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どこまで広がる?男性育休(2)記者の育休体験談

  • 2023年06月06日

男性の育休を後押しする動きが活発になるなか、記者の私も育児休業を取得しました。

ことばでは言い尽くせないほどのさまざまな経験。パパどうしのつながりの重要性も今後のキーワードになるかもしれないと感じています。 

(北九州放送局 田口智章)

【前編】どこまで広がる?男性育休(1)カギは雰囲気と給付額?

この記事のポイント!

▶育休中はたくさんの初めてを目撃
キャリア断絶の不安や仕事を押しつけていないかといった悩みもありました
“パパどうしつながり”にも助けられました

■育児は、たくさんの初めての目撃者

私は、ことし3月下旬まで1年の育休を取得していました。

振り返ると、この期間は“わが子のたくさんの初めての目撃者”であり続けました。わが子と向き合った時間はとても貴重で、かけがえのない経験だったと思っています。

中でも忘れられないのが「寝返りができた瞬間」です。

いま思うと当たり前なのですが、生まれた直後の赤ちゃんは自らの意志で何もできない状態からのスタートです。

そんなある日、寝そべるわが子が体を左右に揺らしたと思いきや、全身を横に向けたことがありました。それが続くこと数日間。時には腕が引っかかってなかなかできず、泣き出すこともありました。

手助けをしては何度も挑戦するわが子。やっとの思いで寝返りができたその瞬間は、今でも脳裏に焼き付いています。

寝返りに挑戦して手足をばたばたさせていました

「笑う」ことも徐々に覚えていきました。日がたつにつれ、少しずつ笑みを見せ始めるわが子。

ある日、ふと大きなリアクションで踊りながら近づいてみると急に大声をあげて笑い始めるではありませんか。あまりにも喜んでくれるのでそこからは何回も、何日間も続けて笑わせてしまいました。赤ちゃんの笑いのツボは無限大でした。

■育休で感じたリアル

たくさんの初めての瞬間に胸を打たれる一方で、特に最初の数か月は赤ちゃんの世話に忙殺される日々でした。

生まれた直後の赤ちゃんは約3時間に1度は授乳の必要があります。各家庭で事情はさまざまですが、「泣いている赤ちゃんに母乳かミルクをあげたあと寝かしつける」のが一般的な流れです。

このように文章で書くとシンプルなのですが、実際に体験すると想像以上に大変でした。まず、母乳やミルクをあげたからといってすぐ寝るわけではないのです。

抱っこして寝かしつけても、布団に置いた瞬間に目覚めて泣き始めることも多々。まさに“背中スイッチ”です。その1、2時間後にはまた起きてしまって寝かしつける…という連続です。

これが昼夜問わず1か月ほど続きます。

当時の育児日誌 喜びとつらさの両方がつづられています

私の場合、夫婦でシフトを組んだり、妻の授乳後に私が寝かしつけを担当したり…と臨機応変に対応しました。それでも寝不足による心身への負担は大きなもので、夫婦ともに体力は常に限界状態でした。

私の場合、こうした日々は徐々に収束に向かいましたが、その後も成長にあわせて注意が必要な場面も増えていきます。ひと息つく時間、自由時間の確保が難しい時期が続きました。

一日中家の中で過ごすことも多くなるため、体力的・精神的にも「つらい」と感じることもありました。

「きっと大丈夫だろう、空き時間に勉強でも…」。

これは私が育休生活が始まる前に抱いていた目標ですが、早々に打ち砕かれました。自分のキャリアへの不安や、同僚に仕事を押しつけて申し訳ないことをしているのではないかとネガティヴな気持ちにもなり、社会と断絶されたような感覚に陥ることもありました。

■パパのつながりを求めて

「このもやもやを話したい。誰かいないだろうか…」と悩んでいた際に、助けとなったのがパパどうしの交流でした。

私が参加したのは、2020年6月にスタートしたオンラインのサークル。主に育児に携わる男性が参加して、同じ境遇のパパたちが情報交換をしていました。

定期的にオンラインで開かれる交流会(画像提供:パパ育コミュ)

その話題は多岐にわたり、育児中の気づきやつらさの共有だけでなく、自分自身のキャリアやスキルアップといったテーマまで、いろんな話しが雑談レベルで交わされていました。

私と似た悩みを抱えているパパたちが多いことを知り、不安の解消につながったのを覚えています。肩の荷が下りたような、安心した瞬間でした。同時に、世の中のママさんたちはこんな思いを抱いていたのかとも気づかされました。

パパどうしが育児について語り合う場が、今後さらに求められるかもしれません。

■育休を振り返って

育休中、とある人から“育休はあくまでも育児のスタートライン”だと言われたことがあります。夫婦2人が試行錯誤を重ねながら子育てや家事に挑むので、自分たちがどういう家族でありたいかを考えるよい機会だという意味が込められているそうです。

確かに、育休中は大変なこともたくさんありました。夫婦で1人の子どもを育児していても、時にはストレスがたまったり悩みを抱えたりして、順調とはいかないことも多くありました。

ただ、振り返ればあっという間で、わが子がどんどん成長する姿を間近で見られたのはこの上ない感動の連続でした。

育休を取得して良かったと思いますし、子育ては難しいけれど面白いとも感じるようになりました。また、育休の経験を経たことで、育児・家事・仕事のどの面においても、時間を大切するようになり、効率があがったのではないかとも思っています。

もちろん、各家庭で事情は異なります。ただ、育休をとりたいと思う人が、当たり前に取得できる環境がより広がるとよいなと思います。

パパさんママさん、毎日おつかれさまです。

  • 田口智章

    北九州放送局 記者

    田口智章

    おいしい食べ物いっぱいで、人情味あふれる北九州が大好きです。週末はわが子を連れて公園や子育て支援施設にお出かけ中。パパさん・ママさんと子育てトークで盛り上がっています。

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