【特集】喫煙・たばこが原因となる病気まとめ がんやCOPD、依存症などの対策と禁煙治療

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【特集】喫煙・たばこが原因となる病気まとめ がんやCOPD、依存症などの対策と禁煙治療

喫煙が危険因子となる病気や禁煙の方法などをまとめました。喫煙は依存性がある上に、がんをはじめ、脳卒中、狭心症や心筋梗塞、糖尿病など多くの病気のリスクを高めます。喫煙者だけでなく周囲の人にも受動喫煙による同様のリスクがあるため注意が必要です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDとは

COPDは、肺の呼吸機能が低下していく病気で、主に喫煙が原因となって起こります。たばこの煙に含まれる有害物質を吸い続けることで、肺に炎症が起こり肺の組織が徐々に破壊されていきます。一度破壊された組織は元には戻りません。

COPDの患者数は推定530万人もいると言われていますが、このうち診断や治療を受けている人はわずか26万人。実は、喫煙者の多くが気づかないまますでにCOPDにかかっている可能性があります。

COPDの症状

COPDの代表的な症状は息切れです。初期症状はほとんど現れませんが、次第に階段や坂道を上がるときに息切れするようになり、進行すると、平地を歩いていても息切れが起こるようになります。さらに進行すると、座ったり寝たりしている安静時でも呼吸が苦しくなるようになります。

COPDの症状は息切れ、慢性的なせきやたん

COPDの人は、一般的に感染症にかかりやすいといわれています。新型コロナウイルスに感染した場合、突然重症化してしまうケースもあり、特に注意が必要です。

タバコが原因のCOPDについて詳しく知りたい方はこちら
喫煙者や喫煙歴がある人はチェック!「COPDチェック」はこちら

COPDの治療

治療の基本は禁煙です。喫煙をやめることで、せきやたん、息切れなどの症状が軽くなるだけでなく、肺機能の低下もゆるやかになります。

COPDの治療、禁煙以外の方法

COPDの治療では、息切れなどの症状を軽減させることや、肺がんや心筋梗塞など命に関わるような合併症を防ぐことが大きな目的となります。そのためには、まず禁煙、加えて有効なのが、薬、呼吸を楽にするための呼吸法などです。最近では、日常生活のなかで積極的に体を動かすことが、COPDの進行を防ぐために重要であると考えられます。

COPDの進行を防ぐ方法について詳しく知りたい方はこちら



喫煙とがん

喫煙は、がんのリスクを高めます。たばこの煙に含まれる有害成分が肺の構造を壊してしまうこと、70種類以上の発がん物質がたばこの煙に含まれることなどが影響します。

喫煙が影響する病気

特に肺がんは4.5倍(男性)、喉頭がんは32.5倍(男性)、がん全体では男性で2.0倍、女性で1.6倍死亡リスクが高まるとの報告があります。また若い頃から喫煙を続けた場合、男性で8年、女性10年 寿命が短くなると報告されています。

肺がん

肺がんは、肺の気管や気管支、肺胞の一部の細胞が喫煙などの原因によってがん化することで起こります。

肺がんは早期に自覚症状はほとんどなく、空せき、血の混じったたん、ゼーゼーヒューヒューとあえぐような呼吸、胸の痛みなどの症状が出てからだと根治が難しくなります。早期発見のために定期的に検査を受けることが大切です。

食道がん

食道がんの大きな原因の一つは生活習慣です。特に日本人の場合は、喫煙と飲酒が大きな原因であることがわかっています。
たばこを吸わない人が食道がんになる危険度を1とした場合、吸う人は約3倍危険が大きくなります。1日20本のたばこを20年間吸った人は、吸わない人の約5倍のリスクになるといわれています。

食道がんの自覚症状

食道がんの早期の症状では、熱いものや酸っぱいものがのどにしみることもありますが、自覚症状がないのが特徴です。
進行すると、食べ物がつかえる、声がかれる、せきが出るなど、さまざまな自覚症状が現れます。
食道がんを少しでも早く発見するためにも、食道がんの症状を知り、違和感を覚えたら消化器科を受診することが大切です。

食道がんの自覚症状について詳しくはこちら

咽頭がん

喉頭がんの患者さんは、90%が喫煙者です。喫煙は肺がんのリスクとして知られていますが、実は最もリスクが高いのが喉頭がんです。
咽頭がんを含むのどにできるがんは、特に男性がなりやすく、50~60歳代から増加します。

咽頭がんの症状のうち声のかすれは、早期発見につながる症状です。その他に食べ物などをのみ込みにくい、首のしこりなどがあります。
これらの症状が2週間以上続く場合は、がんが疑われるので、耳鼻咽喉科などを受診しましょう。

咽頭がんを含む、のどのがんについて詳しく知りたい方はこちら



狭心症・心筋梗塞

狭心症・心筋梗塞とは?

