2022年04月11日 (月)あの人も通った!? 源平ゆかりの山 ~神戸市北区・丹生山(たんじょうさん)~
ことしの大河ドラマ、「鎌倉殿の13人」。
これから描かれるであろう「源平の合戦」といえば、
兵庫県もその舞台になっていますね。
…なんて言ってはみたものの。
すみません。実は私、よく知らなかったのです。
有名な「鵯越(ひよどりごえ)」や「一の谷」の地名は知っていても、
それが神戸市内だったとは!
正直な話、去年7月放送の「イヤガ谷」の回、
スタート地点が神戸電鉄の鵯越駅でしたが、
そのとき初めて「え、ここがあの鵯越!?」と気付いたくらいです。
(ただ、鵯越の所在については、説が複数あるようですね)
今回の「山歩道」は、ざっくりいうと
そうした源平ゆかりの地を訪ねるルートです。
なお、2月の放送で「太陽と緑の道」をご紹介しましたが、
今回のルートにも「太陽と緑の道」にあたる区間があります。
No.17(双坂池~岩谷峠~帝釈山~丹生山)と、
No.18(丹生山~丹生会館)のそれぞれ一部が含まれますので、
行ってみようかなと思われた皆様、参考になさってください。
ところで。
実は今回、とにかく内容盛りだくさんのルートでしたので、
放送では惜しくもカットしたシーンがかなり発生しました。
そこで、当ブログは、
テレビで日の目を見なかったシーンで構成することにします。
こちらはスタート地点にあたる「丹生神社前」バス停横にあった、
「丹生山史跡道しるべ」。
情報量豊富で、たいへん参考になりました。
今回はこちらを使ってルートをご説明しましょう。
下の方にある「現在地」から、「② 丁石13番」へ北上して、
往路の終点となるのが山頂にある「丹生神社」です。
平清盛が丹生山を比叡山になぞらえ、山頂付近に「明要寺」を再建建立。
その鎮護社として建立したのが、いまの丹生神社だそうです。
いっぽう、復路の最終盤となるのが、真ん中左寄りの黄色い区間。
「義経道」とありますね!
そう、タイトルでも触れた「あの人」とは、源義経。
平家討伐に向かう義経一行がここを通って
鵯越、そして一の谷へと行軍したそうなのです。
まさに源平双方にゆかり色濃い山というわけですが、
そこに直行しないのが「兵庫山歩道」らしいところでして、
ご案内役の兵庫県山岳連盟副会長・黒田信男さんがまず向かったのは
マップ右上に見える「帝釈(たいしゃく)鉱山跡」。
昭和30年代まで稼働していた、神戸市内で唯一の鉱山だそうです。
スタートしてすぐ「太陽と緑の道」の標識が現れますが、
これは先述した二つとは異なる
「No.19 成道寺~無動寺~八幡神社~千年家」の案内。
私たちはこれを横切って先へと進みますが、
ここは「太陽と緑の道 No.18」と、丹生神社の表参道、
双方のスタート地点にあたります。
それを示すものが、こちら。
台座部分には「従丹生山廾五(=25)丁」とあります。
山頂の神社までの距離標となる「丁石」を兼ねていて、
まさに「表参道」の起点なのでした。
しばらく竹林の間を進むと…
木にくくられた小さな標識が現れました。
表参道(=「太陽と緑の道 No.18」)と「鉱山道」の分岐点です。
この先に鉱山跡が! わくわくしてきます。
道幅はかなり狭く、舗装や石畳の痕跡もありません。
ものの見事に根元から折れて、道をふさぐ木!
(下をくぐった後、振り返って撮影したものです)
野趣にあふれています。う~ん、こうでなくっちゃ!
このところ、「兵庫山歩道」のコースがやややさしい
(優しい? 易しい? いや、両方でしょうか…)との声が、
わりと身近なところから聞こえてもいましたし(苦笑)。
左手に古い石垣が見えてきて、
かつて人の営みがあったことをうかがわせます。
崩れかけてはいますが石段になっています。
さえぎるように立つ木をよけて進むと、
ん、あれは!?
小さな祠(ほこら)が現れました。
手書きされた「稲荷社 帝釈鉱山」の文字が
かえってリアルさを強めていて、ますます期待が高まります。
そして、見えてきました!
