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新旦過横丁を忘れないで

北九州 旦過市場火災から1年
  • 2023年04月28日

旦過市場の向かいにある焼き鳥店の大将・丸山誠さん。去年の火災で店が全焼し、今の場所に再建しました。店頭の赤ちょうちんには「新旦過横丁」の文字が…。
火災で失われた横丁の存在を忘れてほしくないという丸山さんの思いを取材しました。
(北九州放送局 中川治輝)

人情味あふれる「新旦過横丁」

火災前、丸山さんが店を出していたのは「新旦過横丁」。旦過市場に隣接する飲食店街で、およそ20軒が立ち並んでいました。昭和の香りが漂うディープな空間が市民に親しまれ、近年は観光客も訪れる人気スポットでしたが、去年2度の火災で全焼。横丁は跡形もなくなってしまいました。

火災前の新旦過横丁

丸山さんが新旦過横丁に店を出したのは3年前です。それまで20年以上、北九州市内の別の場所で焼き鳥店を営んでいました。
かつて祖父母も店を営んだ旦過で、いつか自分も店をやりたい。そんな念願がかない、やってきたのが新旦過横丁でした。人情味にあふれる横丁の雰囲気にすぐに魅了されたと言います。

丸山さん
新旦過横丁は本当にいい人間関係でつながっていました。みんなで横丁全体を盛り上げたいという気持ちがありました。店の間で客を取りあうことなく、むしろ客の好みにあわせてほかの店を紹介しあっていました。

火災前の新旦過横丁にあった丸山さんの店

しかし、新旦過横丁での丸山さんの日々は長くは続きませんでした。

丸山さん
4月の火災では店は焼け残ったので、諦めず復興に向けて頑張ろうとしていましたが、8月の火災で全焼してしまったんです。さすがに直後は気持ちが萎えて、これからどうしたらいいのかと思いました。
それでも自分は1人ではありません。家族のために頑張らないといけないと思い、店の再建に動き出しました。幸いお見舞金やクラウドファンディングなどみなさんの協力あって再スタートを切ることができましたが、自分がよければそれでいいというわけではありません。新旦過横丁の仲間のために、自分にできることを、微々たることでも自分にできるかぎりのことをしたいと思いました。

新旦過横丁の“案内人”に

今、丸山さんは、新旦過横丁の店主たちの近況を伝える“案内人”になっています。
火災から1年の間に、横丁の店主たちの中には各地で営業を再開する人が出てきています。そんな店主たちの最新情報を客に伝えようというのです。
その手段が、店の壁に掲げた大きな地図。 火災前の新旦過横丁が描かれた丸山さんお手製の「新旦過絵図」です。焼ける前に各店舗にあった看板の写真も掲載されています。

丸山さんの店にある「新旦過絵図」
新旦過横丁の店主たちの近況を話す丸山さん

丸山さん
お客さんから「あのお店どうなりましたか?」と聞かれれば、私が知っているかぎり、どこで営業しているかお教えしています。自分の行きつけのお店が今どうなったか気にしているお客さんは多いのでご紹介させてもらっています。

新旦過横丁にあった店が再開したと聞けばお祝いに駆けつけるようにしているという丸山さん。
横丁がなくなっても仲間を応援したいという気持ちは残り続けています。

丸山誠さん

丸山さん
地域の人々から新旦過横丁の記憶がなくなることが一番悲しいですね。
元の場所でみんな仲良く、和気あいあいとやり直したいのが本音ですけど、それは無理なので。各地で頑張る新旦過横丁の仲間たちを、できるかぎり応援していきたいと思います。

  • 中川治輝

    ディレクター

    中川治輝

    2014年入局
    去年2度の火災を取材し特番制作に参加。

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