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旦過市場火災から1年 “市民の台所”はいま

  • 2023年04月25日

2022年4月19日未明、旦過市場を襲った大規模な火災。復旧作業が進んでいた4か月後の8月にも再び大火に見舞われました。2度の火災で傷ついた市場に、誰もが“元に戻るのだろうか”と不安になりました。しかし被災店主や市場の関係者らは“忘れもしない悪夢”と口にしながらも必死に前を向いてきました。4月の火災から1年。大正時代から100年以上続く市場は、復興へのあゆみを着実に進めています。
(北九州放送局 取材班)

2度の火災で傷ついた旦過市場

2度目の火災後の旦過市場(2022年8月12日撮影)

去年4月19日の未明、旦過市場で起きた火災は「旦過市場商店街」「魚町グリーンロード」「新旦過横丁」にあった42店舗を焼きました。さらに4か月後の8月10日、再び火の手が上がり、4月を上回る規模の45店舗が被災しました。木造密集地域にあった、鮮魚店、精肉店、青果店、酒店、飲食店にバーなど…。2度の火災は計87の店舗を飲み込み、焼け跡には大量のがれきが残されました。

復興願う声 寄付金は1億5000万円に

焼け跡に残されたがれき(2022年8月15日撮影)

“がれきの撤去は誰がするのか”復旧に乗り出したときの一番の課題でした。
一般的に、火災の場合、建物の所有者か入居する事業者が負担して撤去するのが原則です。ただ、100年以上の歴史がある旦過市場では、土地の所有者と建物の所有者、それに入居する事業者が異なるケースもあり処分には合意が必要なほか、誰ががれきを撤去し、その費用を負担するのかも課題でした。

その難題を解決したのは、全国から寄せられた旦過市場の復興を願う人々の声でした。クラウドファンディングを実施するなどして、全国の個人や団体から、この1年で、総額1億5000万円もの寄付金が寄せられました。
こうした支援で、がれきの撤去作業は、去年11月に完了しました。

「旦過市場商店街」黒瀬善裕会長(4月19日の会見)

ほかの地域では、がれきが何年も残っているという火災現場もある。そんな中、驚くべきスピードで撤去できたのは、皆様の支援のおかげです。

7割営業再開 旦過市場に戻らぬ店も

最初の火災から1年の旦過市場(2023年4月19日撮影)

最初の火災から1年。
北九州市の調査(4月10日時点)では、被災店舗のうちこれまでに約7割が営業を再開したか再開のめどがたったとしています。調査の対象としたのは、被災した87店舗のうち空き店舗や事務所などを除く74店舗。
▼「営業再開・再開のめどがたった」のは53店舗。
▼「再開に向けて場所などを検討中」は5店舗。
▼「廃業を決定」は15店舗。
▼「調査できなかった店」が1店舗ありました。


 だご汁店「いちべえ」2023年2月営業再開

だご汁を名物料理として提供する飲食店「いちべえ」は、旦過市場内の空き店舗に入居し、ことし2月に営業を再開しました。

徳岡朱美さん

サイレンの音を聞くと当時の火災のことを思い出します。つらい1年間でしたが、皆さんから背中を押されて助けてもらいました。

老舗精肉店「戸根食肉」2023年3月営業再開

創業70年、看板だけが焼け残った精肉店「戸根食肉」は、焼け跡に店が再建され、ことし3月に営業を再開しました。

松田角二さん

一時は店をやめたほうがいいのではないかと思っていましたが、お客さんを見ると期待に応えなければいけないと思いました。戻ってこられてうれしいです。後ろを振り返ることなく頑張りたいです。

店舗は減少 にぎわいどう取り戻す?

営業を再開した店が7割に上る一方、旦過市場やその周辺に戻ることを決めたのは、約35店舗で、被災した店舗全体の半数以下にとどまっています。

火災跡地に建設された「旦過青空市場」

旦過市場に隣接する「新旦過横丁」があった場所には、ことし3月に26店舗が入居できる仮設店舗「旦過青空市場」が完成しました。旦過市場に戻りたい被災店舗の後押しになっていますが、実は、市場の再整備事業に伴う予算で建設されたもので、「新旦過横丁」にあった飲食店など再整備事業の対象ではない被災店舗は入居できません。

ほかにも、店主が高齢や転職のため廃業を決めたり、条件が合わずに少し離れた場所で営業を再開したり、旦過市場に戻らない理由はさまざまです。

店舗の減少に加え、今後は、火災前から計画されていた市場の再整備事業も本格化し、買い物客の減少も懸念されています。

4月19日の武内和久市長の会見

以前のにぎわいをどう取り戻すのか、あの手この手で取り組みを進めようとしています。
4月19日、北九州市の武内和久市長は、旦過市場の一帯が、国土交通省の「官民連携まちなか再生推進事業」の対象地区に選ばれたことを発表しました。国の補助金を活用しながら、今後のまちづくりを担う組織の構築やにぎわいの創出に向けたビジョンの策定などを進めるということです。

「旦過市場商店街」が行うイベント

「旦過市場商店街」もさまざまなイベントを企画しています。火災の後届けられた寄付金などの支援に対する感謝を込めて4月20日から1か月間、感謝祭を開催します。期間中は、各店舗で感謝を込めた商品を用意するほか、この1年間、開催できなかった「食市祭」と呼ばれる恒例の特売イベントも行います。

「旦過市場商店街」中尾憲二副会長

店舗数が減って、お客様の利便性が減ったことは事実。食文化を伝えるための旦過市場が、今後100年、150年、200年残って行くように今僕らが頑張っていかなくちゃいけない。お客様に来てもらえる工夫を絶えずやっていきたい。

100年以上にわたって、北九州の豊かな食文化を支えてきた旦過市場。この苦難を乗り越えようと、多くの人々の奮闘が続いています。

  • 大倉美智子

    北九州放送局 記者

    大倉美智子

    熊本局・報道局ニュース制作部を経て現所属。 火災取材をきっかけに、旦過市場で買い物するようになりました。“市民の台所”を実感中!

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