北九州の老朽化施設で相次ぐ落下物 対策は?
- 2023年05月29日
高度経済成長期に整備された公共施設が老朽化し、今後の維持や管理、更新などをどのように行っていくかが社会的な問題となっています。
自治体は長期的な計画を立てて対応していますが、このところ、北九州市の老朽化した公共施設で外壁などの落下が相次いでいます。
小学校では児童がけがをする事故もあり、北九州市は緊急に対策チームを立ち上げて具体的な対応策の検討を始めました。

校舎の落下物で児童が骨折
北九州市ではことし4月から公共施設などで外壁や部品の落下が相次いでいます。
4月21日
門司区の小学校
校舎の外壁の一部がはがれて落下
下校途中の5人の児童にあたり
このうちの1人は足の指を骨折
4月24日
小倉南区の中学校
外壁が剥がれ落ちているのが見つかる
4月26日
八幡西区の中学校
外壁が剥がれ落ちているのが見つかる
4月26日
八幡西区の小学校
木製のトーテムポールが折れているのが見つかる
5月14日
若戸大橋
金属部品の一部が落下しているのが見つかる
5月14日
八幡西区の団地
外壁が剥がれ落ちているのが見つかる
5月14日
小倉北区の団地
外壁が剥がれ落ちているのが見つかる
5月15日
若松区の児童館
外壁が剥がれ落ちているのが見つかる
すべての小中学校で緊急の安全点検


学校でけが人が出た事態に、北九州市は安全確保のため、市立のすべての小中学校で業者による緊急点検を開始しました。
「老朽化対策チーム」設置

さらに、北九州市の武内和久市長は5月18日の定例記者会見で「市民の安全・安心を守る老朽化対策チーム」を立ち上げて、対応策を検討することを明らかにしました。

まずは市民の安全を守っていくということで、検討を進め、その結果として財政的なてこ入れが必要だとなればきちんと考えていく
公共施設の老朽化進むも厳しい自治体財政
“すべてを残すことは無理”
国内では高度経済成長期に整備された公共施設やインフラが老朽化していますが、これらの維持、管理、補修などには多額の費用がかかり、厳しい財政状況が続いている自治体は、どのように対応していくかが大きな課題となっています。
北九州市の現状について、公共施設のマネージメントに詳しい東洋大学大学院の根本祐二教授は次のように話しています。

「日本の産業の発祥の地でもあり、高度成長が比較的ほかの地域よりも早く起きている。それにあわせて公共施設が整備されたということがあるのではないか」
北九州市は総務省からの要請に従って策定した「公共施設等総合管理計画」で、
「保有する公共施設の多くは昭和40年代から50年代にかけて整備されていて、建築後30年を経過した施設が半数を超えている。一部はすでに老朽化が進んでおり、近い将来、大規模改修や建て替えが必要になることが予想される」としています。
その上で、公共施設をこのまま保有した状況で維持管理や更新を行った場合の事業費は
平成28年度からの40年間で、およそ1兆2040億円に上ると試算しています。
単年度でもおよそ300億円の費用がかかる計算です。
根本教授は次のように話しています。

公共施設のすべてを残すことは無理で、財源がないなかで選択と集中を考えなくてはいけない
人口減少続くなか施設のあり方は
5月24日に初めての会合を開いた北九州市の「老朽化対策チーム」。
当面は
▽市民への情報提供
▽施設の保全のあり方
▽必要な事業費などについて
検討していく方針を確認しました。
市民の生活に直結している公共施設。
建物が老朽化する一方、北九州市も人口が大きく減ることが予想されています。
こうしたなか、維持や管理、更新の必要性などを精査しながら対応していくことが求められます。
今後の「老朽化対策チーム」の検討がどのように進むのか注目されます。