周囲の岩とは明らかに違う、真っ赤な斜面。
一見して「ズリ山」ではないかと想像がつきます。
※「ズリ」=掘り出した岩から資源部分を取ったあとの残り
ただ、黒田さんはさらに先へ進みます。
画面左縁のほう、しっかりした足場を選んで登っていくと。
小さな滝が見えてきました。
勢いはありませんが、雰囲気があります。
はじめ「小さな滝」と思ったのですが、
近づくと、もう一段上にも滝が見えました。
黒田さんのお話では、実際はさらにもう一段あり、
落差20mほどの三段の滝になっているそうです。
この滝の左岸側を巻くように険しい斜面を進んでいくと、
放送でもご紹介した坑口跡に行くことができます。
神戸に残る貴重な産業遺産、一見の価値ありですが、
坑道跡は立入禁止になっています。くれぐれもご注意ください!
ひっそり流れ落ちる滝と、神戸市内唯一という鉱山跡。
見ごたえ十分で、これだけでもおなかいっぱい…
というぐらいの心持ちでしたが、
やはり、本日の目的地は「源平の歴史の跡」。
ここからは地図とコンパスを頼りに、道なき道を進みます。
…が、道すがら目に付いたのが、この赤い杭。
実は鉱山跡あたりから存在に気付いてはいたのですが、
「国有道路」!?
「国有鉄道」や「国道」なら知っていますが、
「国有道路」とは、聞いたことがありません。
市章がついていますから、
打ち込んだのが神戸市なのは間違いなさそうですが…。
国土地理院の地形図はおろか
登山道を網羅したアプリ上でさえ何のルートも示されない、
こんな斜面にまでも!
それも2つ並んだこの表示が最後となりましたが、
その後、無事に尾根道に出たのは放送でご覧いただいた通りです。
(なおこの間、およそ1時間の山歩き。
放送で流れたのは2シーン程度でした)
「丹生山史跡道しるべ」に「裏参道」と記された尾根道は
格段に歩きやすく、
「さっきまでが “国道” なら、こっちは “高速道路” か」
…なんていう軽口も出るほど。
「帝釈山系縦走路」に合流すると、山頂まではあと少しです。
こちらは「太陽と緑の道 No.17」にも含まれるルートで、
山頂直下はコンクリート舗装になっていました。
丹生神社の境内には、長らく使われているであろう土俵もあり、
歴史の深さを感じました。
平成に入って改修が行われたそうで、社殿の屋根は綺麗でした。
この境内で「山歩メシ」を収録したわけですが、
ご好評をいただいておりますので、
放送3年目も「山歩メシ」は継続します。
ただ、私自身も夏には担当3年目に入りますし、
何か「新機軸」を導入しないといけないな… と考えた結果、
今年度の「山歩メシ」は、可能な限り、
山で何かひと手間加えたものを味わうことにします!
と、宣言はしてみたものの、
次回以降どうなるかは自分自身まったく読めません。
あくまで「可能な限り」ということで、
暖かく見守っていただければ幸いです。
下山の道中は、春の訪れを体感するものとなりました。
明要寺跡の石垣に並んだフキノトウ。
陽だまりにかたまって咲くスミレ。
そして、咲き始めたコバノミツバツツジ!
やはり、山でこの花を見ると、
またこの季節が巡ってきたのだなと実感します。
四季折々、兵庫五国のいろいろな山を訪ねて、
その素晴らしさを最大限お届けするコーナーを目指します。
3年目も変わらぬご愛顧をどうぞよろしくお願いいたします。
■おまけ■
放送でもブログでもご紹介する流れにならなかったのですが、
「春」つながりで最後にもう1枚。
高さ10数センチはあったでしょうか。強烈なインパクトでした。
あとで調べたところ、どうやら「アミガサタケ」といい、
春の代表的なキノコらしいです。
しかも、生では毒があるものの、上手に加熱処理をすれば食べられて、
ヨーロッパなどでは高級食材だというではありませんか!
キノコの世界、ほんとうに奥が深いです。
ただ、キノコは生半可な知識で太刀打ちできる相手ではないことは
百も承知ですから、採って食べようなどとは全く思いませんが、
撮りたくなるのは間違いありません。
去年秋の氷ノ山で出会った数々のキノコを思い出し、
その面白さを改めて感じました。
こうした出会いがありましたら、またブログでご報告します!
投稿者:田中 崇裕 | 投稿時間:17:00