谷城跡の「堀切」のようですらあります。
ここからゴールまで、
距離1.6㎞・高低差160mほど、この県道を下ります。
人の通った気配はほとんど感じられませんが、
歴史を秘めつつひっそり存在し続けている…
そんな雰囲気いっぱいの、味のある道でした。
まずは峠の頂点に立つ小さな石仏。
「文政十●…」「子春立」と読めます。
子年は… と調べると、文政11(1828)年。
同じような石仏はもう少し先にもありました。
この緩やかな左カーブ。
よく見ると画面左下の角から中央に向け、
苔(こけ)むした緑のラインが浮いています。
かつては整備された路肩だったのでしょうか。
これもややわかりにくいかもしれませんが、
大小の石が埋め込まれた区間もありました。
アスファルト舗装はここまで及ばなかったものの、
人の手はしっかり入っていたようです。
「険道」区間はさほど長くありませんでしたが、
楽しいクールダウンとなりました。
実はゴールの少し先、ダム湖畔の道に案内板がありました。
やはり長い歴史を持つ古道だったのですね。
今は自動車道のトンネルがすぐ横を貫いているという点も
去年登った丹波の「金山」に似ているな、と思い返していました。
今回のロケにあたり、何より心配だったのが天候でした。
翌日から寒波の到来が予報されていて、
「積雪や降雪の状況によっては、ためらわず撤退!」
と決断していましたが、無事に終えることができました。
山の天気は変わりやすく、
低山といえども装備や判断を誤ると、
低体温症や遭難などという事態を招きかねません。
また、氷瀑(凍った滝)などの
冬ならではの景色を見に行くとなれば、
チェーンスパイクや軽アイゼンといった装備も必須。
くれぐれも冬を甘く見ず、安全に楽しみましょう!
投稿者:田中 崇裕 | 投稿時間:18:00