狭心症とは、心臓に血液を送っている「冠動脈」の一部に異常が起き、血流が流れにくくなって心筋(心臓の筋肉)が弱ってしまうものです。
さらに、冠動脈に血栓が詰まって血流が途絶え、周囲の心筋が壊死(えし)してしまうのが心筋梗塞です。

狭心症の症状


狭心症のサイン

狭心症の典型的な症状は、締めつけられるような「胸の痛み」です。圧迫されるような痛みが、通常は数分から10分ほど続きます。運動した時や興奮した時に起こりやすく、少し休めば心臓の状態が回復します。
胸の痛み以外にも、のどや奥歯、腕、背中、みぞおちなどが痛む「放散痛(関連痛)」という症状が現れることもあります。

心筋梗塞の症状

心筋梗塞の症状

心筋梗塞では、突然「胸が締めつけられるような」「焼けつく」など激しい胸の痛みに襲われます。非常に苦しいため周囲の人にわかるほどの苦悶(もん)の表情を浮かべます。息苦しい・吐き気・冷や汗などの症状もあります。こうした症状が20分以上続きます。

喫煙と狭心症・心筋梗塞

狭心症や心筋梗塞の最大の原因は動脈硬化です。たばこの中に含まれる活性酸素が血管の内膜を障害して、動脈硬化を進行させ、狭心症や心筋梗塞を起こしやすくします。

狭心症について詳しくはこちら
心筋梗塞について詳しくはこちら



糖尿病

糖尿病の原因

慢性的に「血糖値が高い」状態を糖尿病といいます。
糖尿病には1型と2型があり、生活習慣が大きく影響し中年以降に発症しやすい2型が糖尿病のおよそ90%を占めています。

喫煙と糖尿病

喫煙している人は、していない人に比べ、糖尿病の発症率が38%高いことが日本人を対象にした複数の研究から明らかになっています。吸う本数が多いほどリスクが高いことも示されています。

喫煙によって糖尿病自体が発症しやすくなります。また、糖尿病の合併症である動脈硬化や腎臓病などのリスクが高まります。

2型糖尿病の原因や検査について詳しく知りたい方はこちら



受動喫煙

受動喫煙のリスク

本人は喫煙しなくても身の回りのたばこの煙を吸わされてしまうことを受動喫煙と言います。
たばこの煙には三大有害物質であるニコチン、タール、一酸化炭素の他にも70種類以上の発がん性物質が含まれています。他人のたばこの煙を吸うだけで、喫煙者と同じ病気のリスクがあります。分煙しても、たばこの臭いを嗅いだだけで健康被害を受けることもあります。

受動喫煙での死亡者も

受動喫煙で年間約1.5万人が死亡

受動喫煙による脳卒中のリスクは1.24倍、肺がんのリスクは1.28倍とされています。さらに受動喫煙は子供の呼吸器疾患や中耳炎、乳幼児突然死症候群を引き起こすことが指摘されています。また、妊婦やその周囲の人の喫煙によって低体重児や早産のリスクが上昇します。
受動喫煙でも年間およそ15,000人が死亡しているという推計があります。



ニコチン依存症と禁煙

ニコチン依存症とは

たばこに含まれるニコチンが脳の特定の神経細胞の受容体に結びつくと、快感をもたらす「ドパミン」という物質が過剰に放出されます。ニコチンが切れるとイライラする、集中力がなくなる、気分が沈む、眠くなるといった離脱症状が現れます。この症状を解消するために、たばこを吸う状態をニコチン依存症と言います。

保険適用される禁煙治療

自力で禁煙するのは難しく、5~8パーセントしか成功しないと言われています。禁煙が難しいのは意志が弱いからではなく、喫煙行為の本質がニコチン依存症だからです。禁煙の近道は、医療機関で禁煙治療を受けることです。

禁煙治療

禁煙治療薬には、貼り薬のニコチンパッチとのみ薬のバレニクリンがあります。どちらの薬を選ぶかは副作用の強さ、生活への影響度などを考慮して決めます。途中から薬を変えることも可能です。

禁煙治療は通常、保険診療です。3か月間に5回の外来受診をしながら禁煙していきます。35歳以上の場合「1日の喫煙本数×喫煙年数」が200以上であることが保険診療の条件です。たとえば1日20本を10年間吸っていれば200です。ただし35歳未満の場合は、この条件を問わず保険診療です。

禁煙治療についてもっと詳しく知りたい方はこちら



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