【特集】急な激痛は要注意!腹痛の原因と治療、解消法を徹底解説

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【特集】急な激痛は要注意!腹痛の原因と治療、解消法を徹底解説

腹痛の原因には体の冷え・ストレスなどさまざまな要因が考えられます。突然の激痛は、急性すい炎・潰瘍性大腸炎などの病気の可能性もあります。そのままにしておくと、がんに進行することもあり注意が必要です。腹痛の原因となる主な病気や検査・治療法について解説します。

下痢・便秘を伴う慢性的な腹痛・・・過敏性腸症候群 症状改善の意外なカギとは?「腹痛のトリセツ」はこちらから!

急性すい炎・慢性すい炎による腹痛

急性すい炎

急性すい炎とは

急性すい炎は、突然起こるすい臓の炎症の1つです。すい臓がむくんで腫れるほか、炎症が強い場合にはすい臓の血流が悪くなって組織が壊死します。
また、すい臓でつくられた消化酵素が自分のすい臓や周囲の組織を消化してしまう自己消化が起こります。経験したことの無いような突然の激しい腹痛を伴い、重症化すると死亡する可能性がある病気です。

急性すい炎の原因として最も多いのはアルコールと胆石です。男性にはアルコール、女性には胆石が多く見られます。

急性すい炎の症状

急性すい炎は突然、みぞおちからへそあたりの激しい腹痛が起こります。さらに、すい臓は背中側にも近いため、背中や腰に痛み感じる場合もあります。痛みの他には、吐き気やおう吐、発熱といった症状が起こる場合があります。

急性すい炎は死亡することもある病気です。経験したことのないような激しい腹痛に見舞われた場合、消化器を専門とする医療機関への受診をおすすめします。

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慢性すい炎

慢性すい炎

慢性すい炎は、すい液がすい臓を溶かす自己消化が長い時間をかけて起こる病気です。通常はすい臓が少しずつ壊れていくため完治は望めず、すい臓がんのリスクを高めてしまいます。一方で、早期の段階で治療を行えば、進行を食い止めることも可能になってきています。慢性すい炎を引き起こす主な原因はアルコールで、飲酒量が増えれば増えるほど発症しやすくなります。

慢性すい炎になると、すい臓の組織が線維化したり、すい液を分泌するすい管の内部にすい石ができたりします。こうした症状が出てくると、すい臓全体が硬くなって委縮していきます。また、すい液の分泌も低下するので、食べた物を消化したり吸収したりする働きも失われてしまいます。

慢性すい炎 進行と症状

慢性すい炎の初期の症状は、腹痛や背中の痛みがありますが、病気の経過とともにその痛みを感じにくくなってきます。また、すい臓の機能が壊れてしまうため、消化吸収の悪化によって、下痢や食べた物の脂肪分が便に混じる脂肪便、体重の減少といった症状が現れます。

慢性すい炎治療法

慢性すい炎と診断された場合、まずすべきことは禁酒です。飲酒は慢性すい炎の進行を早めるだけでなく腹痛の原因にもなるためです。また、食事療法は、慢性すい炎が初期の時は腹痛をやわらげるために脂肪の多い食品を避け、後期には消化・吸収の働きが低下するため、適切なエネルギーを摂るよう心がけます。

薬による治療では、腹痛を抑える薬や低下した消化・吸収の働きを補う薬が使われます。
腹痛の原因にもなるすい石がある場合は、体の外から衝撃波をあてることで砕きます。すい臓内にすい液がたまるすいのう胞ができた場合は、内視鏡を使ってすい液を取り除きます。

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大腸に関係する病気と腹痛

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、免疫の働きの異常によって大腸の粘膜に炎症が起こり、潰瘍ができる病気です。現在のところ、完全に治すことは難しいとされており、国の指定難病の1つです。
免疫細胞の異常が起きてしまう原因は人によって異なると考えられますが、食生活や生活習慣の乱れ、ストレス、腸内細菌のバランスの乱れが挙げられます。

潰瘍性大腸炎の初期症状

潰瘍性大腸炎を発症すると、まず粘液の混じった便と血便が出ることが多くあります。その後、便の回数がどんどん増えていき、最終的にはおなかに痛みが出てきます。

潰瘍性大腸炎の検査は、炎症の程度を調べる血液検査や腸の中の炎症の程度の値を調べる便検査、大腸の炎症範囲や程度を診断する大腸内視鏡検査などがあります。

潰瘍性大腸炎を発症してから10年ぐらい経つと、大腸がんの発生率が5%~10%になると言われています。潰瘍性大腸炎が発症した場合は、定期的に内視鏡検査を受けることが大切です。

潰瘍性大腸炎の治療の基本は薬による治療です。重症度に応じて使用する薬が選択されます。薬物療法以外の治療法として、白血球除去療法があります。
薬物療法などを行っても症状が改善されない場合や、潰瘍性大腸炎から大腸がんを発症した場合は、手術で大腸をすべて摘出します。

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過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は、検査をしても腸に腫瘍や炎症が見つからないのにも関わらず、下痢や便秘、腹痛といった症状が続く病気です。例えば、「通勤電車の中で必ず腹痛に襲われ、下痢をすることもある」「試験の前になると必ず便秘になり、4日以上排便がなく、腹痛で集中できない」など、「ストレスがかかったときに一時的におなかの不調が起こる」状態です。

