美術の世界 01
稲葉山城下オープンセットトライアンドエラーの日々。

犬飼(美術統括)、山内(チーフデザイナー)を中心としたデザインチームが本格的に始動したのは2018年の10月だった。それ以前に、明智光秀や織田信長をはじめ登場人物ゆかりの地や城、京都の寺などに足を運び、わずかに残る当時の気配を感じながら、時代背景を勉強しつつイメージを広げていった。

まずは『麒麟がくる』チーム全体で徹底的に意見を出し合うことからはじまり、演出、衣装などと連携を図り、それぞれのキャラクターや軍のテーマカラーを決めていく。それを受けて、装飾・扮装(ふんそう)、スタジオセット、オープンセットのデザインを同時並行で進めていった。その段階で、多くのデザインが生まれ、それと同じくらいのアイデアがボツになった。じりじりとしたトライアンドエラーを繰り返す日々が続く。そして試行錯誤の末、しだいにピントが合っていき『麒麟がくる』ならではのデザインが決まっていく。

『美術の世界』では、今後のドラマの展開に合わせてそれぞれのセットや美術についてご紹介。第1回は、稲葉山城下のオープンセットだ。

図面作成のあとは、オープンセットのミニチュアを作り、商店エリア、武家エリアなどの配置やそれぞれの建物の位置を細かく検討。さらには、人々の導線やカメラアングルなど、撮影のしやすさも考慮しながら「あーでもない、こーでもない」と、美術チームの試行錯誤はまだまだ続く。

全長約180メートルの壮大なオープンセット。

第2回(1/26放送)では、稲葉山城下に攻め込んできた織田軍と斎藤道三率いる美濃軍との乱戦が繰り広げられた。
その撮影の舞台となったのが、広大なオープンセット。

資料を集め、イメージを広げ、ドラマに必要な要素を抽出。

稲葉山城の麓に城下町が広がっている様子を描いた古地図をはじめ、文献にあるイメージイラストなどを集め分析し、ドラマに必要な要素を抽出。土塁や門などで仕切られた「総構え」という空間を、コンパクトにデザインしていく作業をチーム全員で行った。コンパクトと言っても、全長約180メートルもある広大なオープンセットだ。

①外門から入ると②農村エリアや③番小屋があり、その先には④商店や⑤市場、⑥武家エリアがあり、⑦大手門を入ると、第2回で道三が攻めて来た織田軍を相手に指揮をとった⑧望楼館(ぼうろうやかた)がある。

①外門から入ると②農村エリアや③番小屋があり、その先には④商店や⑤市場、⑥武家エリアがあり、⑦大手門を入ると、第2回で道三が攻めて来た織田軍を相手に指揮をとった⑧望楼館(ぼうろうやかた)がある。

下手櫓(やぐら)から臨むオープンセット全景

商店が建ち並ぶ前の道に作られた縦約5m、横約3mで、深さは約2.5mの落とし穴。この撮影で美術チームが第一に考えたのは安全性。底から1mくらいまでは発泡スチロールの緩衝剤を入れ、落とし穴に落ちる兵たちが持っている槍もゴム製にし安全を確保。一発勝負の撮影は無事に成功。迫力のある、そしてちょっとコミカルな映像となった(第2回・1/26放送)。

誰もが感嘆の声をあげ、
戦国時代へとタイムスリップした。

オープンセットづくりがはじまったのは2019年3月。土地の造成からはじまり、盛り土で高低差をつくり、空堀を掘り、稲葉山らしさを出すために約30トンの石を運び込んだ。
その後、それぞれのセットの建て込みに着手。基礎工事からていねいに行われ建てられたセットは何度もやって来た台風にもしっかり耐えた。

2019年11月、ついに完成したオープンセットでの撮影がはじまった。大勢のエキストラのみなさんと、扮装した役者陣が指定された場所に立つと、そこはもう戦国の世の稲葉山城下としか思えなかった。誰もがオープンセットの壮大さと緻密さに感嘆の声をあげ、戦国時代へタイムスリップした。

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