大切なのは、
根源とスピリッツを知ること。
芸能考証・指導 友吉鶴心インタビュー

<プロフィール>1965年生まれ。東京の浅草出身、薩摩琵琶奏者、日本文化・探究家。薩摩琵琶奏者の山口速水・友吉鶴心は両祖父にあたる。文部大臣奨励賞・NHK会長賞などを受賞。宮家御前演奏をおこなう一方で、デーモン閣下をはじめ国内外でさまざまなアーティストと共演。「利家とまつ」以降の大河ドラマや、ドラマ「坂の上の雲」「精霊の守り人」など多くの作品の芸能に関する指導や考証を担当する。『ラジオ深夜便』〈もっと!麒麟がくる〉の案内役をレギュラーで務めている。無類のあんこ好きである。

芸能とは、過去への鎮魂と、現在への感謝。そして、希望の未来に。

『麒麟がくる』では、当時の音楽を中心に歌や踊りなどについて、当時はどうだったかを考証したうえで助言させてもらっています。
芸能の基本は、“過去への鎮魂”と“現在への感謝”そして“未来へ希望を”だと私は考えています。そういう意味では、歌や踊りだけでなく、お茶も花を立てることもすべて芸能なのですが、今回のドラマでは歌や踊りを中心に監修しています。
また、役者さんが楽器の演奏をしたり歌ったりするシーンがある場合は、その指導もさせてもらっています。さらには、曲の復元も。その歌に関する資料や歌詞はあっても楽譜は残っていません。よってメロディーは創作するしかない。その際には、その曲の根源と、そこに込められたスピリッツ、当時の環境を見据えたうえで曲作りをし、提案しています。

一番大切な仕事は、脚本を読み込み、その意味合いを理解すること。

考証も大事ですが、もっと大切なのはこの『麒麟がくる』というドラマのなかで、歌なり演奏なりがどんな意味をもつかを考えることです。たとえば、なぜこの場面で斎藤道三(本木雅弘)はこの歌を歌うのか?そこには脚本家、演出家の意図や思いが込められています。私が脚本を読み込み、その意味合いをくみ取り、ドラマがより魅力的になるように提案する。そこが、私の一番大切な仕事だと思っています。

陣太鼓の波動を表現する手法として。

攻め込んできた織田軍を道三率いる美濃軍が迎え撃つシーンで、陣太鼓が登場しました(第2回・1/26放送)。
「陣太鼓」とは陣中で、大勢の兵に指令を出したり鼓舞したりするもので、普通は陣中に一人しかいません。ですが、今回のドラマでは11人で太鼓をたたいています。

演出から「映像的にも、音的にも、迫力を出したいので大勢で太鼓を打ってほしい」という要望があったからです。最初は正直、戸惑いました(笑)。
そこで着目したのが“波動”です。陣太鼓をたたいているのは一人。その一人がたたく陣太鼓の“波動”を、残りのみんなで表現するという手法を考えました。
映像には、たくさんの太鼓が登場していますが、陣太鼓を打っているのはあくまでも、一人。その波動をより迫力あるものにするためほかのメンバーがいるのです。

単純なリズムほど奏者の腕が求められる。

陣太鼓は、「攻めろ!」「踏み止まれ!」などの大将からの指令を自陣の兵に伝達するためのものなので、単純でわかりやすいリズムでなくてはなりません。ですが、単純なリズムほど奏者の腕が求められます。
そこで、『麒麟がくる』メインテーマで和太鼓の演奏をお願いした林 英哲さんの愛弟子として活躍されている『英哲風雲の会』の精鋭4人に今回の陣太鼓をお願いしました。

太鼓で大切なのは“波動”です。波動は大きな音でも小さな音でも存在します。全身全霊を込めて打たれたひとバチは、小さな音でも遠くまで伝わるし、シンプルなリズムでも人の心を打ちます。

陣太鼓で、より迫力あるシーンを。

劇中の戦シーンで演奏された曲は、『英哲風雲の会』の上田秀一郎さんとともに作ったオリジナルです。
撮影は、『英哲風雲の会』の4人と、大学生による『和太鼓いろは』の7人のメンバーで行いました。撮影の本番では、広大なオープンセットだけではなく、周辺の山々にまで陣太鼓の音と波動が響き渡っていました。すばらしい陣太鼓であったことは間違いないのですが、それ以上に陣太鼓により合戦シーンがより迫力あるものになるように努めさせていただきました。

道三軍の陣太鼓は、『英哲風雲の会』(上田秀一郎・はせみきた・田代誠・辻祐)、『和太鼓いろは』(音間大誠/平野祐哉/大久保佑亮/峯本泰成/三嶋祥大/村田雄飛/石綿将希)の11人で演奏しました。

メインの陣太鼓を担当した上田秀一郎さんをはじめ『英哲風雲の会』の精鋭4人に集まってもらいました。みなさんに撮影の感想を聞くと「いつものステージとは違う緊張感がありましたが、楽しみながら撮影に参加することができました」とのことでした。

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