主な原因はストレスだと考えられています。ストレスによって、脳や大腸からのセロトニンの分泌のバランスが乱れると、大腸の動きが不安定になります。大腸の動きが過剰になって食べ物の通過が速くなると、水分を吸収しきれずに下痢になります。一方、大腸の動きが鈍くなると便がスムーズに運ばれなくなり、便秘が起こります。

ほかにも、「腸の粘膜の炎症」「腸内細菌のバランスの乱れ」も過敏性腸症候群の発症に関係していると考えられています。

下痢・便秘・腹痛などが続いている場合には、過敏性腸症候群以外に大腸がん・潰瘍性大腸炎・クローン病などの腸の病気である可能性があります。これらの病気を見逃さないためにも、大腸内視鏡検査を受けることがすすめられます。

過敏性腸症候群の治療の基本は生活改善です。良い睡眠を十分にとる、腸内環境を整えるために食事に気をつけることを心がけましょう。

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尿路結石が原因の腹痛

尿路結石とは

尿路結石は尿の通り道、「尿路」にできる石のことです。尿路とは腎臓から尿管、ぼうこう、尿道を指します。結石は、腎臓か尿管で見つかることがほとんどです。

尿路結石は女性より男性に多く発症し、男性の7人に1人、女性の15人に1人が一生のうちに一度はなると言われています。男性は30~50代の働き盛りの世代、女性は閉経後の50~70代に多く発症します。

尿路結石

尿管に結石がある場合は、石が詰まって尿が流れにくくなるため、背中や脇腹に痛みが出ます。痛みは、鈍痛から救急車を呼ぶほどの激痛までさまざまです。痛みのほかには、血尿や吐き気といった症状もあります。さらに、尿の流れが悪くなり細菌感染を起こすと、結石性腎う腎炎という命に関わる病気を引き起こす場合もあります。

尿路結石の治療

尿路結石の中でも尿管に結石がある場合、大きさが7~8ミリ以下であれば、特に治療しなくても半数近くの患者が尿と一緒に自然に石を排出します。しかし、「1か月以上たっても結石が出てこない場合」や「1センチ以上の大きな石の場合」は、積極的な治療を検討します。

尿路結石の予防方法

尿路結石は食生活と関わりが深いため、毎日の食事に気をつけることが予防につながります。水をたくさん飲む、ほうれんそうやレタスなどの野菜、ナッツ類、チョコレート、バナナ、たけのこ、コーヒー、紅茶、緑茶などの食品に含まれるシュウ酸を含む食品は、カルシウムを多く含む食品と一緒にとることがおすすめです。

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腹痛の症状が現れる主ながん

大腸がん

大腸がんは進行が遅い、性質が比較的おとなしい、ほかの臓器に転移しても切除可能といった特徴があり、治る可能性の高いがんと言われています。外科手術で根治可能な大腸がんは、大腸がん検診を正しく受診すれば、約9割の確率で見つけることができます。

大腸がんになると便秘や下痢、血便や腹痛、便が細くなるなどの自覚症状が現れる場合があります。これらは大腸がんが進行してからの症状なので、早期発見のためには、定期的な検診を受けることが何よりも重要です。

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小腸がん

小腸にはさまざまな種類の悪性の腫瘍〔できもの〕ができますが、それらを総称して小腸がんと言います。小腸がんは、患者数が極めて少ない希少がんの1つです。

小腸がんは初期に自覚症状が出にくく、がんが進行し大きくなったことによって現れた症状から発見されます。がんが大きくなると、腸が塞がれる腸閉塞により、腹痛や吐き気、おう吐が起こります。また、患部からの出血により、下血や貧血が起こります。こうした症状をきっかけとして受診し、発見される場合が多いのです。

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すい臓がん

すい臓がんは、がんのなかで最も発見や治療が難しいとされています。
すい臓は、胃の裏側の体の奥にあるため超音波が届きにくく、内視鏡の挿入もできません。また、自覚症状として腹痛や背中の痛み、黄疸、体重減少、食欲低下などがありますが、早期には自覚症状が現れないため非常に少なく、診断されたときにかなり進行しています。

すい臓がんを早期発見するには、「危険因子を知る」「1cm以下で見つける」「間接所見(がんが疑われる病変)を見逃さない」「検査を適切に組み合わせる」という4つのポイントを抑えることが大切です。

すい臓の手術できるかどうかはがんの進行度(ステージ)によって異なります。また「手術できる」「手術できない」のほかに「ボーダーライン」があります。ボーダーラインとは、手術は可能であってもがんを完全には取り除けず、再発する可能性も高い場合のことをいいます。実際に手術するかどうかは、患者さんひとりひとりの状態から慎重に判断します。

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腹痛を起こすその他の病気

食中毒

食中毒は、主に細菌が原因となって起こります。
気温と湿度が高い夏は、ほかの季節に比べて特に細菌が繁殖しやすいため、肉や魚などの生ものによる「食中毒」を起こす危険性があるので注意が必要です。
食中毒になると「腹痛」「下痢」「吐き気や嘔吐(おうと)」「発熱」「血便」などの症状が起こります。

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狭心症

狭心症とは、心臓に血液を送っている冠動脈の一部に異常が起き、血流が流れにくくなって心臓の筋肉(心筋)が弱ってしまうもので、12月から2月ごろに発症しやすくなります。
狭心症の典型的な症状は締め付けられるような胸の痛みですが、それ以外の奥歯やのど、肩、腕、みぞおち、背中などに痛みが起きる「関連痛(放散痛)」などの症状が現れることもあります。

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